遺品整理における「片付け」は多岐に渡ります。故人と離れて暮らしていた遺族にとっては、特に何をどう整理すれば良いのか、わからないことも多いはずです。
片付けの場合、ごみとして処分したり、リサイクルに回す物は、わかりやすい物も多いでしょう。
反対にどう処分すればいいのかわからず、困ってしうケースが多いのは、小さくても高価な遺品ではないでしょうか。
ひとまとめにリサイクル業者に任せることもできず、かといってどの業者に査定してもらえばいいかわからない物を、以下にまとめてみました。
貴金属は相場を要チェック
金は古来より最も価値の高い貴金属とされてきました。
希少性でいえばダイヤモンドや他の金属のほうが高いのですが、金の価値とは「長い年月を経ても変化しない」という点にあります。
これは特に銀や銅と比べても参加しにくく、形状も色も変化しにくいからです。そのため、金は紀元前から貨幣として利用されてきました。
現在では金は、資産・投資対象として多くの金融商品が取り扱われています。つまり、最も資産的価値が高い物のひとつです。
もうひとつ、金が投資対象となる理由があります。それは金というのは軟らかい物質のため、そのまま装飾品とするには難しい金属だからです。
そこで別の金属と混ぜて装飾品を作ることになりますが、いわゆる純金はやはり投資対象となることが多いようです。
では遺品を整理していて金製品が出てきた場合、どうすれば良いのでしょうか。
まず装飾品、ジュエリーの形で見つかったら、ジュエリー専門店などで査定してもらいましょう。ジュエリーはデザインに流行もあるので、リフォームを相談してみるのも方法のひとつです。
買い取り業者やリサイクルショップに引き取ってもらったり、ネットオークションに出品する方もいますが、なかなか思ったような値がつかないことが多いようです。
さらに、こうした業者のなかには貴金属を安く買いたたく悪徳業者も存在します。そんな悪徳業者に引っかからないための予防策は、「相場を知っておく」ことでしょう。
先に述べたとおり、金は投資対象として広く取引されています。その取引額は主に、東京商品取引所の公式サイトで調べることができます。
例を挙げれば、2016年8月の金(標準取引)取引額は、1グラムあたり4393円です。
遺品のなかから18金(18K、純金は24K)の指輪(5g)が出てきた場合、単純計算で
4393円×5g×0.75(18/24)=16474円
となります。これはあくまで単純計算(概算)であることにはご注意を……。
もちろん価格は状態によって大きくことなりますが、相場を把握しておくことは重要です。
東京商品取引所では銀、白金(プラチナ)の取引額も見ることができるので、参考にしてみてください。
着物はリサイクルブーム
ここ数年、インターネットの検索機能で、検索したい単語に続く2番目のキーワードに注目が集まっています。
ちなみに「遺品整理」と検索したら、2番目に「資格」や「求人」と出てくることが多いでしょう。それだけ遺品整理の仕事に注目が集まっているという証明ですね。
さて、遺品整理のなかで最重要テーマのひとつ「リサイクル」を検索すると、次に出てくるキーワードは「ショップ」(=リサイクルショップ)、「チケット」or「券」(=いわゆる金券ショップ)の次に多いのは意外にも……「着物」なのです。
実際のところ、検索結果では多くの着物リサイクルショップがヒットします。
最近は柴咲コウさんなど着物を好む若い女優さんも多く、同じく若い女性のなかでも着物ブームが起きているようです。
しかしながら着物、和服は一つひとつが高価で、若い世代にとってはなかなか手を出しづらい商品でしょう。そこで和服の古着の需要が高まっているのかもしれません。
遺品整理という観点から言っても、着物リサイクル業者はおおいに役立つものです。
遺品のなかに、親御さんの着物が入っていた場合、何も知らない状態ではその処分に困ることでしょう。
他の洋服と同じように、一般的なリサイクルショップに渡しづらく、かといってなかなか呉服屋に持ち込みにくいものでもあります。
もちろん兄弟・親戚で着物を譲り受けたい方がいれば別ですが、もし希望者がいなければ、こうした着物リサイクル業者を利用するのは有効です。
その買い取り価格ですが、数千円から数十万円と幅が広く、一概にはいくらと言えません。
もちろん状態や作り手によっても大きく異なります。ただし、下記のように注意しておかなくてはいけないポイントはありますので、参考にしてみてください。
1)保管状態が良い:汚れ・シミ・シワが無い
2)素材が正絹: ポリエステル(化学繊維)やウール(羊毛)の着物は値段が付きにくい
3)小物などもまとめて: 帯、下駄、足袋、草履、扇子、根付、帯締め、帯揚げ、かんざし等
4)人間国宝や有名作家の作品:作者を証明できる落款や証紙(書画作成、売買の署名や情報を証明するもの)が必要となります。
繰り返しになりますが、着物の査定には専門的な知識が必要となります。遺品のなかに着物があった場合は、上記のポイントに注意して必要なものを揃え、専門業者に査定をお願いしてみてください。
また、着物も貴金属と同じくリフォームするという方法もあるので、それも踏まえて専門業者に相談してみることをお勧めします。
ピアノの査定ポイントは?
