近年、テレビなどでも話題に上がることの多い遺品整理。業者も急増しており、2011年に全国で3,000社ほどだった遺品整理業者は、2018年現在、1万社を超えるといわれています。
故人や遺族の気持ちに寄り添った仕事をするというのが遺品整理業者ですが、業者が増えるに従い、トラブルも増えています。
そこで、「これっておかしい?」と疑うべきポイントと、トラブルが起きてしまった場合の対処法をご紹介します。
目次
なぜ遺品整理でトラブルが起きているの?
地元を離れて遠方に住んでいる人や仕事で忙しい人にとって、手間の時間もかかる遺品整理はとても大変です。
最近では、単身者や高齢者の孤独死も増えており、遺族ではなく大家さんや公的機関からの依頼も多くなっています。
遺品整理の需要は急速に高まっているのに対し、多くの人は、遺品整理の知識や実際まで知りません。このギャップから、依頼者をだまして荒稼ぎをしようとする悪徳業者が出てきているのです。
現在、遺品整理に関しては、まだ法整備が整っておらず、国で認められた資格や基準などがありません。
極端に言えば、「私は遺品整理業者です」と名乗りさえすれば、全くの初心者であっても今すぐ起業できてしまうのです。
また、遺品整理業は新規事業モデルとして社会的認知が進みつつあります。そこで補助金を受けやすくなるケースもあるため、これを逆手に取る悪質な業者も増えています。
もちろん、優良業者はたくさんいます。しかし、優良業者かどうかは、業者自身の良心ひとつにかかっているといって過言ではない状況なのです。
どんなトラブルが起きている?
では、悪徳業者との間で、どんなトラブルが起きているかを見ていきましょう。
高額請求
遺品整理の費用は、どのくらいかかるかご存知ですか?
業者のホームページには料金が掲載されていますが、あくまでも目安です。部屋の広さが基本になりますが、部屋の状況や遺品の量、自宅の立地などで料金は大きく変わるからです。
これを利用し、通常ではありえないような見積もりを出されるというトラブルが起きています。
不当な追加請求
遺品整理を行う前には現地で見積もりを行いますが、あとから追加料金が上乗せされることがあります。
悪徳業者は、最初は低く見積もっておいて、「予想以上にごみがあった」などといって、2~3倍もの値段をふっかけてきます。
また、見積もり外のものを処分する代金として、10万、20万もの料金を追加で要求するケースもあるようです。
不法投棄
遺品のほとんどは、不用品として処分されます。その処分料を浮かせるため、不法投棄をする業者がいます。
怖いのは、不法投棄をした業者だけではなく依頼者も罪に問われる場合があることです。不法投棄の罰は重く、5年以下の懲役もしくは1000万円の罰金が課せられてしまいます。
さらに、業者が不法投棄をおこなったことを知らなくても、依頼者にもこの罰則が課せられます。
遺品の盗難
遺品の内容すべてを把握している依頼者は、まずいません。
そのため、もし何かなくなっても気づきにくいのです。それをいいことに、現金や貴金属などを盗まれるといったトラブルが起きています。
契約内容を遂行しない
遺品を供養する契約なのに供養をせず廃棄していたり、処分するはずが勝手に転売していた、残しておきたい遺品を回収されてしまったりなどのケースもあります。
遺品は、一度回収されてしまうと、その後を確認することは難しいため、取り戻すこともできません。
遺品を雑に取扱う
遺品は、たとえ処分するものだったとしても、全て丁寧に取り扱うべきものですが、遺品を雑に扱う業者が存在します。
遺品を手当たり次第ごみ袋に詰めて、マンションのベランダから下へ投げ落としたというような例があります。
不適切な買い取り
遺品の中から市場価値のあるものを買い取ってくれる業者があります。
しかし、遺品を相場よりも安く買い叩こうとする業者には気をつけましょう。タダ同然の価格で買い叩かれたものが、実は高額な骨董品だったというケースもあります。
また、遺品を買い取るために必要な「古物商許可」を持っているかを必ず確認しましょう。
ここが怪しい!? 悪徳業者を見分けるポイント
悪徳業者を見分けるポイントを知っておきましょう。
見積もり金額が安すぎる
見積もりの金額が極端に安い業者は要注意です。
安い金額で安心させておいて、あとから高額の追加料金を請求されるケースが多いからです。
見積もりを提示されたら、金額の内訳について納得行くまで質問しましょう。見積もり前に、質問する項目を作っておくのも有効です。言った・言わないの口論になることがあるので、できれば見積もり時の会話を録音しておくと、より安心です。
2〜3社から相見積もりを取り、遺品整理費用の相場を理解しておくことも大切です。
見積もりの時間が短すぎる
見積もりを出すとき、どれだけ時間をかけて故人の遺品を見てくれるかも大切です。
30分や1時間程度で済ませる業者は怪しいと疑ってかかりましょう。高額な追加請求のチャンスになってしまうかもしれません。
見積もりは、2日間くらいかけ、親族や近所の人など第三者を交えて行うのが理想です。その上で、見積もり内容について詳細な説明をしてもらえるかが大事なポイントとなります。
現地見積もりをしない
見積もりをインターネットや電話で行う業者がいます。一見、手軽で簡単に思えますが、これものちの高額請求につながる可能性大です。
見積もりは、必ず実際に現地で行うのが鉄則です。
態度・対応が悪い
依頼者が納得せず難色を示したりすると、暴言を吐いたり怒りだしたりする業者がいます。
室内に足を踏み入れられ、大きな声を出されると、高齢者や女性の依頼者は怖くなって諦めてしまうのです。
また、「今日決めれば安くなる」など契約を急がせる業者、電話などの対応が悪い業者、身だしなみがきちんとしていない業者も要注意です。
悪徳業者にだまされないためには?
