人が亡くなると、さまざまな手続きや届け出が必要になります。
たとえば、家族が受け取っていた年金。
本人が亡くなったら、その年金はどうなるのでしょうか。
また、どのような手続きを、いつまでに行えばよいのでしょうか。
今回は、つい忘れがちになってしまう年金の手続きについて見ていきましょう。
目次
年金に関する手続きとは?
公的年金を受け取っている人が死亡すると、年金受給の権利がなくなります。
そのため、年金に関する手続きを行わなくてはなりません。
年金に関する届け出をしないでいると、年金は支払われ続けます。
後日、受給者の死亡が確認された時点で、過払い分を返還しなくてはならなくなります。
また、手続きには期限があります。
もし提出期限を過ぎてしまった場合、亡くなった後に振り込まれた年金は返還しなければなりません。
また、手続きをきちんとしないと、せっかくもらえるはずだったお金が、もらえないということにもなってしまいます。
このようなことにならないよう、届け出は早めに行いましょう。
親や配偶者など、年金を受け取っている家族が亡くなったとき、遺族がやらなければいけないことは主に3つあります。
- 年金の受給を止める
- 受け取れていない分(未支給年金)を受け取る
- 遺族年金をもらう
ただし、③については、人によってもらえる、もらえないがあるので注意しましょう。
受給している年金を止める
必要な書類は?
年金を止めるために必要なのは、以下の書類です。
- 年金受給権者死亡届
- 亡くなった受給者の年金証書
- 死亡の事実を証明できる書類(戸籍抄本、市区町村長に提出した死亡診断書・死体検案書などのコピーまたは死亡届の記載事項証明書)
国民年金、厚生年金、共済年金いずれの場合も、提出する書類は同じです。
「年金受給権者死亡届」は、最寄りの役所や年金事務所でもらえます。
また、日本年金機構のホームページからダウンロードできます。
なお、死亡届を7日以内に提出し、日本年金機構にマイナンバーが収録されている場合は、年金受給権者死亡届は必要ありません。
書類の提出先は?
書類を提出する場所は、年金の種類によって違います。
- 国民年金・・・市町村役場
- 厚生年金・・・年金事務所
- 共済年金・・・組合員となっていた共済組合
手続きの期限は?
手続きの期限は、期限は比較的短いので、早めに行いましょう。
- 国民年金・・・受給者の死亡から14日以内
- 厚生年金・共済年金・・・受給者の死亡から10日以内
未支給年金をもらう
次に「未支給年金」と呼ばれる年金を請求しましょう。
未支給年金とは?
年金は、通常、2ヶ月分が偶数月の15日に支払われます。
12月・1月分は2月15日、2月・3月分は4月15日に支払われるという形です。
もし6月1日に受給者が亡くなったとすると、年金はどうなるでしょうか。
死亡届をすぐに提出すると、6月1日以降の年金は受給権利を失うため、もらえません。
しかし、受給者がまだ存命だった4月分と5月分は、支払われるべきお金です。
また、国民年金法第18条により、死亡月である6月分は全額支給されます。
この、亡くなった時点での計算で支払われるべき年金が振り込まれていなかった場合、これを「未支給年金」といいます。
上の例で、4月分と5月分については、規定の6月15日に振り込まれていれば問題ありません。
しかし、年金機構の送金処理と受給者の死亡による受け取り口座の凍結などで振り込まれていない場合は、未支給年金になります。
また、亡くなった月である6月分は、本来8月15日にもらえるはずのお金ですが、年金の受給が停止されると送金処理されないため、この分は未支給年金になります。
必要な書類は?
未支給年金を受け取るための書類は以下です。
- 未支給年金請求書
- 故人の年金証書
- 死亡の事実を証明できる書類(戸籍抄本、市区町村長に提出した死亡診断書・死体検案書などのコピーまたは死亡届の記載事項証明書)
- 故人の住民票の除票
- 年金を請求する人と故人の関係がわかる書類(戸籍謄本など)
- 生計同一を証明する書類(住所が同じ場合は住民票、そうでない場合は申立書、理由書、第三者の証明書など)
- 印鑑
「未支給年金請求書」と「生計同一についての別紙の様式」という書類は最寄りの役所や年金事務所でもらえます。
また、日本年金機構のホームページからダウンロードできます。
未支給年金を請求できる人は?
未支給年金は誰でも請求できるわけではなく、請求できる人の範囲とその順位は法律で定められています。
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 上記以外の三親等内の親族
ただし、これらの関係にある人でも、亡くなった受給者と生活上の家計が同じでなければなりません。
これを証明するため、住所が同じ場合は住民票、そうでない場合は申立書、理由書、第三者の証明書などが必要です。
書類の提出先は?
年金の種類によって提出先が異なります。
- 国民年金・・・市町村役場
- 厚生年金・・・年金事務所
- 共済年金・・・共済組合
手続きの期限は?
