ゴミ屋敷問題がテレビや新聞で取り上げられる機会が増えています。
「ゴミ屋敷」という言葉がすっかり一般的になってきました。
「ゴミ屋敷」が何を意味する言葉か、ある程度イメージできる方が多いかと思いますが、改めて何を意味するのか解説していきましょう。
目次
ゴミ屋敷とは?
ゴミ屋敷とは、その文言が示す通り、「ゴミに覆われた家」です。
ゴミを捨てない、あるいは拾ってくるなどして家がゴミに埋もれてしまうような状況です。
しかし、明確な定義はありません。そのためゴミ屋敷も様々です。比較的軽度のゴミ屋敷もあれば、どのようにしてここまでゴミを集めたか不思議に思えるようなゴミ屋敷もあります。
ゴミ屋敷に公式な定義はない
ゴミ屋敷とはゴミに覆われた、あるいは埋め尽くされた家を指すのですが、公式の定義はありません。いわば「通称」になりますので、一口にゴミ屋敷と称される家屋も、状態は様々です。
ゴミ屋敷対策や予防のための条例を制定している自治体でも「ゴミ屋敷」という文言はほとんど使用されていません。
条例の対象となるような状態を定義し、違反している場合には条例に基づいた対処をするとの記載が一般的です。
ゴミ屋敷は国の法律では対処できない
多くの自治体が条例でゴミ屋敷の対策を行っているのは、国の「法律」では対処できないからです。
我々の生活は、国、つまり国会で制定される法律で支配されます。
法律に違反すると「違法」となり、警察や司法も動くことができるのです。
しかし、法律ではゴミ屋敷が規定されていないので、ゴミ屋敷を「違法」とは判断できません。
そのため、多くの自治体では、独自に条例を設けることでゴミ屋敷問題に対処しています。
条例の内容に関しては自治体ごとに様々です。
罰則に伴う過料を設定している自治体もあれば、あくまでも努力義務程度に留めている自治体もあります。
ゴミ屋敷の原因とは?
ゴミ屋敷とはどのようにしてできてしまうのか、その理由もご紹介しましょう。
掃除をしなかった
掃除をしなければゴミは蓄積されていく一方です。
単に掃除が面倒という人もいます。
または、問題意識は持っているものの、仕事が忙しいから後回しになってしまい、次第にゴミが堆積することでゴミ屋敷になってしまうケースもあります。
理由は様々ですが、ゴミを捨てなければゴミは溜まる一方です。
最初は微々たるものでも、長期間ゴミを放置すれば、やがてはゴミ屋敷となってしまいます。
痴ほう症の高齢者
痴ほう症の高齢者によるゴミ屋敷が近年増えています。
高齢者が多い我が国ですが、痴ほう症の高齢者は、ゴミをゴミと認識できないこともあります。
また、ゴミ収集場からゴミを自宅に持ち帰る等、家にゴミを蓄積させてしまうことでゴミ屋敷になるケースが増えています。
当事者である痴ほう症の高齢者としては、自分がゴミ屋敷の原因になっているとの自覚がありません。
しかし、社会的孤立と相まって「ゴミを持ち帰る」ことに依存してしまい、気付けばゴミ屋敷にしてしまうのです。
ゴミ屋敷が引き起こす問題とは
ゴミ屋敷は法律違反ではありません。つまり、ゴミ屋敷を作っても「誰にも迷惑をかけていない」と考える人がいるかもしれません。
では具体的に、ゴミ屋敷でどんな問題が生じるかも解説していきましょう。
近隣トラブルになりやすい
ゴミの中に生ゴミが含まれていたり、犬や猫の住みかになっているケースもあります。すると、周囲に異臭を放ってしまいます。毎日異臭を感じながらの生活は、近隣住民にとっては大問題です。
結果的に住民から反感を抱かれることになり、地域トラブルの温床となります。
二次災害リスクをもたらす
ゴミ屋敷は二次災害リスクがあります。
例えば近隣で火災が起きた際、ゴミ屋敷に火が燃え移ると、可燃性のゴミのせいで火があっという間に延焼しかねません。
火が燃え移る危険だけではありません。ゴミ屋敷の中で電源コード等がゴミの下敷きになっていて、何らかの形で発火することもあります。
実際、ゴミ屋敷で発生した以下のような火災事案がありました。
- 2015年 愛知県豊田市
- 2020年10月 青森県平川市
- 2020年12月 神奈川県平塚市
地域の景観を損ねる
屋外にゴミがあふれ出て散乱しているゴミ屋敷の場合は、近隣地域の景観を損ねることになります。
ともすれば「不衛生なコミュニティ」とのイメージを持たれてしまうかもしれません。
国内ほとんどの自治体は人口減少で悩んでいます。
不衛生な都市というネガティブなイメージがついてしまったら、人口増加どころか、ますますの人口流出危機に直面します。
違法ではないので何もできない
ゴミ屋敷は違法行為とは断言できません。
