現在、日本が抱えている問題として、少子高齢化と孤独死が挙げられます。
この2つは全く別の問題のようで、実は密接にかかわっています。そして、これらの問題に伴って遺品整理を行う場合にも問題が発生するようになりました。
子どもが遠方に住んでいて遺品整理が行えない、というケースが増加しているのです。
このような場合、遺族はどのような対応をすればよいのでしょうか。
今回は、遠方に住んでいて遺品整理が行えない時の対処方法をご紹介します。
目次
遠方に住んでいて遺品整理が行えない遺族が増加中
少子高齢化と遺品整理
日本が抱える少子高齢化と、それに伴う孤独死の問題。
医療の発達などから高齢者の人数は年々増加しており、日本の人口の中でも高い割合を占める団塊の世代の人々が一気に高齢者となることで、今後はさらに高齢化が進むでしょう。
また、昔は一家庭あたりの子どもの人数は4人近くとなっていましたが、今では2人にも満たない人数となっています。
このように子どもの数が少なくなることで、将来的には少ない労働力で多くの高齢者を支えなければならないという時代が来ることが予想されます。
この少子高齢化は孤独死にもつながっていきます。一家庭あたりの子どもの人数が少なくなっているため、親の面倒を見ることができない家庭が増えているのです。
また、離れて暮らしている親と連絡をとらない子どもも多く、高齢となった親は子どもが知らないうちに亡くなってしまう。そして、時間が経ってから発見される、といったことも……。
現代ではこうした孤独死で亡くなる人は多くなっています。
遺品整理は時間がかかる作業
老人ホームなどで誰かに看取られて亡くなった場合、孤独死で人知れず亡くなった場合……。
いずれにしても、遺品整理を行う場合にも子どもが少ないことが少なからず影響してしまいます。
もし、子どもが1人しかいないうえに、その子どもが遠方に住んでいて仕事をしている場合、遺品整理を行うことは難しいようです。
日本の少子化は、遺品整理においても問題点を生み出しています。
遺品整理は時間がかかるもの。
1日や2日休みをとって遺品整理を行ったとしても終わらないことが多いのです。
休日の度に実家を訪れて遺品整理を行うという方法もありますが、どれだけの時間がかかるかもわからない上に、その都度、交通費もかかってしまいます。
特に、賃貸で明け渡しの時期が迫っているとなれば、休日の度に遺品整理を行っていては、明け渡しの日に間に合わないこともあるでしょう。
では、その場合、どうやって遺品整理を行えばよいのでしょうか?
遠方の現場は遺品整理業者にお願いする
遺品整理は、非常に時間がかかる作業です。それは、現代では1人あたりの持ち物が増えていることも原因の一つでしょう。
遺品の中には大型の家具や家電なども含まれています。これらは大型の不用品として適切な処分をしなければなりません。つまり運搬が必要となるのです。
たとえば、たった一人で自家用車を使って運搬したとしても、何重往復もしなければならなくなるでしょう。
また、故人の遺品には故人の想い出が詰まっています。遺族からすれば、幼いころの記憶を蘇らせる物もあるかもしれません。
遺品を整理していくうちに故人のことを思い出し、大切な人を亡くした、つらい気持ちがよみがえってくることも否定できません。しかし、そんななかでも遺品整理を進めなくてはいけない。
それだけ、遺品整理は遺族に肉体的にも、精神的にも負担を与える可能性がある作業です。
そこで、遺品整理作業を代行する「遺品整理業者」に依頼をする人が増えました。
業者であれば複数人で作業をし、運搬も一斉に行うことができます。また、遺族が遺品に触れる時間が少なくなるため、精神的な負担を和らげることもできます。
遺族が行えばどれほど時間がかかるかわからない遺品整理も、遺品整理業者に依頼することで大幅に時間を短縮できます。
さらに、遺品整理後のハウスクリーニングを行っている業者もあり、遺族への負担は最小限に抑えられるようになりました。
このように遺品整理業者の需要が増している時代ですが、さらに新たなニーズが生み出されています。それが、故人の家から離れたところに住んでいる場合の遺品整理です。
今は全国に遺品整理業者がおり、また全国展開をして各地にスタッフがいる遺品整理会社もあります。
さらに電話だけでなくホームページやメールでも見積もりや依頼をすることができる時代。つまり、遠方に住んでいても実家近くの遺品整理業者に依頼することで、代わりに遺品整理を行ってもらうことができるのです。
遠方の遺品整理をお願いするためのポイント
故人が遠方に住んでいた場合に、遺品整理業者へ仕事を依頼する際は、次のポイントを知っておいたほうがよいでしょう。
- 遠方でも立ち会いは必要?
- 立ち会わない場合の流れは?
- 立ち会う場合の流れは?
遠方でも立ち会いは必要?
遺品整理業者に遺品整理を依頼する場合、まずは見積もりを取ります。
見積もりは家の広さ+整理するモノの量で判断することが多いので、そうなると業者は現場に行き、家の中に入らなければいけません。
見積もり後、正式に契約をすれば作業に取りかかります。もちろん、作業を行う場合に家の中に入ります。
となると、遺品整理業者に仕事を依頼する際は、まず遺族は見積もりのために業者が家の中に入る時、立ち会う必要が出てきます。
そこで、遠方に住んでいるからと遺品整理業者に依頼をしたとしても、結局は現地に足を運ばねばならないのでしょうか。
実は、一度も実家に足を運ぶことなく、遺品整理業者に仕事を依頼することもできます。
遺品整理業者の多くは、遺族が遠方に住んでいる場合を考慮したサービスも行っています。そのため、立ち会えない旨を相談すれば、遺族の立ち会いなしでの作業を行ってもらえるのです。
立ち会わない場合の流れは?
