売ると税金がかかる?課税対象となる遺品について

売ると税金がかかる?課税対象となる遺品について

人が亡くなると、さまざまなものが遺されます。
不用品も出ますが、中には骨董品やコレクション、趣味の道具など、市場価値の高いものが出てくることがあります。
最近は、インターネットでの査定やオークション、フリマアプリなどで、手軽にものを売却することができるようになりました。
そこで、遺品整理の際に出たものや、譲られたものを売却しようと考える人は多いのではないでしょうか。
自分にとっていらないものが売れるなら、うれしいですよね。
でも、ちょっと待ってください。遺品を売却すると税金がかかる場合があるのです。
今回は、遺品の売却について、注意すべきポイントを見ていきましょう。

遺品を売却したら、税金がかかる?

遺品とは、故人が残した品物のことをいいます。
衣服や日用品、電化製品、書籍や家具、貴重品、アクセサリー、趣味の道具など、故人が所有していたもの全てをさします。

たとえば、お母さまが亡くなったとします。
相続人の間で分割協議を行い、娘さんがお母さまの高級な貴金属をもらったとしましょう。
娘さんが、この貴金属をそのまま自分で使うのであれば、遺産相続の際に相続税を支払っているため、特に問題はありません。
しかし、もらった遺品を売却してお金を得ると、「譲渡所得」として税金がかかることになります。

譲渡所得税は、遺品に限らず、自分の持っている物を売った利益が30万円を超える場合にかかる税金です。

たとえば、お父さまの残した高級車を息子さんが相続したとします。
この車を、名義を変更せずお父さまの名義のままで売って、利益が基本控除額と相続人控除の範囲内に収まれば課税されません。
しかし、名義を変えて売却すると、息子さんの持ち物を売ったということになるため、課税対象となります。

譲渡所得とは?

子供に譲渡所得を譲る

繰り返しになりますが、資産を譲渡した時に得た収入のことを「譲渡所得」といいます。
譲渡とは、特定の財産や権利を、有償・無償に関わらず、他人に譲り渡すことです。
たとえば、親御さんから引き継いだもの、名義を自分に変更したものを他人にあげたり、売却したりすることを「譲渡」といい、それによって得た利益が「譲渡所得」です。

譲渡所得にかかる税金とは?

一般的に、得られた利益には税金が課されます。
そのため、譲渡によって得た利益にも税金がかかることになり、確定申告が必要になります。

ただし、すべてのケースに課税や確定申告が必要となるわけではありません。
確定申告が必要となるかどうかは、利益の金額と譲渡した資産によって決まります。

たとえば、親御さんの死後、肩身として譲り受けた時計を、買取専門業者に200万円で買い取ってもらったとします。
もしも、この時計を購入した際の価格が300万円だったとすると、

200万円(買取価格)−300万円(購入価格)=−100万円

となり、譲渡による利益は出ません。
そのため、課税の対象外となり、確定申告をする必要はありません。

ところが、もしも400万円で買い取ってもらえた場合や、購入した価格が100万円だった場合には、

400万円(買取価格)−200万円(購入価格)=200万円(利益)
200万円(買取価格)−100万円(購入価格)=100万円(利益)

と、それぞれ利益が出ます。
そのため、この譲渡所得には税金がかかることになります。

税金がかかるもの、かからないもの

税金がかかるものとかからないもの

税金がかかる譲渡所得〜その①

遺品の中には、貴金属や宝飾品、骨とう品や美術品などがあることも珍しくありません。
素人目にはそれほど価値がないように見えるものでも、専門家に査定を依頼すると、驚くほどの高値がつくこともあります。

一般的に、高級車、高級腕時計、宝石・宝飾品、骨董品、美術品などの、いわゆる“ぜいたく品”を売却すると、「課税される譲渡所得」となるケースが多いようです。
これらのものを売却する場合、1つまたは1組につき売却益が30万円を超えると、「課税される譲渡所得」となります。

