昔はどこの家にも「仏間」があり、仏壇が置かれていました。
幼い頃、仏壇の前で手を合わせた思い出がある人も多いことでしょう。
合掌はその人の心を清浄なものにする行為。
色々な動きをする両手ですが、それを合わせることで人間が行う行為を投げ打ち、神仏にすべてをお任せするという無我の心を現わす行為だそうです。
そして、仏壇に向かって手を合わせるのは、ご先祖さまに帰依するという気持ちを表し、全てのものに対して感謝の意を表すことになるのです。
ひとときでも、手を合わせて心を無にするのも貴重な時間かもしれません。
でも、現代では生活様式も洋風になり、マンションやアパートに住む人が増えています。
和室のないマンションやアパートでは、どこに仏壇を置けばいいのでしょうか。
今回は、マンションやアパートなど手狭な場所で仏壇を置く方法や、置き場所の選び方のポイントについて見ていきましょう。
目次
仏壇の正しい置き方とは?〜どこに置く?
かつては、ほとんどの家に仏間がありました。
しかし、近年、家族の形態や住宅事情の変化により、仏間のない家がほとんどです。
マンションやアパートでは和室のない家も多く、部屋数や広さも限られているでしょう。
仏壇を置くには、まず場所を考えなければなりません。
最初に、仏壇の正しい置き方について知っておきましょう。
人が集まりやすい場所
仏壇を購入する前に、まず仏壇を安置する場所を決めましょう。
家の中で、落ち着いて手を合わせることができ、家族が毎日おまいりしやすい場所はどこでしょうか。
家族が集まりやすいリビングなど、手を合わせやすい場所を選びましょう。
コンディションを保てる場所
仏壇は繊細なものなので、湿気が多かったり直射日光が当たったりすると、カビが生えたり変色してしまったりすることがあります。
そのため、仏壇のコンディションを保つには、直射日光が当たらない、湿気の少ないところが向いています。
押入れの上部やタンスの上、キャビネットや収納棚などの上に置いても大丈夫ですが、冷暖房の風が直接当たらない位置にしましょう。
ただ、テレビやオーディオラックの上など、音がするものの上に置くのはNGです。
仏壇を見下ろさない場所
さらに気をつけたいのは、仏壇の高さです。
ご本尊を見下ろすような高さにならないよう注意が必要です。
座っておまいりする場合は、ご本尊の位置が目より少し上になるように安置しましょう。
立っておまいりする場合は、ご本尊が胸よりも少し上くらいの位置になるようにします。
仏壇の正しい置き方〜どちらに向ける?
仏壇は、どちらの方角に向けて置くべきなのでしょうか。
一般的に、北向きは避けるなど、昔から仏壇の向きには諸説あります。
また、仏壇の向きや仏具の飾り方は、宗派によっても違いがあります。
南面北座説(曹洞宗・臨済宗)
南向きに仏壇を置くという説です。
北を背にして仏壇を安置すると、仏壇に直射日光が当たらず風通しもよいので、仏壇の傷みが少ないと言われています。
ここから北向きは避けると言われるようになったようです。
西方浄土説(浄土真宗・浄土宗・天台宗)
「西方浄土」とは極楽浄土のこと。
極楽浄土は西にあるとされるので、そちらに向かって拝めるよう、仏壇を東向きに安置します。
浄土真宗の場合は、西向きでもOKです。
本山中心説(真言宗)
仏壇の前に座ったとき、その宗派の総本山がある方向に向かって拝む形にするという説です。
つまり、総本山に背を向けて安置します。
この場合、仏壇を置く方角は、本山や住む場所によって異なります。
どの説をとるかで仏壇を置く方角が決まりますが、住宅事情もあるため、あまりとらわれ過ぎる必要はありません。
仏さまはどの方角にもいらっしゃるので、本当は仏壇はどの方角に安置してもOKです。
家の中で置きやすく、拝みやすい場所を選びましょう。
迷った時は、檀家になっているお寺や、仏壇店に相談するとよいでしょう。
仏壇の正しい置き方とは?〜どんなサイズにする?
