遺品整理業者は、その業務の一つとして、ごみ屋敷の清掃も行っています。
遺品整理とごみ屋敷清掃、どちらも片付けには違いないのですが、似ているようでいて、実はそうではありません。
そのため、同じ部屋でも、遺品整理とごみ屋敷の清掃では費用が違ってくることがあります。
その違いは、どこにあるのでしょうか?
目次
ごみ屋敷とは?
社会問題にもなっている「ごみ屋敷」。
テレビなどで見たことがある人も多いのではないでしょうか?
家の中は、足の踏み場もないほどモノやごみが積み重ねられ、何がどこにあるのか全くわかりません。
ひどい例では、バスタブやキッチンのシンクの中にまでモノやごみがつめこまれ、もはや普通の生活ができなくなっています。
家の中だけでなく、外の敷地にまでごみがあふれ出し、家全体がごみでいっぱいになっている・・・そんな家が「ごみ屋敷」です。
あまりにもひどいので、空き家なのかと思うと、ほとんどの場合は、このごみの中で人が生活しています。
見た目の不潔さ、不愉快さだけでなく、長年溜まったごみのせいで悪臭や害虫などが発生し、近隣に迷惑をかけているケースも少なくありません。
さらに、室内で人が孤独死しているようなケースもあり、ごみ屋敷は大きな社会問題になっているのです。
家がごみ屋敷になってしまう原因は?
遺品整理の仕事は、単に遺品を仕分けて終わりではありません。
一般的に、仕分けた後の部屋の清掃や不用品回収がセットになっています。
特殊清掃が必要なケースだけではなく、遺品を片付け、物を出した後に、清掃を行うのが通常となっています。
これは、そのお宅がごみ屋敷かそうでないかは関係なく、必ず清掃を行います。
ですが、近年、遺品整理を請け負ったお宅が「ごみ屋敷」であるケースが非常に増えています。
ごみ屋敷に住む人は、いろいろな世代の人がいますが、なかでも高齢者が多いように見受けられます。
なぜ、高齢者の住居はごみ屋敷になりやすいのでしょうか?
- 高齢者の孤立化
- 世代感覚
- 体力的問題
高齢者の孤立化
昔は、近所の人との立ち話や地域の活動など、ご近所付き合いが密でした。
しかし、現代ではマンションなどの集合住宅が増え、近隣コミュニティが姿を消し、他人との関わりが薄くなっています。
特に一人暮らしの高齢者は、人との関わりが極端に少ないために、だんだん自分の身に構わないようになり、家が汚れていても気にしなくなっていくようです。
世代感覚
高齢者が溜め込むのは、空き容器など本当のごみだけではありません。
戦争や、ものが少ない時代を経験してきている高齢者には、基本的にものを大切にしなければという意識の強い人が多いようです。
また、もの忘れなども始まり、何度も同じものを買って捨てられなかったり、期限切れの食品が冷蔵庫に詰まっている、買い置きのトイレットペーパーが物置に詰まっている、というようなケースも少なくありません。
体力的問題
若い頃と同じように体が動けばいいのですが、高齢になれば、どうしても体力が落ちてきます。
また、膝や足腰に痛みが出たり、持病を抱えたりするようにもなります。
加えて、視力が落ちてくると、どうしても「片付ける」という行動が億劫になってくるのです。
こういった理由から、高齢になると、たとえ「片付けなくては」という意識があっても、なかなか行動に移せないようになっていきます。
このような理由から、自分で片付けができない高齢者が増えており、その結果、高齢者の住居が「ごみ屋敷」や「汚部屋」になっていくのです。
ごみ屋敷の清掃とは?
ごみ屋敷を放っておくと、ごみが悪臭を放ち、ネズミや害虫などが発生したり、また、ごみが道路や他人の敷地にまで溢れたりといったことにつながります。
火災の危険性もあるので、近隣の迷惑になり、トラブルに発展することも考えられます。
さらに、自治体によっては、悪質な住人の氏名を公表したり、罰金を課したりすることもあるようです。
- 業者に依頼するメリットとは?
- 実際の作業は?
業者に依頼するメリットとは?
