近年では、住居もフローリングの洋室が多くなり、畳が敷かれた和室に住んだことのない方も増えています。
畳のイグサの香りや触り心地はとても良いものですが、畳を上げてフローリングの部屋にリフォームする人も多いようです。
また、畳は消耗品のため、日々メンテナンスを行っていても傷みは発生します。
様々な理由で不要になった畳は、どのような方法で処分するのが適切なのでしょうか。
この記事では、意外と知られていない「畳の処分方法・費用相場」と併せて、捨てる際の注意点についても詳しく解説します。
まずは「畳の種類」を把握しよう
畳の処分方法を説明する前に、まずは畳の種類についてお話しましょう。
一口に言っても、「畳」は種類や素材・大きさによって処分方法が異なります。
畳は、日本で伝統的に使われてきた床材で、日本固有の文化です。
しかしその素材は様々で、二層構造のものもあれば、三層構造で異なる素材が混合しているタイプもあります。
そのため、畳を処分する際は「どんな素材が使われているのか」の事前確認は必須です。
畳の素材は?
畳はどのような素材で作られているのか、具体的に見ていきましょう。
畳の表側(畳表)=イグサ
畳表は表面のゴザのような部分のことで、イグサで織られています。
イグサは、保温効果や除湿効果、空気の清浄作用などがあるとされています。
近年になると、化学繊維やパルプを使用したものも作られるようになりました。
畳の裏側(畳床)=藁/木製チップボード/発泡スチロール等
畳床は畳の芯で、弾力性、保温性、断熱性、吸湿性などをつかさどる部分です。
昔は乾燥藁を糸で束ねたものを何層にも重ね、圧縮したもので作られていました。
この部分は、畳の踏み心地に関わってくる部分で、藁の使用量が多く密度が高いほど高価とされています。
しかし現在では、リーズナブルな畳も増えており、安価な素材のポリスチレンフォーム、発泡スチロール、木製チップボードを使用した畳も多く流通しています。
畳の側面(畳縁)=綿・麻の糸
畳縁は、畳の側面にある布地の部分です。この布によって、畳を保護しています。
使われる生地には様々な色・柄があり、部屋の雰囲気づくりにも一役買っています。
このように、基本的には「畳表」「畳裏」「畳縁」の3構造に分かれており、基本的には畳1枚が同じ素材で作られていることはほぼありません。
とくに「畳裏」はものによって素材が異なるため、処分時に分別が必要になるケースもあります。
最近は樹脂加工畳など、機能性が高い畳も登場しており、畳に使われる素材については複雑になりつつあります。
畳の素材については、糸を切って畳縁をめくると分かります。
自力で処分する際は、事前に確認の上、適切な方法で処分しましょう。
畳のサイズもバラつきがある
実は、畳のサイズは地方によって異なり、主に4種類のサイズがあります。
処分方法によっては、サイズが原因で回収できなかったり、処分費用が変わったりする場合もあります。
京間
京都や関西地方、中国地方、九州地方などで使われるサイズ。
縦191cm×横95.5cmと、4種類の中でもっとも大きい畳。
中京間
愛知・岐阜などの中京地区、福島・山形の東北地方、北陸地方の一部や奄美大島など日本各地で使われているサイズ。
縦182cm×横91cm程度。
江戸間
全国的な標準規格として関東地方、東北地方、北海道で使われるサイズ。
縦176cm×横88cmと小さく、地方から上京した人が部屋を狭いと感じることも。
団地間
公団住宅やアパート・マンションなどで使われるサイズ。
170cm×85cmと、4種類の中では最小。
畳の替え時はいつ?
