家族が亡くなったあとの遺品整理や、老後に向けての生前整理では、大量の「いらないモノ」が出ます。
これらの中には、まだまだ使えるモノや新しいモノなどもあるものです。
たいていの場合、もったいないなとは思いながらも、早く整理したかったり面倒だったりで、まとめて処分せざるを得ない人が多いでしょう。
大量に廃棄されてしまう遺品たち。これを生かす方法はないのでしょうか。
実は、アメリカにそのお手本があったんです。
今回は、アメリカの遺品整理「エステートセール」について見ていきましょう。
目次
エステートセールとは?
まず、エステートセールがどんなものなのか、見ていきましょう。
エステートセールとはどんなもの?
エステートセールとは、1970年頃からアメリカで一般的になった遺品整理の方法です。
「エステートセール」とは、直訳すると「不動産販売」という意味になりますが、ここで言うエステートセールとは、家財道具に始まり、趣味のもの、コレクション、美術品、自動車、不動産に至るまで、相続人が使うものや残したいものを除いたあらゆるものを売ることをいいます。
販売の際には、遺族が自分で値をつけるわけではありません。
販商品や販売に詳しいプロの「エステートセラー」という人が存在し、1つ1つのもの価値を査定し、適切な商品価格をつけて販売します。
販売の会場は、なんと故人の家です。
家や、家の中にものを置いたままで、買いたい人に家に入ってもらい、中にあるものを売っていくという形です。
アメリカでは、このように、家も、家にある家財道具や雑貨などもすべて売って現金化・お金の清算をするのが一般的なのです。
また、遺品整理のほか、売り主が存命中に、老人ホームや施設に入るための資金を作ったり、ものを整理したりするために家財を販売することがあります。
このような場合にも、個人で売らずプロに委託販売することがあり、こちらも「エステートセール」と呼ばれることがあります。
この場合も、自宅を開放して、家や家の中のものを販売します。
自宅をそのまま開放し、他人に家や家財道具を販売するというオープンさと合理性が、なんともアメリカらしいですね。
最近では、日本でも、ものを売りたい人が集まって行うフリーマーケットや、引っ越し前に家の前に不用品を置いて欲しい人に持って行ってもらうというものはありますが、家を開放しての物販はなかなかありませんよね。
「遺品を売る」ということ
もともとアメリカでは、個人がいらなくなったモノを売るということが盛んな風潮があるのだそうです。
家の前や庭で不用品を売る「ヤードセール」や、車庫に不用品を並べて売る「ガレージセール」がよく行われることもあり、「遺品」に対してマイナスのイメージや抵抗感を持つ人は少ないようです。
こうして、アメリカでは、エステートセールはライフスタイルの一部となっています。
エステートセールの専用サイトも開設されており、今どこでエステートセールが行われているか検索することができます。
さらに、そこで販売している商品の画像や価格をチェックできるようになっているのです。
さらに、エステートセールを行うための専門業者もいます。
プロのエステートセラーは、家財の中の売れそうなものを査定して値札をつけ、広告を打ちます。
さらにセールの運営管理を行い、売り上げの一部をもらうという仕事です。
大切な人を亡くして悲しんでいる遺族に代わり、エステートセールを行ってくれるプロがいるんですね。
アメリカではフランチャイズ形式を採用している会社もあり、エステートセールを依頼できる会社は現在1万5千社もあるそうです。
エステートセールで売れるものとは?
エステートセールでは、ビンテージものやアンティークものが注目を集めるようです。
アンティークの家具やアート、食器や年代物の家具など、コレクターや骨董屋さんが掘り出し物を探すために、エステートセールをこまめにチェックしているそうです。
特に、資産家の家でのエステートセールともなると、掘り出し物を求めて交通渋滞が起きるようなこともあるそうです。
「日本流エステートセール」とは?