仏壇の安置場所が決まったら、次にどのくらいのサイズの仏壇にするかを考えましょう。
仏壇の寸法は多種多様で定まった規格はありません。
そのため、仏壇を置く場所に合わせた寸法をよく考える必要があります。
まず、安置する場所の寸法を測ります。
高さ・幅・奥行きなどを正確に測りましょう。
このとき気をつけたいのは、仏壇の扉の分の空間です。
仏壇の扉は、扉が観音開きに一度だけ開く「前開き」と、扉が二重になっており、一度開いた後でさらに扉を左右に広げられる「三方開き」の2種類があります。
仏壇が収まっても、扉を開く余裕がない! などということにならないよう気をつけましょう。
三方開きの仏壇は大型のものが多いため、マンションに置くのには適していません。
家の新築と同時に仏壇を購入する場合は、先に仏壇を決めてから、仏壇の大きさに合った仏間やスペースを作るのがおすすめです。
また、マンションの玄関や部屋の入り口の大きさもお忘れなく。
せっかく気に入った仏壇を選んだのに、部屋の入り口が狭くて入らなかった・・・という話はありがちです。
部屋だけでなく、玄関や部屋の入り口の寸法も必ず測っておきましょう。
仏壇を選ぼう!
では、いよいよ仏壇を選びましょう。
最近では、従来の仏壇に加え、現代の住まいに適したデザインやサイズの仏壇が多く販売されています。
床置きタイプ
部屋の床に置けるタイプの仏壇で、インテリアやスペースに合わせて選択することができます。
従来のタイプのほか、脚のついたものや、収納棚のようなデザインなど、扉を閉めると、これが仏壇なの!? と驚くようなものも。
線香やろうそくを収納するスペースがあり、経机や椅子付きのものなど機能性にも優れています。
床に座って手を合わせるスタイルに適している、高さの低いものもあります。
台に置くタイプ
キャビネットやTVボードなどの家具や和室の地袋に置くタイプです。
色や素材によって手持ちの家具に合わせたり、逆に仏壇の存在感を出したりすることができます。
幅が30cmほどのものなど、ちょっとしたスペースに置くこともできます。
壁掛けタイプ
近年では、絵画のように壁に掛けるタイプの仏壇も販売されています。
置き場所を取らずスッキリとご先祖さまを供養できます。
扉のあるデザインのほか、扉がなく、段に位牌や線香などを見せるインテリアのように置くものなど、おしゃれなものが増えているので、選ぶのも楽しそうですね。
壁に設置した取付け板に仏壇を固定するので、自由な高さに掛けられるのも便利です。
ミニ仏壇
その名の通り、非常に小さなサイズの仏壇です。
いわゆる仏壇らしいデザインだけでなく、祭壇のようなデザインのもの、花や線香を置けるフォトフレームタイプ、一見アクセサリー用トレイのような仏壇に見えないデザインなど、さまざまなものが販売されています。
幅20cmくらいのサイズのものや、A4 ほどのサイズのものなど、大きさもさまざまなので、安置場所の選択肢も広がります。
仏壇を置く際の注意点とは?
では、実際に仏壇を置く際に注意したいことを押さえておきましょう。
開眼供養・閉眼供養
「開眼供養」とは「魂入れ」などともいい、お墓や仏壇を新しく購入した時に行う法要です。
開眼供養をおこなうことでただのモノである墓石や仏壇に、ご先祖さまの魂を宿すことになります。
逆に、仏壇を処分する際には「閉眼供養」を行い、ご先祖さまの魂を抜き取ります。
引っ越しで仏壇を移す場合は、まず閉眼供養を行ってから移動し、新しい場所に安置してから開眼供養を行います。
神棚との兼ね合いは?
「神棚と仏壇は同じ部屋に置くべきでない」と言われることもあるようですが、現代では気にしなくてよいという風潮が高まっています。
宗派や檀那寺などの考え方にもよりますが、仏壇と神棚を同じ部屋に置くことはあまり気にしなくてもよいようです。
ただし、仏壇と神棚を向かい合わせに置くのは避けましょう。
向かい合って設置すると、一方を拝む時にもう一方にお尻を向けることになってしまいます。
また、神棚の真下に仏壇を置くのは、家の中に争いが生じ、和が乱れるとされており、良くありません。
神棚の真横に並べて仏壇を置くのはOKです。
ただし、神棚の方が上位となるので、神棚を主体にして仏壇の配置を決めるようにしましょう。
床の間に注意
床の間は、部屋のなかでも神聖な上座とされています。
そのため、床の間に向けて仏壇を置くと、仏壇が下座となってしまうため、仏さまやご先祖さまに失礼にあたるので避けましょう。
ただし、床の間にお仏壇を置くことはよいとされています。
まとめ
仏壇がある家は、年々少なくなっているようです。
しかし、仏壇に向かって手を合わせて心を落ち着けたり、ご先祖さまを大切に思う気持ちを養うのは大切なことです。
仏壇は必ずしも必要なものではありません。
でも、仏壇は心のよりどころになってくれる存在です。
手狭なマンションやアパートでも、ライフスタイルに合った仏壇を選び、家族や祖先への感謝の気持ちを持ち続けられたらいいですね。