身内が亡くなったら、すぐに始めなくてはならないのがお葬式の準備です。
他人のお葬式に参列することはあっても、自分が手配することはなかなかありません。
どのくらいの規模にするのか、いくらくらい費用がかかるのか、分からないことばかりなのではないでしょうか?
そんなとき、葬儀社のいうままになって、あとから法外な料金を請求されてはたまりません。
お葬式には、どのくらい費用がかかるのか、どんな準備が必要なのかみていきましょう。
目次
お葬式にかかるお金とは?
一口に「お葬式」と言っても、お金を支払う先は1つだけではありません。お葬式の費用は、大きく4つに分けることができます。
葬儀一式費用
葬儀社による費用・内容の違い
「葬儀一式費用」とは、祭壇・棺・位牌・人件費・遺影写真・寝台車・霊柩車など、葬儀を行うために必要な費用です。
葬儀社では「○○セット」「○○プラン」として案内されていますが、この中に含まれる内容は葬儀社によって異なります。
例えば、安いプランだと、司会進行や運営管理のスタッフの人件費が含まれていないことがあります。この場合、オプションとして司会などをつけることになります。
身内を亡くして心乱れる中ではありますが、どこまで葬儀社がやってくれるか必ず確認をしましょう。
でないと、当日、人が足りなくて慌てたり、オプションの追加で予想外に費用がかかってしまうことがあるのです。
身内の方が亡くなってから葬儀まで、時間がないことがほとんどです。それだけに、プランに何が含まれているのか、追加でどのような費用が増える可能性があるのかをしっかり確認しておきましょう。
見積もりをきちんと取っておくことも大切です。
葬儀社への支払いは、葬儀後1〜2日後にしますが、請求書と見積書をしっかり照らし合わせ、不備がないか確認しましょう。
また、葬儀にかかった費用は相続税の控除対象となりますので、領収書は大切に保管しておきましょう。
祭壇による費用の違い
葬儀一式のなかで最も大きな割合を占めるのは、祭壇です。祭壇をどのようなものにするかによって、葬儀費用が大きく変わってくるのです。
祭壇には、よく見る「白木祭壇」と、花で飾りつけをした「花祭壇」があります。
祭壇は大きさや使う花によって10万円〜100万円と大きく違うので、どんな祭壇にするかによって費用はかなり変わります。
また、遺体を納めるお棺の費用も材質によって3〜10万円ほどと違いがあります。
会場による費用の違い
葬儀をどこでやるかによっても、葬儀費用は大きく異なります。
近年はほとんどなくなりましたが、自宅で故人を見送る「自宅葬」であれば、費用はかかりません。しかし、斎場で行う場合は、当然ながら会場費が必要です。
会場費は葬儀の規模によって5万円ほどから、大きな式では100万円を超える場合もあります。
地域による相場の違い
葬儀費用の相場は、全国平均では約189万円といわれています。しかし、葬儀の形式や規模にもよりますし、その地域の風習や慣例によっても異なります。
地域別の葬儀費用総額の平均を比べると、最も高い地域で210.5万円、低い地域では134.3万円。約76万円もの差があるのです。
そのため、葬儀費用の相場は難しく、全国平均の約189万円は、あくまでも目安として考えましょう。
寺院費
謝礼
寺院費とは一般に、寺院や神社、教会などへの謝礼のことです。葬儀当日か、または翌日くらいに挨拶に出向いて渡します。
謝礼の金額は一般的にはありませんが、寺院によっては規定があるところもあります。
規定があれば従い、ない場合は関係者や世話役と相談して決めましょう。
謝礼は、水引なしの奉書紙で包むか、白無地に封筒に入れます。
仏式の場合、表書きは「御布施」とします。神社の場合は、神職に謝礼を包み「御祭祀料」「御礼」「御神饌料」などと表書きします。キリスト教式の場合は「献金」とします。
また、通夜、葬儀当日に渡す「お車代」や「御膳料」はその都度渡します。
戒名
仏式の場合は戒名をつけることがほとんどですね。