核家族化が進み、アパート・マンションのような集合住宅住まいが多い現代ではなかなか想像がつきにくいもの――それはピアノのような大型の楽器の処分です。
現在40代以上の世代は、実家に大きなピアノがあったというケースも多いのではないでしょうか。
しかしピアノのような大きな楽器は運搬に数万円かかり、かつ楽器禁止の集合住宅が多いため、子供が家を離れてもピアノはそのまま置いてあるという家庭がほとんどかと思います。
そうなると当然、遺品整理でも大きな楽器は処分に困るかもしれませんが、ピアノは中古市場でも需要があり、専門業者が高価で買い取ってくれる可能性が高い。
ではピアノを買い取ってもらうにはどうすれば良いのか。大手楽器店『島村楽器』が運営する「ピアノコンシェルジュ」公式サイトの買い取りコーナーを参考にしてみましょう。
「ピアノコンシェルジュ」では査定の際、最初にピアノのa)メーカー、b)品番・製品番号、c)ペダル数の3点を依頼者自身が確認します。
a)は鍵盤上部に、b)はピアノ上部の蓋を開けたところに、それぞれ記載されています。b)は品番がアルファベット1文字、製品番号が5~7桁の数字になっていますので、ご確認ください。
c)はそのままピアノ下部のペダル数です。基本的にペダルは2本か3本ですが、買い取り業者によっては3本のピアノのみを対象としているようです。
これらの情報をもとに電話またはメールで査定を申し込むと、査定金額の返答があり、合意できれば買い取り、運搬業者が引き取りに来ます。
当然、まずは現場で実物を見て査定を行う業者もいます。いずれにせよ査定のポイントは把握しておいたほうがいいでしょう。
買い取り価格は、国内いえばヤマハやカワイといったトップメーカーであれば、アップライトピアノで数万円、グランドピアノなら数十万円になります。業者によっても買い取り価格が大きく異なるので、複数の業者に査定を依頼してみても良いでしょう。
古いピアノは買い取ってもらえば、そのまま中古市場に回ることで、しっかりとリサイクルの役割を果たすことになります。
ギターなどの人気が高い楽器も同様に、遺品整理の際にごみとして処分するのではなく、まずは専門業者に査定をお願いしてみるべき品々といえます。
そのほかのコレクション品など
最後に、遺品のなかに多い、故人のコレクション品でも買い取り価格が高い可能性があるものをご紹介します。
切手、コイン:コイン商
特にコレクターが多い商品です。いわゆる「コイン商」と呼ばれる中古コイン・貨幣・切手の買い取り販売を行っている業者も多く、『日本貨幣商協同組合』という組織も存在します。
この組合では組合員名簿として各地域の業者を紹介しており、またどの貨幣がどれだけの価値を持っているのかが一目でわかる『貨幣カタログ』を発行しており、参考にしてみると良いでしょう。
商品券、ビール券:チケットショップ
遺品のなかでも意外と多いのが、商品券やビール券です。故人がお中元やお歳暮でいただいたものを残しておいたのでしょうか。
大手チケットショップでは、全国百貨店共通商品券が96~98%、伊勢丹・高島屋・三越といった有名百貨店の商品券は98~99%の価格で買い取ってくれます。ビール券はほぼ額面に近い金額で買い取ってくれるケースも多いようです。
ただしこの金額も保存状態によります。特に折り曲げは厳禁。必ず綺麗な状態で残しておきましょう。
本・雑誌:古本業者
映像業界の発達、スマートフォンやタブレット端末が普及した現代にあっても、やはり年代が高くなればなるほど、情報ツールとして本・雑誌を利用している方も多いはず。
一般家庭では雑誌類などを可燃ごみとして処分している場合も多いですが、古本業者の最大手『ブックオフ』は出張買い取りサービスを行っています。
不要な本・雑誌を段ボールなどにまとめておけば、決めた集荷日に引き取ってくれるのです。反対に宅配買い取りサービスもあります。現在は多くの業者がこのサービスを行っているので、利用してみると便利でしょう。
とはいえ雑誌は古いものだと買い取り対象外であることが多いので、注意してください。
生前整理と遺品整理業者
さて、ここまで遺品整理において、主に買い取りの対象となるものをご紹介してきました。ところがこうした品々も、各々の業者に買い取りをお願いするのは時間も労力もかかります。
そんな時、大切になってくるのは「生前整理」です。
親御さんが高齢者になってくると、まずは部屋の整理をしながら、ここまでご紹介したような品々をノートなどにまとめ、事前に査定してもらっておくのも方法のひとつです。
もちろん、高齢者ご自身が子や孫――大切な家族のために、自ら生前整理を行っておいたほうが良いでしょう。
また、大切な人が突然亡くなった場合は、遺品整理業者に相談してみてください。
遺品整理業者のなかには、たとえば遺品整理作業の料金から、見つかった貴金属や金券などを査定し、その合計額を遺品整理料金から引くということもあります。
遺品整理の料金が20万円、見つかった貴金属・金券などの査定額が5万円という場合、貴金属・金券を引き取り、5万円を差し引いた15万円を料金として頂くという形です。
この方法であれば、細かく業者に査定を依頼したり、あるいは悪徳買い取り業者に引っかかるリスクも低くなることでしょう。
遺品整理業者に作業を依頼する場合は、こうしたケースについてもぜひ尋ねてみてください。