このままにしておくわけにいかない状態になったときには、もはや自分1人の力ではきれいにすることができないレベルになっています。
そうなったら、プロの手を借りて徹底的に掃除をするしかありません。
業者に任せるメリットには、次のようなものがあります。
時間がかからない
ごみ屋敷と呼ばれるほど溜まったごみは、個人で処分するにはあまりにも量が多く、これを全て廃棄し、家の内外を清掃するには、何日もかかってしまいます。
でも、業者に依頼すれば、短時間でごみの廃棄から清掃まで行ってくれます。
一度で完了
自分で清掃しようとした場合、必要なものと不要なものの仕分け、ごみの分別、粗大ごみの回収依頼と搬出、部屋の掃除、といった作業をすべて自分で行わなくてはなりません。
しかも自治体で回収してもらう場合、ものによって回収日が違うため、一度では終わりになりません。
しかし、プロに依頼すれば、一度の依頼で全て完了できます。
粗大ごみの処理もできる
冷蔵庫などの大型家電や、タイヤ、不要になったタンスやテーブルなど、個人で搬出したり、廃棄したりするのが難しい粗大ごみも処分してもらえます。
搬出をする必要がない
片付けで出たごみや不用品を搬出するのは、大変な労力がかかります。
自治体では、あまりにも大量のごみは一度に出せないため、何度も回収場所へ運ばなくてはなりません。
対して、業者は事前の見積もりでトラックを用意し、全て運び込むので、依頼主がモノを運ぶ必要がありません。
実際の作業は?
ごみ屋敷の片付けは、必要なものと不要な物を仕分けし、ごみを捨て、ごみがなくなったあとの清掃をするというのが一般的です。
もちろん、見積もりの段階で聞き取りなどは行いますし、実際の作業の際にも、依頼主に必要なものと不要なものの確認をしながら行います。
「汚れ部屋」から「ごみ屋敷」まで、片付けの段階は様々ですが、とにかく「捨てる」「モノをなくす」ことが、ゴミ屋敷の片付けの基本と言えます。
ごみ屋敷の片付けと、遺品整理の違いは?
「いらないものを片付け、ごみを捨てる」。
これだけを見ると、ごみ屋敷の片付けと遺品整理は、あまり違いがないように思えますね。
ところが、両者の間には、大きな違いがあるのです。
- 作業日数
- 作業内容
- 最近の依頼傾向
- 費用
作業日数
遺品整理の場合、たくさんのモノの中から「どこに行ったか分からないものを探す」ことが多いのが特徴です。
たとえば、通帳や印鑑、土地の権利書や遺言書などの重要書類といった遺産相続に必要なものや、写真や思い出の品、趣味で集めていたもの、愛用していた品などを見つけてほしいという依頼です。
また、形見分けの品としてとっておくものや、供養したいもの、価値があり売ることができるものなども仕分けして行きます。
これらの作業では、たとえば書類やメモといったものであれば、くしゃくしゃになった封筒でも、どんなに小さな紙片でも、大切なことが書かれているかもしれないため、全て1つ1つ読んで確認していきます。
引き出しにある名刺やカードもチェック、また小物入れの中も1つ1つ確かめていきます。
どんな小さな物も見逃さないようにしなくてはならない、非常にデリケートな作業です。
写真なども、要・不要は依頼主にしかわからないため、全ていったん保管し、確認作業を行っていただくことになります。
さらに、存命の人のものと違い、故人が遺されたモノは全て大切な遺品として、より丁寧に扱います。
このような理由から、遺品整理は、ごみ屋敷の片付けよりも作業工程が多いため、日数が増えることになるのです。
作業内容
ごみ屋敷の場合も、害虫駆除や消臭などの作業を行う場合があります。
しかし、遺品整理の場合、孤独死や変死などの後始末が必要なケースがあります。
このような場合、特殊な薬品を使って特別なクリーニングをする必要があるため、ごみ屋敷の片付けよりも時間も手間もかかることがあります。
最近の依頼傾向
現在、遺品整理は一戸建てのお宅の依頼が多くなっています。
それに対し、ごみ屋敷は1Kなど賃貸物件が多いようです。
広さが違えば、当然、作業日数も費用も変わってきます。
一戸建ての場合は、お庭の片付けや、モノがいっぱい詰まった物置の片付けなども受けているので、さらに手間暇がかかることになります。
費用
このようなことから、遺品整理の場合は、ごみ屋敷の片付けよりも作業日数がかかり、それに伴う費用も高くなるケースが多くなるのです。
まとめ
ごみ屋敷は単に片づけが多いですが、遺品整理は「大切なものを探す」という非常にデリケートな作業を行います。このため、手間がかかり、作業日数や費用が増えます。
また、何を探して欲しいのか、業者に明確に伝えることも大切です。
遺品整理をする場合は、これを踏まえて見積りや依頼をお願いしましょう。