遺品整理業のトラブルと対処法5つのポイント

遺品整理業のトラブルと対処法5つのポイント

近年、広く知られるようになってきた遺品整理。おかげさまで、遺品整理業者にもスポットが当たる機会が増えてきました。
それに伴い、業者の数も増えています。2011年9月ごろ、遺品整理関連業者は全国に3000社ほどでしたが、2015年8月には8000~9000社と急増しています。

業界が大きくなるにつれ、大変残念なことに、悪質な業者も見られるようになりました。
インターネット上にも、様々な業者のホームページがありますが、当然ながら良いことしか書いていないので、本当に良い業者なのか、そうでないのか、なかなか判断がつけにくいものです。こういったなかで、トラブルが頻発しています。
今回は、こういったトラブルの例をもとに、トラブルを回避する方法をご紹介します。

遺品整理にまつわるトラブルとは?

遺品整理を依頼した場合、どんなトラブルが起きているのでしょうか?

  • 高額請求
  • 不法投棄
  • 不当な買い取り
  • 無断回収
  • 依頼主の意に添わない作業

高額請求

遺品整理業者に関するトラブルで一番よく聞くのが「法外な料金を請求された」というものです。見積もりでは安い料金で安心していたのに、遺品の整理作業が終わったあとに、追加料金として高額を請求されるというトラブルが増えています。

亡くなった父上の遺品整理をすることになったAさんは、「遺品の量が多かったから」、「待ち時間が長くなったから」、「金庫や消化器など、処分困難物があったから」などの理由をつけ、見積もりの4倍もの料金を請求されてしまいました。

また、遺品整理以外の勧誘をする業者にも要注意です。
離れて暮らす弟さんが孤独死をしたBさんは、業者に「家のリフォームをしないと片付けができない」言われ、高額なリフォームを勧められました。Bさんは料金に驚きましたが、そういうものかと信じてしまったそうです。
実際には、遺品整理とリフォームは関係ないものですが……。

不法投棄

仕分けされた遺品のなかには、処分するものや廃棄するものが出て来ますね。廃棄や処分を遺品整理業者に依頼する場合、料金を支払うことになります。
しかし、料金を受け取っているにも関わらず不法投棄を行ない、処分費用を抑えたり、手間を省こうとしたりする業者がいます。

不法投棄

Cさんは、ある日、警察から連絡が来てビックリ。依頼した業者不法投棄が発覚し、そのなかに個人情報があったのです。
Cさんは、あわてて依頼した業者に連絡しましたが、すでに電話が通じなくなっており、結局Cさんが自分で処分しなくてはならなくなってしまいました。

不当な買い取り

遺品の中には価値のあるものもあります。
たとえば、骨董品や美術品、宝飾品、趣味の品などは、知識のない人には価値がわかりにくいですよね。それをいいことに、市場価格よりも相当低い価格で買い取られるケースが多発しています。

Dさんは、亡くなったお父さんの遺品の中にあった釣り竿を、業者に言われるまま二束三文で引き取ってもらいました。
しかし、あとからその商品をネットで見てビックリ。なんと、80万円もする高級釣り竿だったのです。

無断回収

遺品整理作業中に、家族も知らない現金やヘソクリ、貴金属などがひょっこり出てくるのは珍しいことではありません。これらをきちんと整理して遺族にお返しするのが遺品整理業者の仕事です。
しかし、これらを依頼主に報告せず、無断で回収・売却してしまう業者がいます。

無断回収

Eさんは、亡くなったお母さまの形見分けをしようとしましたが、宝石箱の中を見てみると、何だか数が少なくなっていました。
あとでよく思い出してみると、どうやら業者に持って行かれてしまったとしか思えませんでした。でも、証拠もなく、泣き寝入りをするしかなかったのです。
最近、こうした窃盗行為を働く業者が見受けられます。

依頼主の意に添わない作業

大切な家族が遺したものには、どれを取っても一つひとつ思い出があるものです。しかし、そのために、なかなか整理作業ができないこともありますね。

Fさんは、ご主人の遺品整理を依頼しましたが、その業者は、仕分けの際、Fさんに相談することもなく、パッと見ただけで、どんどんモノをごみ袋へ入れていきました。
業者は第三者なので、冷静に判断して作業を進めることができます。しかし、だからといって、遺品をゴミ扱いされては、どんなに悲しいでしょう。

遺品は単なる物体ではありません。依頼主の意見や気持ちを無視し、遺品をぞんざいに扱う業者はアウトです。

トラブルを解決するには?

