ここ数年、注目を集めている遺品整理業ですが、まだ歴史が浅い業種なだけに現在も業者とお客さんとの間のトラブルは絶えないようです。
2014年10月の産経ニュースには、次のような記事が掲載されています。
「遺品整理業者」トラブル続出 貴重品を無断回収、見積もり4倍請求…業者見極め重要
故人の遺品を片付ける「遺品整理」をめぐり、貴重品の無断回収や大幅な追加料金など業者とのトラブルが相次いでいる。1人暮らしの高齢者などの「孤立死」が増加傾向にあり、今後も遺品整理業者に対する需要は高まるとみられ、国民生活センターなどは優良業者を見極めるよう呼びかけている。
国民生活センターや社団法人「遺品整理士認定協会」(北海道千歳市)によると、業者が無断で貴重品を回収してしまったり、料金の増額を求めたりする例が頻繁に聞かれるという。
南関東に住む60代の女性は平成24年9月、父親の遺品整理をリサイクル業者に依頼。業者は仏像や花瓶など高価なものを女性に無許可で次々に持ち去った。何をどれだけ持っていったのかも不明だという。
関東地方に住む50代の女性は今年7月末、70代の母の遺品整理を業者に依頼した。見積もりは約30万円だったが、作業後に請求されたのは約120万円。見積もりを安く提示し、作業後に大幅な増額を求める悪質業者の典型だった。
(産経ニュースより抜粋)
遺品整理業に限らず、多くの業界に悪徳業者は存在します。人の弱味につけこんだり、法律の網の目をかいくぐってお客さんを騙そうとするので、結局イタチごっことなってしまうことは否定できない、悲しい現実でもあります。
なかでも遺品整理というのは、大切な人が亡くなった直後に行うことが多いので、遺族が落ち込んでいる時、深い悲しみに襲われている時に、悪徳業者がそんな状態の遺族を騙そうとするのです。
もちろん悪徳業者ばかりではありません。というより優良業者のほうが多いのです。しかし一部の悪徳業者のせいで、このような報道がなされることにより、遺品整理という業種そのものに対して疑問を持つ人も多いはずです。
となると、業者に依頼せず遺族が自分たちで故人の遺品を整理しようと考えるのも、当然だと思いますし、個人でできる作業もたくさんあります。
一方、専門の資格が必要な作業や、相続など法律が大きく関わってくるものもあり、すべて個人で解決できるとは限りません。
さらに日数や人員にも限りがあるとすれば、やはり専門業者に任せたほうがよい部分も出てきます。
ではそんな時、悪徳業者に騙されないようにするためには、どうすればよいのか。
まずは自身でも遺品整理に関する知識を持ち、優良業者と出会うための手段を知っておくことです。
今回は、遺品整理業者に仕事を依頼するためのポイントを整理します。
目次
遺品整理士の資格を持った業者
現在、「遺品整理」に関する国家資格はありません。その業務は多岐にわたるため、たとえば清掃や古物商など専門の資格はありますが、「遺品整理」という大きな枠に対する国家資格はないのが現状です。
そんな遺品整理業界で設立されたのが「遺品整理士認定協会」です。
遺品整理士認定協会は下記の「遺品整理士養成理念」を掲げています。
「遺品整理」とはご遺族の間で兼ねてより行われていましたが、業務を事業として代行するにあたっては、より法規制に遵守した形で行っていくことが重要です。遺品整理の取り扱い手順や遺品整理に関わる法規制等の知識を、正しく身に付けられます。
また、認識の違いから”遺品整理”を”遺品の処理”と捉える傾向にありますが、生前使用され、故人の想いのこもった品々を”供養”という観点から、取り扱い方法について学ぶことができます。
すでに遺品整理業に関わられておられる方々におかれましても、資格取得をきっかけとして、法規定に基づいた法令遵守への認識を高めて頂くとともに、実務だけではなく、”命の尊さ”について、もう一度考える機会になることを、心より願う次第です。
(遺品整理士認定協会公式サイトより)
同協会で資格を取得した遺品整理士への仕事の依頼、資格の内容についても明確に記されています。
弊協会では『遺品整理士』の認定資格を取得した企業様と連携を取り、日本全国の遺品整理のご依頼・ご相談を受け付けています。
『遺品整理士』は、ご遺族様の想いに寄り添い整理を行える、モラルを持った方々であり、遺品整理に関係する法令「古物営業法」、「廃棄物処理法」、「家電リサイクル法」、「小型家電リサイクル法」、「運送法」をしっかり学んでおります。
遺品整理は、専門的な知識のみならず、法規制の知識を得て活動しなければいけませんので、専門家である『遺品整理士』が在籍している企業様に、安心してお任せいただけます。
(遺品整理士認定協会公式サイトより)
次に、しっかりとした専門知識を持った遺品整理士に仕事を依頼する際は、どうすればよいのか。その流れを説明します。
1) 見積もりは複数の業者から
これは遺品整理業に限ったことではありませんが、仕事を依頼する際は複数の業者から見積もりを取りましょう(相見積もり)。
見積もりの金額に大きな差がある、特に極端に料金が安い業者は注意が必要です。作業後に高額の追加請求をしてくる可能性があります。
相見積もりを取ることで遺品整理作業の価格相場を知ることもでき、また悪徳業者に騙されない予防策にもなります。
まずは複数の業者に問い合わせ、見積もりを出してもらうようにしましょう。
2) 現場下見には立ち会いたい
業者に見積もりを依頼すると、まず現場下見が行われます。
