ゴミ屋敷は一般的な住居と比べて、火事が起こりやすいです。
ゴミ屋敷に住んでいる方や、近隣にゴミ屋敷がある方の中には「ゴミ屋敷が火事になったらどうしよう」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ゴミ屋敷で火事が起きやすい3つの原因と、ゴミ屋敷で火事が起きた際の責任の所在、ゴミ屋敷の火事を防ぐ方法などについて解説します。
記事を最後までチェックすれば、ゴミ屋敷の火事に関する情報が一通り手に入りますよ。火事が起きてしまってからでは手遅れです。「今」できることを知り、行動に移しましょう。
目次
ゴミ屋敷で火事が起きやすい3つの理由
通常の住宅と比べて、ゴミ屋敷で火事が起きやすい理由は、以下の3つです。
- 可燃物が多いため、火が燃え広がりやすい
- 放火のターゲットにされやすい
- 小さな火種に気づかない
それぞれ詳しく解説します。
可燃物が多いため、火が燃え広がりやすい
ゴミ屋敷で火事が起きやすい理由の1つ目は、可燃物が多く火が燃え広がりやすいからです。
ゴミ屋敷のゴミの大半は、ダンボールやコンビニで購入した食料のゴミのような可燃物です。ゴミや物が少なければ、仮に火が出ても、燃え広がる前に消し止められるかもしれません。
しかしゴミ屋敷では、1つのゴミに火が付けば、すぐに周りのゴミに燃え移っていき、あっという間に住宅全体が火で包まれてしまいます。
結果的に、一般的な住宅ならボヤで済むようなケースでも、ゴミ屋敷では大規模な火災に発展する危険があるのです。
放火のターゲットにされやすい
ゴミ屋敷で火事が起きやすい理由の2つ目は、放火のターゲットにされやすいからです。可燃物が多く、それだけ燃えやすいゴミ屋敷は、放火犯にとって格好のターゲットになります。
特に一軒家がゴミ屋敷化していて、家の中だけでなく庭や、敷地からはみ出した場所もゴミで溢れている場合は要注意です。
一方でマンションやアパートの場合は、放火によって火事が起きる危険性はほとんどありません。
小さな火種に気づかない
ゴミ屋敷で火事が起きやすい理由の3つ目は、小さな火種に気づかないからです。
火事を防ぐには、初期段階での消化が重要です。火が大きくなってしまうとどうしようもありませんが、火が小さいうちは一人でも何とかできる可能性があります。
しかしゴミ屋敷に住んでいると、火種がゴミに埋もれており、火種に気づくことができません。火種に気づかないでいるうちに周りのゴミへと燃え広がっていき、火事になってしまうのです。
ゴミ屋敷で火事を引き起こす3つの原因
ゴミ屋敷で火事の原因になるものは、主に以下の3つです。
- たばこやコンロの火の不始末
- 放火によるもの
- トラッキング現象によるもの
ここでは、それぞれの原因について、説明していきます。
ゴミ屋敷が火事になる原因①たばこやコンロの火の不始末
画像出典:消防庁「令和2年(1~12月)における火災の概要(概数)」
火災の出火原因で特に多いのが「たばこ」、建物火災で特に多いのが「コンロ」です。
消防庁のデータによれば、令和2年に発生した火災のうち、建物以外も含む全火災ではたばこが、建物火災ではコンロが、最も多い出火原因になっています。
たばこを吸う人は住宅内でのたばこの火の不始末に気をつけたいところですが、ゴミ屋敷に住んでいる場合、自分が気をつけるだけでは済まないケースもあります。
例えば、ゴミが住宅内に収まりきらず、屋外にまではみ出しているケースは危険です。この場合、通行人が火のついたタバコをポイ捨てすることで、ゴミに引火して、火事になるリスクがあります。
ゴミ屋敷が火事になる原因②放火によるもの
画像出典:消防庁「令和2年(1~12月)における火災の概要(概数)」
先ほど説明したとおり、ゴミ屋敷は放火犯に狙われやすくなっています。「放火にあうなんて考えられない」と思うかもしれませんが、火事の原因が放火であるケースは決して少なくありません。
消防庁のデータによれば、令和2年に発生した建物火災での放火の件数は1,121件、そのうち放火の疑いの件数は587件です。
これらの件数を合計すれば、放火が原因の火災は、コンロとたばこに次いで多くなっています。
ゴミ屋敷が火事になる原因③トラッキング現象によるもの
通常の住宅であればそれほど発生リスクは高くないものの、ゴミ屋敷の場合「トラッキング現象」による火事のリスクも見過ごせません。
トラッキング現象とはコンセントと電源プラグの間にほこりが溜まり、ほこりが湿気を吸収することで漏電し、発火する現象です。
ゴミ屋敷では、コンセント内にほこりが溜まりやすく、ゴミに埋もれて湿気も発生しやすいです。よって通常の住宅に比べて、トラッキング現象が起きやすい可能性があります。
ゴミ屋敷が火事になった際の責任の所在はどこにある?
