「ゴミだらけの故人の家。片付けると相続放棄できなくなるって本当?」
「相続放棄する予定なのに、大家から家を片付けるよう言われてしまった」
など相続放棄を検討中の人が、故人宅のゴミ処分に頭を悩ませるケースは少なくありません。
相続放棄の予定があるなら、ゴミや遺品の処分には注意しましょう。故人宅には処分可能なゴミと絶対に片付けてはいけない物が混在しており、間違えると相続放棄できなくなるおそれがあります。
今回は相続放棄の際に処分OK・NGの物の見分け方や、片付け以外の注意点などを紹介します。2023年の民法改正も絡めた相続放棄と家の管理のポイントも解説するので、ぜひ参考にしてください。
<この記事で分かること>
- 相続放棄する人必見! 捨てて良いゴミ、ダメなゴミの見分け方
- 相続放棄する家では、こんな片付けはNG!
- 片付け以外にも相続放棄でやってはいけないこと
- 改正民法と相続放棄された家の管理責任
目次
相続放棄する家のゴミは処分してもいい?
ずばり結論を言うと、誰の目にも明らかなゴミであれば処分しても問題ありません。たとえば、冷蔵庫内の腐った食品や生ゴミ、庭に生い茂った雑草などは、相続放棄とは無関係に安心して捨てられます。
とはいえ、実際に故人の家を見回すと「明らかにゴミ」とは断言しづらい物もたくさんありますよね。ここでは、相続放棄を前提にしている人でも処分できるゴミの考え方を解説します。
明らかなゴミは処分しても相続放棄できる
たとえば、以下の物は明らかなゴミであるため、処分しても相続放棄への影響はありません。
<相続放棄とは無関係に処分できるゴミの例>
- 冷蔵庫の中の食品
- 生ゴミ
- 庭の雑草
- 使用済みティッシュ
- 空き缶、ペットボトル
- 室内のホコリ
- 壊れた傘や靴
民法第921条1項により、相続の承認については次のように定められています。
“(法定単純承認)
第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。“
引用:e-GOV法令検索|民法
単純承認とは、故人のプラスの財産・マイナスの財産を含めた全財産を相続することです。相続財産の全部または一部を処分すると、民法第921条1項の定めによって単純相続したとみなされるため相続放棄はできなくなります。
しかし、この条文にも記載されるように、「保存行為」を行うことは単純承認の条件には該当しません。生ゴミなどの明らかなゴミを捨てて家を保守管理することは、保存行為と判断されます。
金銭的価値がなければ処分して問題ない
相続放棄する人でも処分OKな物品かどうかを見分けるポイントは、「金銭的な価値があるか」です。リサイクルショップや買取専門店に持ち込んでも買い取ってもらえないような物品であれば、金銭的価値がないと判断され相続放棄に影響なく処分できます。
たとえば、故人の手紙や写真などは家族にとっては大切な思い出の品ですが、資産価値という観点からは買値がつかないため処分や形見分けが可能です。
一方で、「自分には無価値に見えるけれど実は資産価値があった」という物品もあり、それらを処分すると相続放棄できなくなるため注意が必要です。処分できる物・できない物の例を表にまとめました。
<相続放棄する人が処分できる物・注意が必要な物>
相続放棄する人が… | 具体例 |
問題なく処分できる物 | 手紙、写真、ボロボロの服 |
処分に注意すべき物 | 売却可能な衣服、コレクターズ商品、プラモデル、フィギュア、カメラ、切手、記念コイン、アクセサリー、CD、レコード、楽器など |
絶対に処分NGな物 | 現金、貴金属、ブランド品、骨董品、中古車など |