ここで現場下見をせずいきなり見積もりを提示してくる業者には注意してください。料金は現場の状況によって変わるものなので、現場を見ずに料金を決めることはできません。
また、現場下見にはできるだけ立ち会い、要望などを細かく伝えたほうが業者も作業金額を提示しやすくなります。
また、遺品整理をお願いしたい現場が遠方にあったり、日程など自身が都合がつかない場合は、業者のみで現場下見を行うことはあります。その際は必ず、事前に細かい打ち合わせをしておきましょう。
3) 要望をしっかり伝えておく
事前打ち合わせ、あるいは現場で業者にはしっかりと自身の要望を伝えておきましょう。
ひとつは、きちんと依頼主の要望に対応してくれる業者かどうか見極める必要があること。なかには料金的なことも含め、業者にとっては対応しかねる要望もあります。
その場合でも、何ができて何ができないのか、細かく説明してくれる業者に仕事を依頼するようにしたいものです。
さらに、遺品整理はプライベートな部分にも関わってくる作業のため、「してほしくないこと」を伝えておく必要があります。
この場所は触れないでほしい、これは捨てずに取っておいてほしい……といった、依頼主の気持ちに、誠意を持って対応してくれるかどうかは、業者選びの際に最も重要なポイントのひとつです。
4) 見積書の内容をチェックする
現場下見が終わると、業者から見積書が届きます。見積書では、全体の金額だけでなく書類の内容も必ず細かくチェックしてください。
たとえば、見積もりの金額が料金の総額しか記されていない場合は、必ずその内訳を確認しましょう。
しっかりとした業者なら、見積もりの段階で作業内容と各作業料金の詳細を記載します。
遺品整理業務は、清掃ひとつとっても家の状態、部屋の間取り、作業に必要な人員の数や時間によって料金は変わってきます。
その詳細が記載されていないと、後々に高額の追加料金を請求される要因にもなるのです。
別途料金も確認しておく必要があります。作業現場では想定外のことが起こり得ます。予想以上に時間・日数がかかったり、あるいは処分に別途費用がかかるものが出てきたりするケースは、意外と多いものです。
そこで、何がどうなれば別途料金・追加料金が発生するのかを、しっかり確認しておかなくてはなりません。
同時に依頼者にとっては、遺品整理の現場でどんなことが起こりうるか実例を挙げて説明してくれたり、もし別途料金・追加料金が高額になる場合に相談に乗ってくれるなど、業者の対応力を見る機会でもあります。
ただし、ただ相手の対応力を見たいがために過度な相談や要求を行うことは、作業の妨げにもなりますので、限度も考えなければいけません。
5) 業者の決定と打ち合わせ
問い合わせ、現場下見、見積もりを終えたら業者を決定し、日程や作業内容について打ち合わせを行います。
業者から提示された見積もりや作業内容をもとに、依頼主が用意しておかなくてはならないものも確認しておく必要があるでしょう。
特に遺書やエンディングノートがあれば、それらに基づいて作業を進めなければいけません。そのためには生前整理も重要なポイントとなります。
現場下見や見積もりの時と同じように、ここでも具体的に何をどうしてほしいか、あるいは何をしてほしくないかを明確に業者へ伝えましょう。
遺品整理作業は現場のから始まりますので、まずは「故人の部屋でこれを見つけてほしい」、「これは捨てても構わない」ということから確認し合っておきたいところです。
あるいは、自身のなかで明確な言葉にできていない場合でも、業者に相談しておくことが大切です。
しっかりとした業者であれば、実作業のこと、お金のこと、法律のこと、もしくはプライベートなことまで誠意をもって対応してくれたり、別の専門家を紹介してくれるはずでしょう。
6) 片付け当日、書類の保管
片付け当日もできるだけ現場に立ち会いたいものです。
前述のニュースにもあるとおり、片付け中に故人の遺品を勝手に持ち去ってしまうような悪徳業者が存在します。
ここまでの過程で、しっかりとした業者選びができているかと思いますが、用心するに越したことはありません。
もちろん悪徳業者がどうとは関係なく、現場で業者にいろいろお願いすることも出てきますし、立ち会ったほうが作業もスムーズに進みます。
それでも日程的に立ち会えない場合は、事前の打ち合わせをしっかり行っておいてください。
さらに、遺品整理作業は現場の片付けだけで終わるわけではありません。
不用品の引き取り・買い取り、相続問題などケースによってさらに日数がかかります。
片付け以降のスケジュール・作業内容も把握しておくとともに、基本的に支払いは作業後になりますので(事前支払いの場合もあり)、どの段階でいくら支払えばよいのかも確認しておきましょう。
最後に大切なのは、料金を支払った場合は必ず領収証を受け取っておくことです。
事後に何かトラブルが発生した場合、効力があるのは契約書、見積書、領収証などの書類です。
上記の過程で業者から提示される書類は、どんなものであっても必ず保管しておいてください。
ここまでご紹介したように、遺品整理作業の内容は多岐にわたるため、業者にお願いする場合は相談・確認しておくことも多いと思います。
しかし悪徳業者に騙されないため、無用なトラブルを避けるために、どれも必要なものです。
何より遺族にとっても故人の気持ちを大事にし、しっかり供養を行うためにも、業者にお願いする場合も遺品整理に関する知識をもって臨んでください。