ここ数年で広く知られるようになってきた「遺品整理」。
とはいえ、実際に自分で遺品整理をしたり、遺品整理業者を依頼したりする機会は、そう多くありません。そんなところから、「遺品整理」という言葉は広まっても、実際にどんなことをするのか、いつ依頼すればいいのかなど、実情まで理解している人はまだ少ないのではないでしょうか。
そこで今回はQ&A集として、お客さまからよくいただく質問・疑問にお答えしていきたいと思います。
遺品整理業者とは?
Q1:遺品整理業者とは、どんな仕事ですか。
遺族が故人の残した荷物を片付けたり、処分したりするのをお手伝いする仕事です。
荷物を不要物とそうでないものに仕分けし、故人の住んでいた家の中をきれいにします。
また、不要物の中でもまだ使えるものを中古品として転売したり、買い取りを行ったりもします。
Q2:遺品整理には、知識や資格が必要ですか。
遺品整理の作業を簡単に表すと「仕分け・清掃・査定・搬出・処分」。単純に見えますが、公的資格がなければできない作業があります。
- 清掃
- 査定
- 処分
清掃
部屋にしみついた臭いを除去したり、消毒したりするには、特殊な薬品を使わなくてはなりません。それには、薬品を取り扱う資格が必要です。
査定
仕分けしたものを査定するには、いろいろなものに関する知識が必要です。ブランド物や貴金属、ゴルフの道具、骨とう、高級時計から美術品に至るまで、さまざまな知識が必要です。さらに、それらを買い取り販売するには、古物商の資格が必要です。
処分
家電や自転車などを処分するには、ルールがあります。エアコン・冷蔵庫・テレビ・洗濯機の「家電4品目」の処分方法や、携帯電話、デジタルカメラ、ゲーム機、電子レンジ、ドライヤー、扇風機などの処分に関する「特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)」をご存じでしょうか。
また、不用品を処分するには「一般廃棄物収集運搬業の許可」が必要です。
このように、遺品整理にはさまざまな知識や資格が必要です。これらがないと、業者自身が実質的にできるのは「仕分け」と「清掃」だけ。作業ごとに専門の業者を入れることになるので、それだけ時間がかかり、費用も高くついてしまいます。こういったことから、専門的な知識や資格を持つ業者が増えています。
Q3:遺品整理自体に、資格はありますか。
あります。遺品整理士認定協会が「遺品整理士」という資格を定めています。
遺品整理業に一定のガイドラインを定め、各種関連法令を遵守する必要性を指導し、遺品を「供養」という観点から扱う姿勢を学ばせることで、遺品整理業界の健全化をはかることを目的としています。
同協会は、遺品整理をより法規制に遵守した形で行うために、遺品整理の取り扱い手順や遺品整理に関わる法規制などの知識を身につけるためのセミナーを運営しています。このセミナーを受講したのち、リポートを提出することで「遺品整理士」の資格を得られます。
民間の資格ではありますが、遺品整理業者としての心構えや必要な知識を学ぶことができます。
遺品整理とは、どんなことをするの?
Q1:遺品整理を依頼するときの流れは?
1. 問い合わせ…メールやインターネットでの問い合わせフォーム、電話などで問い合わせます。
2. 現地調査と見積もり…依頼者立ち会いのもと、整理する部屋や家を実際に訪問し調査します。部屋の状態や家財の量などを考慮し、見積もりを出します。希望があれば伝え、わからないことは質問・相談しましょう。また、1社だけでなく、複数の業者に見積もりを依頼し、比較・検討するとよいでしょう。
3. 契約…見積もりに納得がいったら、その業者と契約を交わし、作業の日時を決めます。
Q2:遺品整理当日の流れは?
1. 最終確認…依頼者と仕分け内容(保存するもの、不要なもの、探しているものなど)を最終確認し、作業を開始します。
2. 仕分け・梱包…遺品を仕分けし、梱包や袋詰めを行います。
3. 搬出…梱包した荷物や家具類を搬出します。
4. 清掃…玄関、廊下、ベランダ等の掃き掃除、室内の掃除機かけと掃き掃除、水回りの清掃を行います。必要に応じ、消臭・殺菌など特殊な清掃も行います。
5. 確認…依頼者に室内を確認してもらい、作業完了です。
Q3:遺品整理では、仕分けや清掃以外のお願いもできますか?
