故人との最後のお別れが、出棺です。
出棺の前には、お棺に花を入れますが、故人が好きだったものや、愛用品なども一緒に棺の中に入れることがあります。これを「副葬品」といいます。
自分の時は、これを入れてほしい、というものがある人もいるかもしれませんね。
ですが、実は、お棺の中に入れていいものと、入れてはいけないものがあるのです。今回は、副葬品について見ていきましょう。
目次
副葬品とは?
葬儀に際し、遺体とともに埋葬される器物を「副葬品」といいます。
副葬品には、亡くなった方を弔う意味と、亡くなった方が死後の世界で生活するために必要なもの、という2つの意味があります。
副葬品文化は、有史以前から行われていました。これは、人間が、死というものに対し、単なる現象ではなく特別な意味があるものと捉えるようになったために行われるようになったと考えられています。
最も原初的な副葬品は、生活に必要な食品や、故人が生前に使用していた道具、霊を慰めるための草花などで、故人自身や埋葬した人々にとって身近な品が納められました。
発掘された昔の墳墓などの埋葬跡からは、当時の人々の生活をしのばせるさまざまな品が出土しています。
たとえば、福岡県福岡市の吉武高木遺跡の「特定集団墓」は、当時の有力者たちのお墓と考えられており、青銅製の剣や矛などの武器、翡翠やガラスの玉など装身具、鏡などが見つかりました。
また、エジプトのピラミッドで見つかった、古代のファラオたちの豪華な副葬品、中国・秦の始皇帝を死後も守るために埋められた膨大な数の兵馬俑など、副葬品の埋葬は世界中で行われていました。
現代において、火葬が行われるようになってからは、副葬品は棺桶に納められて遺体と一緒に燃やされる場合や、火葬後、納骨の際に遺骨と共に埋葬される場合などがあります。
「こんなものを入れました」副葬品エピソード
現代では、どんなものが副葬品としてお棺に入れられているのでしょうか。様々なエピソードを見てみましょう。
Aさんの場合:うどん
子供の頃からAさんを可愛がってくれた叔父さんの大好物は、うどん。常に買い置きがあり、「うどん食わないか」と、しょっちゅう誘ってくれたそうです。叔父さんがダシから作ってくれるうどんは、本当においしく、Aさんと叔父さんの大切な思い出の味でした。
ですから、叔父さんが亡くなったとき、Aさんは、うどんの生麺をお棺に入れたそうです。「叔父さん、あっちでも、おいしいうどんを食べてくれよ」と。
Bさんの場合:カツラ
Bさんのお父さんは、髪が薄く、カツラをかぶっていました。でも、もちろんこのことは内緒。家族以外の人は知りません。
ちょっとイケメンのお父さん。生前、よく「俺が死んだら、ちゃんとカツラをかぶせておいてくれよ!」と笑っていたものです。
亡くなった時、お父さんの希望通り、カツラをかぶせたまま出棺したそうです。
Dさんの場合:香り袋
手先が器用で、手芸の得意なDさん。知人などが亡くなったとき、手作りの香り袋をお棺に入れることにしているそうです。
最後の時、良い香りに包まれて、あちらに行くことができるようにという願いを込めてのこと。一緒に入れられるお花とともに、故人は気持ちよく旅立っていることでしょう。
※火葬場によって、入れられないものもあります。副葬品を入れる際は、事前に確認しておきましょう。
お棺に入れてはいけないものとは?
