遺品整理を行ううえでは、不用品をごみとして処分することも多くなります。
そのごみの処分を業者に依頼することもありますが、廃棄物の処理については認可や資格が必要です。
廃棄物には「一般廃棄物」と「産業廃棄物」の2種類があり、この違いを知っておくことで、遺品整理業者とのやり取りをスムーズに進めることができるでしょう。
また、近年では「不法投棄」が社会問題となっていますが、この不法投棄にも廃棄物に関する認可が関わってきます。
今回は廃棄物に関する認可と、不法投棄問題についてご説明します。
目次
一般廃棄物と産業廃棄物
遺品整理では不要な物を処分することが多く、ごみの処分方法について各自治体のルールを細かく確認しておかなければいけません。
各自治体のごみ処分ルールについては、こちらの記事をご参照ください。
『遺品整理とごみ処分~これだけ違う! 各自治体のごみ処分ルール』
日常生活から出るごみや、粗大ごみについては各自治体のルールに従って、個人でも処分できる量であることが多いでしょう。
しかし、遺品整理の際には処分するごみも大量になり、なかにはごみ回収業者に依頼することもあるかと思います。
ただ、このごみ回収業者の中に、いわゆる悪徳業者が存在しているのです。特に、ごみを回収しておきながら「不法投棄」を行う業者には注意してください。
では、しっかりした業者と悪徳業者を見分けるためには、どうすればいいのか。その前に、まずはごみ……「廃棄物」について詳しくご説明しましょう。
廃棄物には、次の2種類があります。
- 一般廃棄物
- 産業廃棄物
大まかに言うと、主に工場や店舗など事業を行う場所において発生する廃棄物を「産業廃棄物」、産業廃棄物以外の廃棄物を「一般廃棄物」と言います。この違いが、遺品整理においては大きな差を生むのです。
細かく分類されている一般廃棄物
一般廃棄物は次の3つに分類されます。
- 家庭廃棄物
- 事業系一般廃棄物
- し尿
家庭廃棄物
まず「家庭廃棄物」は、細かく7つに分類されます。
可燃ごみ
私たちが定期的に回収してもらっている、日常生活において発生する廃棄物のことです。主な可燃ごみは、紙くずや食品です。
不燃ごみ
ガラスや陶器など「燃えない」もしくは「燃やしてはいけない」ごみです。食器や窓ガラスを割ってしまった場合は、不燃ごみとして処分しなければいけません。
粗大ごみ
「粗大ごみ」には、大型家具や家電、自転車などがここに含まれます。定期的に回収される可燃ごみ・不燃ごみと同じように回収できません。
家電4品目
洗濯機、エアコン、テレビ、冷蔵庫の4つは「家電4品目」と呼ばれ、家電リサイクル法に則って処分しなければいけません。
パソコン(小型家電)
パソコン、ゲーム機、炊飯器、電子レンジといった「家電4品目」以外の家電製品は、「小型家電リサイクル法」に基づいて処分します。この場合の「パソコン」とは、パソコンの周辺機器も含みます。
自動車
自動車の処分も、法律でリサイクル品として定められています。
家電4品目・小型家電・自動車のリサイクルについては、こちらの記事をご参照ください。
有害ごみ
乾電池や蛍光灯といった有害物質が含まれているもの。処分の過程で有害物質が漏れ出す危険を防ぐために分類されています。
事業系一般廃棄物
「事業系一般廃棄物」には次の2種類があります。
可燃ごみ
事業系一般廃棄物における可燃ごみとは生ごみや紙くずなどが含まれます。
粗大ごみ
家具などが含まれます。「家庭廃棄物」の分類とあまり変わりませんが、「家庭から排出される物」か「事業所から排出される物」かによって区分が異なります。
し尿
「し尿」という言葉はあまり耳にすることがないかもしれませんが、排泄物にかかわる廃棄物のことで、次の2種類に分類されます。
し尿
用を足す際に使われたトイレットペーパーなどを指します。
浄化槽に係る汚泥
浄化槽の汚泥は、浄化槽に溜まった汚れを指します。
どちらも水洗式のトイレには当てはまらず、汲み取り式のトイレもしくは浄化槽を利用しているトイレの場合にのみ当てはまるものです。
事業によって分類が異なる産業廃棄物
区分や分類が細かく分けられている一般廃棄物に対し、産業廃棄物の区分は次の2つです。
- 事業に関係なく排出される廃棄物
- 特定の事業に限って排出される廃棄物
事業に関係なく排出される廃棄物
「事業に関係なく排出される廃棄物」には、12の分類があります。
- 燃え殻
- 汚泥
- 廃油
- 廃酸
- 廃アルカリ
- 廃プラスチック類
- ゴムくず
- 金属くず
- ガラスくず
- 陶磁器くず
- 鉱さい
- コンクリートの破片
- ばいじん
上記は事業に関係なく分類されており、どのような場所であっても「事業」において排出されたものは産業廃棄物となります。
たとえば動植物性の油を含む廃油が、「事業」である飲食店から出ると、それは産業廃棄物となります。
特定の事業に限って排出される廃棄物
「特定の事業に限って排出される廃棄物」は、次の7つに分類されます。
- 紙くず
- 木くず
- 繊維くず
- 動植物性残さ
- 動物系固形不要物
- 動物糞尿
- 動物死体