実際には買値のつかないプラモデルもありますし、高値で取引されるような有名人の手記などもあるでしょう。判断に迷う物は弁護士や税理士などに相談しましょう。
相続放棄する家の片付けでの注意事項
相続放棄をすると決めた場合、故人の家を片付けるなら次の5点に注意しましょう。
- 価値のある遺品は処分しない
- 勝手な形見分けしない
- 家具や家電は処分しない
- 買取に出してお金に変えない
- 大家に片付けを求められても応じない
不用意な片付けは、相続放棄が無効になる原因にもなりかねません。具体的な要注意ポイントを解説します。
価値のある遺品は処分しない
資産価値のある遺品を処分すると、相続放棄ができなくなる可能性があります。前述の民法第921条1項に記載されるように、保存行為の範囲を越えて相続財産の全部又は一部を処分すると単純承認をしたとみなされるためです。
たとえば、貴金属、骨董品、絵画、宝石、ブランド品、高級時計などは高額で売却できる可能性があるため、処分するのはやめましょう。売却や廃棄以外にも、自分でこっそり保有したり、人にあげたり壊したりするのもNGです。
勝手な形見分けしない
相続放棄するなら、故人の遺品を勝手に形見分けするのはやめましょう。形見分けは相続財産の処分とみなされ、相続を承認したと判断される可能性があるからです。
そもそも、形見分けは相続人全員の合意のもとで行われるべきものです。一部の相続人が勝手に遺品を持ち帰ったり譲渡したりすると、他の相続人とのトラブルになるおそれがあります。
写真や日記などは資産価値がないので相続放棄とは関係なく形見分けできますが、他の相続人に無断で形見分けをすれば不公平感につながる場合があります。また、資産価値がないと思って形見分けした遺品が、実際には高価な物だったと後で判明した場合、相続放棄が無効になるリスクもあります。
形見分けは相続人全員の合意のもとで検討し、勝手にやらないように注意しましょう。
遺品の処分方法!処分してはいけない遺品は?罪悪感を抱くのはなぜ?
家具や家電は処分しない
相続放棄する人は、故人宅の家具や家電を処分しないことをおすすめします。一般的な家具や家電は中古市場で売れる可能性があるため、相続財産としての価値があると考えられているからです。
とくに、比較的新しい製品や人気メーカーの製品は高値で売れる可能性が高く、勝手に処分すると相続放棄ができなくなるリスクがあります。
明らかに壊れている物なら資産価値がないため処分可能ではありますが、使用可能な家具や家電には手を付けないほうが賢明です。どうしても家具や家電を処分したい場合には、自分ではなく相続予定の他の人に処分してもらうことと安心です。
買取に出してお金に変えない
相続放棄の予定があるなら、故人の遺品は絶対に売却してはいけません。買取に出す行為は相続財産の処分とみなされ、相続を承認したことになるからです。
相続放棄とは、故人の遺産を一切引き継がないで放棄することを意味します。そのため、相続放棄した人には遺産を処分する権利はありません。
「資産価値があるか知りたいから、ためしにリサイクルショップで査定額を聞いてみよう」という場合でも、うっかり売却してしまわないよう十分な注意が必要です。誤って処分すれば相続放棄できなくなるおそれがあるため、遺品の取り扱いには慎重になりましょう。
大家に片付けを求められても応じない
賃貸物件では大家から故人の部屋の片付けを求められることがありますが、相続放棄する予定なら安易に応じないようにしてください。資産価値のある遺品を片付けてしまうと、相続放棄できなくなってしまいます。
また、相続放棄が受理されれば、自分には片付けの義務がなくなります。片付けは他の相続人に任せ、大家には自分は相続放棄の手続き中だと伝えましょう。