未支給年金の手続きは、「亡くなった受給者の年金の支払日の翌月の初日から数えて5年以内」です。
これを過ぎると時効となり、年金が受け取れなくなってしまいます。
注意すべきポイントは?
請求が必要
本来、未支給年金は、自動的に年金機構が支払うべきです。
しかし、現在の法律下では、権利のある人が自ら請求しなければもらえません。忘れないよう請求書を提出しましょう。
未支給年金に税金はかかる?
未支給年金は相続税の課税対象外なので、税金はかかりません。
ただし、「一時所得」という扱いを受けるため、一定の条件を満たすと所得税がかかるケースがあります。注意しましょう。
遺族年金をもらうには
遺族年金とは?
亡くなった年金受給者が、国民年金や厚生年金の被保険者で一定の要件を満たしている場合、受給者によって養われていた一定の遺族が遺族年金をもらえる場合があります。
国民年金の場合は遺族基礎年金、厚生年金・公務員の場合は遺族厚生年金が受け取れます。
遺族基礎年金
遺族基礎年金は、故人が老齢基礎年金を受給していたか、国民年金に加入していた場合に遺族が受け取れる年金です。
支給される対象者は、故人の配偶者とその子どもです。
ただし、「子ども」とは「18歳になる年度の末日(3月31日)を経過していない子ども」が対象となります。
また、子どものいない配偶者は遺族基礎年金の対象外です。
遺族基礎年金は、令和元年現在で、年額78万100円が支給されています。
これに、子ども2人目までは1人あたり22万4500円が加算され、3人目以降については、1人あたり7万4800円が加算されます。
請求に必要な書類は、年金請求書、戸籍謄本、死亡者の住民票の除票など。
書類の提出先は、最寄りの市役所や町役場の年金担当窓口や年金事務所などです。
遺族厚生年金
遺族厚生年金は、故人が老齢厚生年金を受給していたか、厚生年金に加入していた場合に遺族が受け取れる年金です。
支給される対象者は妻、55歳以上の夫、子ども、孫、父母、祖父母です。
ただし、「子ども」とは、「18歳になる年度の末日(3月31日)を経過していない子ども」が対象となります。
子どもがいない配偶者も受け取ることができます。
支給される年金額の目安は、亡くなった方が受け取る予定だった老齢厚生年金額の4分の3です。
受け取れる対象者と順位は、未支給年金受け取り対象者と同じです。
請求に必要な書類は、年金請求書、戸籍謄本、死亡者の住民票の除票など。
書類の提出先は、最寄りの年金事務所か街角の年金相談センターです。
その他の年金
そのほかに支給されるお金として、「寡婦年金」と「死亡一時金」があります。
ここで注意したいのは、寡婦年金と死亡一時金は両方もらうことができないこと。
どちらか一方しかもらえないので、受け取れる金額がどれくらいかを概算して選択しましょう。
寡婦年金
死亡した夫が国民年金に加入していた場合、夫の国民年金の保険料を納めた期間が10年以上あると、妻は「寡婦年金」を受け取ることができます。
支給される対象者は妻のみで、亡くなった夫との婚姻関係が10年以上続いていることが条件です。
年金額は、夫の国民年金だけ加入していた期間で計算した老齢基礎年金額の4分の3ですが、夫が亡くなってすぐに受け取れるわけではなく、妻が60歳から65歳になるまでの間だけ支給されます。
また、亡くなった夫が障害基礎年金や老齢基礎年金を受け取っていた場合はもらえません。
必要な書類は、年金請求書、戸籍謄本、死亡者の住民票の除票など。
書類の提出先は、最寄りの市役所や町役場の年金担当窓口、年金事務所、街角の年金相談センターです。
死亡一時金
死亡一時金は、故人と生計を共にしていた配偶者および血縁者に給付されます。
受け取れる対象者と順位は、未支給年金受け取り対象者と同じです。
給付の条件は、個人が国民年金の保険料を納めた期間が3年以上あり、老齢基礎年金と障害基礎年金のどちらかを受給していないことです。
受け取れる金額は、保険料を納めた月数に応じて異なるため、12万円~32万円と開きがあります。
ただし、遺族基礎年金を受給できる場合は受け取れません。
必要な書類は、国民年金死亡一時金請求書、故人の年金手帳、戸籍謄本、故人と一時金を受け取る人の住民票の写しなど。
書類の提出先は、最寄りの市役所や町役場の年金担当窓口、年金事務所、街角の年金相談センターです。
まとめ
葬儀のあと、悲しみの渦中でこのような手続きをするのは大変です。
しかし、お金がもらえるのは、故人が家族のために頑張ってくれたから。
無駄にしないよう、きちんと手続きをしましょう。
また、手続きがわからない場合は、役所の窓口や、日本年金機構に問い合わせましょう。