これらは、それぞれ対象となる特定の事業が定められています。
紙くずの場合は。印刷業や出版業において発生した紙くずのみが産業廃棄物として分類されます。
もし出版業以外の事業所から紙くずが出ると、産業廃棄物ではなく一般廃棄物の「事業系一般廃棄物」の可燃ごみに分類されます。
産業廃棄物は、同じ物であっても、事業の種類によって分類が異なります。
それは事業によって、発生する廃棄物の中に廃アルカリや廃酸など危険な化学物質も含まれているからです。
適切に処分されず、人や環境に悪影響を与えることがないように、分類方法が細かく定められているのです。
ごみの回収には許可が必要、しかし……
一般廃棄物と産業廃棄物は、分類の仕方が大きく異なるとともに、回収の際に必要となる許可も違います。
一般廃棄物を回収する場合には「一般廃棄物の許可」、産業廃棄物を回収する場合には「産業廃棄物の許可」が必要です
遺品整理の際に処分するごみは、当然のことながら家庭から発生した廃棄物ですので、「一般廃棄物」にあたります。
そこで、ごみ回収は一般廃棄物の許可をもった業者に依頼しなければいけません。
「一般廃棄物の許可」と「産業廃棄物の許可」はそれぞれ独立した許可であり、産業廃棄物の許可を持っているから一般廃棄物の回収もできる、というわけではありません。
しかし、実際には産業廃棄物の許可だけで、一般廃棄物である遺品整理のごみ回収を行っている業者も存在しています。
なかには、ごみの回収のみを一般廃棄物の許可を持っている業者に委託しているという例もあるので、一概には言えませんが、遺品整理業者への依頼の際には確認しておいたほうがよいでしょう。
つまり、ごみ回収まで行ってくれる遺品整理業者を探す際には、次のポイントを抑えておいてください。
- 一般廃棄物の許可を持っているか
- 一般廃棄物の許可を持った業者と提携しているか
もしも、上記2つのポイントに該当しない業者に遺品整理をお願いした場合は、大きなトラブルに巻き込まれる可能性があります。
その大きなトラブルとは「不法投棄」です。
不法投棄は犯罪行為です!
最近ではニュースで取り上げられることも多くなったため、一度は「不法投棄」という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
不法投棄は、日本が抱える社会問題の一つです。
よく、あまり人がいない山奥に家電などが捨てられている光景を見たことはありませんか? もちろん、ごみを許可なく処分・放置することは違法であり、これを「不法投棄」と呼びます。
世界遺産となった富士山にも、以前はごみの不法投棄が相次いでいたようです。不法投棄は自然を破壊することにもつながる犯罪です。
不法投棄が発覚した場合は、罰金刑や懲役刑が科せられます。罰金は数十万円から数百万円、最大で1,000万円にも及ぶことがあります。
あまり知られていませんが、不法投棄はこれだけ重い刑が課される犯罪なのです。
といっても、個人が規模の大きい不法投棄を行うことは稀でで、ほとんどは業者の手によるものです。個人が日常生活のなかで出すごみの量であれば、定期的な回収で間に合います。
不法投棄を行うのは、ほとんどが「業者」です。業者の場合、業務において大型のごみが出ることも多いのですが、それぞれ適切な方法で処理しようとすると、それだけの費用が発生してしまうからです。
業者として、この費用を抑えたいという気持ちが、不法投棄につながってしまうのでしょう。
過去には工場や飲食店が、不法投棄で逮捕や書類送検された例があります。
かといって、ごみ回収業者に依頼すれば、それらが全て解決できるわけではありません。そのごみ回収業者が、不法投棄を行うことも多々あるのです。
それは、産業廃棄物の許可しか持っていない業者は、一般廃棄物の処分ができないため、不法投棄に至るというケースです。
ごみ回収で悪徳業者にだまされないために
高齢化が進む日本では、今後も遺品整理業の需要が高まっていくでしょう。それに伴って、悪徳業者の増加も懸念されます。
遺族から大切な遺品を預かり、しっかりと処分しなければならないのに、その遺品を不法投棄してしまう業者です。
一般的に、産業廃棄物の許可よりも一般廃棄物の許可のほうが下りにくいと言われています。
それは、産業廃棄物の許可は各都道府県に申請し、用件が揃っていれば許可を出すことが原則となっているからです。
対して一般廃棄物の許可は、都道府県ではなく市町村に申請するのですが、その市町村によっては許可が下りづらいようです。この許可がなければ、回収したごみセンター(クリーンセンター、清掃センターとも)に持ち込むことができません。
そのため、ごみを回収したのはよいものの、そのごみを運ぶ場所がなく、不法投棄に至るというケースもあるわけです。
ごみの不法投棄に関わるトラブル対策のためには、ぜひ業者が持っている資格の「内容」を確認してください。
全ての遺品整理業者が、ごみ回収まで可能であるとは限りません。お金を無駄にしないためにも、何より個人の遺品が無残に放置されることを防ぐためにも、細かい確認は絶対に必要であると言えるでしょう。