相続人全員が相続放棄した場合には、後述する「相続財産清算人」に部屋の管理義務が移ります。弁護士に相談して相続財産清算人の選定手続きを始めましょう。
片付け以外でも注意!相続放棄ができなくなる場合
相続放棄をするなら、片付け以外にも注意が必要です。知らずにうっかりやってしまうと、相続放棄ができなくなるケースがあります。
<相続放棄できなくなり得るケース>
- 賃貸借契約の解約
- 入院費の支払い
- 家賃や公共料金の支払い
- 家の売却や解体、リフォーム
取り返しのつかないことにならないように、要注意のパターンについてしっかり押さえておきましょう。
賃貸借契約を解約してしまう
故人が住んでいた賃貸物件の賃貸借契約の解約をした人は、相続放棄できなくなる可能性があります。賃借権(ちんしゃくけん)を処分したとみなされると、相続財産の処分に該当するからです。
賃借権とは、賃貸借契約に基づいて賃借人が賃料を支払い、物件を使用する権利のことです。賃借権は財産のひとつであるため、賃貸物件の契約を勝手に解約すると財産を処分したことになり得ます。
賃貸物件を引き払うときは、相続放棄しない他の相続人が解約しましょう。相続人が全員相続放棄する場合には家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立て、選任された人物が賃貸借契約を解約することになります。
入院費を支払ってしまう
死後に入院費や医療費の支払いを病院側から求められることがありますが、支払う際には「誰のお金から支払うか」には注意してください。うっかり故人のお金から支払ってしまうと、相続財産を処分したことになって相続放棄ができなくなるおそれがあります。
一方で、故人ではなく相続人自身の財産から入院費を支払う場合は、相続財産の処分にはあたりません。つまり、あなた自身の預金や現金から入院費を支払うときには、故人のお金とは無関係なので相続放棄への影響はないのです。
また、あなたが入院時の保証人になっている場合には、相続とは関係なく未払い入院費の支払い義務を負います。相続放棄する予定であれば、支払いの際に故人の遺産を使わないよう注意しましょう。
家賃や公共料金を支払ってしまう
賃貸物件の家賃やガス、電気などの公共料金の支払いも、うっかり故人の遺産から支払ってしまわないよう注意しましょう。故人の預金や現金から支払ってしまうと、相続財産の処分とみなされるおそれがあります。
相続放棄に影響を与えずに支払いを済ませるためには、故人のお金を使わず自分自身のポケットマネーから出すか、他の相続人が相続財産を使って支払うかする必要があります。判断が難しい場合には、弁護士などの意見を聞きましょう。
なお、もしあなたが賃貸物件の連帯保証人になっていた場合には、相続放棄とは関係なく家賃の支払い義務を負っています。これは連帯保証人としての支払いであるため、相続人であるか否かとは無関係の義務です。
家の売却や解体、リフォームをしてしまう
故人が所有していた家を売却、解体、リフォームする行為は、相続財産を処分したとみなされるおそれがあります。家は故人の財産であるため、売ったり手を加えたりすると単純承認に該当して相続放棄ができなくなる可能性が高いのです。
ただし、民法第921条1項に記載される「保存行為」に該当する範囲であれば、家を修繕しても相続放棄には影響がありません。たとえば、家の雨漏りを修理するような場合は保存行為にあたるとされていますが、明確な線引きが難しいケースも多いので判断に悩んだら弁護士に相談しましょう。
相続放棄する予定なら、家の中の遺品はもちろん、家そのものの扱いにも常に慎重にならなければなりません。
相続放棄した家の遺品整理や管理は誰がする?
