遺品整理・形見分けで起こりうるトラブルと防止策

遺品整理・形見分けで起こりうるトラブルと防止策

親戚や知人が亡くなった場合は、通夜や葬儀に参列し、その後も定期的に法要が行われます。
しかし家族が亡くなった場合……遺族側としては通夜や葬儀、法要の手配を行わなければいけませんし、その際は親戚や知人にも連絡をします。
さらに、遺族にとっては遺品整理も大切な作業のひとつですが、故人の遺品を「形見」として家族・親族で分けることがあります。
実は、この「形見分け」はトラブルが起こりやすいもののひとつ。では形見分けについて、どんなことに注意すればよいのでしょうか?

遺品整理が持つ重要な意味とは

訃報とは、突然訪れるものです。親族・知人は訃報が届くと、通夜や葬儀に参列する準備をします。なかには遠方から葬儀に参列する人も多いでしょう。
葬儀後も法要のために集まることが多くなります。

そのようななかで、遺品整理は行われます。多くの場合、遺品を全て遺族や親戚・知人が引き取ることは難しいものです。そこで、遺しておくもの、引き取るもの、処分するものを判断し、仕分ける作業が必要となります。
なかには相続に関わる遺品もあります。それらを放置しておくと、法的な問題に発展するケースもあります。
そのため、早めに遺品整理を行う必要性に迫られてしまうかもしれません。

一方で、大切な人を亡くしたばかりの遺族にとっては、精神的な負担が大きくなってしまうことは避けられません。
その負担を少しでも軽減するため、遺品整理は専門業者に依頼をして、サポートしてもらいたいという遺族の方も増えています。
同時に、生前整理として故人が亡くなる前に持ち物を整理しておくという方法も浸透しつつあります。

なぜ、どうやって遺品の形見分けを行うのか

遺品整理とは、単に故人が遺した品々を処分することではありません。遺品ごとに、しっかりと取り扱い方を見極めなければいけないものです。
たとえば、家具や家電などは、引き取っても使えそうにないほど古いものについては、処分しても構わないでしょう。
ただし、家電や家具は大きなものばかりなので、処分方法も決められていることがほとんどです。
食品については、衛生面の問題もあるので、原則は処分することになります。

そこで遺品整理の際には、「形見分け」のことを考えておかなければいけません。
形見分けとは、遺品を遺族や親戚、知人などで分けることです。そこには、遺品を引き継ぐことで「故人を忘れない」といった意味も持ちます。

まず形見分けを行う場合に、注意しておきたいポイントは、次のとおりです。

  • 形見分けを強要されることはない
  • 目上の人には贈らない
  • できるだけ綺麗な状態で贈る

形見分けを強要されることはない

形見分けについては、明確なルールが存在しているわけではありません。その意味では、遺品整理のなかでも自由度は高い作業ですが、それでも多くのマナーはあります。
まず、形見分けは絶対に行わなければいけない、ということではありません。反対に、形見分けを提案されたら、必ず遺品を受け取らなければならない、というわけでもないのです。
遺族としても、親戚に形見分けを提案して、遠慮されるようなことがあれば、無理に遺品を渡すことは控えましょう。

目上の人には贈らない

故人よりも目上の方には、形見分けを行わないことがマナーとされています。
もちろん希望があった場合には、形見分けを行ってください。
その際に注意しておきたいのは遺品の「金額」「価値」です。
遺品は高価なものから、それほど値のはらないものまであります。なかには引き継いでも使えない物もあります。
故人が使っていた、何にも代えられないではありますが、やはり受け取った側にとっても使えそうにないものを、形見分けとして贈るのは失礼にあたるでしょう。
その反面、「高価なものだから……」と贈る側からすれば厚意として形見分けを行おうとしても、資産価値が60万円を超えてしまう物は贈与税の対象となる場合もあります。
形見分けを行う場合は、しっかりと物そして贈る人のことを考えておかなくてはいけません。

できるだけ綺麗な状態で贈る

整理する遺品のなかで、最も多いもののひとつが衣類です。
衣類は相続の対象になるほど高価、あるいは資産価値の高いものは多くありません。一方で、普段の生活のなかで身につけていた衣類は大量になることもあります。
そして、故人が身につけていた物であるため、他の物よりも故人を身近に感じることができる遺品でもあります。
その衣類を見ると、故人との思い出がよみがえってくることもあるでしょう。
衣類を形見分けする場合は、一度クリーニングをしてから相手に贈ることをオススメします。特に希望などなければ、汚れが目立つような状態で贈ることはマナー違反かもしれません。

形見分けネクタイ

形見分けの際に発生するトラブルとは?

