遺品整理をした際に、故人のコレクションや愛用品が出てくることがあります。
故人から相続する財産は、預現金や不動産などだけではありません。
美術品や骨董品などのコレクションや、家財・雑貨などを引き継ぐこともあります。
このような場合、どんなものに、どのくらい相続税がかかるのでしょうか?
目次
相続税の課税対象①:宝石
美しい輝きを放ち、多くの人を魅了する宝飾品。
宝石の持ち主が亡くなったあと、形見分けのような感じでもらってしまうと、相続税を意識することはないかもしれません。
しかし、相続税は、お金に換算できる全てのものにかかります。
つまり、高価な宝石は相続税の課税対象となるので、価値を評価し、遺産として申告しなければなりません。
- 宝石にかかる相続税は?
- 宝石の評価の方法は?
宝石にかかる相続税は?
宝石が○○円だから、相続税が△△円かかる、というように、単純に税額を計算することはできません。
なぜなら、相続税は「遺産の総額」に対して課税されるものだからです。
これは宝石に限らず、現金や預金以外の全ての遺産に当てはまります。
宝石の評価の方法は?
宝石は、現金や預金のように価値が明らかではないため、相続税を申告するには宝石の価値(相続税評価額)を評価しなければなりません。
宝石の相続税評価額は、実際の取引価格や鑑定結果をもとに評価します。
買取業者に聞く
宝石の買い取りを専門に行っている業者に査定を依頼しましょう。
査定価格は業者によって違うため、複数の業者に依頼するとよいでしょう。
販売店に聞く
その宝石を買った店がわかれば、直接問い合わせてみましょう。
実際の売却価格を使う
モノとして残さなくてもよい場合は、宝石を売却し、その価格を相続税評価額とします。
査定の結果、宝石の価値が数万円程度と少額な場合は、他の家財道具などとまとめ、数十万円単位の価格で評価します。
少額の宝石が複数ある場合は、それらを合わせて評価することもあります。
相続税の課税対象②:骨董品
故人が遺したものの中に書画骨董などがあった場合も、法定相続人が相続税評価の調査を行う必要があります。
- 骨董品の価値は?
- 骨董品の評価法は?
骨董品の価値は?
10万円に満たない価値の骨董品は、家具や家電と同じ生活用財産として相続税計算がされます。
ひとつあたりの価値が低ければ、その時点で骨董品として申告する必要はないと考えてよいでしょう。
ですが、故人が有名産地のものや有名作家の作品をコレクションしていた場合は、家庭用財産としての申告は難しくなります。
骨董品の評価法は?
国税庁では、販売業者以外が所有する骨董品や美術品の評価を行う際に、「売買定例価額」と「精通者意見価額」などを参考にすることを義務付けています。
“精通者”とは、古美術商や鑑定士の在籍する専門店や、美術倶楽部などのことです。
これらを踏まえ、購入時の価格や、市場で販売されている同様の物の価額を参考にしたり、買い取り業者に査定を依頼し、その額を参考にして評価します。
最近はオンラインでも査定ができますので、複数の業者で査定してみましょう。
また、古美術商の鑑定士に鑑定してもらい、その価格を参考に評価するという方法もあります。
相続税の課税対象③:絵画
もし、故人が多くの絵画を所有していたら、すぐに作品の処分をせず、相続税評価を行う必要があります。
絵画に対して興味や関心のない人からみれば、残された大量の絵画は不用品でしかなく、価値のないものかもしれません。
でも、もし、その中に数百万~数千万円レベルの有名作品が1枚でもあったら大変です。
こういった作品を捨てたり処分したりしてしまうと、相続税無申告や脱税の疑いをかけられ、ペナルティを科せられる可能性があるのです。
絵画が遺された場合は、申告・納税を行うことを前提とし、鑑定を行いましょう。
- 絵画のランク付け
- 絵画の鑑定・査定
絵画のランク付け
ひと口に「絵画」と言っても、ピンからキリまでさまざまな作品がありますね。
たくさん持っているからといって、それが一般的に価値の高い作品とは限りません。
一般人の描いた絵画
どんなに美しい感動的な作品でも、描いた人が芸術家として無名である場合、相続税評価はつかないと考えられます。家族が趣味絵で描いた作品も同様です。
相続税評価がつくものは、あくまで「お金に換算できるもの」だからです。
購入価格が低い作品
