近年、インターネットでの株取引ができるようになったり、資産運用の意識が広まり、資産として株式(有価証券)を持つ人が増えています。
親御さんが亡くなると、遺産相続が発生しますが、もしかしたら、遺産の中に株式があるかもしれません。
株式は、評価額が日々変動し、現金や預貯金のように単純に分けることができません。
そこで、株式は、どのように分割すればよいのでしょうか?
相続の流れや、相続における注意点をご紹介します。
目次
株式を相続する流れは?
遺言書の有無と、その内容を確認する
故人が遺言書を残していた場合は、基本的に、遺言書で指定されたとおりに相続が行われます。
まずは、遺言書の有無を調べ、あればその内容を確認しましょう。
相続人の確定
次に、相続人が誰かを調べます。
法律では、相続を分配する順位が決まっていますので、戸籍謄本を取り寄せ、相続人を確定します。
相続財産の調査
遺産を分配するには、故人がどのような財産を持っていたかを調べなくてはなりません。
故人が生前に書き残した財産目録があれば一番ですが、そのほかに、借金などがなかったかも調べます。
特にインターネットでの株取引はわかりにくいものです。
故人の口座を調べるなどして、株式の有無を確認します。
遺産分割協議
相続人が複数いて、遺言書がない場合には、相続財産をどう分けるか、相続人全員で話し合います。
どのように分けるかは自由に決めることができます。
全員均等にすることも、一部の相続人に相続分を与えないこともできます。
また、不動産は配偶者へ、預貯金は子供全員で均等にといった形で分けたり、預貯金の口座や金額を特定の人に相続させることも可能です。
ただし、相続人全員の同意を得る必要があります。
株式を相続する人も、この協議の中で決めます。
遺産分割協議が成立したら、その内容を「遺産分割協議書」という書面にしましょう。
遺産分割協議書は、相続人が個々で保管します。
遺産分割協議書は、預貯金などの名義変更の際に金融機関へ提出したり、不動産の名義変更がある場合には法務局へ、相続税の申告がある場合には税務署へ提出する書類です。
株式の名義変更手続き
株式を相続することに決まったら、株式の名義を相続人に変更します。
上場株式の場合には、証券会社を通して名義変更を行います。
2009年より株式はペーパーレス化が進み、上場株式の株券は電子化され、紙の株券は廃止されました。
保有している株式は、証券口座で電子的に管理されるので、株式を相続するためには証券口座が必要です。
相続人が証券口座を持っていない場合は開設しましょう。
非上場株式の場合には、発行会社に名義変更の方法を確認し、手続きしましょう。
相続税の申告
遺産の額によっては、相続税の申告が必要です。
相続税の申告期限には期限があり、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内と定められています。
期限を過ぎると追徴課税が課せられる場合があるため、注意しましょう。
相続株式の調査方法は?
株式を相続するためには、相続財産中の株式がどのくらいあるか把握しなければなりません。
相続株式の調査は、上場株式と非上場株式とで異なるため、それぞれについて見ていきましょう。
上場株式の調査方法
上場株式とは、証券取引所に上場された株式で、証券取引所で取引されます。
相続財産の中に上場株式があるかどうかは、次のような書類を手がかりにして調べます。
- 取引口座を開設した際の控え
- 目論見書
- 取引報告書
- 取引残高報告書(評価報告書)
- 特定口座年間取引報告書
金庫や引き出しなどに、このような書類がないか、保管されていそうな場所を探します。
インターネットで株式を取り引きをしている可能性もあります。
こちらについては、メールのやり取りや、ブラウザの閲覧履歴、ブックマークなどから株式の取り引きを行っていたかどうか探しましょう。
このような調査によって、取り引きをしていた証券会社が分かれば、故人名義の株式の種類や数が分かります。
また、このような書類が見つからなくても、故人が保有していた株券の発行会社が分かっている場合は、株券発行会社に連絡して、株主名簿管理人となっている信託銀行を確認しましょう。
株主名簿管理人となっている信託銀行に問い合わせれば、故人の特別口座があるかどうかを調べることができます。
