家族や親族が亡くなると、故人が持っていたものの整理や処分などをしなくてはなりません。
でも、長い間に溜まった大量のものを整理するには非常な労力が必要です。
大量のモノの中から、必要なものと捨てるものを仕分けする作業は、労力の面だけでなく、素人には判断が難しい場合もあります。
そこで、遺品整理を専門に行うプロに注目が集まっています。
しかし、全国の消費生活センターなどには、料金や作業内容に関する相談が多数寄せられているのも事実です。
国民生活センターの資料では、2013年に73件だった相談件数が、2016年には114件に増えています。
センターに持ち込まれていないトラブルを含めれば、実際にはもっと多くの問題が起こっていると考えられます。
そこで、遺品整理でのトラブル防止について考えていきましょう。
目次
遺品整理の料金に関するトラブル事例
- キャンセル料金について説明を受けていたか?
- 現場で全額現金で支払うはずが・・・
- 見積もりに追加費用の記載がなかった
事例① キャンセル料金について説明を受けていたか?
遠方で一人暮らしをしていたお母さまが亡くなったため、お母さまの遺品整理をすることになったAさん。
業者に見積もりをしてもらうと、作業は3日間、費用は30万円。
Aさんはこの内容に納得し、契約しました。
ところがAさんは、その後、もっと安い料金で作業をしてくれる業者を見つけたのです。
最初に契約した業者をキャンセルできることにはなったのですが、その代わり、キャンセル料として15万円を請求されたのです。
慌てて見積書を見返したところ、キャンセル料について「作業日の○日前まで違約金○%」と書かれていました。
ただ、Aさんは、契約の際、キャンセル料について直接説明を受けていなかったのです。
納得が行かないAさんは、消費者センターに相談したそうです。
事例② 現場で全額現金で支払うはずが・・・
B社では、アパートで孤独死をされた方の遺品整理と清掃の契約を結びました。
支払いは、「現場で、全額現金で支払う」という約束で引き受けました。
ところが、作業が全て終わったあとで、依頼者に「実は、お金がないんです……」と言われてしまったのです。
依頼者と話し合った結果、分割で支払っていただくことになりました。
契約書を交わしている以上、法的な問題にも発展しかねず、B社の担当者はヒヤヒヤしたといいます。
事例③ 見積もりに追加費用の記載がなかった
Cさんは、亡くなったお父さまのマンションの遺品整理をすることになりました。
モノが多くて自分では整理しきれないので、業者に依頼することにし、見積もりを出してもらいました。
見積もりの金額は20万円。
- スタッフ4人の人件費……10万円
- 2トントラック2台……5万円
- 廃棄物処理代……5万円
という内訳でした。
ところが、実際に作業が始まってみると、なんと廃棄物処理は「1往復5万円」だというのです。
トラック2台が2往復したので、処理代は20万円にもなりました。
さらに、トラックを停められる場所が自宅から離れていたこと、また、低層マンションでエレベーターがなかったことから手数料がかかると言われ、最終的には40万円もの料金を支払わなくてはならなくなったのです。
見積もりの際、追加費用が発生する場合についての説明は受けておらず、見積書にもその記載はなかったそうです。
作業に関する遺品整理費用のトラブル事例
- スタッフが誤って私物を処分してしまった・・・
- 処分をお願いした遺品が不法投棄されていた
- 処分をお願いした遺品が傷ついていた
事例①:スタッフが誤って私物を処分してしまった・・・
Dさんは、お母さまの遺品整理をすることになりました。
このお宅にはDさんの私物も置いてあったため、Dさんは作業に立ち会うことにしました。
Dさんは、いろいろなものについて、必要か不要かを判断して指示を出し、不用品だけを業者に運び出してもらいました。
作業は滞りなく終わったように見えましたが、後日、分けてあったはずの私物がないことに気がついたのです。
作業のとき、処分しないよう指示してあったのに、スタッフが誤って運び出してしまったようなのです。
でも、もう後の祭りでした・・・。
事例②:処分をお願いした遺品が不法投棄されていた
ある日、突然、Eさん宅に警察から電話がかかってきました。
身に覚えのない電話に驚いたEさん。
恐る恐る話を聞いてみると、Eさんが遺品整理で処分した自転車が、不法投棄されていたそうなのです。
その自転車は、遺品整理の際、業者に処分を依頼したもの。
それなのに、その自転車は、ごみを捨ててはいけない河原に放置されていたのです。
警察は、自転車に貼ってあった防犯登録シールからEさんを割り出し、連絡をしてきたというわけです。
どうやら、Eさんが使った業者は、無許可だったようです。
通常、業者が回収した遺品は、自治体で定められた施設に運ばれます。
しかし無許可の業者は、正規の施設へ回収品を引き渡すことができません。
そのため、山中や河原などへの不法投棄など、違法な手段で遺品を処理しようとするのです。
事例③:処分をお願いした遺品が傷ついていた
Fさんは、お姉さまの遺品整理をしました。
お姉さまはガラス細工の置物を集めるのが趣味で、小さくて繊細なオブジェをたくさん持っておられました。
落ち着いてから、オブジェをよく見てみると、あちこちが欠けていたり、傷がついたりしていたのです。あれほど丁寧に扱ってくださいと頼んだのに・・・。
信頼できると思って依頼した業者だったのに、大切な遺品を雑に扱われ、Fさんはお姉さまに顔向けができないと、肩を落としていました。
トラブルが起きてしまう原因は?