相続放棄が家庭裁判所で受理されれば、基本的には遺品や家の管理を行う必要がなくなります。でも、「…じゃあ誰がやるの?」と疑問に思いますよね。
2023年(令和5年)4月に改正民法が施行されました。現行法では自分が相続放棄した場合には、次の三者が家や遺品の管理を行います。
- 被相続人の家に同居していた相続人
- 相続放棄した人以外の相続人
- 相続財産清算人
それぞれについて詳しく見て行きましょう。
被相続人の家に同居していた相続人が管理しなくてはならない
もし自分が相続放棄していても、故人(被相続人)の家に同居していた場合には、その家の管理義務を負います。民法第940条第1項によって、次のように定められているためです。
“(相続の放棄をした者による管理)
第九百四十条
相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。“
引用:e-GOV法令検索|民法
つまり、故人の持ち家で同居していた相続人が相続放棄をした場合には、その相続人は他の相続人や相続財産清算人に引き渡すまでは家や遺品の管理を継続しなければなりません。
たとえば、家が傷まないように定期的に換気や清掃を行ったり、貴重品や重要な書類を適切に保管したりする必要があります。この管理義務は一時的な措置であり、他の相続人や相続財産清算人が決まれば、管理義務はその相手へと引き継がれます。
相続放棄した人以外の相続人に任せる
他にも相続人がいる場合、自分が相続放棄をしたら自分以外の相続人が家や遺品の管理義務を負うことになります。
法定相続には、民法で定められた順位があります。配偶者が最優先で、そのほかは第一位が子ども、第二位が親、第三位が兄弟姉妹です。先の順位の人がいない、または相続放棄した場合には後順位の人に相続権が移ります。
たとえば、故人の配偶者もすでに亡くなっており、子どもが3人いる場合には存命する子ども全員が相続権を持つことになります。そして、子どもたち全員が相続放棄した場合には、故人の兄弟姉妹に相続権が移ります。最終的に相続権を持った人が、遺品整理や家の管理を行うことになります。
相続放棄の期限は相続開始を知った日から3か月以内です。相続の順位に該当した人は、期限内に相続放棄を家庭裁判所に申し立てなければ単純承認によって相続人となります。
全員が相続放棄したなら相続財産清算人の選任申し立てをする
もしも相続人全員が相続放棄した場合には、選任された「相続財産清算人」が家や遺産の管理を行います。
相続財産清算人とは、故人の相続財産の管理や債務の支払い清算などをする人のことです。かつては相続財産管理人と呼ばれていましたが、2023年の民法改正で相続財産清算人と名称変更されました。
相続人全員が相続放棄した場合には、家などの管理を免れるために家庭裁判所へ相続財産清算人の選任申立てを行いましょう。申立ての費用は収入印紙や官公広告料など合計6000円程度で、必要な書類を取り揃えて故人の住所地にある家庭裁判所へ提出します。
相続財産清算人は弁護士や司法書士などから家庭裁判所が選任し、選任後はその相続財産清算人が不動産売却や債権者への支払いなどを行います。最終的に相続財産が残れば、その財産は国のものとなります。
まとめ
相続放棄をする予定の人は、故人の家のゴミや遺品の片付けには慎重になりましょう。明らかに資産価値のない生ゴミや壊れた物品などを処分するのは問題ありませんが、中古需要のあるアイテムや家具、家電などを処分すると相続放棄できなくなる可能性があります。
相続の単純承認とみなされないためにも、価値のある遺品の処分や売却、形見分けなどは行わないようにしましょう。
また、賃貸借契約の解約や、故人のお金を使っての入院費・家賃などの支払い、家のリフォームなども相続財産の処分に該当するおそれがあるため安易に行わないでください。
相続放棄後の家の管理は、法的には故人宅に同居していた相続人や、他の相続人が行うこととなります。相続人が全員相続放棄した場合には、相続財産清算人が管理や処分を行うこととなるため、家庭裁判所に相続財産清算人の申し立てを行いましょう。
相続放棄しないなら、遺品整理は七福神に
相続放棄を検討中でないならば、遺品整理はゴミ屋敷バスター七福神にお任せください!
相続放棄をしない場合、故人の遺品は相続財産となり適切に管理・処分しなければなりません。しかし、死後の手続きや日常生活で忙しい中、遺品整理に時間を割くのは大変です。
とくに、長年住んでいた家には大量の遺品が残されており、仕分けや処分は大きな負担となりがちです。ゴミ屋敷バスター七福神は遺品整理の専門家として、ご遺族の気持ちに寄り添いながら丁寧に作業を行います。
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