また、電子化される前の紙の株券が見つかる可能性もあります。
その場合は、株券発行会社に株主名簿管理人となっている信託銀行を確認しましょう。
電子化される前の株券も信託銀行の特別口座で管理されています。
確かお父さんはどこかの株式を持っていたはずだけど、どこの会社の株を持っていたか分からない、という場合は、証券保管振替機構に登録済加入者情報の開示を請求する方法があります。
故人が上場株式を持っていた場合は、加入者として登録されているので、この登録済加入者情報を確認すれば、被相続人が口座を開設していた証券会社や信託銀行が判明します。
非上場株式の調査方法
非上場株式とは、証券取引所に上場していない株式のことです。
上場している株式の場合は、証券取引所で誰でも株式を取得することができます
しかし非上場株式の場合は、基本的に、株券発行会社から新株の割り当てを受けるか、株主から直接譲り受けるくらいしか取得する方法がありません。
つまり、非上場株式は、発行会社やその株主とコネクションがないと取得できないわけです。
もし、故人が会社の要職にあった場合、その会社の株式を持っている可能性が高いと考えられます。
会社に問い合わせてみましょう。
故人の死亡を知った会社から、相続人に対して株式の売り渡しを請求されることで、故人が非上場株式を保有していたことが判るケースもあります。
もし売渡請求を受けたら、相続人は拒否することはできません。
売買価格は、原則として相続人と会社の間の話し合いで決められます。
まとまらない場合は、裁判所に売買価格決定の申し立てを行い、裁判所が価格を決定します。
株式の相続人の決め方は?
特定の相続人が株式を相続する
故人が所有していた株式は、遺言がない場合、相続開始と同時に共同相続人全員で共有していることになります。
しかし、株式が共有の状態では、株主としての権利を行使することができません。
そのため、遺産分割協議によって、株式を相続する人を決めなくてはなりません。
遺産分割協議は、必ず相続人全員で行い、株式の相続人を決定します。
株式を現金化して遺産分割する
株式や不動産など、分けにくい遺産を分割する場合、売却・現金化し、相続人で分けるという方法があります。
これを「換価分割」といいます。
故人名義のままの株式を売却することはできないため、いったん相続人の代表者に名義変更したうえで売却し、その売却代金を分けます。
ただ、株式は、売却の時期などによって株価が大きく変動します。
そのため、売却の時期や売却方法についても遺産分割協議で決めておきましょう。
また、換価分割を行う場合は、その旨を遺産分割協議書に明記しておく必要があります。
株式を相続した場合の相続税は?
相続税の申告が必要なのは?
相続財産の額が基礎控除額を超える場合には、相続税の申告義務が発生します。
基礎控除額とは
基礎控除とは、相続税の計算をするうえで誰にでも適用されるものです。基礎控除額は、
3000万円+600万円×法定相続人の数
という計算式で算出します。相続財産が基礎控除額を越えていなければ、相続税を納める必要はありません。
株式の評価方法
相続税を計算する際、株式の評価基準は次のように決まっています。
上場株式の場合
a~cのうち、最も低い価額で評価します。
- 相続開始日の終値
- 相続開始日の属する月の毎日の終値の平均額
- 相続開始日の属する月の前月の毎日の終値の平均額
- 相続開始日の属する月の前々月の終値の平均額
非上場株式の場合
株式を取得する人が、同族株主などの場合には「原則的評価方式」(類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式)、それ以外の株主の場合には「特例的評価方式」(配当還元方式)という方法で評価します。
なお、株式の評価方法は複雑です。
もしも相続財産に株式が含まれていたら、専門家に相談した方がよいでしょう。
まとめ
株式は価格が一定ではないため、遺産分割の際、トラブルのもとになりがちです。
また、相続税を計算するための評価方法も複雑で、評価を間違えると税額に大きく影響してしまいます。
さらに、株式の名義変更についても、上場株式と非上場株式とでは全く違うため、十分注意しましょう。
相続財産の中に株式があった場合、さまざまな問題が起きる可能性があります。
株式を相続するにあたっては、専門家に相談するのがお勧めです。