アポ電強盗とは? 自分の命・老後資産や遺産を守るための対策

アポ電強盗とは? 自分の命・老後資産や遺産を守るための対策

電話を利用した犯罪には、家族を語ってお金を振り込ませる「オレオレ詐欺」や、身に覚えのない使用料を支払えと迫る「未払い債権の不当請求詐欺」などがあります。

さらに、近年増えているのが「アポ電強盗」という犯罪です。

その手口は、目星をつけた家に電話をかけて、資産額や家族構成を聞き出し、強盗に押し入るというもの。
アポイントの電話を取るという意味で「アポ電強盗」と呼ばれています。

そこで、アポ電強盗の手口や対処法について見ていきましょう。

アポ電強盗の事例は?

2019年1月から2月にかけ、あらかじめ家に現金があるかどうかを電話で確かめた上で強盗に押し入る事件が、東京都内で3件続けて発生しました。

1月11日、3人組が渋谷区の高齢世帯に押し入り、体を縛って現金約2000万円を奪いました。この2日前、不審な電話がかかってきていました。

続いて2月1日には、やはり3人組が、渋谷区に住む高齢夫婦の両手を縛り、現金約400万円を奪いました。
この件でも同様に、押し入る2日前に怪しい電話がかかってきています。

さらに2月28日、江東区東陽のマンションで、高齢者が手足を縛られ、殺害されるという事件が発生しました。
被害者は、2月中旬ごろ、アポ電があったと知人に話していました。

事件が起きているのは、都内ばかりではありません。
大阪では、2019年3月25日、金融庁の職員をかたった犯人が60代女性宅に電話をかけたあと女性宅を訪れ、キャッシュカードをだまし取りました。

静岡県では、2019年3月16日、74歳の女性が金庫に入っていた現金約100万円を奪って逃走する事件が起きました。
この前日、女性宅に現金の保管状況を尋ねる電話があったといいます。

都内で起きた事件については容疑者が逮捕されていますが、他にも同様のグループが複数存在するといわれ、全国に広まって行くことが懸念されています。

アポ電強盗の手口は?

アポ電強盗02

加害者は、ターゲットが信頼しそうな相手になりすまし、犯行を行う前に家の状況をあらかじめ聞き出しておくという方法を使います。

高齢者の独居世帯か、家族はいるのか、資産の状況から、自宅にどれだけの現金があるのかなどの情報を聞き出します。

なりすます相手は、主に「親族」「警察」「NHKや調査員」の3つです。

親族のふりをする

被害者に怪しまれないよう、「電話番号が変わった」、「風邪で声がおかしい」などと嘘をつき、警戒心を解きます。

さらに、時間をおいて「事故を起こしてしまった」「急きょ、入院することになった」などと騙り、金銭を要求します。

被害者は、最初の電話で本人だと思い込んでしまっているため、金銭を要求されても、疑うことなく用意してしまうことが多いようです。

警察のふりをする

警察官を装い、「オレオレ詐欺の被害が増えています。注意してください」などと注意喚起の電話をかけてくるパターンもあります。

加害者は「被害状況を確認しているのですが、現金は自宅に保管していますか?」「日中はお1人ですか?」など、言葉巧みに情報を聞き出します。

被害者は、警察を名乗られることで警戒心を解いてしまい、聞かれたことに素直に答えてしまうケースが続出しています。

NHK職員など、調査員のふりをする

たとえばNHKなどを名乗り、調査員を装って「番組制作のために、高齢者の方の預金額について調べている」「家族構成は?」などの電話がかかってくるパターンです。
この他には、金融庁の職員などを騙った例もあります。

さらに、このような電話のあと、警察職員を名乗る人物から「不審な電話がなかったか」「あなたの個人情報が悪用されている可能性がある」など別口の電話がある二段構成で騙すケースもあり、手口は巧妙化しています。