戒名は、一般に、菩提寺の僧侶から通夜までにいただき、白木の位牌に書いてもらって葬儀の祭壇に安置します。四十九日の法要のころには、仏壇に正式な位牌を置きます。
戒名をつけてもらった謝礼は、お通夜や葬儀の読経料と合わせ、葬儀後に「御布施」としてまとめて渡します。
戒名の謝礼の相場は10万円〜60万円といわれています。院号や位号によっても異なりますし、また、寺院によっても異なります。金額がわからないときは菩提寺に直接たずねましょう。失礼には当たりませんので大丈夫です。
これら寺院費は相続税控除の対象となるので、必ず領収書を受け取りましょう。
飲食接待費
お通夜での通夜振る舞い、葬儀後の精進落とし、弔問者の軽食代、お茶、ジュース代などの接待にかかる諸費用を指します。コンビニなど飲食店以外で支払った費用も含みます。
この費用は、葬儀社のプランに含まれている場合もありますが、別となっていることもありますので事前に確認しましょう。
1人分は5000円〜1万5000円ほどが一般的ですが、参列者の人数によって変動しやすい項目です。
葬儀社のプランに飲食費が含まれている場合は、何人分の料理が含まれているのか確認しておきましょう。そこから出た場合は追加料金となります。
これらの接待費も相続税控除の対象となるので、必ず領収書やレシートなどを受け取り、保管しておきましょう。
雑費
葬儀で葬儀委員長や世話役をしてもらい、特にお世話になった人に心づけや品物を贈ることが多いようです。
心づけの金額の相場は
- 世話人代表……1〜2万円
- 世話役……5000円〜1万円
- 手伝ってくれた人……2000円〜1万円
- 葬儀担当者、仕出し屋への心づけ……2000円〜1万円
ほどが一般的です。
また、葬儀の最中にかかった細かい立替金があれば、葬儀後すぐに清算しておきましょう。
これら心づけは、一般的に領収書が出ません。また、渡す側ももらいにくい種類のものです。でも、領収書やレシートがなくても控除することができます。
費用を負担した日、対象者、名目をかいた支払いメモを書いておきましょう。このメモで相続税を控除することが可能です。
葬儀費用を抑えるためには?
一般的な葬儀一式を執り行うには、基本的に約200万円ほどの準備が必要です。しかし、必ずこの費用が必要なのでしょうか? 費用を抑えた葬儀についてみてみましょう。
互助会に入会する
会員同士の助け合いを目的に作られた団体・組織を「互助会」といいます。生前から互助会の会員になり、掛け金を月々積み立てると、葬儀の時に積み立て分の葬儀サービスが受けられます。
ただし、以下の点には注意が必要です。
受けられるのは、金銭ではなく「サービス」
互助会で葬儀を行う場合、葬儀サービスが受けられるのであって、葬儀の費用が支給されるわけではありません。
また、互助会で賄えるのは、入会時に決めた葬儀コースの料金部分のみです。もしグレードアップしたい部分や付けたいオプションなどが出てきても、料金の中には含まれません。また、お布施、戒名料、お車代、心付け、接待費、消費税などは、別途支払いが必要です。
途中解約が難しい
解約できないことはありませんが、解約手数料が必要となる組織がほとんどです。入会する前に、内容をよく確認しましょう。
グレードダウンできない
何らかの事情でコースをグレードダウンしたくても、できないケースが多いようです。なぜなら、互助会の掛け金は「葬儀の分割前払い金」だからです。互助会で受けられるのは「サービス」なので、グレードダウンしたくても、その差額を金銭で受け取ることはできません。
互助会にはこのような注意点がありますが、上手に利用すれば葬儀費用を低めに抑えることができます。利用する際は、内容をよく検討し、納得してから入会しましょう。
家族葬にする
家族葬とは、家族や親族、友人知人など、故人と特に親しかった人、関係の深かった人に限定して行なう葬儀です。一般的に、参列者が30名以内の小規模な葬儀で、内容としては一般的な葬儀と同様、通夜式や告別式を行います
このように参列者が少ない家族葬であれば、広い会場は必要ないので会場費が抑えられ、また、飲食費や会葬時の返礼品も少なくて済むので、その分総額を低めにすることができます。