税金がかかる譲渡所得〜その②

ゴールドは世界共通の資産であることから、純金や金貨などは、為替や相場の影響を受けることはあっても、時間が経っても価値が下がったり価値がなくなってしまったりすることはありません。
一口に「金」と言っても、その形状はさまざまで、ゴールドバー(金地金)、金貨、宝飾品、金が多く使われている仏像などがあります。
また、相続税がかからない仏壇仏具など、相続税の非課税財産であっても、必要以上に華美な装飾をしていれば価値のある美術品と見なされ、相続税の課税対象と判断されます。
金に関しても、売却益が1年間で50万円以上になると、所得税の課税対象になり、確定申告が必要となります。

税金がかからない譲渡所得

衣類や家具、家電、日用雑貨など、毎日の生活に必要なものは「生活用動産」と呼ばれます。
これら生活用動産は、売却しても、その譲渡所得は課税されません。
ただし、たとえ生活に必要なものであっても、一般的な生活用動産の範疇を超えた高価なものは、譲渡所得が課税対象になるケースもあるので注意が必要です。
安い家具であれば対象にはなりませんが、高価なブランド家具の場合、もし高額で売却できれば、そこに税金がかかる可能性は高いと考えられます。
心配であるのなら税務署や税理士に相談してみましょう。

このほか

  • 強制換価手続きにより資産が競売などをされたことによる所得
  • 国または地方公共団体に対して財産を寄附した場合
  • 公益事業を行う法人に対する財産の寄附で国税庁長官の承認を受けた場合の所得
  • 国などに対して重要文化財等を譲渡した場合の所得
  • 財産を相続税の物納に充てた場合の所得
  • 債務処理計画に基づき資産を贈与した場合の所得

などには税金がかかりません。

譲渡所得税の計算方法は?

前出の時計の例で考えてみましょう。

400万円(買取価格)−200万円(購入価格)=200万円(利益)

利益の200万円は基準である30万円を超えているので、「課税される譲渡所得」にあたります。

ですが、実際には、この200万円すべてに対して課税されるわけではありません。
売却額の200万円から、手数料や印紙代などの売却費用を差し引きます。
ここから、さらに特別控除として定められている額50万円を差し引き、残った額が課税対象となるのです。
売却費用を仮に10万円とすると、

400万円(買取価格)−200万円(購入価格)−10万円(売却費用)−50万円(特別控除)=140万円

つまり、140万円が課税対象となるわけです。

また、もしこの時計を引き継いだ人が、5年を超えて所有していた場合、この残った額をさらに半分にすることができるため、税負担も軽減される可能性があります。

遺品を売却する場合に注意すべきポイントは?

遺品に掛かる税金の注意喚起

では、遺品を売却する際に、気をつけるべきポイントを見ておきましょう。

確定申告を忘れずに行う

遺品を売却した利益が課税対象となったら、確定申告を行いましょう。
確定申告をせずに放っておくと、脱税とみなされてしまいます。

相続放棄をする場合は遺品を売却しない

相続放棄をした人、もしくは相続放棄を考えている人は、遺品を売却してはいけません。
遺産に対して相続放棄するということは、遺産を処分する権利がないということです。
にも関わらず遺品を売却すると、相続する意思があるとみなされ、相続の放棄ができなくなる可能性があ理ます。
もし仮に、被相続人が大きな借金を背負っていたような場合、大変なことになるかもしれません。
数万の利益を得るために、被相続人の残した借金を背負うようなことにもなりかねないのです。
相続放棄したい場合には、勝手に財産を処分しないようにしましょう。

遺品売却のタイミングは?

特に借金などマイナスの遺産がなく、相続放棄の必要がない場合、ほとんどの人は相続を希望するのではないでしょうか。
ですが、相続人は自分一人とは限りません。
相続人が複数いる場合、売る前に必ず良く話し合いましょう。
先走って勝手に遺品を売却するとトラブルのもとになりかねません。
そのまま引き継いで、個々の判断で売却するか、また、現金化できる遺品はあらかじめ現金にしてから相続手続きを行うという方法か、あとから揉めることのないよう、事前によく話し合っておくことが大切です。

まとめ

遺品の処分方法としてのフリーマーケット利用

遺品の中には、骨董品や美術品など市場価値のある資産が可能性があります。
それらを売却した場合、金額によっては譲渡所得税がかかってしまう場合もあります。
もし遺品整理に関する税金面で気になることがあったら、税理士など専門家に相談してみるとよいでしょう。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。