「隣のゴミ屋敷が火事になって、私の家まで燃えてしまったらどうしよう」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
火元となったゴミ屋敷への責任がゴミ屋敷の主にあるのは当然です。しかしその責任が、燃え広がった近隣の家にまで及ぶのかは気になるところですよね。
日本には、火事に関する法律として、失火責任法があります。
民法第709条の規定は失火の場合にはこれを適用せず。但し失火者に重大なる過失ありたるときはこの限りにあらず
(引用:e-GOV 法令検索)
上記の民法第709条とは、「不法行為による損害賠償」のことです。
上記を見ても分かる通り、失火者に重大な過失(放火など)がある場合を除いては、火事が起きた際に不法行為による損害賠償を請求することはできません。
つまりゴミの放置を重大な過失と認定することができなければ、責任の追求は難しいでしょう。また仮に過失が認められた場合でも、ゴミ屋敷の主に賠償能力がなければ、実際に賠償金を支払ってもらうのは難しいでしょう。
ゴミ屋敷で火事が発生した実例
過去には、ゴミ屋敷で、複数の建物が全焼したり、人が死亡したりするなどの大規模な火事が発生した事例があります。ここではゴミ屋敷で起きた火事の実例3つについて、紹介します。
神奈川県平塚市のゴミ屋敷火災で計7棟が被害
2020年12月3日、神奈川県平塚市にある木造2階建てのゴミ屋敷で、火事が発生しました。
住人である70歳(当時)の男性が、ライターでガスコンロに火を付けようとして、近くのビニール袋に引火したのが出火の原因です。
ゴミ屋敷に住んでいた男性のほか、その隣に住む80代の女性が、消防隊によって救出されました。火事を起こした男性は、顔にやけどを負ったようです。
消火活動時、火事が起きた地域では強風注意報が発令されており、鎮火までに11時間かかるほど、消化活動は難航しました。
火は強風によって燃え広がり、周囲の建物6棟に延焼しました。ゴミ屋敷を含め、計7棟が焼け、うち3棟は全焼しています。
福島県郡山市のゴミ屋敷火災で住人が死亡
2016年10月11日、福島県郡山市にある木造平屋建てのゴミ屋敷が全焼する火事が発生しました。
焼け跡からは、ゴミ屋敷の住人と見られる74歳(当時)の男性の遺体が発見されています。
出火の原因は、明らかになっていません。
火事を起こした住宅は、以前からゴミ屋敷として有名だったようで、郡山市には苦情が寄せられていました。これを受けて郡山市による「行政代執行(行政による強制的なゴミの撤去)」が実施され、大量のゴミが回収されました。
しかし住人男性は、強制撤去後も再びゴミを集めるようになり、ゴミ屋敷に逆戻りしました。その結果火災が起き、命を失うという最悪のケースを招いてしまいました。
愛知県豊田市のゴミ屋敷火災で計2棟が被害
2015年、愛知県豊田市のゴミ屋敷から出火し、周辺の住居を合わせて2棟がほぼ全焼しました。
ゴミ屋敷の住人は無事逃げ出すことができたため、この火事による犠牲者はいません。
火事の原因は、ゴミ屋敷の住人が使用していた蚊取り線香です。一般的な住宅であれば、蚊取り線香から他のものに火が燃え移ることはないでしょう。しかしゴミに囲まれた場所で蚊取り線香を使用すれば、周りのものに燃え移って火事になる危険性は十分考えられます。
ゴミ屋敷で火事を起こした際の4つのリスク
ゴミ屋敷で火事を起こした際のリスクは以下の4つです。