はい、承ります。
査定・買い取り…不用品でまだ使えるものの市場価値を査定します。古物商の資格を持っている業者の場合は、その場で買い取りもします。
形見分け…形見分けの品を、依頼者に代わり、形見分け先に宅配便で配送します。
供養…不要となった仏壇や仏具、神棚、人形などを提携の寺院などで代行供養します。
室外の清掃…室外にある物置の中の整理や、庭の草むしりなども行います。
遺品整理を依頼する際のポイント
Q1:見積もりのときの注意点を教えてください。
見積もりは、室内の状態や家財の量などを把握するため、実際にお客様のお宅に訪問して行います。そのため、依頼者ご本人様にお立ち会いいただく必要があります。
基本的に、電話のみでは正確な見積もりはできません。電話のみでOKという業者にはお気をつけください。あとから高額な請求をされるケースがあります。
ただし、どうしても立ち会えない場合は、ご相談させていただきます。また、ご家族の方やご親族の代理立ち会いも可能です。
見積もりは、数分〜数十分ほどでお出しします。費用の内訳は、「整理代金」と「不用品回収費」です。ほとんどの業者がホームページに料金の目安を掲載していますので、事前に確認しておくとよいでしょう。また、できれば事前に大まかな「受け継ぐ品」と「不用品」の区別を確認しておいていただくと、スムーズで正確な見積もりを出すことができます。わからないことやご希望があれば、見積もりの際に相談しましょう。
見積もりに納得できない場合は、断ってOKです。複数の会社に見積もりを依頼して、信頼できる業者を選びましょう。
Q2:当日の作業について
遺品の量や作業内容に応じて、うかがう人数や所要時間を事前にお伝えします。
作業時は、依頼者の立ち会いをお願いする業者がほとんどです。遺品整理は、片付けているうちに、思いも寄らないようなものや、依頼者が知らなかったものが出て来ることがよくあります。そういった品物の仕分けについて確認していただく必要があるからです。
どうしても都合が合わない場合は、事前に仕分けるものの指定をしていただき、それに沿って仕分けを行います。スタッフに要・不要が判断できないもの(写真や手紙、書類など)が見つかった場合は、作業終了後に改めて確認いただきます。
Q3:スタッフについて
大きな荷物を運び出すなど、遺品整理は体力を必要とする仕事です。そのため、多くは力のある男性スタッフが担当しますが、女性スタッフもうかがうことができます。
故人が女性だった場合、遺品を男性の手に任せたくないという依頼者は多く、女性スタッフの需要は年々高まっています。
女性スタッフの方が話しやすいとおっしゃるお客様も多く、問い合わせに女性スタッフがあたったり、当日も、男性にはできない細やかな心遣いで依頼者のお話をうかがいながら作業を進めたりすることが増えてきました。
最近では、女性スタッフのみで運営している会社もあります。女性スタッフを希望する場合は、依頼の際にお問い合わせください。
Q4:作業日時について
片付けるお宅が賃貸の場合は、特に一日も早く原状回復して大家さんにお返ししたいですよね。基本的に、土日や祝日でも対応している業者がほとんどです。できる限り、お客様のご都合に合わせて作業を行いますので、相談してください。
作業開始時刻は、基本的に24時間対応している業者が増えています。夕方や深夜でも作業は依頼できますが、料金が割り増しになる場合がありますので、事前に確認しましょう。
ただし、最近は遺品整理のニーズがかなり増えているため、スタッフの状況により難しい場合もあります。問い合わせの際によく確認しておきましょう。
支払いについて
Q1:料金を支払うのはいつですか?
ほとんどの業者が、原則として作業終了後のお支払いをお願いしています。作業当日、見積もりの料金をご用意ください。
お支払い方法は、現金、クレジットカードなどです。業者によって違いますので、契約時に確認しておきましょう。
Q2:見積もりと料金が変わることはありますか?
