遺品整理に関して最も多いトラブルは、お金にまつわるものです。
悪徳業者による不正な作業料金請求や、根拠の怪しい遺品の買い取り料金やリサイクル料金を提示してくる業者の被害に遭わないためにも、情報収集が必要となります。
そこで今回は遺品整理のなかでも、リサイクルに関するお金の問題をご紹介します。
目次
日本の廃棄物・リサイクル対策の歴史
戦後に高度経済成長を迎え日本では、大量消費・大量廃棄による「ごみ問題」が社会問題化し、昭和46年(1971年)9月に「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」が施行されました。
以降も同法の改正により、ごみ問題への対応を図ってきました。
しかし廃棄物の大量発生・不法投棄の増大などの問題は一向になくならなかったため、平成13年(2001年)1月、新たに「循環型社会形成推進基本法」が施行されています。
「循環型社会」とは、資源の効率的な利用と再生産を行い、循環させていく社会のことを言います。
この「循環型社会形成推進基本法」によって、廃棄物・リサイクル対策における、多くのガイドラインが設定されました。
遺品整理の現場でも、廃棄物・リサイクル対策は「3R」が推進されています。「3R」とは、Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の3つの英語の頭文字を表し、その意味は次のとおりです。
・Reduce(リデュース)は、使用済みになったものが、なるべくごみとして廃棄されることが少なくなるように、ものを製造・加工・販売すること
・Reuse(リユース)は、使用済みになっても、その中でもう一度使えるものはごみとして廃棄しないで再使用すること
・Recycle(リサイクル)は、再使用ができずにまたは再使用された後に廃棄されたものでも、再生資源として再生利用すること
(3R活動推進フォーラム 公式サイトより)
遺品整理品のリサイクルに関しては、リサイクルショップへ回収・買い取りを依頼するのも便利かと思いますが、なかでも法律でリサイクル方法が定められている物があるので、ご注意ください。
家電リサイクル法と家電4品目
家電のリサイクルについては、平成13年(2001年)4月1日に施行された「特定家庭用機器再商品化法」(家電リサイクル法)により、定められた次の4品目は、廃棄する際に収集運搬料金とリサイクル料金を支払うことが義務づけられています。
「家電4品目」
1)家庭用エアコン(主にエアコン本体と室外機が対象)
対象例:壁掛けのセパレート型、床置きのセパレート型
対象外例(主に業務用):天井埋め込み型、壁埋め込み型、冷風機、除湿機、パッケージエアコン
2)テレビ
対象例:ブラウン管式、液晶・プラズマ式
対象外例:ディスプレイモニター、パソコン用ディスプレイモニター(パソコンリサイクルの対象)、携帯用液晶テレビ、車載液晶テレビ、電池を電源とする液晶テレビ※業務用は全て対象外
3)冷蔵庫・冷凍庫
対象例:冷蔵庫、冷凍冷蔵庫、ワインセラー、保冷庫・冷湿庫、チェスト形冷凍庫、アップライト形冷凍庫、引き出し形冷凍庫
対象外例:業務用冷蔵庫・冷凍庫、業務用保冷庫、保冷米びつ、店舗用ショーケース、店舗用冷凍ストッカー
4)洗濯機・衣類乾燥機
対象例:洗濯乾燥機、全自動洗濯機、2槽式洗濯機、電気衣類洗濯機(ドラム式)、ガス衣類洗濯機、外付けのコインボックスを外した洗濯機・衣類乾燥機
対象外例:業務用洗濯機・衣類乾燥機、衣類乾燥機能付き布団乾燥機、衣類乾燥機機能付きハンガー掛け、コインボックス内蔵型の洗濯機・衣類乾燥機
続いて家電4品目のリサイクル料金例を見てみましょう。
参考:家電リサイクル受付センター、家電リサイクル券センター(RKC)、東京二十三区家電リサイクル事業協同組合
収集・運搬料金 2,625~3,150円
国内の主なメーカーのリサイクル料金(消費税8%含)
エアコン 1,404円
テレビ(ブラウン管式)、薄型テレビ(液晶・プラズマ)15型以下 1,836円、16型以上 2,916円
冷蔵庫・冷凍庫 170リットル以下 3,672円、171リットル以上 4,644円
洗濯機・衣類乾燥機 2,484円
依頼主が負担するのは下記の「収集・運搬料金」+「メーカーのリサイクル料金」になります。
この場合、たとえばエアコンを回収してもらうには最安でも、収集・運搬料金2,625円+リサイクル料金1,404円、合計4,029円が必要となります。
小型家電リサイクル法とパソコンの処分
平成25年(2013年)4月1日、「小型家電リサイクル法」という法律が施行されました。
これは環境保護や資源リサイクルのために設けられた法律です。
対象となるのは上記「家電4品目」以外の、ほぼ全ての家電製品。具体例を挙げると、携帯電話、デジタルカメラ、ゲーム機、時計、炊飯器や電子レンジ、ドライヤー、扇風機などです。
ただし対象品目と回収方法は各自治体によって異なります。リサイクルの際は自治体か、もしくは回収作業を請け負っている家電量販店などに問い合わせてください。
これらの多くは無料回収(自分で回収場所に持っていく)になりますが、注意しなければならないのはパソコンです。パソコンおよびパソコン用ディスプレイの3R(リデュース、リユース、リサイクル)を促進する「一般社団法人パソコン3R推進協会」は、パソコンのリサイクルについて次のように説明しています。
