懐かしい昭和の時代、お給料は現金の手渡しで支払われていました。
しかし、今やお金といえば、銀行での取引がほとんど。通帳に印字された数字で振り込まれたお給料を確認する時代となっています。
そんな時代でも、なくならないのが「タンス預金」や「ヘソクリ」です。
このタンス預金、日本中で何と30~80兆円はあるのではないか、ともいわれています。また、主婦のヘソクリの平均は170〜400万円とも。なんともすごい金額です。
大きなお金だけでなく、小銭を貯金箱に貯金したり、引き出しなどに何となく入れたお金なんていうものもあります。
そんなお金まで加えると、日本には一体いくらくらい、タンス預金があるのでしょうか?
このような依頼人も気づいていない、家の中に置かれているお金が、遺品整理の際に出て来るというのはよくあることです。なかには、1万円札が何枚も出てくるお宅もあります。
故人が高齢者の場合、福沢諭吉ではなく「聖徳太子」が出てくることも。1万円札が聖徳太子だった時代を知らない若いスタッフが、見て驚いたこともありました。
今回は遺品整理の際に、こういった現金が出て来た場合のお話です。
目次
遺品整理でお金が出てくる場所は?
- タンスのなか
- 机の引き出し
- 神棚や仏壇
- キッチン
- バッグの中・衣類のポケットの中
- 布団やカーペットの下
- 非常用持ち出し袋
- 本棚や靴箱の中
- 意外な隠し場所
タンスの中
「タンス預金」の言葉通り、最もメジャーな(?)場所です。雑誌の調査などでも、隠し場所として1位に挙げられています。
タンスの隅に、衣類に紛れて入れてあることが多いようです。なかには、タンス預金用に引き出しが二重になっているタンスもあるほど。
同様に、クローゼットや、衣装ケースのなかに入っている場合もあります。
日常的に使わないものを入れてある引き出しだと、しまったまま忘れてしまうこともあるでしょう。遺品整理でまず探すのは、やはりタンスです。
机の引き出し
机の引き出しは、タンスに次いで“王道”ともいえる場所です。引き出しの奥の目立たない場所から、封筒などに入れられたお金が出て来ることがよくあります。
また、大きなお金以外にも、ペンなどに紛れて小銭が堪っている場合も。会社の机の引き出しに、いつの間にか小銭がたまっていることはありませんか? 自宅でも、同じ感覚で、つい入れて忘れてしまうのでしょうね。
神棚や仏壇
持ち主が高齢者だった場合、神棚や仏壇に入れておくケースもよくあります。丁重に扱わなくてはならない場所ですし、神さまやご先祖さまが守ってくださるイメージがあるせいでしょうか。
特に仏壇は、引き出しがいくつもついているので、大切なものがしまってあることがよくあります。家系図などをはじめ、土地の権利書や保険証券、株式証券なども出て来ます。
現金だけでなく、権利書や証券などは遺産相続の対象となりますので、もしものことがあったら、まず仏壇の引き出しを確認しましょう。
また、人が亡くなった場合でなくても、お仏壇の買い替えなどで処分する場合は、必ず引き出しを確認することをお勧めします。
キッチン
キッチンは主婦の城といわれますが、主婦の方が亡くなられた場合、キッチンからお金や貴重品が出て来ることがあります。
ゴミ袋などキッチン用品のストッカーや、床下貯蔵庫など、ほかの家族はあまり開けないような場所に、こっそりヘソクリしているケースが多いようです。
また、家族に見つかってしまいそうで少し意外な気もしますが、食器棚や冷蔵庫の中にヘソクリしている人もいます。
バッグの中・衣類のポケットの中
タンス預金やヘソクリとは少し違いますが、生前、使っていたバッグの中に、お財布ごとお金が入ったままになっていたりします。
バッグや衣類のポケットに、小銭が入ったまま、しまわれていることも多いです。ポケットティッシュなどに紛れて忘れられてしまったお金が結構出て来るので、必ず確認する場所です。
布団やカーペットの下
滅多にめくらないのがカーペット。この下に、封筒に入れた現金をはさんでおくケースも多々あります。
また、高齢者に多いのが、布団の下に敷いているパターンです。
万年床となった布団を上げると、やはり封筒に入れたお札が出て来ます。いつも本人がその上にいるので、安心ということなのでしょう。
非常用持ち出し袋
大きな震災があり、防災意識が高まるにつれ、非常用持ち出し袋からお金が発見されることが多くなりました。
こちらは、タンス預金という意味からは外れているかもしれません。