親戚や知人を含めた遺族の間で故人を想い出にするために必要な形見分けですが、形見分けを行うにあたり、トラブルが発生することもあります。
代表的なトラブルは、主に次の2つです。

  • 相続に関するトラブル
  • 親戚・知人間のトラブル

相続に関するトラブル

遺品のなかでも形見分けの場合は、資産価値のある物を贈っているので、贈与税がかかってしまうことがあります。
その際は、形見分けをしたい遺品の金額・資産価値を調べておかなくてはいけません。
最も注意したいのは「時価」です。購入した際は安い商品であっても、時代とともに価値が上がり、形見分けを行う時には資産価値が高くなっているケースが多いのです。
これは見た目ではわかりづらいところなので、必ず専門家に相談してください。

相続のなかでも、相続税に関するトラブルが多いのは、アクセサリーです。
現金であれば、遺品整理の際にどれだけの金額であっても、そのまま放置しておくとトラブルが発生してしまうことはわかります。
しかしアクセサリーは、上記のとおり金額・資産価値が高いことが多い物です。高額なアクセサリーは相続の対象となり、引き取る場合には相続税・贈与税などが必要となるかもしれません。

相続税も贈与税も、他の税金と同様に必ず納めなければいけないものです。
「このアクセサリーが、そんなに高いものだとは知らなかった……」と、課された税金を支払わないで済むわけではありません。
「脱税」ということになれば、加算税・遅延税などを納めることで解決できる場合もありますが、刑事罰の対象になる可能性もあるので、注意してください。

形見分け法律

親戚・知人間のトラブル

もうひとつ、形見分けの際に多いトラブルが、親戚や知人間でのトラブルです。
たとえば、遺族の皆さんは相続のことも含めて、「できるだけ早く遺品整理を行わなければいけない」と考えることが多いと思います。
しかし、そのなかで本来は形見分けすべき物、あるいは他の誰かが欲しいと思うかもしれない物を、親族・知人に問い合わせることなく、遺品を処分してしまうことがあるのです。
その結果、いざ親戚や知人から形見分けをしてほしいという希望が出ても、そのための遺品が残っておらず、形見分けを行えないことからトラブルが発生するのです。

故人が使っていた、思い出の詰まった遺品は、この世に2つと存在しません。それを処分してしまうと、もう二度と手元に戻ってくることはないでしょう。
そのため、遺品整理はしっかりと品物について見極めながら行わなければいけません。
大切な人が亡くなった直後、遺族は悲しみのなかにいます。遺品を見ていると故人のことを思い出し、悲しみが深くなってしまうこともあるでしょう。
結果的に、遺品をどのように処分すればいいのか、的確な判断ができずに、必要な物・形見分けしてほしい物などをすぐに処分してしまう可能性もあるのです。

そこで、遺品整理を専門業者に依頼することは、遺族の負担を軽減するだけでなく、トラブルを未然に防ぐことにもつながります。
遺品整理業者は形見分けや相続のことを見越した対応が可能です。それぞれの対応方法も適切にアドバイスしてくれます。

形見分けを行うタイミングはいつ?

故人との想い出を残しておくためにも必要な形見分けは、いつ行えばよいのでしょうか。

四十九日の法要

一般的には、四十九日の法要の際に行われることが多いようです。
四十九日の法要までは忌中となります。この期間に故人も物を人に渡すという行為はしないほうがよいとされているため、四十九日の法要で親戚や知人が集まった際に形見分けを行うのです。

つまり、四十九日の法要が行われるまでは遺品を処分するのではなく、形見分けのために準備しておく必要があります。
また上記のとおり、故人よりも目上の人への形見分けは失礼にあたります。
とはいえ、形見分けの準備していないと、万が一その人から形見分けの希望が出た際に対応できなくなります。
四十九日の法要までは、確実に処分するべき遺品以外は手を付けずに置いておいたほうが無難かもしれません。

取り越し法要

また、最近では「取り越し法要」が広く行われるようになってきました。
取り越し法要とは青森県などの雪深い地域で行われる方法で、葬儀の後すぐに法要も行ってしまうものです。
雪深い地域では、移動ができなくなり親戚や知人が集まれない可能性もありますし、遠方から訪れる人であれば、なおさら参加できない可能性があります。
そのため、葬儀という遺族、親戚、知人が集まっているタイミングで法要も済ませるようにしているのです。
今では地域に関係なく行われることが増えています。そのため、形見分けの行い方も変化しています。

法要

郵送で形見分けを行う

最近増えているのは、遺品を郵送することで、形見分けを行う方法です。
これは、法要に訪れることができなかった人に対して形見分けを行う際にも使うことができる方法です。
遺品を郵送する場合には、先方へのお手紙も添えてください。
ただ、葬儀や遺品整理など多くの負担を抱える遺族にとって、それぞれ遺品を郵送するというのも難しいかもしれません。そんな時こそ、遺品整理業者にご相談ください。
形見分けで遠方の親戚などに遺品を郵送する場合、遺品整理業者が郵送まで代行してくれるケースもあります。
もちろんその作業に対する費用は発生しますが、遺族の負担を大幅に軽減できるでしょう。

遺品整理業者は、現場での作業を行うだけでなく遺品に関わる全てのアドバイスも行います。
遺品整理とは、遺族と故人をつなぐ作業であり、遺品整理業者もまた遺族と故人の立場にたち、しっかりと寄り添いながら業務を行わなければいけません。
精神的に遺品整理を行う気持ちになれない場合や、遺品整理をどのように行えばよいのかわからない場合、形見分けや税金に関するトラブルの危険性をなくしたい場合には、ぜひ遺品整理業者にご相談ください。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。