アポ電強盗から身を守るポイント〜電話編

アポ電強盗03

アポ電強盗の第一歩は、まず電話です。
被害を未然に防ぐため、電話に対する対応の方法を覚えておきましょう。

一人の時は電話に出ない

電話に出なければ、加害者に個人情報が漏れることはありません。
加害者は証拠を残すことを嫌うため、留守電にしておけば防犯に有効です。

本当に必要な電話の相手は、留守電に連絡先や要件を伝えてきます。
大丈夫な相手と分かってから電話に出ましょう。

かけ直して確認する

電話に出ないと、なんとなく悪いな、と思う人もいるかもしれません。
そのような場合は、一度切ったあと、自分からかけ直してみましょう。

家族を名乗る相手から「電話番号が変わった」という電話があった場合も、まずは自分が知っている番号にかけ直して確認してください。

警察や公共機関を名乗る電話は、相手の所属を聞いておき、電話帳やインターネットで調べた番号にかけてみましょう。
つながらなければ、詐欺の疑いが濃厚です。

個人情報を教えない

名前や住所をはじめ、家族構成などの個人情報を話さないようにしましょう。

犯人は、警察や役所職員などを騙って個人情報を聞き出そうとします。
特に、高齢者が日中1人でいると知られると、非常に危険です。

すぐに信用せず、知らない相手からの、電話による個人情報の問い合わせには決して応じてはいけません。
不審な電話には出ない・応じないのが一番ですが、もし出てしまった場合は、息子夫婦と同居していることにするなど、犯罪の標的にならないよう注意しましょう。

警察に相談する

不審な電話があったら、すぐに警察の相談窓口#9110に電話しましょう。

#9110は、事件性や緊急性があるか判断がつかない場合や、犯罪や事故の発生には至ってないけれど、ストーカーやDV・悪質商法など警察に相談したいことがあるときに相談できます。
かかってきた電話番号と通話内容をまとめて、すぐに相談してください。

アポ電強盗から身を守るポイント~訪問時編

アポ電強盗04

従来の詐欺には引っかからない人でも、高齢になると、力づくの強盗に抵抗することは至難の業です。
もし訪問されてしまった場合は、次のようなポイントを覚えておきましょう。

日中は居留守を使う

不意の訪問には応じないことが大原則です。

現代においては、日中、1人でいる時には、居留守を使うくらい警戒してちょうどいいくらいと言えます。

電話でアポイントがあった場合は、自分の知っている番号にかけ直すなど、確実に信用できる相手であることを確認した上で、他の家族がいる時間帯を指定して訪問してもらいましょう。

玄関先に防犯カメラを設置する

詐欺犯、強盗犯は捕まるリスクの高い犯行には及び腰になるので、玄関先に防犯カメラを設置するのも有効です。

カメラはダミーでも構いません。「防犯をしっかり行なっている家」と印象付けることが大切です。
防犯カメラを設置するほか、インターホンをカメラ付きのものにするなどの対策を行いましょう。

相手の所属などを聞き、確認する

警察などを名乗る人物が訪ねてきた時は、すぐに扉を開けてはいけません。まず、相手の所属や階級を確認しましょう。

警察手帳や身分証明書を示されても、一目見ただけでそれが本物であるかどうか確認できません。
相手の所属と氏名を聞いたら、所属する警察署の電話番号を調べ、その人物が実在するか、その人物は自分の家に来ることになっているのか確認してください。

相手が本物の警察官であれば、警戒されたり、確認のために待たされたりすることを、褒めることはあっても怒ることはありません。
逆に言えば、急かしたり怒ったりする相手は怪しいということになります。

不審な場合はすぐ通報

少しでも怪しいと思ったら、迷わず110番に通報しましょう。
特に身の危険を感じた場合は、ためらわず通報します。

防犯に役立つグッズ

アポ電強盗に遭わないためには、防犯グッズの活用も有効です。
ぜひチェックしておきましょう。

おしゃべり人形

警察と民間が共同で開発した「あんしんみーちゃん」と言うおしゃべり人形があります。

この人形は、電話が鳴ると「すぐに信用しちゃダメ。警察に相談してね」など、9種類の言葉で注意を促してくれます。

詐欺に対する心構えができた状態で電話に出ることができるという仕組みで、2018年12月発表された東京杉並区の高井戸警察署での行われた実証実験では、約50件の詐欺電話がかかってきたにも関わらず、被害実績は0件だったそうです。

防犯対策電話録音機

かかってきた電話に対し、「この電話の通話内容は、防犯のために録音されています。あらかじめご了承ください」という警告メッセージを流してくれます。
また、最大60分、30件分の通話が録音できます。

防犯ステッカー

「防犯カメラ作動中」などの文言が書かれたステッカーが売られています。
一番安価で、誰でもすぐにできる防犯対策です。

防犯ステッカーは、外から侵入して来そうな場所や、防犯カメラが設置出来ない場所へ貼り付けておくと、不審者の犯罪を起こす気力を削いでくれます。

さらに、防犯カメラと合わせて設置すれば、相乗効果でより不審者を警戒させることができます。

まとめ

詐欺の手口は年々巧妙化してきていますが、近年は過激化・凶暴化しています。

高齢者は、強盗に押し入られてしまっては、抵抗できません。

いたましい事件に巻き込まれないためにも、普段から防犯について家族で話し合い、詐欺に対抗する意識を高めましょう。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。