自分の死後、愛する家族を揉めたり悩ませたい人はいないでしょう。
特に財産、つまり遺産はトラブルのタネになりがち。
本来なら遺言書を作成して、明確に財産の一覧と処理方法を示さなければなりません。
しかし、ガチガチに様式が決まっていて作成に時間と費用がかかる遺言書をいきなり作るのは腰が引ける人は多いのではないでしょうか?
そこでおすすめなのが、まずは「財産目録」を作成することです。
財産目録は、財産を所有している人が遺言書に添付するために作成する書類です。
死後には、自分の所有する財産を相続人が引き継ぐことになりますが、この目録があれば、相続がスムーズになります。
今回は、この財産目録の作り方について見ていきましょう。
目次
財産目録とは?
財産目録とは、相続財産の内容がわかるようにまとめたものです。
現金・預貯金・不動産・有価証券など、自分が所有する財産の種類・内容・価額を一覧表にします。
つまり、自分の所有している財産の内容を一目でわかるようにした一覧表です。
財産を所有している人が遺言書に添付するために作成したり、相続人が遺産分割協議の際に作成したりします。
相続目録には、預貯金や不動産をはじめとするプラスの財産だけでなく、借金やローンなどマイナスの財産も含めます。
書式は特に決まっていませんが、一目で財産の全体像がつかめるように作成することが必要です。
財産目録を作るメリットとは?
財産目録の作成は義務ではありません。
それでも多くのメリットがあります。
自分の所有財産を把握できる
財産目録には相続財産を全て記載するため、自分がどのような財産を所有しているか、はっきりさせることができます。
特に、多くの銀行と取引をしていたり、不動産を多く所有していたりする場合には、財産目録を作成することで自分がどれくらいの財産を所有しているのか整理できます。
その結果、今後の生活設計にも役立ちます。
また、遺産を相続する側にとっても、プラスの財産とマイナスの財産(あれば)を併せて見ることにより財産の全体像がわかれば、相続税対策を講じることができます。
相続手続きがスムーズに行える
相続財産の分割を行う際、遺言書がない場合は相続人全員で遺産分割協議を行います。
このとき、故人のすべての財産を明らかにする必要があります。
相続人が故人の財産を把握しようとすると、調査に手間と時間がかかることも少なくありません。
最近では、銀行口座以外にもネットバンキングや電子マネーなどインターネットを利用してお金を管理する人が増えています。
そのため、本人以外の人が財産を管理・把握することが非常に難しくなっています。
財産目録を残さずに他界してしまうと、遺族はすべての財産を一から探さなくてはなりません。
しかし、あらかじめ財産目録が作成してあれば、調査をする必要がなく、スムーズに協議を行うことができます。
また、遺産分割協議が終わった後に相続人の知らない財産の存在がわかり、遺産分割協議を最初からやり直すような事態も避けられます。
また、マイナスの財産を記入することにより、相続人が相続放棄をするかどうかをスムーズに決めることができます。
遺言書をスムーズに作成できる
もし遺言書を残しておきたいなら、財産目録を併せて作成しておきましょう。
遺言書には、誰にどの財産を、どのくらいの割合で相続させるかを具体的に書かなくてはなりません。
その際、財産の把握が必要となるため、財産目録があれば便利です。
誰に何を残すのか、遺言の資料として大きな効力を発揮します。
また、目録を見ながら遺言書や遺産分割協議書を書くようにすると、誤記が発生しにくくなります。
財産目録に記載する内容とは?
財産目録には、すべての財産を記載する必要があります。
つまり、プラスの財産もマイナスの財産も記入しなくてはなりません。
プラスの財産
- 現金
- 預貯金
- 不動産
- 有価証券
- 自動車
- 美術品・骨董品
- 貴金属など市場価値のあるもの
- ゴルフの会員権など
マイナスの財産
- 住宅や自動車などのローン
- 借金
- 家賃
- 未払いの税金
- 未払いの医療費
- そのほか債務など
これらの財産を財産目録に記載する場合には、財産内容を特定できるような情報を記載しなければなりません。
例えば、預貯金の場合は以下を詳しく記載するようにしましょう。
- 銀行名
- 支店名
- 口座種別
- 口座番号
- 口座名義
美術品、貴金属なども財産になります。
これらを記載する場合にも、保管場所とともに具体的に特定できる情報を記載します。
例えば、「時計」と記載するだけではなく、以下のような記載が望ましいです。
「金庫に保管している〇〇株式会社の品名△△△(製造番号××××)の時計」
また、財産の状況が変わった場合には、相続が発生した際に必要な情報になります。
都度遺言書や財産目録の内容を変更したほうがいいでしょう。
なお、遺言書の添付資料として財産目録を作成する際は、把握していなかった財産が相続時に発覚した場合に備えて、以下のような文言を遺言書に記載しておくこともできます。
そのほかの財産が発覚した場合には◯◯◯◯(相続人名)に財産を引き継ぐ
財産目録を作成してみよう!