遺品整理トラブルを解決

最も理想的な解決方法は、業者と話し合って折り合いをつけることです。
しかし、相手は悪質なトラブル業者。自分で話し合うので費用はかかりませんが、一筋縄ではいかず、交渉は長引くことでしょう。
直接の話し合いが難しいとき、どのように解決すればよいのでしょうか?

  • 高額請求対策
  • 不法投棄対策
  • 不当な買い取り対策
  • 無断回収対策
  • 依頼主の意に添わない作業対策

高額請求対策

激安業者を信用しない

「激安料金」を謳い、宣伝している業者は、疑ってかかりましょう。あまりにも料金が安い業者が、作業後に高額な追加料金を要求してくるケースが多発しています。

第三者機関へ相談する

まず、国民生活センター、消費者庁、消費者相談室などに相談してみましょう。
現在、遺品整理を専門に扱う公的機関は存在しません。しかし、こういった第三者期間にそうだんすることで、解決の糸口となることがあります。
それでも解決しない場合は、費用がかかりますが、弁護士や行政書士などに相談する方法もあります。

不法投棄対策

遺品整理業者を選ぶ際、一般廃棄物収集運搬業の許可を持っているかを確認しましょう。
また、遺品整理を依頼したら、必ず領収書や名刺などを保管しておくことも大切です。もしも不法投棄が行なわれてしまった場合、業者の連絡先が不明だと、あなたが不法投棄をしたと見なされてしまうこともあります。

不当な買い取り対策

インターネット上で、過去にネット販売された品物の落札相場や落札価格が無料で見られるサイトがあります。
業者の作業前に、依頼主自身で、その品がどのくらいで取り引きされる商品なのか確認しておきます。遺品の買い取り金額を提示される前に、こちらから「この商品は市場では○○万円で取引されています」など知識があることをやんわり伝え、先制しておくとよいでしょう。

不当な買い取り対策

また、昔は引き取ってもらえなかったようなものも、今は引き取ってもらえるようになってきています。たとえば食器類はほとんど廃棄されていましたが、現在は食器専門のリサイクルショップがあり、買い取ってもらえます。
洋服やベッド、布団なども、ベトナム、タイ、カンボジア、マレーシアなどで売買されるので、買い取ってもらえるようになっています。これらの国では、仏壇なども、美術品として2~3万円ほどで取り引きされています。

無断回収対策

事前チェックをしておく

業者に依頼する前に、遺品の中に高価そうなものがないかをチェックします。
賃貸物件の場合など、遺品整理を急がなくてはならない場合もありますが、できる限りチェックしておきましょう。

作業に立ち会う

遺品の中からは、モノだけでなく現金が出てくる場合もあります。業者が作業をするときは、できる限り立ち合いましょう。

室内の写真を撮っておく

品物が紛失したからといって、証拠や理由もなく業者を疑うわけにはいきません。
そのため、作業が始まる前に、室内の様子を写真に撮っておくといいでしょう。できるだけたくさんあるといいですね。
業者に、こちらは作業前の様子をわかっているとアピールできればいいわけです。

依頼主の意に添わない作業対策

依頼する際、業者と綿密な打ち合わせをしておきましょう。
見積もりのときは、業者が現場に来て大体の料金を算出します。そのときに、依頼主がどのような希望を持っているか話し合っておきます。残しておきたいものや処分して良いものを、あらかじめ相談し、大体の方針を決めておきましょう。
特殊清掃が必要なレベルでない限り、依頼主の話を聞きながら片付けていくことで、トラブルも少なくなります。

