本格的に暖かくなる3月。春のお彼岸ももうすぐですね。
「彼岸」はよく聞く言葉ですが、「初彼岸」という言葉は聞いたことがありますか?
初彼岸とは何なのでしょうか。また、どのような準備をすればよいのでしょうか。
今回は、初彼岸や、その準備などについて見ていきましょう。
目次
お彼岸とは?
お彼岸の由来は?
彼岸とは、日本の雑節の一つです。
雑節とは、節分、彼岸、社日、八十八夜、入梅、半夏生、土用、二百十日、二百二十日の9つで、季節の移り変わりを表した暦日のこと。
お彼岸は、古くは「日本後紀」にも記されており、日本で約1200年以上続いてきた伝統ある行事です。
仏教では、阿弥陀如来が治める極楽浄土は西の方角にあるとされています。
太陽が真東から昇り真西へと沈む春分と秋分は、「あの世」への門が開くといわれ、この世(此岸)とあの世(彼岸)がもっとも通じやすい日と考えられています。
そこから、お彼岸は死者を偲ぶ日、来世を偲ぶ日としても捉えられるようになりました。
ですが、お彼岸の行事は日本独自のもので、インドや中国の仏教にはありません。
そのため、民俗学では、日本のお彼岸は、日本古来の土俗的な太陽信仰や祖霊信仰と仏教用語の彼岸が結びつき、先祖供養の行事として日本人の生活に根付いたと考えられています。
お彼岸の時期は?
「暑さ寒さも彼岸まで」といい、残暑や残寒はお彼岸を過ぎるとやわらぐといわれていますね。
9つの雑節の中で、お彼岸だけは1年に2回あります。
春は春分、秋は秋分を中日とした前後各3日を合わせた各7日間がお彼岸の期間です。
最初の日を「彼岸の入り」、最後の日を「彼岸明け」と呼びます。
中日はご先祖さまに感謝する日、残りの6日は、悟りの境地に達するために必要な6つの徳目「六波羅蜜」を1日に1つずつ修める日とされています。
初彼岸とは?
では「初彼岸」とは何なのでしょうか。
初彼岸とはいつ?
お彼岸の中でも、故人が亡くなって四十九日がすぎたあと初めて迎えるお彼岸を「初彼岸」といいます。
仏教では、人が亡くなると7日ごとにその人が極楽浄土に行けるかどうかの裁判が7回行われるといわれています。
四十九日はその最後の裁判の日であり、故人があの世、つまり彼岸に旅立つ大きな節目なのです。
そのため、故人があちらの世界の人になったあとすぐのお彼岸を「初彼岸」といいます。
たとえば、故人が4月に亡くなったとすると、初彼岸はその年の秋のお彼岸となります。
11月に亡くなった場合であれば、翌年の春が初彼岸ということになります。
亡くなってからの日数を確認しておきましょう。
「初彼岸」と「初盆」の違いとは?
仏教の行事には「初盆」というものがあり、初彼岸と混同しやすいようです。
初盆とは、故人が亡くなって四十九日を過ぎたあとに、初めて迎えるお盆のことです。
地方によっては新盆(にいぼん・しんぼん)というところもあるようです。
お彼岸は、あの世の人となった故人やご先祖さまに感謝し供養する行事、お盆は、1年に1回、故人やご先祖さまがあの世から帰ってくる行事、という違いがあります。
初彼岸では特に大きな法要や行事がないのに比べ、初盆は、故人が亡くなってから初めて家に帰ってくる機会なので、通常のお盆よりも念入りに供養が行われます。
精霊棚やお供えもの、お花、盆提灯などを用意するのはもちろん、親戚や故人が生前に親しくしていた人を招いて、きちんとした法要を行うことも多いようです。
初彼岸で行うべきことは?
初彼岸は、初めてであっても通常のお彼岸と基本的に違いはありません。
お彼岸用のお供えものをする
お彼岸には、季節にちなんだお供えをあげるという風習があります。
春のお彼岸には、春の季節の花である牡丹になぞらえて「ぼたもち」、秋のお彼岸には秋の季節の花である萩の花になぞらえて「おはぎ」をお供えします。
これは初彼岸に限ったことではなく、お彼岸の際にはこのようなお供えものが行われています。
お墓まいりをする
初彼岸に限りませんが、お彼岸にはお仏壇の前で手を合わせ、また、お墓まいりをして故人やご先祖さまに感謝し、供養しましょう。
お彼岸のお墓参りは「中日」と呼ばれる春分の日、秋分の日に行くのが一般的です。
お墓参りの際は、手を合わせるだけでなく、墓石やお墓の掃除も行いましょう。
線香、ろうそく、マッチ、花、お供えもののほか、水桶やひしゃく、掃除道具などを持参します。
墓石やその周りをきれいに掃除して、お花、お酒やお菓子などを供え、心静かに手を合わせます。
初彼岸の場合、通常のお彼岸よりお供えを豪華にすることもあります。故人の好きだったものを並べるのもよいでしょう。
また、お仏壇や仏具の掃除もするとよいでしょう。
彼岸会に参加する
「彼岸会」とは、日本で独自に発展した仏教行事です。
故人への追善・供養を主体とした仏教行事の一つで、春分、秋分の前後1週間に行割れる法会のことです。
お寺によっては一般人向けに行われる数時間ほどの法要もあります。
もし、特定のお寺の檀家となっていたら、この彼岸会に参加してみるのもよいでしょう。
初彼岸では法要を行うべき?