遺品整理を依頼する場合、依頼者側が自衛するためのポイントも知っておきましょう。
遺品の価値を記しておく
生前からの話し合いが必要ですが、遺品にどんなものがあるか、どれくらいの価値なのかをエンディングノートなどに書いておきましょう。
骨董品や趣味用品など、遺族には価値が分からないものもたくさんあります。エンディングノートに詳細を記してあれば、安く買い叩かれる心配がなくなります。
また、盗まれていたことに気づき、理由なく業者を疑うこともなくなるので、トラブルを軽減できます。
部屋の写真を撮っておく
作業する前に、部屋の様子をなるべくたくさん写真に撮っておきましょう。業者に対し、作業前後の様子を観察しているとアピールしておくと、不正を働きにくくなります。
作業に立ち会う
遺品整理の際は、ぜひ作業に立ち会いましょう。最近は、鍵を借り受けて、依頼者の立ち会いなしで作業をする業者もいます。しかし、よほど信頼できる業者でない限り、立ち会ったほうが安心です。
作業に立ち会えば安心なだけでなく、相談しながら納得いく整理を進めることができます。
良い業者の見分け方を知っておく
一般社団法人遺品整理士認定協会が提唱する、良い業者の見分け方を知っておきましょう。
・ホームページの内容はわかりやすいか
・遺族への思いやりを言葉の端に感じるか
・迅速な対応をしてくれたか
・見積もり来訪時、身だしなみはきちんとしていたか
・会社の制服があるか
・パンフレットやチラシに仕事の流れが書いてあるか
・見積書や名刺に許可番号や所在地などを明記しているか
・見積書では料金項目が詳細に記されているか
・会社名義の銀行口座を保有しているか
・見積もり来訪で、不安をすべて解消してくれたか
悪徳業者にだまされてしまったら
運悪く、遺品整理サービスでの契約トラブルが発生してしまったときは、どうすればよいのでしょうか。
消費者センターに相談する
もしもトラブルが起きてしまったら、消費者庁が設けている相談センターに相談してみましょう。
相談者のケースごとに親身に相談に乗ってもらえます。また、契約内容を元にさまざまなアドバイスをしてもらえます。
クーリング・オフ
「クーリング・オフ」は、商品やサービスの契約や購入から一定期間内であれば、消費者側から無条件かつ一方的に、契約の解除や撤回をすることができる制度です。
遺品整理の見積りのために訪問した業者とその場で契約をした場合、訪問販売に該当するので、この制度が適用されます。
法律で定められた契約書面を受け取った日を含めて8日以内に、クーリング・オフする旨を書面で業者に伝えましょう。書面は内容証明郵便や特定記録郵便、書留で郵送します。
弁護士に相談する
あまりにも高額の料金を請求された場合は、消費者問題に強い弁護士に相談してみるのもいいでしょう。
経済的に厳しい場合は、法テラスというサービスを利用しましょう。保有資産や月収が一定以下という条件を満たしていると、専門の弁護士を紹介してもらえます。
また、無料相談に対応している法律事務所や、公的機関による無料相談会なども開かれています。
遺品整理業とは「亡くなった方や遺族の方の心の整理をお手伝いする仕事」です。多くの業者は、本当に依頼主の気持ちになって仕事をしてくれます。
故人にとっても家族にとっても納得のいく遺品整理を行うため、事前に調査・比較などをして、優良な業者にお任せしたいですね。