さて、日本ではどうでしょうか。
捨てることは簡単だけど・・・
日本では「遺品」というと、どうしてもネガティブなイメージがあるかもしれません。
日本で遺品というと「形見分け」が浮かぶ人も多いでしょう。
ですが、近年は核家族化・少子化が進み、遺品の片付けまで手が回らない遺族も増えてきました。
また、身寄りのない一人暮らしの人も多くなっています。
このような状況の中、日本流のエステートセールを目指す会社も出てきています。
もしエステートセールを行いたいのであれば、こういった会社に依頼すれば、不用品の仕分けや販売をサポートしてもらえます。
エコの観点や、ものを大切にしようと言う観点から、今後、日本でも「日本流エステートセール」をする人が増えていくかもしれません。
日本では、古くから「物」と「心」が密接に結びついてきました。
ものには魂が宿ると考えられ、ものを大切にし、感謝するという文化がありますよね。
それだけに、亡くなった人が使っていた遺品というものに対して、ネガティブなイメージを感じてしまう人もいるのでしょう。
しかし、日本には「もったいない」という文化もあります。
まだ使えるものを活かし、大切に使って行こうという考えです。
これは、近年叫ばれているエコの観点からも大切なことですし、持ち主が変わっても、良いものを生かすことが美徳と考えられるようになってきています。
故人が大切にしていたものだからこそ、その価値を理解し、大切にしてくれる人に受け継いでもらえるのは良いことなのではないでしょうか。
「メイド・イン・ジャパン」は世界で人気!
日本で現在行われているエステートセールは、業者が売りたい遺品・不用品に価格をつけ、販売します。
日本の場合、個人の家で行うわけではなく、業者の倉庫に運び、サイトなどを通して商品を販売します。
また、海外に運ばれ、販売されるものもあります。
骨董品・美術品などはもちろん、洋服や雑貨なども、日本製のものは作りが良く、品質の高さで海外でも人気があるのです。
意外なところでは、仏壇なども美術品として人気が高いそう。
国内では売る先もなく、処分するしかなかった仏壇も、海外では大切にしてもらえるかもしれません。
日本における元祖エステートセラーとは?
「エステートセール」という言葉は使いませんが、実は、遺品整理業者は元祖エステートセラーと言えるかもしれません。
遺品整理業者は、遺品整理をする際に、まだ使えるもの・売れるものを引き取り、それを必要とする人に販売しています。
自社で販売するか、提携のショップなどで売るかはそれぞれですが、まだ使えるものを生かそうという精神は、アメリカのエステートセールと同じなのではないでしょうか。
遺品整理で困ったら、相談してみましょう。
自分で行うエステートセールとは?
近年「生前整理」が広く認知されてきています。
遺品整理で遺族に労力をかけるより、元気なうちに身の回りをスッキリさせて、快適な老後を過ごそうというものです。
そこで出たまだ使える不用品を売るのも「自分で行うエステートセール」と言えるでしょう。
リサイクルショップを利用したり、各ジャンルの専門店で査定・販売したりということはもう珍しくありません。
また、ネットオークションやフリマアプリで売却するのも良いでしょう。
最近は、40代〜60代以上の利用者も増えており、商品タイトルに「生前整理」「遺品整理」という言葉が入っているものも少なくありません。
フリマアプリの使い方講座を受講する高齢者も多いようです。
片付けを急がない生前整理であれば、オークションやフリマアプリで不用品を売るのも良いでしょう。
アメリカのように、自宅や庭を開放しなくても、不用品を売ることはできます。
部屋が片付く上に、お小遣いが入り、ものを使ってもらえるので、まさに一石三鳥。
梱包や発送の手間はかかりますが、のんびり楽しみながら売ってみるのも良いのではないでしょうか。
まとめ
エステートセールとは、アメリカでは一般的に行われている生前整理・遺品整理のための物品販売です。
日本で遺品というと、しみじみとした形見分けなどのイメージがありますね。
しかし、核家族化や少子化が進み、遺品の片付けにまで手が回らないという家庭が増えている中、日本でもエステートセールのような遺品整理のしかたが定着していくのかもしれません。
どのような方法であれ、気持ちよく片付けることができたらいいですね。