購入価格が10万円に満たない作品は、家具や家電、日用品などと同じ「家庭用財産」としてまとめて申告を行います。
1点数百万円以上の高額作品
1点の価値が数百万~数千万円レベルの絵画は、書画骨董として単独で相続税申告します。
このような高額・高い価値のある作品は「家庭用財産」に含めることはできません。
絵画の鑑定・査定
書籍を参考にする
もし、故人が「美術年鑑」「美術市場」といった書籍を持っていたら、そこに掲載されている価格を参考にすることができます。
「美術年鑑」「美術市場」とは、現在の日本画家・洋画家の作品の評価額が記載されている書籍です。
ただし、この2冊は評価基準も評価方法も異なるので注意が必要です。
また、気をつけたいのは、このような書籍に掲載されている情報は、その作家の『最高傑作』の価格であることです。
そのため、掲載されている作品の価格と、家庭に眠っている作品の価値は必ずしも直結できないこともあります。
購入価格を参考にする
故人が絵画を購入した際のレシートや領収書が保管されていれば、その購入価格を参考情報にすることができます。
ただし、購入後の年数によって、価値が下落している場合もあります。
買取業者に査定してもらう
近年、実際に店に出向く以外にも、オンライン査定やLINE査定、各社の用意する問い合わせフォームから絵画作品の買取相場を調べるサービスが増えています。
詳細な作品情報がわかる場合、オンラインで評価額を調べることが可能です。
また最近では、手数料無料で査定をする買取専門店も増えています。
オンラインでは不安な人やコストを節約したい人は、利用するとよいでしょう。
鑑定書を作ってもらう
被相続人のコレクションがあまりにも多かったり、オンライン査定で送信するべき作品情報が全くわからない場合は、絵画専門店の鑑定士に自宅に来てもらいましょう。
鑑定士に仕分けしてもらい、書画骨董品評価鑑定書を作成してもらいましょう。
また、遺産相続が終わった後の処分なども依頼することができます。
ただ、この方法での査定には、費用が必要です。
申し込み1件につき2万~10万円、絵画作品1点につき2千円~2万円前後の料金がかかります。
料金は業者や作品点数によっても違うので、業者選びは慎重に行いましょう。
相続税の課税対象④:プレミアのつきやすいおもちゃなど
昔懐かしいおもちゃ。テレビの鑑定番組で高値の評価がされることも多いですね。
なかには何十万円もの価格がつけられるものもあります。
- 激レアおもちゃは相続すると価値が下がる!?
- おもちゃなどの鑑定方法は?
激レアおもちゃは相続すると価値が下がる!?
たとえば、日本じゅうが感動した映画「E.T.」のグッズや、日本のアニメキャラクターのフィギュア。
戦後の僅かな期間にだけ作られた希少なブリキや、昭和時代の人気ヒーローの人形は、驚くような高値で取り引きされています。
このようなおもちゃは、相続の際、本当にテレビ番組のような価値がつくものなのでしょうか?
おもちゃなどは、遺産分割の際に鑑定を依頼して評価しますが、この鑑定は、テレビなどで示される市場価格と同じ基準で鑑定されるとは限りません。
さらに、カビや傷、素人目にはわからない減点ポイントが積み重なると、テレビ番組やオークションで付けられるような高額評価される可能性は低くなります。
おもちゃなどの鑑定方法は?
最近増えている、オンラインやLINEでの評価が便利です。
また、ダンボールキットを取り寄せ、お店に送って評価してもらうという方法も広がっています。
お店は得意分野がはっきりしていることが多いので、不当な評価をつけられることは少ないでしょう。
不安な場合は、オンラインなどで複数の査定を受けるとよいでしょう。
まとめ
故人が数百万~数千万円レベルの書画骨董を専門店から購入していたり、所有品を美術展に貸し出したりしていた場合、税務署はその情報を把握しています。
必ず個別の相続財産として申告しましょう。
相続において、書画骨董は、よほど価値が高いものでない限り、遺産分割の対象にはならず、形見分けとして処理されるケースが多いようです。
遺産分割の対象になるものは、一定の価格以上のものに限られるため、形見分けとして処理させる場合、受け取ったものは相続税の対象にはなりません。
故人の遺してくれたもの。価値が高くても、そうでなくても、大切にしていけたらいいですね。