「不法投棄」というと、山や林に使わなくなった電気製品や生活ゴミを放置していることをイメージする方は少なくないでしょう。
ゴミを山などに捨てることは不法投棄で、立派な犯罪になります。
ゴミの量や大きさにかかわらず、適切な場所以外にゴミを捨てることは、すべて不法投棄に該当します。
不法投棄によって捨てられたゴミが原因で、環境が汚染され、さまざまな悪影響を引き起こしてしまう可能性があります。
悪質な不法投棄は特定の地域だけでなく、国全体としても深刻な問題となっています。
今回は、不法投棄の現状と対策について、詳しく解説いたします。
目次
不法投棄とは
普段ゴミをどのように捨てていますか?
生活ゴミなら、各自治体の『ゴミ出しルール』に沿って捨てるものですよね。
ゴミ袋に詰めて、指定された収集日の朝にゴミ捨て場へ出しに行く、これが適切な処分方法です。
しかし、生活ゴミ以外の家具家電といった大型のゴミになると、家庭ゴミの取り扱いではなくなることがほとんどです。
粗大ゴミとして処分するにも、不用品回収業者へ引き取りを依頼するのにも、処分料がかかります。
粗大ゴミの処分料がかかるという点から、いらなくなったものを不法投棄する人が後を絶たないのです。
不法投棄は、人目に付きにくい山林や山奥などで多く行われています。
なかには、他人の家の敷地内に、許可なくゴミを投棄していく悪質なケースも少なくありません。
国内の不法投棄量は年間151件も
環境省の「産業廃棄物の不法投棄等の状況」によると、日本の年間不法投棄件数は151件です。
不法投棄されたゴミの量は、総量7.6万トンにもなると報告されています。
前年度(155件、15.7万トン)と比較すれば件数・数ともに減りつつあります。
しかしそれでも、まだ大量の不法投棄があり、撲滅が困難という現状です。
参照元:http://www.env.go.jp/press/108861.html
空き缶1つでも不法投棄になる
不法投棄にゴミの量や大きさは関係ありません。
指定された収集場所以外にゴミを投棄することは、すべて不法投棄に該当します。
山奥はもちろん、他人の家、国の所有地、道路などにゴミを捨てることも禁止です。
山奥で家具家電を捨てる典型的なものだけでなく、以下も不法投棄となります。
道路や河川敷に空き缶をポイ捨てする
道路は公共の設備です。
河川敷も個人のものではありませんし、ゴミを捨ててよい場所でもありません。
設置してあるゴミ箱に捨てるのはOKですが、ポイ捨ては不法投棄に該当します。
例えば飲み終わった空き缶を、そのまま公園のベンチに置き去りにするのもNGです。
よく道路に、たばこの吸い殻や噛み終わったガムが落ちていることがありますよね。
これらはすべて不法投棄によって捨てられたゴミなのです。
自転車やバイクを乗り捨てる
外出先で壊れた自転車やバイクを乗り捨てて放置することも、不法投棄となります。
自転車・バイクを捨てる際は、自治体のゴミ出しルールに従い、適切に処分することが基本です。
国や個人の土地へ許可なく勝手に置き去りにする行為は、決して許されることではありません。
不法投棄をするとどうなる?
不法投棄は、個人・法人問わず法律で禁止されています。
捨てたものの大小や量関係なく、罰則が科せられます。
平成29年6月16日には、不法投棄を規制するための法律『廃棄物処理法』が交付されました。
参照元:http://www.env.go.jp/recycle/waste/laws/kaisei2017/index.html
廃棄物処理法の内容を一部ご紹介します。
個人の刑罰(廃棄物処理法 第25条 第1項第14号)
5年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
個人の不法投棄であっても、5年以下の懲役や1000万円以下都の罰金の支払い、または両方という重い罪に問われます。
実際に起こっている不法投棄の例
日本全国各地で、さまざまな不法投棄が相次いでいます。
不法投棄は自然を破壊するだけでなく、美しい景観を汚し、火災などの災害に引き起こす恐れもあります。
実際に問題となっている不法投棄の事例を、以下にまとめました。
不法投棄の例①〈京都府宇治市〉団地であいつぐ大量のゴミ
京都府宇治市の府営団地では、家電の不法投棄があいついでいます。
不法投棄が目立つようになったのは2020年9月ごろから。
大量に投棄された家電が団地内の集積所へ大量に捨てられるようになりました。
捨てられた家電は重たく処分も困難で放火の危険もあります。
団地に住む住民は、連続で発生する家電の不法投棄に頭を抱えています。
参照元:https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/456458
不法投棄の例②〈神奈川県逗子市〉産業廃棄物の廃棄で社員ら5人を逮捕
神奈川県逗子市では、20トンもの汚泥を下水に流して逮捕された事例もあります。
自動車整備工場やスーパーで出た産業廃棄物は、適切に処分しなければなりません。
処分料を浮かせるために公共施設である下水道に流せば、水質汚染に繋がる恐れもあります。
参照元:https://www.sankei.com/affairs/news/210209/afr2102090007-n1.html
こういった身勝手な不法投棄が繰り返されると、私たちの生活や健康に悪影響を及ぼす場合もあるのです。
自治体が行っている不法投棄の対策
不法投棄を撲滅するために、国や自治体ごとに取り組みを行っています。
不法投棄対策①〈環境省〉全国ゴミ不法投棄監視ウィークを実施
環境省では、平成19年度から毎年5月30日を”ゴミゼロの日”として、『全国ゴミ不法投棄監視ウィーク』を行っています。
5月30日~6月5日(環境の日)までの7日間、パトロールや清掃活動などを実施して、不法投棄を削減に努めているのです。
参照元:
不法投棄対策②〈千葉県柏市〉夜間パトロールや防止カメラの設置
千葉県柏市では、不法投棄が多発している地域を中心に夜間パトロールを行っています。
さらに、防止カメラも設置されています。
その結果、撲滅には至っていないものの、山林への不法投棄数の大幅減に成功しました。
参照元:
不法投棄対策③〈神奈川県相模原市〉パトロールや警告シールの貼付
神奈川県相模原市では、定期的なパトロール・防止カメラのほか、不法投棄を発見した際は警告シールを貼るなど、対策を強化しています。
また、住民にも“不法投棄を見つけたら警察へ通報”を促しており、犯人特定にも力を注いでいます。
まとめ
不法投棄は、ゴミの種類や量にかかわらず犯罪です。
ゴミは適当に捨てず、必ず正しい方法を捨てることを徹底しましょう。