とはいえ、会葬者が少ないということは、お香典も少ないということ。そのため、葬儀費用が低めに抑えられても、トータルで見るとそれほど安く抑えられない場合もあるので注意が必要です。
ちなみに、家族葬と似たイメージの葬儀に「密葬」がありますね。
密葬という響きから「他人に知らせずに密かに行われるお葬式」というイメージが浮かび、家族葬と同じようなものかな、と思いがちです。
しかし、密葬とは、本来、故人の死後1ヵ月後などに本葬やお別れの会などを行うことを前提として行われるものなのです。
生前に大きな業績を残した人や著名人の場合、葬儀には非常に多くの人が参列する大規模なお葬儀を行うになります。 すると、会場の手配をはじめ、葬儀の準備にかなりの時間を要することになります。
しかし、遺体を長期間そのままにしておくわけにはいきません。そのため、先に故人を事前に荼毘に伏しておくのが密葬なのです。
つまり、密葬自体は簡素であっても、後日行う本葬やお別れの会を含めると、一般的な葬儀よりも大規模で諸経費も大きくかかることになります。
直葬にする
「直葬」とは、通常の通夜・告別式の儀式を行わず、火葬のみを行う葬儀形式です。「火葬式」などといわれることもあります。
家族やごく親しい人数名だけで行い、一般参列者は招きません。
直葬は、費用を安く抑えたり、時間を短縮できたりするメリットがあります。しかし、通常の葬儀を行わなかったことによって、のちのち煩わしい思いをしたり、苦言を呈されたりすることもあるようです。
家族自身も「もっときちんと送ってあげればよかった」と後悔するケースも少なくありません。
また、菩提寺に黙って直葬を行ってしまうと、代々のお墓に遺骨を納められない場合もあるので、直葬を検討するときは周りにも相談して慎重に考えなくてはなりません。
生前予約をする
近年、様々な葬儀社で行なっているのが葬儀の生前予約です。
これは、遺族が手配するのではなく、自分で自分の最期をプロデュースするプランです。
終活のひとつでもあり、時間をかけて自分の理想とする葬儀プランを練ることができるのがメリットです。
葬儀の形式、遺影からBGMまで自分で自由に決めておけるので、遺族が悩むことがありません。
また、生前に積み立てを行うなど、葬儀の主人公となる人が葬儀費用を負担するため、遺族に負担がかからないのも大きなメリットです。
遺産を相続する際に知っておきたいポイント
葬儀などが全て終わったら、遺産相続の手続きをしなくてはなりません。
相続税は、故人のすべての財産を合計したものですが、葬儀にかかった費用は「葬儀費用」として控除の対象になるのです。
もし葬儀に200万円かかったとすると、相続税の税率が一番低い10%としても、税負担を20万円減らすことができるわけです。
この制度は、直接的に葬儀費用を抑えられるわけではありませんが、知っておいた方がお得です。
どの費用が控除の対象になるのか、みておきましょう。
控除の対象となるもの
葬式費用として控除ができるものは、以下のものとなっています。
- お通夜・本葬など、葬儀費用一式
- お布施・読経料・戒名料など、寺院費
- 参列者をもてなす飲食接待費
- 世話役などへの心づけなど雑費
- 火葬・埋葬・納骨費用
- 遺体・遺骨の回送費用
- 遺体・遺骨の捜索や運搬費用
控除の対象にならないもの
お香典返し
香典は、贈与税が非課税のため、これに対する返礼費用は、葬式費用に含められません。
ただし、香典を受け取らない場合の返礼品や、お香典返しとは別の返礼品(会葬時の返礼品)は控除の対象となります。
お墓に関する費用
墓碑や墓地は、相続税の非課税財産です。このため、これらの購入費用は葬儀費用には含まれません。
法要の費用
初七日や四十九日、一周忌など、故人に対する追善供養の費用は、故人を弔う葬儀とは意味が異なるため、控除対象にはなりません。
医学上・裁判上行った特別の処置費用
遺体の解剖などに要した費用は葬儀とは関係ないので、葬儀費用には当てはまりません。