悪質業者を見分ける方法・ここをチェック

悪質業者を見分ける方法

では、そもそも悪質な業者に遭わないため、事前にチェックする方法はあるのでしょうか?
いくつかチェックポイントをご紹介します。

  • 遺品整理に必要な許可証を持っているか
  • 料金システムの明確さ
  • 複数の業者から見積もりをとる

遺品整理に必要な許可証を持っているか

不用となった遺品を廃棄したり処分したりする場合、ものによっては許可証が必要となる場合があります。
ホームページの会社概要などで、その会社が何の許可証を持っているかをチェックしましょう。

一般廃棄物収集運搬許可証

「一般廃棄物収集運搬許可証」は、一般家庭からの不用品を回収できる許可証です。都道府県の市区町村の認可のもと取得できます。許可が下りたエリアのみ回収が行えます。

産業廃棄物収集運搬許可証

「産業廃棄物収集運搬業許可証」とは、企業や事業者の、事業活動によって出た産業廃棄物を収集・運搬できる許可証で、都道府県が交付しています。たとえば、町の工場などで出た鉄くずや、会社などで出たごみは「産業廃棄物」となります。

古物商許可

古物商許可

「古物商許可」とは、中古品の売買が可能になる許可証で、都道府県ごとの警察が発行しています。中古品の買い取りと販売に必要な許可証なので、中古品の売買を行うリサイクルショップや古書店などは必ず取得しなければなりません。
もちろん、遺品整理業者においても、この古物商許可を持たずに不用品を買い取れば違法行為となります。

一般的に、遺品整理業に必要だと言われる許可証は「一般廃棄物収集運搬許可証」「古物商許可証」の2つです。依頼する前にまず、業者がこれらの許可証を持っているかを確認しましょう。
また、「一般廃棄物収集運搬許可証」と「産業廃棄物収集運搬業許可証」の2つを持っていれば、家電リサイクル法における家電4品(テレビ、エアコン、冷蔵庫、パソコン)の処分も依頼できます。

料金システムの明確さ

遺品整理会社のホームページには、ほとんどの場合、料金表が掲載されていますね。部屋の広さに準じて料金が決められているところがほとんどですが、同じ広さの部屋でも、中にある遺品の量によって料金は違ってきます。
そこで、料金システムが明確かどうかをチェックしましょう。その会社は、基本料金に何がプラスされるといくらになるのか、分かりやすく決められていますか?

また、遺品整理と不用品処分を併せて行なってもらえるかも必ず確認しましょう。遺品整理のみの見積もりを出して安心させておき、後から不用品の処分を別料金としてプラスして、最初の見積もり金額よりも高い料金を請求する悪質業者があります。
疑問に思ったことがあれば、そのつど質問し、納得がいくまで話し合うことも大切です。

複数の業者から見積もりをとる

会社によって料金体制が異なるので、事前に複数の業者に見積もりを依頼しましょう。
口頭だけでは、後から“言った、言わない”の水かけ論になってしまう危険性があるので、見積もりは必ず書面でもらいましょう。また、見積時もりの時の会話を録音しておくのもよいでしょう。

複数の業者から見積もり

電話での問い合わせの際の丁寧さや、実際の見積もりのときに、スタッフの身だしなみがきちんとしているかも大きなポイントです。身だしなみがきちんとしている会社は、マナーを心得、丁寧な仕事をしてくれると考えられます。

また、見積もりを出すとき、30分や1時間でサッサと済ませる業者はお勧めできません。
どれだけ時間をかけて故人の遺品を見てくれるかも、仕事の丁寧さにつながります。できれば土日2日間くらいかけて、じっくり見てくれる業者が安心です。
その上で、見積もりの内容について詳細な説明をしてくれたり、質問に丁寧に答えてくれたりする業者を選びましょう。

遺品整理業のモットーとは?

遺品整理業のモットー

遺品整理をする機会は、人生において、そう何度もあるものではありません。そのため、遺品整理がメディアに取り上げられ、話題にのぼるようになっても、実際の状況というものはなかなか伝わらないようです。
もちろん、悪質な業者ばかりではなく、本当に依頼主の気持ちになって仕事をする優良業者はたくさんあります。
遺品整理業とは「亡くなった方や遺族の方の心の整理をお手伝いする仕事」です。このモットーをふまえていない悪徳業者にだまされることなく、ぜひ優良業者を探し、ご依頼ください。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。