一般的にお彼岸には、特に大きな法要を営むことはありません。
とはいえ、故人が亡くなって初めて迎えるお彼岸。法要を行うべきなのでしょうか。
初彼岸での法要は?
もちろん、お彼岸に法要を営んではいけないということはなく、その気持ちがあれば行うのは構いません。
お墓参りだけではなく、しっかりと供養をしたいのであれば、法要を行うとよいでしょう。
法要は、檀家となっているお寺で行うか、僧侶を自宅に招いて読経を読んでもらうのが一般的です。
どのような法要を行うかは地域によっても違いがありますので、事前にお寺に相談し、準備しておきましょう。
法要の際の服装は?
法要を行うことが決まったら、どのような服装で参列すればよいのでしょうか。
一般的には普通の服装でOKです。
といっても、華美な服装は避けた方が望ましいでしょう。
男性は地味な色のシャツにズボン、女性は地味な色のブラウスとスカートやズボン、またはワンピースなどを選びましょう。
男女とも、襟のついた落ち着いたデザインの服を選びましょう。
法要の場合、施主側は参列者よりも格式の低い服装で参加することはマナー違反とされており、参列者は一般的には施主に合わせた服装で参加します。
故人の家族・親族が正式な喪服を着用する場合は、参列者は1つ格下の準喪服を着用しましょう。
お客様を招いて法要を執り行う場合は、招待状などで服装についても触れておきます。
お香典の相場は?
初彼岸で法要を行う場合、参列者はお香典を包みます。
どのくらいの金額を包むかは、故人との血縁関係の有無によって違ってきます。
故人と血縁関係にある人の場合、1万円~3万円程度を包むのが相場とされています。
血縁関係が近くなるにつれ金額が高くなる傾向があります。
血縁関係がない人の場合は、5000円~1万円ほどが相場とされており、生前の故人との関係性によって金額は変わります。
たとえば、生前、故人にお世話になったような人なら、金額は多めに包むとよいでしょう。
お供えものに適切なのは?
お彼岸には、故人への贈り物としてお供えものを持参します。
特に何をお供えするべきという決まりはありませんが、故人が生前好きだったものや、日持ちするものなどご家族に配慮したもの選びましょう。
お彼岸は一週間と期間が長いので、果物などの生ものや傷みやすいものは好ましくありません。
お供えものの相場は、地域によっても変わりますが、3000円~5000円程度の品物が相場とされています。
あまりにも高額なお供えものは、招いた側に気を遣わせてしまうことになるので注意しましょう。
初彼岸に訪問する際の注意点とは?
お彼岸には法要を行わないのが一般的ですが、初めてのお彼岸ということで、個人のために何かしたいという場合は、どのようにすればよいのでしょうか。
故人のお宅にお参りしたい場合は、相手の都合を確認し、前もって訪問の約束をしておきます。
訪問の際は、お香典かお供えもののどちらかをお供えしましょう。
ただし、地域によってはどちらも持って行くというところもあるので、こちらも確認しておきましょう。
お香典やお供えものの相場は3000円~5000円ほどですが、法要の場合と同様、故人との関係性を考慮しましょう。
お供えものにつけるのしは、黒白または双銀の結び切りを使いましょう。
表書きに「御供」、下に自分の名前を書きます。
お香典の場合は、黒白または双銀の結び切りの不祝儀袋に「御仏前」か「御香典」、下に自分の名前を書きます。
この時気をつけたいのは、「御霊前」と書かないこと。
「御霊前」はよく聞く言葉ですが、これは四十九日が過ぎていない場合に使う表書きですので、お彼岸には使えません。
まとめ
特に近年では、初彼岸で特別な法要などは一般的には行わないというケースが増えています。
そのため、家族でお墓参りに行ったり、お仏壇にお供えものをするなど、通常のお彼岸と同じような供養をしましょう。
しかし、地域によっては法要をするところもあったり、細かい慣習などが異なる場合もあります。
事前に確認しておくとよいでしょう。