- 逃げ遅れて命を落とすリスク
- 住居や家財を失うリスク
- 延焼により近隣住民に被害を及ぼすリスク
- 賠償責任を負うリスク
それぞれ詳しく解説します。
逃げ遅れて命を落とすリスク
1つ目は、在宅中に火事が起きたとき、逃げ遅れて命を落としてしまうリスクです。
出火原因が放火やトラッキング現象によるものであれば、寝ている間に火事が起きる危険もあります。
寝ている間に火事が起きれば、目を覚ましたときには、火が燃え広がっていて、逃げられないという事態も十分考えられるでしょう。
また起きているときに火事が起きても、ゴミ屋敷は、ゴミや不用品が障害物となって、外まで逃げるための導線がふさがっています。
つまりゴミ屋敷には、火事が起きやすいだけでなく、「火事が起きた際に逃げるのが難しい」という弊害もあるのです。
運良く逃げられたとしても、やけどや大けがを負うリスクは高いと言えるでしょう。
住居や家財を失うリスク
火事が起きたのが留守中であったり、在宅中でも外まで逃げることができれば、命を落とすことはありません。
しかし仮に命は助かっても、ゴミ屋敷の火事にはまた別のリスクがあります。それは、住居や家財を失うリスクです。
火災保険に入っていない状態で火事を起こせば、失った住宅や家財を補填するための補償が受けられません。火事が起きても、損失を受けないために、火災保険に加入するのは重要です。
しかし火災保険への加入は、ゴミ屋敷が火事になるリスクを減らすことには繋がりません。あくまで火事になった後のリスクを軽減してくれるだけです。よって根本的な問題を解決するには、ゴミ屋敷をどうにかしなければなりません。
延焼により近隣住民に被害を及ぼすリスク
火事が起きたときに被害を受けるリスクがあるのは、ゴミ屋敷の住人だけではありません。ゴミ屋敷の近くに住む人たちにも、延焼によって、被害を受けるリスクがあります。
実際に、神奈川県平塚市のゴミ屋敷で起きた火事では、周囲の建物6棟が巻き添えになっています。
近隣住宅にも被害が及んだ場合、他人の住居や家財を燃やしてしまうだけでなく、最悪の場合、命まで奪ってしまう危険があります。
自分がゴミ屋敷に住んでいることが原因で、関係のない他の人の命を奪うことは、あってはなりません。
賠償責任を負うリスク
前述の通り、火事の延焼によって近隣住宅に被害が及んだ場合でも、重大な過失がなければ火事を起こした当人に責任は発生しません。
しかし寝たばこをしていたなど、過失が認められた場合は、損害賠償の支払いを命じられる可能性もあります。
さらに、火事によって人の命を奪えば、失火罪や過失致死罪に問われる可能性もあります。
ゴミ屋敷で火事を防ぐための対処法4つ
現在ゴミ屋敷に住んでいる人が、火事を起こさないようにするためには、以下4つの対処法があります。
- 火を極力使用しないようにする
- コンセントの近くに可燃物を置かない
- 家の外にあるゴミや不用品を片付ける
- 宅内のゴミや不用品を片付ける
ここでは各対処法について、説明していきます。
ゴミ屋敷で火事を防ぐ方法①火を極力使用しないようにする
火事を起こさないためには、宅内で極力火を使わないようにしましょう。少なくとも、火の不始末が原因の火事は、火を使わないことで防げます。
出火原因で特に多い、たばこやコンロには、火を使わないタイプもあります。
- たばこなら、紙巻きではなく、電子たばこを吸うようにする
