「エステートセール」という言葉を聞いたことがありますか?
エステートセールとは、人が亡くなった際に、故人の家財道具や不動産を売って現金化し、お金の精算をするために行います。
日本ではまだあまり馴染みのない言葉ですが、アメリカでは遺産整理としてポピュラーな方法です。
日本で一般的に行われている遺品整理と、どのような違いがあるのでしょうか。
目次
エステートセールとは?
では、アメリカではポピュラーだというエステートセールについて見ていきましょう。
エステートセールでは何を売るの?
エステートセールでは、相続人が使うものや残しておきたいものを除いて、故人の家財道具や不動産など一切合切が売りに出されます。
特にヴィンテージものやアンティーク家具、アートや年代物の食器などが人気を集めることが多いといいます。
エステートセールは、どこでやるの?
なんと、故人の自宅です!
家を開放して販売会場とし、誰でも入れるようにします。
お客様は家の中を見て歩き、ほしいものを購入します。
場所代もかからず、家財道具をどこかに運ぶ必要もないので、とても楽で手軽な販売方法です。
いかにもアメリカ的な、合理的な方法ですね。
しかし、個人宅で行うと、その家の立地や天候・気候によってお客様の数は大幅にダウンしてしまいます。
そのため、近年では遺品専門のオークションサイトも立ち上げられ、いつでも売り買いしやすくなっています。
エステートセールはいつやるの?
会場である家の持ち主が亡くなったあとに行うことが多いですが、存命中に行うこともあります。
老人ホームや施設に入る人が、入所前にエステートセールを行って、家財道具を減らしたり、家にあるもの全てを処分したい人がエステートセールを行うこともあります。
アメリカでは、遺産検認裁判所が、エステートセールを行うよう指示することもあるそうです。
エステートセールは個人で行うの?
個人で行うこともできますが、プロに委託する場合もあります。
エステートセールの専用サイトもあり、サイトを見れば、今どこでエステートセールが行われているかがわかります。
その上、そこで販売している商品の画像や価格をチェックできるので便利です。
ネットで目ぼしい品物があるお宅を見つけて、そこに行けばいいのです。
スマートフォンが発達している現代では、とても手軽で便利ですね。
さらに、エステートセールには専門業者も存在します。
専門業者を「エステートセラー」といいます。
エステートセラーは家財を査定して値札をつけ、広告を出します。
その上でセールの運営・管理を行い、売り上げの一部を報酬として受け取るのです。
アメリカではフランチャイズ形式でセールを行っている会社もあり、エステートセールはアメリカ人の生活にしっかり根付いています。
遺品整理とは?
続いて、日本で行われている「遺品整理」について見ていきましょう。
遺品整理では何を売るの?
日本で行う遺品整理では、必ずしも遺品を売るわけではありません。
まだ使えるけれど自分では使わないものを引き取ってもらったり、売ったりすることはありますが、基本的なところとして、遺品整理は遺品を売るために行うわけではありません。
遺品を売る場合は、貴金属やブランドもの、着物、趣味のコレクション、美術品・骨董品などが多いでしょう。
有名ブランドものやレアものでない限り、その人が直前まで使い込んでいた生活雑貨を売るようなことは、ほとんどないのではないでしょうか。
遺品を売るとしたら、どこで売るの?
日本で遺品を売る場合は、自宅を会場にすることはほぼありません。
- 遺品整理業者に買い取ってもらう
- それぞれのジャンルの専門店に査定してもらい、買い取ってもらう
- リサイクルショップで売る
- フリマアプリで売る
などの方法で売ることが多いでしょう。
遺品はいつ売るの?
故人が亡くなったあとに売ることが多いでしょう。
しかし、生前整理を行って、その時点でまだ使えるものを売ることはあります。
このあたりは、アメリカと少し似ていますね。
遺品の売却は個人で行うの?
遺品を売る場合は、個人で売ることがほとんどです。
ただ、オークションサイトなどでは、出品の代行業者がいるようです。
また、近年、日本でもエステートセールが出てきており、プロのエステートセラーが遺品を査定し、価格をつけて世界で販売するというものです。
サイトを見ると、「アート」「日本のアンティーク」「家具」「不動産」など様々なカテゴリーに分けられた遺品がアップされています。
写真とともに価格が表示されているので、気に入ったものがあれば購入することができます。
エステートセールと遺品整理の違いとは?