リフォームではなく、新しい畳を買い替える場合、替え時はいつ頃なのでしょうか。
結論から言うと、畳の寿命は10~15年程度が目安です。
もちろん使い方や部屋での過ごし方、畳の設置場所によって寿命は異なりますが、だいたい10年程度で畳表の傷みが目立ってきます。
一般的には4〜5年ごとに表替えと裏返しを行い、両面を使い古した頃が取り替えのタイミングです。
10年経っていないものでも、畳の表面が色褪せていたり、擦れたりしてしまっていたら、取り替え時でしょう。
メンテナンスで寿命が延びる場合も
畳の寿命は、敷いている場所やこまめなメンテナンスによって延ばすことができます。
丁寧にメンテナンスを行えば、20年前後持つことも。
畳は買い替えても高額で、捨てるにも費用と労力がかかりますので、できるだけ長持ちさせることはメリットしかありません。
畳の処分方法は8つある
それでは本題、畳の捨て方について紹介します。
主な処分方法は、次の8つです。
畳の処分方法①小さく解体して「可燃ゴミ」「不燃ゴミ」へ
大きな畳でも、30cm程度に切って細かくすることで、家庭ゴミとして処分できます。
自治体のゴミ収集に出せば、処分費用がかからないため経済的な負担もゼロです。
ただし、厚く固い畳を自力で解体するのは、そう簡単ではありません。
電動のこぎりなど特殊な道具も必要ですし、素人の場合は扱いも不慣れなため危険が伴います。
畳1枚を細かくするには、時間と体力を消費しますので、一気に解体するのは現実的ではありません。
畳の素材によっては、切ること自体難しいケースもあります。
細かく切って家庭ゴミに出す捨て方は、畳が小さい場合や、数日かけて進められる場合のみ検討しましょう。
また、複数の畳を処分したい場合は、大量のゴミの山ができるので、あらかじめ広めのスペースが必要です。
あまりに量が多いと、回収してもらえないケースがありますので、カットした畳は複数回に分け、少量ずつ出すようにしましょう。
畳の処分方法②自治体の粗大ゴミとして捨てる
多くの自治体では、一辺が30cm以上のものを粗大ゴミとしています。
そのため、不要な畳を処分するのなら、自治体が回収する「粗大ゴミ」として捨てるのが一般的です。
処分費用は自治体によって異なりますが、相場で1,000円前後と比較的安価な料金で処分できます。
粗大ゴミに出す場合は、ほとんどの地域で事前受付が必要です。
居住自治体の粗大ゴミ受付センターへ、電話かインターネットで回収を申し込みます。
手順は以下の通りです。
粗大ゴミ受付の手順
- 粗大ゴミ受付センターへ申し込む
- 回収場所/料金/日時を聞き、メモを取る
- 料金分のリサイクル券を購入し、必要事項を記入
- 処分する畳の目立つ場所にリサイクル券を貼り、回収当日の朝に指定場所へ運び出す
粗大ゴミは、高額な費用がかからず手続きも簡単なメリットがありますが、いくつかの壁もあります。
ひとつは、指定場所まで自力で運び出さなければならないことです。
1枚30kgほどある畳、回収場所まで1人で運ぶのは困難な場合もあるでしょう。
エレベーターのない集合住宅の場合、自宅から搬出するだけでも大変です。
また、申し込んでから回収までは最短でも2週間ほどかかる場合がほとんど。
申し込んでも即回収とはいかないため、引っ越しなどで早く処分したい人には向きません。
畳の処分方法③クリーンセンターへ自己搬入する
粗大ゴミよりも費用をかけずに畳を処分したい人は、クリーンセンターへの持ち込む方法があります。
清掃事務所へ自力で運ぶ時間と手間はかかりますが、地域によっては処分料の減額措置があり、自治体によっては回収料金の半額や無料になる場合もあり、処分費用は大幅に抑えられます。
このような経済的メリットがある一方、大きく重量のある畳を運ぶ車両や、積み下ろしの人手が必要です。
回収と同じく、事前の予約が必要な場合もあるので、事前に問い合わせしましょう。
畳の処分方法④畳屋に処分を依頼する
畳のことは、プロである畳屋さんにお願いするのも良いでしょう。
畳を新しく張り替える際、古い畳を処分してもらえば、張り替えと処分が一度に終わって一石二鳥です。
ただし、畳屋の畳回収サービスは、基本的に新しい畳を購入・張り替えを行う時のみです。
張り替えではなく、古いものの処分だけをしたい場合は、対応してもらえるか問い合わせる必要があります。
また、昔は無料回収を行う畳屋さんが多かったようですが、現在は有料回収が主流です。
古い畳の回収費用は店によって異なりますので、事前に確認しておくと良いでしょう。
畳の処分方法⑤不用品回収業者に依頼する
費用はかかりますが、処分を急いでいる人には不用品回収業者がオススメです。
自治体の回収や粗大ゴミと違い、自分の都合に合わせて回収してもらえます。