そのため、ゴミ屋敷からの異臭が迷惑だったり、あるいは見た目が汚いと思っても、基本的に警察を頼ることは不可能です。
近年でこそゴミ屋敷対策のための条例を制定する自治体が増えています。
それでも、まだすべての自治体にゴミ屋敷対策の条例が制定されている訳ではありません。
もしもミ屋敷対策の全くない自治体でゴミ屋敷が出現した場合、ゴミ屋敷の住人や所有者が自発的に綺麗にするのを待つしかできないのです。
ゴミ屋敷の悪影響とは?住居人編
ゴミ屋敷の悪影響は多々あります。
そこでゴミ屋敷の住居人に及ぶゴミ屋敷の悪影響とは?をいくつかご紹介しましょう。
住居人のゴミ屋敷の悪影響とは?①前向きな気持ちがなくなる:
ゴミで覆われているゴミ屋敷で生活を送っていると、ゴミに囲まれていることが当たり前となり、掃除や片付けの意欲がなくなります。
ましてや先にもご紹介したように、ゴミ屋敷は厳密には法律違反ではありません。
ゴミ屋敷条例のない地域であれば、行政とて手を出すことができないのです。
その中で生活を送っていれば、次第に何もかも面倒な気持ちに支配されてしまい、前向きな気持ちがなくなっていく悪影響が懸念されます。
住居人のゴミ屋敷の悪影響とは?②:周囲とのコミュニケーションが取れない
ゴミ屋敷に住んでいると、基本的に他者とのコミュニケーションがなくなります。
他人からすればゴミ屋敷には近付きたくないですし、住居者本人からすればゴミ屋敷に人を呼ぶことなどできません。
結果、孤独が助長されていきます。
実際、ゴミ屋敷住居者はは単身者が多いですし、孤独死も懸念されています。
しかし、ゴミで覆われているとどうしても他者との、そして他者としてもコミュニケーションをとは考えにくくなる悪影響が懸念されています。
住居人のゴミ屋敷の悪影響とは?③:住居への悪影響
持ち家であれば資産価値が減少しますし、借家であればオーナーから退去を命じられるリスクがあります。
ゴミ屋敷ともなると、「ゴミが多い」ではなく、床や壁等が腐食しているケースもあります。
床にこぼした水分が湿気によってカビ、弱まったところにゴミがのしかかり、底を突き破る等、物理的な被害も多々見受けられます。
つまり、家の価値を落とします。
持ち家でも借家でも、住居人にそれ相応のリスク・悪影響が待ち構えています。
住居人のゴミ屋敷の悪影響とは?④:社会的信用の低下
もしもですが、ゴミ屋敷住居人であることが周囲に露呈した場合、社会的信用の低下を招きかねません。
ゴミ屋敷は法律違反ではありません。
しかし、マナー・モラルの観点からは好ましい物ではありません。
いわば「周辺環境に迷惑を与えている人」「周辺住人のことを考えていない人」といった評判は、社会的信用の低下という悪影響を招きます。
ゴミ屋敷の悪影響とは?地域住人編
地域住民にとってのゴミ屋敷の悪影響とは?についてもいくつかご紹介しましょう。
地域住人のゴミ屋敷の悪影響とは?①:ストレス
自宅の近くにゴミ屋敷があれば、理屈抜きにストレスでしょう。
毎日視界にゴミ屋敷が目に入るのです。
先にもお伝えしましたが異臭もあればいつ解決するのかも分からないのです。
ゴミ屋敷条例のないエリアでは、行政とてあてにならないのです。
出口の見えない異様な光景は、ただただストレスを感じることでしょう。
地域住人のゴミ屋敷の悪影響とは?②:自宅への悪影響の懸念
ゴミ屋敷と自宅の距離が近ければ近いほど、悪影響のリスクが高まります。
例えばゴミ屋敷に飲食物があれば虫をおびき寄せてしまうことでしょう。
その虫はゴミ屋敷だけではなく、周辺の家屋にも群がります。
また、決して近い訳ではなくとも水道管や排水管が繋がっていれば、そこから異臭が伝わったり、あるいは虫が出てきたりなど、自宅にも何らかの悪影響リスクが発生します。
地域住人のゴミ屋敷の悪影響とは?③:静かな生活ができなくなる
ゴミ屋敷は、野次馬も多く押しかけます。
SNSにアップしたい、youtubeの動画にしたい、何となく見ておきたいなど様々な理由で人が訪れることが珍しくありません。
大人数であれば騒音も悪影響になるでしょう。
また、SNSやYoutubeで紹介されることでさらに人が押し寄せ、さらに騒がしくなる悪循環が、静かな生活をさらに遠ざけてしまいます。
これまで静かに暮らしていた住人にとっては悪影響と言わざるを得ません。
地域住人のゴミ屋敷の悪影響とは?④:異臭による生活の制限
ゴミ屋敷は景観もさることながら、異臭も発生します。
ゴミ屋敷と自宅の距離が近ければ近いほど、異臭の影響を受けます。
ゴミ屋敷の影響で窓を開けることができなくなってしまった近隣住民もいます。