アメリカでは、遺品=モノ
エステートセールは、相続人が必要なもの、欲しいものをとっておくとはいえ、多くの遺品を単なる「モノ」として捉えている面が大きいようです。
もちろん、アメリカにおいても、時計や貴金属など、代々受け継いでいくようなものもあります。
しかしそれでも、モノはモノ以上でも以下でもないようです。
それは決してモノを大切にしないという意味ではありません。
なぜなら、「まだ使えるものを、誰かが使ってくれれば」ということで売却するからです。
ただ、そのモノを誰が所有するかということには、あまりこだわりがないようです。
日本では、遺品=魂のこもったもの
これに対し日本では、故人が遺した遺品を単なる「モノ」とは考えません。
日本には、古来から「モノには魂が宿る」という考え方があります。
たとえば、購入したばかりの仏壇には、魂を入れる「精入れ」をします。
また、家庭で使う道具にも魂が宿ると考え、針供養をしたり、年末には掃除道具に感謝して、紙垂をつけたりします。
また、日本では、どこにも神様がいるとされていますよね。
トイレにも神様がいるのです。
伝統的にこのような考え方があるため、遺品には、それを使っていた故人の魂がこもっていると考えるのは不思議ではありません。
そのため、遺族が、故人に近かった人に形見分けを行ったり、故人の魂を天に還すため、遺品を供養して焼却することが一般的です。
最近でこそ、「使えるものを捨ててしまうのはもったいない」と、まだ使える不用品を売る人が増えていますが、遺品を売ること、また買うことに対して抵抗感を感じる人も少なくありません。
日本とアメリカの違いは?
日本人とアメリカ人の精神的支柱は、宗教にあると言えるでしょう。
宗教物に関して見てみましょう。
日本では、仏壇や御本尊、位牌などは単なる「モノ」ではありません。
それは、ご先祖様や故人の魂が入っているものであり、モノ=神仏なのです。
そのため、仏壇を粗末に扱うことは許されません。
買い替えたり、引っ越ししたりする場合は、「精抜き」という魂を抜く儀式をしなくてはなりません。
仏壇を処分する場合も同じで、精抜きさえすれば、仏壇はただのモノに過ぎず、処分することができるのです。
対して、アメリカで広く信仰されているのはキリスト教です。
キリスト教の場合、信仰する対象は「神」であるため、ロザリオやキリスト像、マリア像は、神様を信仰するための「道具」に過ぎません。
そのため、古くなったり壊れたりしたら、ゴミとして捨てることができますし、捨てることに抵抗も感じません。
このような「モノ」に対する意識が、遺品に対する意識につながっていると言えるのではないでしょうか。
日本における遺品整理は、故人の遺した遺品を「魂のこもったもの」と考えます。
そして、遺品を処分するのか、販売するのか、形見分けするのか考え、実際に捨てたり、売ったり、形見分けしたりするところまでの行いすべてを含む概念であると言えるのではないでしょうか。
これからの遺品整理は?
日本には「ものに魂が宿る」という考え方もありますが、「もったいない」という考え方もあります。
価値があるし、まだ使えるモノならば、遺品だったかどうかは気にしないという人も増えているのではないでしょうか。
フリマアプリでも「遺品です」と明記して出品されているものがたくさんあります。
アメリカとの精神的な違いはありますが、日本の良いところは残しつつ、エステートセールの「使えるものは販売する」と、いいとこ取りをするのもいいのではないでしょうか。
まとめ
アメリカで広く行われている「エステートセール」は、故人の自宅を会場として、家の中のものも、家そのものも販売する会です。
それに対し、日本の遺品整理は、故人が遺した遺品について、どのように処遇するのか考え、実行することです。
この違いは、「モノはモノでしかない」アメリカと、「モノには魂が宿る」と考える日本の違いではないかと考えられます。
とはいえ、近年、日本でも、遺品を売る人が増えてきました。
まだ使える遺品を捨ててしまうのはもったいない。
これを必要としている人に使ってもらいたい、という人が、今後も増えていきそうです。