例に挙げたようなトラブルは、なぜ起こってしまうのでしょうか?
- 契約内容についての検討不足
- キャンセル料
- サービス内容に関するトラブル
契約内容についての検討不足
業者と契約を交わす際は、「どのような作業をどの程度の費用で請け負うか」を、業者とよく話し合って取り決めることが必要です。
まずは、契約の書面をしっかり読み、具体的な作業内容や費用単価など十分に理解しましょう。
契約内容を正しく確認できていないと、あとで作業内容や料金を巡るトラブルが発生する原因となります。
契約内容に関しては、後から請求される追加料金に関しても同様です。追加料金が発生するケースがあることについて、依頼者と業者が同じように認識していないとトラブルにつながってしまいます。
キャンセル料
キャンセル料は、契約をしたにもかかわらず、それを履行しなかった場合に支払う違約金です。
たとえば、旅行でホテルなどを予約した場合、宿泊の何日前まで、キャンセル料が何%かかるか決まっていますよね。
これと同じで、遺品整理を契約する場合も、いつから、どのくらいのキャンセル料が発生するのか決まっています。
キャンセル料は、どんな契約であっても発生する可能性があります。これを認識していないと、トラブルを引き起こすことがあります。
サービス内容に関するトラブル
大切な遺品が戻ってこないようなことになったり、残して起きたい遺品を壊されたり、遺品を搬出する際に部屋の床や壁などを傷つけられるなど、遺品整理の作業中に発生したスタッフのミスに関する相談も増えています。
業者の中には、遺品を雑に扱うところがあるようです。
また、業者と依頼者の間に、ものの扱い方に関する認識のズレがあることにより、トラブルの原因になることもあります。
トラブルを起こさないためにやるべきことは?
遺品整理で確認しておくべきポイントを知っておきましょう。
- 契約内容を吟味・検討する
- 必ず相見積もりを取る
- 資格の有無を確認する
- 作業にはできる限り立ち会う
契約内容を吟味・検討する
必ず書面で契約内容を確認し、少しでも疑問があれば、納得いくまで質問しましょう。
ここで面倒がったり、ごまかしたりする業者は要注意です。
サービス内容や料金について確認しておくべき点をメモしておくと漏れがありません。
B社の例のように、実はお金がない・・・というような場合も、作業が終わってからでなく、契約をする前に相談しておきましょう。
作業終了時に現金一括払いの形をとっている業者が多いですが、なかにはクレジットや分割で払えるところもあります。
必ず相見積もりを取る
1社だけでなく、複数の候補を見つけ、相見積もりを取りましょう。
遺品整理の料金は、相場がわかりづらいものです。
最低3社以上に相見積もりをとって比較すれば、どこにどれくらいかかるのかわかってきて、交渉もできるようになります。
資格の有無を確認する
不用品の処分も依頼する場合、業者が「一般廃棄物収集運搬業」の資格を持っているかどうかを必ず確認しましょう。
この資格がないと、不用品を正しく廃棄することができず、不法投棄されてしまう可能性があります。
作業にはできる限り立ち会う
重要なものを勝手に処分されないためには、依頼者の許可なく遺品を引き取らないよう、業者に厳命しましょう。
業者にはまず仕分けをしてもらい、保管するかしないかの判断は、依頼者がその場で行うようにしましょう。
また、作業が雑だと、大切なものを破損されたり、騒音で近隣に迷惑をかけてしまうことがあります。
このようなトラブルを防ぐためにも、作業に立ち会うことが大切です。
まとめ
遺品整理業者の数は、2011年には約3000社とみられていましたが、2015年には9000社と急増しています。
このような状況のなか、残念ながらトラブルも多発するようになりました。
大切な人の残した大切な遺品。納得のいく整理、処分をしたいですね。
あとで「こんなはずではなかったのに・・・」と後悔しないよう、業者と十分に話し合いましょう。