業者によっては、早ければ即日や翌日に回収してくれるケースもあります。
また、自宅からの搬出作業もスタッフが行うため、自力で運び出す必要がありません。
集合住宅にお住まいの人や、処分したい畳が複数枚ある人は、手間をかけずに処分できます。
ただし、手間なく処分できる分、粗大ゴミや畳屋に依頼するよりもお金がかかるのは明確で、費用は万単位かかります。
さらに、不用品回収業者の中には、悪質な業者も混じっています。
トラブルに巻き込まれることのないよう、複数の業者から相見積もりを取り、実績や所在地、サービスなど比較をして、納得のいく不用品回収業者に依頼しましょう。
畳の処分方法⑥・リサイクルショップに売却する
最近は、畳を使用する家や部屋が少なくなっているため、需要は多くありませんが、古い畳の買い取りを行っているリサイクルショップも存在します。
状態が良く、まだ使える畳を手放す場合は、捨てる前に売却することも検討しましょう。
まずは、畳の買取りを取り扱っているかリサイクルショップへ問い合わせてみましょう。
畳は重量があるため、買い取り・査定可能な場合は、持ち込みのみか、出張引き取りをしてもらえるかも聞いておくと安心です。
ただし、リサイクルショップは買い取り額が安価なため、高値での買い取りは望めず、正直なところ、金額が付けば良い方です。
また、状態によっては買取り不可や無料の引き取りさえ断られる場合もあります。
査定を受けても持ち戻りとなる可能性もありますので、必ず売れると思い込まず、「ものは試し」くらいの気持ちで臨みましょう。
畳の処分方法⑦・畳の買い取り専門店に売却する
近年、さまざまな買い取り専門店がありますが、畳の買い取りを専門店もあるようです。
持ち込みだけでなく、宅配便買取りや出張買取りを行っているショップもあります。
まずはインターネットなどで畳の買い取り専門店を調べて、どのような形で運搬をするのか、確認しましょう。
畳の処分方法⑧リサイクル業者に依頼する
少ないですが、畳をリサイクルしている業者もあります。
可燃ごみとして畳を焼却処分するほか、肥料や代替燃料として再資源化することも選択できる、エコな方法です。
古畳をリサイクルしている業者は少ないため、居住地域によっては対応できる業者が見つからない場合や、畳の種類によっては受け付けてもらえない場合もあります。
まずはインターネットで業者を検索し、業者に問い合わせましょう。
業者の工場へ直接持ち込めれば、リサイクルのみの料金で済みます。
畳を処分する際の注意点
どの方法で畳を処分する場合でも、捨てる前の注意点がいくつかあります。
素材や捨て方ルールの確認を
繰り返しになりますが、畳はものによって素材に違いがあります。
最近は、樹脂加工畳やダニやカビが発生しづらいプラスチック畳など、使われている素材もさまざまです。
自治体が回収する粗大ゴミや可燃ゴミについては、出し方のルールも自治体によって異なります。
とくに可燃ゴミとして捨てる場合、畳1枚の素材をすべて分別しなければなりません。
畳を処分する際は、素材や自治体ごとのゴミ出しルールを確認の上、適切な方法で廃棄しましょう。
水で濡れている畳は乾かしておく
イグサなどで作られている畳は、水分を含むと重くなります。
ただでさえ重量のある畳がさらに重くなれば、回収作業や処分も大変です。
そのため、濡れている畳は、回収できなかったり処分費用が上乗せされたりする場合もあります。
水濡れに限らず、カビの繁殖や腐敗が進んだ状態の悪い畳、糞尿などで汚れがひどい畳も、高額な処分費用がかかる場合もありため注意が必要です。
畳は捨てる時もお金がかかるもの。手放す際に余計な費用がかからないよう、日ごろからメンテナンスを行い、いらなくなったら早めの処分を心がけましょう。
無理のない処分方法を選ぶ
どんなに小さい畳でも、ある程度のサイズ・重量があります。
そのため、1人で処分するのは困難な場合もあるでしょう。
粗大ゴミであれば安価、可燃ゴミなら費用をかけずに処分できますが、畳の大きさによっては限界があります。
大判の畳は、回収場所まで自力で運び出すのが難しい場合もありますし、大きくて厚い畳を自分で解体するのも危険です。
畳を安全に処分するためにも、無理をするのは禁物です。
いらない畳がたくさんある場合や、サイズ・重量的に自分で運び出すのが難しい場合は、友人・知人の手を借りるほか、思い切って業者に頼ることも検討しましょう。
まとめ
日本の文化は中国から伝わったものが多い中、畳は日本の風土に合った固有の文化です。
ソファに座り、ベッドに寝る西洋風の生活スタイルが広まっても、畳はなかなかなくなりません。
それは、畳が日本の気候風土に合い、日本人にとって心地良いからでしょう。
古い畳に感謝して、上手に捨てられるといいですね。