遺品整理をしていて、思いがけないところから大金や貴金属、預金通帳などが出てくることがあります。
「タンス預金」という言葉がありますが、銀行の金利が低い今、預けるより手元に置きたいと、タンスに入れている人は、かなりの数、存在します。
また、主婦がまとまったヘソクリをキッチンや仏壇に隠す、というようなことも実際にあるようです。
このような大きな財産や市場価値のあるものは、持ち主が亡くなった場合、遺産相続の対象となります。
思いがけずタンス預金やヘソクリが見つかった場合、これらを相続するのは誰になるのでしょうか。
また、どのように扱えばよいのでしょうか。
予定外に見つかった遺産のあれこれについて、見ていきましょう。
目次
遺産相続とは?
まずは、故人の残した遺産を相続するということについて、おさらいしておきましょう。
遺産相続とは、故人(被相続人といいます)が残した財産・権利・義務を、残された相続人(遺産を引き継ぐ権利のある人)が引き継ぐことです。
誰がどのぐらいの遺産を相続するのか、また遺言による相続方法の指定など、相続は民法を中心とした法律によって決められています。
遺産相続までの流れは?
被相続人が亡くなったら、相続人が遺産を引き継ぐことになりますが、まず最初に被相続人が遺言書を残していないか確認します。
遺言書がある場合は、遺言の内容に沿って遺産を分配します。
遺言がない場合は、遺産分割協議(相続人による話し合い)を行って財産の分配について決めます。
遺産分割協議は、必ず相続人全員によって行われなくてはなりません。
遺産分割協議で話し合った内容は「遺産分割協議書」にまとめ、相続人全員が署名・捺印します。
一度署名・捺印してしまうと、原則として誰か1人の意向で変更することはできません。
あとから不満が出ないよう、しっかりと話し合いましょう。
協議において、一部の相続人が協議に応じない・話し合いがまとまらない、などの場合は「遺産分割調停」を行います。
調停でもまとまらない時は、自動的に審判に移行し、被相続人の財産を各相続人の法定相続分法律で定められている割合)に従って分割する決定が下されます。
相続の手続きの期限は?
遺産分割協議はいつ始めても構いませんが、相続に関する手続きには期限があります。
たとえば、
相続放棄 | 被相続人の死亡を知ってから3ヶ月以内 |
遺産相続の所得税の手続き | 遺産相続の発生を知ってから4ヶ月以内 |
相続税の申告 | 被相続人の死亡を知ってから10ヶ月以内 |
遺留分減殺請求 | 遺産相続の発生を知ってから1年以内 |
などです。
期限を過ぎてしまうと、借金を背負ったり、お金を多く支払うことになったりする場合があるので、注意が必要です。
相続の対象となる遺産とは?
故人が遺したものだからといって、全てが相続の対象になるわけではありません。
相続の対象になる財産は、
- 自動車・貴金属類などの動産
- 土地・建物などの不動産
- 預貯金
- 株などの有価証券
- 借金・ローン
などです。
対象にならない財産は、
- 死亡保険金(500万円×法定相続人の数以下の場合)
- 死亡退職金(500万円×法定相続人の数以下の場合)
- 祭祀財産(家系図・仏像・墓碑など)
となっています。
遺品整理で見つかった遺産の扱いは?
では、遺品整理をしていて見つかった遺産の扱いについて見て行きましょう。
見つかった遺産は誰が相続するの?