しかし、いざという時に現金を持ち出したり、通帳などの大切なものが入れてある場合もあるので、見落とせない場所です。
本棚や靴箱の中
本棚の奥や、本の間にお金をはさんだり、靴箱の中(げた箱ではなく、靴を入れておく箱)の中からお金が出て来ることがあります。
ここも、基本的に持ち主しか触れないということが理由でしょう。
意外な隠し場所
先に挙げた隠し場所は何となく予想できるものですが、最近では、なんと電子機器の中に隠す方もいました。
ノート型のパソコンでは難しいですが、タワー型デスクトップなら、内部にスペースがあります。電子機器の空き箱に入れておく、という方もいるようです。
最近では、高齢者でもパソコンやゲーム機器、一眼レフカメラなどを使いこなす方がグンと増えました。
こういった機器にはたくさん説明書が付いているので、一緒にしまっておけば、お金が入っていても、なかなか気づきません。最近では、こんなところも隠し場所になっているようです。
遺品整理で出て来たお金はどうなるの?
遺品整理で現金が出て来た場合、業者は依頼主に金額を含めて報告する義務があります。見つかった現金は、故人の遺産の一部ですので、相続税の課税対象となります。
ここで、現金発見から相続税の計算まで必要なことを簡単に知っておきましょう。
- 現金は「遺産」です。
- 「遺産目録」をつくる
- 専門家に相談し、遺産分割協議をする
- 相続税を支払う
現金は「遺産」です
遺品整理で出て来た現金は「遺産」です。
たとえ「これぐらい…」と思うような小額だったとしても、出て来たお金をそのまま使ったり、家族で勝手に山分けしたりすることはできません。
「遺産」は相続人すべてに受け継がれるべきものであり、遺産分割協議で分け方を話し合う必要があります。
のちのち、相続人の間で揉めごとを防ぐ意味でも、必ず申告しましょう。
「遺産目録」をつくる
遺産をスムーズに相続するためには、「遺産目録」があるとよいでしょう。
親の遺産を相続するとき、その金額によって相続税を支払わなくてはなりません。その金額を計算するために、遺産目録が役に立つのです。
遺産目録は必ず提出しなければならない書類ではありませんが、遺産目録があれば、相続税申告の際に手間がかかりません。遺品整理中に出て来たお金も加えて、目録を作りましょう。
遺品整理の際に出てきた現金が、目録に載り、遺産分割協議で均等に分割されるためには、あくまでも発見した人(依頼人)の良心に委ねるしかありません。
そのようなリスクを避けるためにも、遺品整理には相続人全員で立ち会うのが理想です。
専門家に相談し、遺産分割協議をする
「遺産分割協議」とは、相続人の間で遺産の分け方を話し合うことです。相続人が多ければ多いほど、遺産分割協議が大切になります。
故人の遺言書があれば、その通りに分けることになりますが、遺言書がない場合は、話し合います。全員が納得できないときは家庭裁判所まで持っていかなければなりません。専門家に目録を提示して相談し、相続人が全員納得できるよう話し合いを重ねていきましょう。
相続税を支払う
相続税には「基礎控除」が定められており、相続額がこの基礎控除額を超えたときに相続税を支払うことになります。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数 です。
たとえば、相続人が3人の場合、
3,000万+600万×3人=4,800万円
この場合、被相続人の遺産総額が4800万円を超えていたときに相続税を支払うことになります。
計算例を挙げてみましょう。たとえば、遺産が
預金・株式……3000万円
土地・建物……2000万円
遺品整理で出て来た現金……200万円
合計5200万円だったとします。葬儀費用は控除されますので、
葬儀費用……200万円
とすると、この葬儀代を引いた5000万円が「遺産の総額」となります。
ここから、さらに基礎控除の4800万円を引いた200万円に相続税がかかることになるわけです。
さらに、相続人は、相続開始を知った翌日~10カ月以内に、管轄の税務署へ相続税の申告をしなくてはなりません。
相続税は、申告期限までに現金一括納付します。期限までに納付しないと、相続税額の10%の「無申告加算税」が追徴されてしまいます。
素早い納付のためにも、正しい財産目録をつくったり、専門家に相談したりする必要が出て来るのです。
トラブルを防止するには?