遺族が立ち会わない場合の遺品整理は、どのような流れで行われるのでしょうか。
まず遺族は実家の近くで遺品整理を依頼できる業者を探します。
そして、見積もりを依頼する際に、実家の鍵を業者に郵送します。これで遺品整理業者は見積もりが可能となります。
見積もりが終われば見積書が遺族に郵送され、その内容をもとに契約を行えば遺品整理を行ってもらえます。
遺族が立ち会わない遺品整理の場合、遺品整理中の様子を写真に収めたものや遺品として出てきたもののリストなどが送られてくることが多いようです。
また、作業中も異変などがあれば電話で連絡してもらうこともできます。
ただし、これは全ての業者が行っていることではありません。遠方の遺品整理を依頼する際は、きちんとした作業を行ってくれて、かつその進捗を遺族に伝えてくれる業者を選んでください。
立ち会う場合の流れは?
遺族が立ち会うことなく遺品整理を行うこともできますが、なかには一部、遺族の立ち会いが必要となる場合もあります。
立ち会いが必要となるのは、主に作業前と作業後です。作業前に立ち会い打ち合わせを行うことで、遺族と業者間での意思の疎通を図ります。
そして、作業後に最終確認として立ち会います。
立ち会いが必要となる場合でも、2回ほどで済ませることができるので、負担は減ることでしょう。
もちろん、作業中は何か問題が発生すれば、逐一連絡をもらえるので、遠方でも安心といえます。
遺族が遠方に住む場合の遺品整理は、遺族が立ち会わないものと、一部だけ立ち会うものの2種類に分かれます。
立ち会いがなくなることで遺族負担を減らせますが、作業前などに立ち会うことにより、遺族としての意思を業者に伝えることができ、後々のトラブルを防ぐことができます。
どちらの方法で依頼をするのかは、遺族の生活環境や仕事の状況などから検討してみてください。
遠方の遺品整理で起こるトラブルとは
遠方での遺品整理を依頼する上では、当然リスクもあります。遺品整理業界には悪徳と苦行者も数多く存在するためです。
現場に立ち会えないがために、悪徳業者との間で発生するトラブルには、次のようなものがあります。
- 見積もり金額以上の請求
- 高価な遺品・貴重品の盗難
- 不適切な運搬と処分
見積もり金額以上の請求
業者に遺品整理品整理を依頼する際は、まず見積もりを取り、その金額と内容を確認して契約に至ります。ところが、見積もりの金額以上に請求をしてくる悪徳業者がいます。
その理由として「見積もりより実際の作業が増えた」と説明することも多いようですが、もし作業量が増えるようであれば、まずは依頼主に確認すべきでしょう。
しかも、遠方で立ち会えない場合は、見積もり時点・当日の作業の時点いずれも、その言い分が正しいのかどうかわかりません。
しっかりとした業者であれば、作業量が増える=見積もりよりも料金が増す可能性があれば、依頼主に確認をとるはずです。
ところが遺族に何の相談もなく請求金額が見積もりよりもはるかに高くなっている、というトラブルが多発しているので、ご注意ください。
高価な遺品・貴重品の盗難
遺品整理では、現金や宝石類などが発見される場合もあります。
通常、遺品整理業者は貴重品が発見されれば遺族に報告し、お渡しします。
しかしそのまま持ち去ってしまう悪徳業者もいるようです。当然ですが、これは盗難です。
とはいえ、現場に立ち会っていなければ、そもそも遺品の中にそのような現金や貴重品があったかどうかもわかりません。
こうしたトラブルを未然に防ぐためには、どうすればよいのでしょうか?
不適切な運搬と処分
悪徳業者のなかでも多いのが、遺品を適切では内方法で遺運搬する、あるいは適切な方法で処分していない、という事例です。
遺品の一部はごみ、あるいは不用品として処分することがあります。一般家庭から出るごみは「一般廃棄物」として処分方法が定められています。
また、その一般廃棄物を運搬するには、「一般廃棄物収集運搬業」の資格が必要です。
さらに資格を持っていない業者が、廃棄物をごみ処理場へ運ぶことができないため、不法投棄を行うことも社会問題となっています。
信頼できる遺品整理業者に依頼するためには?
遠方に住んでいるために、見積もりや作業当日に立ち会えないケースでは、どうすれば悪徳業者ではなく、信頼できる遺品整理業者に依頼することができるのでしょうか?
できれば見積もりか作業当日か、どちらかは立ち会いたいところです。どちらも無理なようであれば、依頼をして鍵などを送る前に業者に関する情報を確認してみてください。
- 料金の例
- 過去の実績
- 必要な資格
等々……インターネットで口コミ情報を調べてみるのも、ひとつの方法でしょう。
また電話で問い合わせをして、対応を確認してください。
遺品整理とは、遺族にとって大変な作業です。遺族に対して不適当な対応をする業者は信頼できません。
次に見積もりは、必ず数社から相見積もりを取り、金額と内容を比較してください。
あまりにも金額が安い業者には要注意です。ただし金額が安い理由が明確で、かつ正確であれば問題はありません。
見積もりを嫌がる、あるいは見積もりの内容を聞かれると嫌がる業者は絶対に選ばないようにしましょう。
遺品整理業者の存在によって、子どもの人数が少なくなっている現代において、遺族の負担が軽減される形で遺品整理を行うことができるようになりました。
その反面、現場が遠方であるために立ち会うことができない、ということであれば、依頼する遺品整理業者の見極めが、より重要です。