遺品整理で新たに見つかった金品は、当然のことながら相続財産に計上され、遺産分割の対象となります。
つまり、新たに見つかったものは、相続人全員に権利があるわけです。
そのため、見つけた人がもらったり、また、遺品整理やお葬式などの費用として勝手に遣ったりすることはできません。
遺産の対象となるものは、その金額の多寡に関わらず、相続人全員に伝える義務があります。
もしも、協議が終わったあとに出てきたわずか1万円のために、わざわざまた相続人全員が集まって協議書を作り直し、実印を押し直すのは大変ですね。
しかし、こういったケースは、相続完了ののち、相続人の間に疑心暗鬼を起こしかねません。
「本当は、もっと見つかったんじゃないか」「実は隠し持っているお金があるんじゃないか」などという疑念が生じ、兄弟が疎遠になってしまったというようなケースも少なくないのです。
たとえわずかな金額であっても、お互いが納得できるように相続人全員に伝え、どうすればいいか確認し合っておきましょう。
遺産相続の開始前、または途中で見つかった場合
遺産相続の協議が行われる前、または途中の場合は、これら見つかった遺産を遺産として加えてから分割協議を始めるか、またはやり直します。
遺産相続が終了したあとで見つかった場合
ケースに応じ、相続税の修正申告や更生などが必要になることがあります。
遺産相続の問題には複雑なルールがあるので、こういった場合、相続に強い弁護士など、専門家に相談するのがよいでしょう。
相続に影響しない範囲のものが見つかった場合
遺産相続が発生した場合、すべてのケースで相続税を収めなくてはならないわけではありません。
遺産の額が基礎控除額以下であれば、相続税は納める必要がありません。
基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
相続税を納める必要があるのは、この基礎控除額や各種控除、特例などを適用しても課税価格(課税対象となる相続分)が残る場合です。
もし、新たに見つかったとしても、この範囲内であれば相続税を支払う必要はありません。
また、故人が大切にしていたものであっても、経済的価値・市場価値のないものは、形見として分けたり、不要なものであれば処分したりできます。
相続でトラブルを起こさないためには?
相続は、後から新たな遺産が見つかった場合、面倒なことになるケースがほとんどです。
動産であれ不動産であれ、その価値を鑑定・査定するには時間がかかるため、申告期限のある遺産相続において大変です。
さらに、申告が終わったあとに見つかり、修正申告や更生を行うのも非常に面倒です。
そこで、遺産分割協議に入る前に注意すべきポイントを押さえておきましょう。
被相続人の遺産を調べる
相続税の申告後に新たな遺産が見つかることを防ぐためにも、分割協議前に被相続人の遺産を調べておきましょう。
土地・建物の権利書は法務局で再発行が可能です。
現金は、銀行で残高証明書を発行してもらえます。
株などの有価証券については、証券会社で残高証明書を発行してもらえます。
自動車については車検証を探します。
明細書や契約書などで確認しましょう。
遺言書がないか確認する
故人が、誰に何を相続させたいか遺言書に書き残している場合があります。
遺言書によって、新たな遺産の存在が明らかになることがあると同時に、遺産の分割の割合についても指定されていることがあります。必ず探しましょう。
遺品整理は素早く行う
遺品整理には期限はなく、いつ行うかは自由です。
そのため、大切な家族の部屋を片付ける気になれないからと、何年もそのままにしておく人もいます。
しかし、相続税の納付には、相続の発生を知った日の翌日から10ヶ月内という期限が設けられています。
大切な家族を亡くした悲しみも癒えないうちに、複雑な手続きを行うのはつらいものです。
ましてや、遺産相続には複雑な決まりがあるので、自分たちで行うのは大変です。
ですが、だからこそ、遺品整理は早いうちにやっておくほうが良いと言えるのです。
繰り返しになりますが、相続が完了したあとで新たな遺産が見つかると、面倒な手続きをしなくてはなりません。
また、そのために、遺族間に疑念が生まれ、相続をきっかけに疎遠になってしまうケースも少なくないのです。
こんなことになるくらいなら、遺品整理を早い段階で行い、すべての遺産を明らかにしておいた方が良いのではないでしょうか。
プロの手を借りる
遺産相続でトラブルを起こさないためには、その道の専門家に相談・依頼すると安心です。
分割協議や実際の申告など、法律に関することは、相続に強い弁護士や税理士などに相談するとよいでしょう。
遺品整理に関しては、遺品整理業者を利用するとよいでしょう。
遺品整理のプロは、1つ1つの品を大切に扱い、小さな紙切れ一つも見逃しません。
また、品物を指定して探してもらったり、相続に関係ありそうなものをピックアップしてもらったりすることも可能です。
さらに、相続についての相談に乗ってくれる業者や、提携の弁護士を紹介してくれる業者もあります。
まずは相談してみましょう、
まとめ
遺産相続でトラブルを起こさないコツは、すべてを相続人全員の間で明らかにし、協議することです。
故人を悲しませることのないよう、しっかり話し合い、円満に相続を行いたいですね。