「不法投棄」というと、どんなものを思い浮かべますか?
山奥や河原などに、粗大ごみや廃家電などを捨てていく、大がかりで悪質な行為をイメージする人が多いのではないでしょうか?
せっかくの景観が、不法に捨てられたごみによって損なわれた様子は、気持ちのいいものではありません。
また、不法投棄されたごみから出る有害な物質が地中に浸透して土壌や地下水を汚染したり、火事の元になったりします。
「不法投棄」は、それだけではありません。あなたの身近にもあるのです。
目次
コンビニのごみ箱とは
コンビニエンスストアの外に、よく、ごみ箱が設置されています。
このごみ箱は、顧客サービスの1つとして置かれています。
そのお店で買ったものを飲んだり食べたりした後のごみや、文具などの包装などを捨てるために置いてあるわけです。
ここに、家庭から出たごみを捨てるという行為は、どのようなことなのでしょうか?
- コンビニのごみ箱に家庭ごみ=犯罪!
- どんな罪になるの?
- 不法投棄の罰則は?
コンビニのごみ箱に家庭ごみ=犯罪!
今、エコやリサイクルの観点から、ごみ出しのルールが厳しくなっています。
分別が厳重になり、重量や大きさの規制も進み、ものによっては有料となるごみもあります。
また、
- 決められた収集時間に出せない
- 回収日まで家に置いてあるとにおいが気になる、
- 重いから小分けにしたい
などの理由から、出勤途中に近くのコンビニエンスストアのごみ箱へ家のごみを捨てる人がいるようです。
最近はごみ箱に「家庭ごみ禁止」と書いた張り紙が貼ってありますね。
でも、それを無視して捨てていく人が後を絶たないようです。
実はこれ、法律に触れる立派な犯罪なんです。
持っていたペットボトルや、車にあったちょっとしたごみを捨てる程度であれば、コンビニ側もサービスのうちと考えてくれるかもしれません。
さらに、そのお店で何か買い物をすれば、まず問題はないでしょう。
でも、どう見ても家庭ごみとわかる生ごみや衣類や紙くず、大量のペットボトルなどを持ってきて、どっさり捨てていく人がいます。
こうなると、もう明らかにコンビニの善意のサービスの範囲を超える迷惑行為と考えられ、大げさに感じるかもしれませんが、犯罪にあたることがあるのです。
どんな罪になるの?
営業妨害罪
まず考えられるのが「業務妨害罪」です。
ごみ箱に「家庭ごみ禁止」という張り紙が貼ってある場合、店側は家庭ごみの持ち込みを「拒否」し、「禁止」していると明言していることになります。
それにもかかわらず家庭ごみを捨てる行為は、店側の意向に反して業務を妨害することになります。
また、捨てたごみの量などによっては、刑法234条の「威力業務妨害罪」に該当し、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が課される可能性があります。
不法投棄
注意書きの張り紙が貼っていない場合も、不法投棄という罪になります。
「不法投棄」とは、本来捨てるべきではない場所にごみを捨てることです。
例えば、河原や山林に廃家具や廃家電、古タイヤなどを捨てる行為が「不法投棄」にあたります。
本来、コンビニが出すごみは、燃やせるごみは「事業系一般廃棄物」、プラスチックなどは「産業廃棄物」であり、一般家庭から出るごみとは扱いが異なります。
つまり、コンビニのゴミ箱に家庭ごみを捨てる行為は、家庭ごみを本来捨てるべきではないところに捨てることになるので、廃棄物処理法第16条の「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」という条文に違反し、「不法投棄」になるのです。
また、他人の私有地や公共の施設・土地にごみを捨てる行為も「不法投棄」にあたります。
つまり他人の土地であるコンビニのごみ箱に、自分の家のごみを捨てるのは二重の意味で「不法投棄」になるわけです。
不法投棄の罰則は?
不法投棄に対しては、廃棄物処理法第25条より「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金」が課せられます。
また、不法投棄を目的にゴミを収集・運搬した場合は、同法第26条によって「廃棄物を収集または運搬した人に対して3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」が課せられます。
つまり、家庭ごみをコンビニのごみ箱に捨てることは「不法投棄」であり、家庭ごみをコンビニのごみ箱まで持ち込むことは「不法投棄を目的として廃棄物を運搬する」とみなされるわけです。
実際に捨てるかどうかは別として、コンビニのごみ箱に家庭ごみを捨てるなんて、そんな大したことじゃない、と軽く考えている人も多いのではないでしょうか?