故人の好きだったもの、大切にしていたものを入れてあげたいものですが、何でも入れられるわけではありません。中には、葬儀社などから止められてしまうものがあるのです。それは一体、何なのでしょうか。
入れてはいけない、と止められてしまう理由には、以下の4つがあります。
- 火葬炉など、設備の故障につながる恐れがある
- 環境汚染につながる恐れがある
- 不完全燃焼の原因になる恐れがある
- 遺骨損傷の原因となる恐れがある
具体的に「これはNG!」というものは各火葬場によって異なりますが、一般的に、ガラス製品、金属製品、プラスチック製品、紙製品などは止められることが多いようです。
火葬炉など、設備の故障につながる恐れがあるもの
下記のようなカーボン製品を火葬すると、火葬炉設備が緊急停止し火葬が中断してしまいます。また、同時間帯の他の火葬も停止する重大な事故につながるので、お棺に入れてはいけません。
- 杖
- 釣り竿
- ゴルフクラブ
- ラケット
- 竹刀
- 義肢装具 など
環境汚染につながる恐れがあるもの
下記のような石油化学製品は、燃やすことによってCO2、ダイオキシン、煙や煤煙、臭気などを発生するためNGです。
- ビニール製品・・・ハンドバック・靴・玩具 など
- 化学合成繊維製品・・・衣類・寝具・敷物 など
- 発砲スチロール製品・・・枕・緩衝材パッキン など
- CD・ゴルフボールなど
エピソードの項目に出てきたカツラは、以前は質が悪く、燃やせないものもあったようですが、最近では品質が上がり、燃やせるケースが増えているようです。
不完全燃焼の原因になる恐れがあるもの
下記のような可燃物であっても、燃焼の妨げになるものはNGです。
- 果物・・・スイカ・メロンなど大きなもの
- 書籍・・・辞書・アルバムなど厚みのある書籍類
- 大型の繊維製品・・・大量の衣類、大きなぬいぐるみ など
食べ物を入れたい人は多いようですが、果物は大きく、水分も多いので、燃焼の妨げになります。どうしても入れたい場合は、小さく切って少しだけ入れるなど工夫しましょう。
書籍がNGなのは少し意外ですね。しかし、分厚い本は燃えにくく、ほとんどそのまままの状態で残ってしまいます。つまり、灰が残るのです。
火葬後、家族で収骨をしますが、その際、残った灰をかき分けて遺骨を拾わなくてはならないため、あまり多く灰が残るのは望ましくありません。特に再生紙は、燃えてもそのまま残ることが多いようです。また、折り鶴なども大量に残っていることがあるので、注意が必要です。
どうしても入れたい場合は、本の何ページかを切り取って入れたり、折り鶴なども何羽かだけにするなど、量を抑えるようにしましょう。
遺骨損傷の原因となる恐れがあるもの
- 金属製品・・・携帯電話類・携帯音楽プレイヤー・仏像・硬貨 など
- ガラス製品・・・酒瓶・鏡・食器類、腕時計、アクセサリー など
- 爆発物・・・缶飲料・化粧品スプレー・ライター・電池類 など
三途の川の渡し賃という意味なのか、お棺に硬貨が入れられることはよくあるようです。しかし、これは土葬だった時代の風習です。硬貨は燃えずにそのまま残ってしまうので、入れないようにしましょう。
また、紙幣を燃やすことは法律で禁じられています。紙幣を火葬すると法律違反になってしまうので、入れてはいけません。
どうしてもお金を入れたい場合は、収骨のあと、骨壷に入れるようにするとよいでしょう。
よく入れられるものとして、メガネがありますが、これも要注意です。日本人にはメガネをかけている人が多く、向こうでもよく見えるようにと、お棺にメガネを入れたいという家族は多いようです。
しかし、メガネを火葬炉に入れると、高熱によってレンズが融けてしまいます。すると、溶けたレンズが、炉の台や遺骨に付着し、遺骨を汚すことになってしまうのです。
火葬炉によってはNGではないところもあるようですが、綺麗に遺骨を残すため、ガラス製品は入れないようにしましょう。
また、故人の体の中にペースメーカーなどの医療品が入っていると、火葬炉の熱で爆発してしまうことがあります。事前に葬儀社や火葬場の担当者に忘れず伝えておきましょう。
副葬品に関する詳細は、火葬場のホームページなどにも掲載されていますので、確認しておくとよいでしょう。
お棺に入れるとよいものとは?
副葬品として、入れるとよいものもあります。
それは、あとで処分や管理に困るものや、処分の際に供養が必要となるものなどです。
故人が趣味で集めていたコレクションの一部や、小さなぬいぐるみ、人形、写経本など。
また、故人の手作りの品や思い出の品で、残しておくことが辛いものなどはありますか? もし、燃える素材のものであれば、棺に入れて一緒に火葬するとよいでしょう。
ただし、燃え残らない大きさ・量であるかどうか、必ず葬儀社や火葬場に相談しましょう。
また、なかなか思いつかないのが、故人への手紙です。
葬儀の準備などで忙しい中、手紙を書くのは大変ですが、筆をとることで自分の気持ちを落ち着かせることができます。
また、火葬すれば手紙は燃えてしまうので、照れずに素直な思いを綴ることができます。照れくさくて直接は伝えられなかったようなこと、お別れに際して、故人に対する感謝の気持ちを一緒に持って行ってもらえば、故人もきっと喜ぶことでしょう。
大切な故人とのお別れ。遺骨をきれいに残し、スッキリと旅立ってもらうためにも、ルールを守り、見送ってあげたいですね。