原則として、契約時に確認いただいた料金を変更することはありません。
しかし、不測の事態が起きた場合は、変更をお願いするケースがあります。
たとえば、契約時にはエレベーターを利用できるはずが、当日使用できなくなったり、作業中に急きょ品物が増えたりした場合などです。
逆に、見積もりよりも品物が少なかった場合は、減額することもあります。このようなことがありますので、依頼者の立ち会いは大切です。自身の目で見て納得できるよう、できる限りお立ち会いください。
Q3:料金には出張費も含まれますか?
多くの業者で、基本的に出張料は無料です。ただし、遠方であったり、高速道路の利用が必要と判断される場合は、別途料金を申し受けることがあります。
遺品整理の作業について
Q1:ゴミ屋敷状態でも依頼できますか?
はい。大量のゴミがあふれかえった状況や、孤独死のような現場であっても、状況に応じて作業します。
大量のゴミがある場合は、大型車の手配が必要となることがあります。その場合、事前にお客様の許可をとった上で、かかる費用を見積もりと合わせて請求します。
Q2:身内が孤独死してしまいました。そのような現場でも大丈夫ですか?
OKです。孤独死して時間がたってしまっているような現場では、特殊清掃(消臭・殺菌・害虫駆除・薬剤散布など)が必要です。特殊清掃は、自社で行える業者もありますが、特殊清掃の専門業者に依頼する業者もあります。専門業者に依頼する場合は、事前にお客様の許可をとった上で、かかる費用を見積もりと合わせて請求することとなります。見積もりの際によく確認しましょう。
Q3:遠方に住んでいるため、こまごまとした作業ができません。
たとえば、形見の品を荷作りし、譲りたい人へ宅配便でお送りする、形見分け代行サービスを行っています。
また、仏壇・仏具や神棚、そのほか宗教物の供養、お人形やヌイグルミなどのご供養も代行する業者が増えています。
探し物がある場合は、事前にお知らせください。必ず見つけられるとお約束はできませんが、探しながら整理します。
Q4:仕分けたものは、どのようになりますか?
遺品は、「受け継ぐもの」と「不用品」に仕分けをします。
「受け継ぐもの」は、作業終了後にお客様へお渡しし、確認していただきます。整理していると、思わぬところから金券や通帳、貴金属などが出てくることがあります。これらを発見した時は、全て依頼者にご報告します。
また、「不用品」は責任を持って処理場まで運搬します。
ただし、自治体によってルールが異なりますので、担当エリア外での作業の場合、そのエリアにおいて適正な許可を持った専門業者に依頼し、責任を持って運搬します。
遺品整理業者の選び方
Q1:どんな業者を選ぶべきでしょうか?
見積時に担当者の印象を見定める
優良業者は、こちらの疑問点や質問にきちんと答えてくれます。何でも安易に「できます」という業者は少し怪しいかも知れません。
また、見積もり担当者=当日担当者であることも重要です。申し送りが不十分では、満足いく作業はできません。その点から、実際に現場を見て見積もったスタッフが作業に当たるのがベストです。
会計が明朗か
見積もりをしても、実際の作業の状況によって、どうしても追加料金が発生してしまう場合があります。そういったケースについても、事前にしっかり説明してくれる業者を選びましょう。
遺品整理に必要な資格を持つスタッフがいるか
遺品整理を自社のみで行うには、様々な資格が必要です。できるだけ早く作業を行い、料金を低く抑えるためにも、資格を持つ業者に依頼するのが望ましいでしょう。
資格については、業者のホームページに掲載されています。また、問い合わせの時に確認するとよいでしょう。
信頼できる業者を選ぼう
以上、遺品整理というお仕事について、よくあるご質問についてお答えしました。
最も大切なのは、見積もりと話し合いの大切さです。ホームページの料金表は目安であり、実際には大きく異なるケースがあります。
故人をご供養するためには、まず依頼者が安心して任せられる業者を選ぶことが一番です。
業者とよく話し合い、誠実な遺品整理会社をお選びください。