「パソコンリサイクルは、『資源有効利用促進法』に基づく、ご家庭で不用となったパソコンを回収・リサイクルする仕組みです。回収して資源に戻すまでをパソコンメーカーが責任を持って行いますので、安心です。パソコンメーカーによる回収のほか、平成25年4月から『小型家電リサイクル法』に基づく小型家電の回収・リサイクルも開始され、一部の家電量販店や市区町村ではパソコンの回収も行われています」
ここでまずパソコンメーカーによるリサイクル料金例を見てみましょう。
メーカーでは「PCリサイクルマーク」の有無で、処分費用が無料か有料かが分かれます。
「PCリサイクルマーク」とは、平成15年(2003年)10月以降に販売された家庭向けパソコンに貼付されているものです。
このマークの付いたパソコンは、パソコンメーカーが無償で回収・リサイクルを行ってくれますので、必ず最初にチェックしてください。
以下は「PCリサイクルマーク」が無い場合の、パソコンメーカーによる処分費用の一例です。
メーカー製品のパソコン
デスクトップパソコン本体、ノートブックパソコン、液晶ディスプレイ、液晶ディスプレイ一体型パソコン 3,000円(消費税別)
ブラウン管(CRT)ディスプレイ、ブラウン管(CRT)ディスプレイ一体型パソコン 4,000円(消費税別)
メーカー不在(自作など)パソコンの場合
デスクトップパソコン本体、ノートブックパソコン、液晶ディスプレイ、液晶ディスプレイ一体型パソコン 4,000円(消費税別)
ブラウン管(CRT)ディスプレイ、ブラウン管(CRT)ディスプレイ一体型パソコン 5,000円(消費税別)
自動車リサイクル料金は新車購入時に
以下の車両を除く全ての自動車が対象となります。
対象外となる自動車
被けん引車、二輪車(原動機付自動車、側車付のものを含む)、大型特殊自動車、小型特殊自動車、その他(スノーモービル等)
リサイクル料金は原則として、新車購入時に負担することになっています。
新車購入時にリサイクル料金を預託すると、販売店等からリサイクル券(預託証明書)を受け取ります。これはリサイクル料金が支払われていることを証明する重要な書面ですので。大切に保管していてください。
リサイクル券は「A券」~「D券」の4枚で構成されており、「A券」及び「B券」は車検時及び使用済自動車を引き渡す時に必要になりますので、車検証等と共に大切に保管しておきましょう。
反対に、購入時にリサイクル料金を負担していない場合は、使用済みとなった自動車を引取業者に引き渡す際に負担することになります。
廃車時に預託する時はリサイクル券が発行されず、引取証明書が発行されます。使用済自動車の永久抹消登録に必要なものです。
話を新車購入時に支払うリサイクル料金に戻します。
一般の車両のリサイクル料金は、6,000円~18,000円と幅広く、これは自動車のメーカー、車種、エアバッグ等の装備によって、1台ごとに異なるためです。
お持ちの自動車のリサイクル料金がいくらであるかは、「自動車リサイクルシステム」のホームページで車台番号や登録番号を入力すると照会することができます。
また、使用済自動車は車検の有効期間が残っていれば、その期間に応じて自動車重量税の還付を受けることができます。各申請は、運輸支局などにおいて、永久抹消登録などの申請と同時に行います。
還付金の金額例は以下のとおりです。
参考:自動車リサイクルシステム
「自動車重量税の還付金額例」
登録自動車の重量が1.0t~1.5t/納付した重量税 37,800円の場合
車検残存期間に応じた還付金額 | |
6カ月 | 9,450円 |
3カ月 | 4,725円 |
1カ月 | 1,575円 |
登録自動車の重量が0.5t~1.0t/納付した重量税 25,200円の場合
車検残存期間に応じた還付金額 | |
6カ月 | 6,300円 |
3カ月 | 3,150円 |
1カ月 | 1,050円 |
軽自動車で納付した重量税 8,800円の場合
車検残存期間に応じた還付金額 | |
6カ月 | 2,200円 |
3カ月 | 1,100円 |
1カ月 | 366円 |
さらに、自動車を中古車として売ると、リサイクル料金が戻ってきます。売却した際には、リサイクル券を次の所有者に渡すとともに、車両価値金額+リサイクル料金を受け取ってください。
ただしリサイクル料金の内、資金管理料金だけは支払った時点から資金(リサイクル料金)の管理が始まるので、リサイクル料金を最初に支払った所有者の負担となります。
遺品のリサイクルで、法令が関わってくる物は、主にこの3つでしょう。これらはリサイクルの際に、使用者(遺族を含む)がリサイクル料金を支払うことになります。
一方で、遺品も高価な物、価値がある物は買い取ってもらえる場合があります。
しかし買い取り金額は業者によって異なりますので、一概には言えません。大きな家具などは上記3つと同様に、リサイクル料金を支払って引き取ってもらうことも多いかと思います。
悪質なリサイクル業者・不用品回収業者にはご注意を!
中古品の売買には「古物商」の資格が必要となります。多くのリサイクルショップ、不用品買い取り業者は、この資格を持っています。
しかしながら一部の業者は、この資格なしに業務を行っており、遺品整理においても大きなトラブルの要因のひとつとなっています。
特に「無料回収」と大きく宣伝し、チラシ配りなどを行っている不用品回収業者には気をつけたほうが良いでしょう。
全ての不用品回収業者がそうではありませんが、一部は不用品を無料で回収し、リサイクルショップなどに転売しています。これはれっきとした法律違反です。
リサイクル・買い取り業者にも、不用品をひとまとめで安く買い叩く悪質な業者もいます。
不用品のリサイクル料金、買い取り価格は業者によって様々なだけに、しっかりと見積もりを取り、詳細を確認するようにしましょう。