でも、不法投棄は、5年以下の懲役で1,000万円以下罰金と、重い罰則が定められている罪なのです。
リサイクルに取り組むコンビニエンスストア
さて、日々コンビニから出るゴミは、どのように処理されているのでしょうか?
エコやリサイクルが叫ばれる社会状況のなか、どのコンビニもごみのリサイクルに取り組んでいます。
そのリサイクル運動の陰には、コンビニに勤める店員さんたちの地道な作業があるのです。
- コンビニから出るごみの種類と量
- コンビニにおけるごみの分別
- ごみの分別作業
コンビニから出るごみの種類と量
コンビニから出るごみは、事業系一般廃棄物として処理されます。
このため、自治体で収集するのではなく、各店舗ごとに回収業者と契約して、定期的にごみを処分しています。
ごみの種類は実にさまざまです。
飲料やお菓子、カップラーメンの容器。さらに、それらの商品が梱包されていたダンボールも大量に出ます。
次に、販売期限切れ商品があります。
期限切れのお弁当やパンだけでなく、売れ残ったフライドチキンやおでん、お惣菜などの生ものがごみとして出ます。
そして、店頭に設置されたごみ箱にお客さまが捨てたごみです。
コンビニにおけるごみの分別
店舗から出たごみが回収されるのは、週に2~3回ほどです。
そのため、コンビニの店舗裏には、もの置きくらいの巨大なごみ箱が置かれ、そこにごみを一時的に入れておきます。
業者や契約にもよりますが、ごみの回収業者は土日祝日は休みの場合が多いようです。
年末年始など長期休暇の時は、収納しきれないほどのごみを保管しなくてはならないこともあるそうです。
ごみの分別作業
忙しいコンビニですが、ごみはどのように分別されているのでしょうか?
近年では、各コンビニで、廃棄商品をそのまま捨てるのではなく、再処理されて肥料や飼料になるようなルート作りが進められています。
セブンイレブン
セブンイレブンでは、やむなく販売期限が過ぎてしまった商品の適正処理や堆肥・飼料などへのリサイクルを実施する仕組みとして1994年から「エコ物流」を推奨し、この仕組みにより全国27都府県にて食品リサイクルを実施しています。
また、揚げ物を提供する際に使用した油は飼料や工業用インクなどにリサイクル。これらの取り組みにより、2016年度の食品リサイクル率は53.4%となっています。
ローソン
ローソンでの、余剰食品の有効活用を考え、四条食品の発生抑制と再生利用(廃油リサイクル、余剰食品の飼料化・肥料化)に取り組んでいます。
2007年度の実績(22.5%)を基準に、2008年度から毎年2%以上改善し、22013年度の実績は法定目標34.5%を大きく上回る47.6%を達成しています。
ファミリーマート
店舗から出る食品廃棄物(お弁当やおむすびの残り、ファミチキなど)は、生ごみ回収リサイクルシステムにより飼料、肥料、メタン等に再資源化しています。
また、食品廃棄物の飼料・肥料へのリサイクルを積極的に推進するため、リサイクルに対応できる廃棄物処理委託業者との取り引きを拡大。
2008年より、再生利用事業計画として認定された液体飼料化にも取り組んでいます。
東京、神奈川の店舗などから出された生ごみを廃棄物収集運搬業者が回収し、飼料工場を持つ養豚場に効率的に運搬します。
それを液体飼料して豚を飼育し、一部のお弁当や総菜パンとして製造、販売するわけです。
回収店舗数は2017年度で約750店舗となっています。
ごみはコンビニで捨てずに家庭で分別して処分しましょう
各コンビニで、ご紹介したような企業努力が行われています。
ですが、廃棄商品を効率よくリサイクルするために欠かせないのが、各店舗においてのごみ分別作業です。
しかし、大切な仕事とはいえ、店員さんにとって大きな負担になっているのも事実です。
廃棄になった商品の商品のパッケージ・容器・中身に分けなくてはなりません。
さらに、店頭のごみ箱に捨てられているものはもっと大変です。
ごみ箱は可燃ごみ、不燃ごみなどに分けられていますが、必ずしもきちんと捨てられているとは限らないからです。
また、缶とペットボトルが一緒に捨てられていたりすれば、分けなくてはなりません。
この分別作業にかなり時間を取られてしまうようです。
これほど努力を行っているコンビニ。最近では、不法投棄の監視を厳しくするため、ごみ箱が店内に設置されることが多くなっていますね。
ごみ箱を置いてくれているコンビニの善意を無にしないよう、またエコの観点からも、気軽にコンビニのごみ箱に家庭のごみを捨てる行為はやめたいものです。