寒い季節であれば良いでしょう。
しかし暑い季節、風が気持ちよい季節も窓を閉めっぱなしの生活を強いられることになります。
自己の過失でそのような生活を強いられてしまうのであれば自己責任ですが、まったく関係ない他人のおかげで制限のある生活を強いられるのは、悪影響そのものでしょう。
ゴミ屋敷の悪影響とは?地域行政編
悪影響を及ぼすのは住居人や地域住民だけではありません。
地域行政もまた悪影響に悩まされることになります。
そこで地域行政のゴミ屋敷の悪影響とは?についてもご紹介しましょう。
地域行政のゴミ屋敷の悪影響とは?①:地域評判の悪化
法律違反ではない以上、さらにはゴミ屋敷条例がなければ行政は事実上何もできません。
しかし、地域の評判は悪化していくでしょう。
「なぜ放置しているんだ」「周囲は迷惑している」といった地域住民からの苦情を受けても何もできないのです。
行政への不信感や地域の評判を悪化させてしまう点は悪影響そのものです。
地域行政のゴミ屋敷の悪影響とは?②:苦情対応による日常業務への懸念
周辺住民にとって、ゴミ屋敷は何もメリットがありません。
行政に苦情を入れることでしょう。
その対応もまた、行政の仕事です。
結果、日常業務に支障をきたすことになります。
行政とてリソースは限られています。
地域住人生活の安定・向上が行政のお仕事ですが、苦情が多ければ多いほど、対応する人間・時間を増やさなければなりません。
最悪、住民サービスの質の低下を招きかねませんが、住人にとっては悪影響でしょう。
地域行政のゴミ屋敷の悪影響とは?③:メディアで批判されるリスク
近年はゴミ屋敷の件数そのものが増えており、決してゴミ屋敷が珍しいものではなくなりつつありますので、ゴミ屋敷でわざわざメディアがやってくるケースは少ないです。
しかし、SNS等と連動し、何らかのきかけでマスメディアが訪れてテレビ等で取り扱われると、批判の声が一斉に吹き上がります。
行政としても、条例がなければ何もできないのですが、そのようなことはお構いなしに、まるで行政の対応が悪いかのように報道され、行政が悪いことをしているかのような印象が生まれてしまいます。
結果、次に続く話ですが、悪影響となって住人が転居してしまう可能性もあります。
地域行政のゴミ屋敷の悪影響とは?④:住民流出リスク
ゴミ屋敷に悩まされている近隣住民で、持ち家ではなく賃貸の場合、引っ越しも視野に入ることでしょう。
いつまで経っても問題が解決しない地域でイライラしながら暮らすよりも、他のエリアで暮らした方が良いと考えるのは不思議ではありません。
つまり、行政にとっては住民の流出危機となります。
税収の落ち込みは、徐々に行政に悪影響を及ぼすことでしょう。
ゴミ屋敷対策に自治体・地域住民の連携が不可欠な理由
ゴミ屋敷は当事者だけの問題ではありません。
確かに原因は住居人ですが、問題を解決するためには自治体、さらには地域住民の連携も不可欠になります。
ゴミ屋敷は再発が見受けられる
ゴミ屋敷の問題解決とは、決して家屋からゴミを撤去するだけではありません。
ゴミ屋敷となってしまった問題を把握したうえでの再発防止策が重要です。実際、行政の手による代執行にて家屋を綺麗にしたものの、その後再びゴミ屋敷となってしまった事例もあります。
特に高齢者の痴ほう症に起因するゴミ屋敷化は、地域の連携が不可欠です。
見回りを行うなどして、ゴミを堆積していないかを日ごろから確認することが重要です。
行政に連絡するのは地域の人間
ゴミ屋敷の住居者本人が行政に連絡を入れるケースは稀です。
当事者が「ゴミ屋敷で困っているので助けてください」とは、なかなか言えないものです。
つまり、行政が対応するにせよ、行政に最初に連絡するのはほとんどの場合周辺の住民です。ゴミ屋敷とは自力では解決が難しいものだと理解し、住居人に代わって行政に連絡を入れることこそ、地域のゴミ屋敷問題解決の一歩目です。
ゴミ屋敷の影響とは?についてのまとめ
ゴミ屋敷は定義が明文化されているものではなく、さらには国の法律でも対処できません。
掃除をしなかったり、あるいは痴呆症の高齢者がゴミ屋敷にしてしまうケースが増えていますが、ゴミ屋敷の影響とは?を考えると決して軽視できません。
近隣トラブルや二次災害リスクはもちろんですが、ゴミ屋敷住居人、近隣住人、行政全てに悪影響があります。
条例が制定されていない場合は解決が難しいですが、行政・地域が協力し、専門業者を手配するなどしてゴミ屋敷の解決を目指すしかありません。
懸念される悪影響を考えると、スピード感のある対応も求められることでしょう。