遺品整理を自分で行う際に考えられるトラブルと注意点

遺品整理を自分で行う際に考えられるトラブルと注意点

遺品整理は、実際にやってみると、想像より大変な作業です。
もちろん、親御さんが生前整理などをされていた場合はそれほどではないでしょうが、そうでない場合は「どうして、こんなにものがあるの!?」と驚く人が多いようです。
ましてや、いわゆる「ゴミ屋敷」のような状態であった場合は、途方にくれてしまうのではないでしょうか。
また、それ以外にも、思ってもみなかったような問題が起こることもあります。
今回は、自分で遺品整理を進める際、どのようなトラブルが発生する可能性があるのか、また、想定しておくべきトラブルについて見ていきましょう。

自分で遺品整理を行う際、起こりやすいトラブルとは?

遺品整理の現場には、さまざまな問題がある場合が少なくありません。
遺品整理を自分で行う場合、どのようなトラブルを想定しておけばよいのでしょうか。

想像以上に、ものが多い

遺品整理では、想像以上に遺品の量が多いケースがほとんどと言っていいでしょう。
特に、親御さんが高齢だと、体力や気力が衰えて整理整頓が面倒になり、家の片付けも億劫になってしまうようです。
また、認知症を発症してしまったような場合も、症状によっては、ものを大量に溜め込んでしまうことがあります。
ものが多ければ多いほど、片付けには体力・気力が必要となり、時間も長くかかります。

処分に困る遺品がある

遺品整理で処分に困る女性

遺品の中に、故人が大切にコレクションしていたものや、思い出が詰まっていそうなものがあった場合、処分に困ってしまいます。
コレクションは、もしかしたら価値のあるものかもと思うと捨てにくいもの。
また、写真やアルバムなども、捨てにくく、ついそのまま取っておいてしまいがちです。
そのために、いつまでも遺品整理が終わらないケースがあります。

ゴミが大量にある

ものが多いとは言っても、市場価値のあるものや売却できるものなら、まだいいでしょう。
問題は、不用品やゴミが大量に見つかった場合です。
一人暮らしの高齢者宅がゴミ屋敷と化していた、という話は枚挙にいとまがありません。
大量のゴミを放置することで害虫や臭気が発生したり、家が傷んで壊れかけたり、植え込みが伸び放題となったりして近隣に多大な迷惑をかけることになります。
これら大量の不用品やゴミを仕分けし、廃棄するのは大変な労力と時間、またお金もかかります。

大切なものを誤って処分してしまう

大切な遺品を処分してしまった男性

プロでない限り、遺品整理に慣れている人はほとんどいないでしょう。
そのため、保管すべきものや大切な書類などを誤って処分してしまうことがあります。
たとえば、銀行の通帳やカード、不動産の権利書、税金関係の書類、年金手帳や保険証券といったものです。
こういった書類は、死後のさまざまな手続きに必要です。
しかし、誤って処分してしまうと、再発行が困難なため、ひいては手続きにも時間がかかることになってしまいます。

また、市場価値のあるものを捨ててしまうこともあります。
金銭的価値の高いものは、遺産相続の課税対象となるので、このような品を勝手に処分してしまうと、スムーズな相続ができなくなる場合があります。
価値はそこそこのものでも、勝手に捨ててしまうと、相続や形見分けの際にもめる原因になりかねません。

近隣に迷惑をかける

遺品整理があまりにも長引いてしまうと、近隣住民から苦情が出ることがあります。
いつまでも空き家のまま放置されていると、防犯上のリスクが高くなります。
もし放火されて火事にでもなったら大変です。
近隣に不安を与えないよう、速やかな遺品整理が必要です。

また、遺品整理の際の物音が、騒音として近隣の迷惑になる場合もあります。
特に、マンションやアパートなど集合住宅では音が響きやすいので注意が必要です。
マンションなどではエレベーターを使う回数も多くなるので、あらかじめ挨拶をしておくとよいでしょう。

遺品整理を自分でするときの注意点は?