故人の遺品の中には、遺族が知らない高価な貴金属類や腕時計、タンス預金などがあります。
業者が遺品整理を請け負い、こういった現金や貴金属などを発見した場合、まとめて依頼人に報告しなくてはなりません。
しかし、残念なことに、無断でそれらを着服し、私物化してしまう悪徳業者も、なかには存在するようです。隠していることだけに、その実態を明確にするのは難しいですが…。
こういったケースでは、遺族がその存在を知らないだけに、被害に遭ったと気がつかないまま過ぎてしまいます。
- 作業前に確認しておく
- 作業に立ち会う
作業前に確認しておく
このようなトラブルを避けるためには、遺品整理業者に依頼する前に、遺族や、相続の権利を持つ人たちで、先に高価なものや現金が遺されていないかを確認しておくことです。
そして、発見したら自分たちで保存して、リスト化しておきましょう。
また、お金ではありませんが、依頼人側が確認することによって、金銭的な価値は低くても、遺品として大切に受け継ぎたい品物が見つかることもあります。
ご遺族にとって価値ある品でも、業者は機械的に分類・処分してしまう可能性があります。処分してから後悔しないためにも、できれば先に確認しておきたいものです。
最近では、古物商の資格を持ち、遺品の鑑定や買い取りを行なえる業者も増えています。まだ使えるモノやリサイクルできるモノを売りたい場合には便利です。
しかし、骨董品や書画など、価値が一定しないものもあります。
こういったことからも、依頼人が先に貴重品をまとめておき、複数の専門の鑑定眼を有する業者に依頼するのがよいでしょう。
作業に立ち会う
故人の部屋や家が「汚部屋」だったり「ゴミ屋敷」である場合、依頼人が先に貴重品や現金を回収しておくのは、かなり大変な作業になってしまいます。
このようなときは、業者が作業をする時に、遺族が立ち会って、一緒に遺品を確認するようにしましょう。
作業から目を離さないようにすれば、作業中に着服するのは非常に困難になります。
遺品整理業者選びで大切なこととは?
遺品整理業は、まだまだ新しい業界です。急激に業者が増えていますが、ふたを開ければ玉石混淆、というのが現状です。
そこで良心的な遺品整理業者を選ぶには、どうしたらよいのでしょうか。
まずは、複数の業者と話してみることが大切です。
遺品整理においては、故人の残されたものの中から貴重品、思い出や思い入れのある品などを仕分けし、ご遺族に確認していただかなくてはなりません。
故人が、部屋や家のどこに何をどこに保管しているかを想像する力や、徹底的に遺品を仕分けする姿勢が最も重要です。
こういった姿勢を強く持っているか、誠実に仕事を行なってくれそうか、複数の会社と話すうちに、何となくわかってきます。
また、見積もりから作業終了まで、一貫して同じ人がやってくれるかどうかを必ず確認してください。
「見積もりの時に確認した作業内容と違う」「見積り金額と請求金額が違う」というトラブルを避けられると同時に、依頼者の納得いく作業につながります。
見積もりの際に伝えた遺族の「思い」を尊重し、理解した上で作業することこそが「遺品整理」という業種の存在価値です。
遺族と「思い」を共有して作業してくれるかどうか、見極めることが最も大切なのです。