なんとなく面倒そうなイメージのある財産目録作成ですが、それほど難しくありません。
正確な内容であることを心がけ、時間をかけて丁寧に確認・作成しましょう。
自由な書式で書こう
財産目録に特定の書式やルールはありません。
手書きで作成しても、パソコンで作成しても大丈夫です。
もともと、財産目録は作成義務はありません。
ですから、自分が書きやすいと方法で気軽に始めてみましょう。
フォーマットがある方が書きやすい人は、市販のエンディングノートもできます。
最近は、インターネットでダウンロードできる書式もたくさんあります。
書く内容は?
財産目録に特定の書式はありませんが、以下の内容を記載できます。
財産の種類
預貯金・不動産・現金・有価証券など、財産の種類を明記します。
口座のある金融機関
預貯金のある金融機関名、取り引きしている証券会社名などを明記します。
また、不動産の場合は、その土地の正確な住所(登記書に記載されているもの)を記載します。
金額・数量・広さなど財産の内容
預貯金の金額や自動車の台数と価値、貴金属の数、土地の広さ、価値を記載します。
内容は、以下のような財産を証明する書類を揃えて精査し、書き出していきましょう。
- 通帳
- 保険証券
- 貴金属の鑑定書
- 土地家屋の権利書
- 車検証
現金・預貯金の記入は、銀行・支店・種類・口座番号を記入し、口座ごとに残高がわかるように記載します。
マイナスの財産の書き方
マイナスの財産については、以下を記載しておく必要があります。
- 債権者(返済する相手)の氏名と連絡先
- 負債額(今後、返済していく総額)
- 債務の返済方法(ボーナス支払いの有無)
- 返済日
- 毎月の返済額
- 返済完了予定日
返済に必要と思われる情報があればメモしておきましょう。
また、相続財産から葬儀費用を支払う場合は、マイナスの財産として記入します。
マイナスの財産がある場合には、家族の不安を減らすため、できるだけ生前に返済するよう努力しましょう。
財産目録を作成する際、注意したいポイントとは?
財産目録の作成は、自分1人で行い、誰かに相談することがあまりないため、小さなミスや漏れが起こりやすいようです。
しかし、ごく小さなミスや、少額の漏れであっても、相続の際にはトラブルを招いたり、家族に負担をかけたりする可能性があります。
正確な財産目録を作るために注意したいポイントについて見ていきましょう。
口座を整理する
複数の銀行口座を持っている人は多いのではないでしょうか。
でも、その口座、全部使っていますか?
銀行口座は、10年以上入出金が確認できないと、預金が残っていても自動的に消滅してしまいます。
手元に通帳が残っていても、このような無効口座になっていないか確認しましょう。
死後、口座が財産目録に記載されているのに、口座も預金もないと遺族は混乱します。
目録作成を機に、無効な口座の有無を確認しましょう。
また、あまり使っていない不要な口座があれば整理するとよいでしょう。
また、ネット銀行には通帳がありません。
ネット銀行を利用している人は、忘れずに記載しましょう。
市場価値のあるものは記載しておく
宝石や時計・貴金属、美術品・骨董品など、市場価値のあるものを家族が引き継ぐと相続とみなされ、相続税が課されます。
もし、これらを財産目録に記載せずにいたことが税務署に知れると、たとえ悪意がなかったとしても追徴課税の対象となってしまうのです。
自分で宝石などの価値を判断するのは難しいかもしれません。
専門の鑑定士に鑑定・査定を依頼し、どのくらいの価値があるのか調べましょう。
すぐ価値を調べられない場合でも、購入金額が高かったものや、高く売却できそうなものは目録に入れておくのが無難です。
借地権も不動産として記載する
「借地権」とは、借りた土地に家を建てる場合に土地を借りる権利のことです。
借地権も不動産に含まれますが、自分の土地ではないため、書くのを忘れてしまう人が多いようです。
しかし、借地権も相続税の課税対象となります。
記載漏れがないように注意しましょう。
まとめ
財産目録を作っておくと、財産の全体像がつかめるため相続がスムーズになり、トラブルや家族への負担を軽減することができます。
また、老後の生活設計にも役立ちます。
そのため、財産目録の作成は、終活の中でも早い段階で始めるべき作業と言えるでしょう。