では、遺品整理をする際、どんな点に注意するべきかを見ていきましょう。

時間がかかる

遺品整理を自分でやると、どうしても時間がかかってしまいます。
故人が生前整理をしていたり、ものが少ない場合は1~2日で終わる場合もありますが、そうでない場合は数週間から数ヶ月もかかってしまうこともあります。
賃貸住宅で退去期限が迫っているような場合は急がなければなりませんが、そうでない場合は、慌てずゆっくり、確実に進めていくのがおすすめです。

肉体的・精神的な負担

生前整理に疲れた男性

遺品整理では、重いものを持ち運ぶことも多くなります。
掃除などもしなくてはならないため、肉体的負担がかかります。

また、遺品整理に時間がかかることや、大切な家族を亡くした悲しみが癒えていないことから、大きなストレスを感じることもあります。
故人が愛用していたものを処分することに罪悪感を感じる人も少なくありません。
できるだけ負担にならないよう、自分おペースで少しずつ進めていきましょう。

親族と相談する

遺品整理を始める前に、親族にいつから始めるか連絡しておきましょう。
自分以外の財産相続者に対して、まったく配慮することなく遺品整理をするのは、重大な違反行為となります。
遺品整理をするときは、基本的には、親族全員で行うのがベストです。
すべてを自分一人でやるのではなく、家族や親族に相談しながら進めていきましょう。
自分一人の判断で遺品を処分するのは危険です。
明らかなゴミでない限り、保管するもの・処分するものの確認をしましょう。
そうしないと、あとで親族間のトラブルに発展する可能性があります。

書類に注意する

遺品の中には、死後の手続きに必要な書類があります。
通帳・証券類・現金、身分証明書・印鑑・カード類、仕事関係の書類は、間違って捨ててしまわないよう気をつけましょう。
特に遺言書は、相続などに大きな影響があります。
まず真っ先に、遺言書がないか探しましょう。
そのほか、電気・ガス・水道など公共料金の領収書や、年賀状などは、あとで役立つことがあります。
すぐに捨てず、いったん保管しておきましょう。

廃棄の仕方に注意する

遺品の仕分けをし、不用品として廃棄するものにも注意しましょう。
不要な封筒、名刺など、個人情報が含まれているものは、シュレッダーで粉砕するなど、捨て方を工夫する必要があります。

また、自治体のゴミ回収に出す場合は、ルールに従って出しましょう。
自治体によっては、一度に出せる量が決まっているところもあるので注意が必要です。

各種契約状況を確認しておく

遺品の量によっては、整理に数日かかる場合があります。
そのため、事前に各種の契約状況を確認しておきましょう。

たとえば、電気や水道などは遺品整理の際にも使用します。
料金の引き落とし日を確認しておき、遺品整理当日も使えるようにしておきましょう。

賃貸住宅の場合は、退去時期を確認しておきます。
遺品整理の予定を早めにたて、家主に契約期間を確認し、退去予定を伝えておきます。
そして、その期日までに必ず遺品整理を完了させなくてはなりません。

どうしても困ったときは・・・

遺品整理業者に判断を仰ぐ女性

挫折してしまいそうなときや、部屋の退去期限が迫っている場合は、遺品整理業者に依頼する方法もあります。
特に、孤独死があった現場の遺品整理は素人には無理と言っていいでしょう。
強い腐敗臭が漂っているような現場は、室内自体が汚染されている可能性が高いと考えられます。
入室には、防護服の着用が望ましく、特別な薬品や道具、技術がなければ原状回復はできません。

あまりにひどいゴミ屋敷も、素人には荷が重い現場と言えます。
片付けそのものも大変ですが、大量のゴミを処分するのはもっと大変です。
このような場合は、廃棄処分だけでもプロの手を借りるとよいでしょう。

また、プロの目は、大切な書類や処分してはいけないものをしっかりと見分けます。
素人では見逃してしまいがちな小さなものも、封筒1つ1つを必ず確認して見つけてくれます。
不用品の中に、まだ使えるものがあれば買い取ってもらえますので、自分で売却する手間も省けます。

自分や親族だけで済ませたい気持ちがあっても、挫折してしまっては元も子もありません。
無理をせず、プロの手を上手に借りましょう。

まとめ

自分で行う遺品整理は、自分なりに納得のいくまで遺品(故人)と向き合えること、また、業者に依頼する費用が節約できるのがメリットと言えます。
しかし、その反面、トラブルや注意点も多くなります。
スムーズな遺品整理を行うには、事前にしっかり準備しておきましょう。
契約関係の状況や、近隣への配慮は特に大切です。
また、重要書類は一度なくしてしまうと再発行は困難です。
間違って捨ててしまわないよう慎重を心がけましょう。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。