- コンロなら、ガスをIHに変える
上記2つを実践することで極力火を使わずに生活ができ、ゴミ屋敷の火事を防げます。
ゴミ屋敷で火事を防ぐ方法②コンセントの近くに可燃物を置かない
トラッキング現象が原因の火事を防ぐためには、コンセントの近くに物、特に可燃物を置かないようにしましょう。
トラッキング現象が起きたとき、近くに可燃物があれば、火が燃え移ってしまいます。火が燃え移ることを防ぐためには、まずはコンセント周りの物だけでも片付けるようにしましょう。
あわせて、ほこりがコンセントの中に入らないよう、コンセントの周辺を掃除しておくとベターです。
ゴミ屋敷で火事を防ぐ方法③家の外にあるゴミや不用品を片付ける
ゴミや不用品が住宅内に収まりきらず、屋外にまではみ出している状態のゴミ屋敷は、特に危険です。
庭や敷地外の道路にはみ出したゴミに引火すれば、そこから住宅までのゴミが導火線となり、家が火事になってしまいます。
放火犯からすれば、火を放つうえで、住宅まで近づく必要がないため、犯行も容易になるかもしれません。
ゴミ屋敷に住んでいて、家の外にまでゴミがはみ出している状態の人は、火事を防ぐためにも、屋外のゴミを優先的に片付けるようにしましょう。
ゴミ屋敷で火事を防ぐ方法④宅内のゴミや不用品を片付ける
ゴミ屋敷に住んでいる人が火事を起こさないために、最も有効なのは、ゴミ屋敷を解消することにほかなりません。
ゴミ屋敷さえ解消すれば、火の不始末があっても、燃え広がる前に消化しやすくなります。
もし燃え広がってしまっても、玄関までの動線をふさぐ障害物がないぶん、外に逃げられる可能性も高くなります。
またゴミ屋敷を解消すれば、通常の住宅に比べて、放火犯に狙われる確率も低くできるでしょう。
そのため、火事の発生を防ぎたいのであれば、ゴミや不用品を片付けてゴミ屋敷を解消することが重要です。
火事を防ぐために!ゴミ屋敷を解消する方法2つ
火事を防ぐには、ゴミ屋敷を解消するに越したことはありません。
ゴミ屋敷を解消する方法は、以下2つです。
- 自分でゴミ屋敷を片付ける
- ゴミ屋敷清掃業者に依頼して片付けてもらう
それぞれ詳しく解説します。
自分でゴミ屋敷を片付ける
ゴミ屋敷は、時間と労力をかければ、自力で片付けることも可能です。
ゴミ屋敷を自分で片付ける方法については、以下の記事で詳しくまとめています。
関連記事:ゴミ屋敷片付けは、自分でできる?失敗しない片付けの手順を解説
ただし一軒家や間取りの広い集合住宅に住んでいて、ゴミの量が多い場合は、自力で片付けるのは現実的ではありません。またゴミの量にかかわらず、高齢の場合は、ゴミ屋敷の片付けは難しいでしょう。
このような場合、ゴミ屋敷清掃業者に依頼することを検討してみましょう。ゴミ屋敷清掃業者への依頼については、次の項目で説明しています。
ゴミ屋敷清掃業者に依頼して片付けてもらう
ゴミ屋敷清掃業者に依頼すれば、スタッフが自宅まで来て、宅内にあるゴミや不用品を、すべて回収していってくれます。
火事のリスクを考えた場合、ゴミ屋敷清掃業者に依頼する1番のメリットは、時間がかからないということです。
自分でゴミ屋敷の片付けをする場合、膨大な時間がかかり、ゴミの量が少なくなるまでは、火事が発生するリスクをなかなか減らせません。
その点ゴミ屋敷清掃業者では、多くの場合、1日のうちに片付けを済ませてくれます。場合によっては数時間でゴミの片付けが完了することも……
つまりゴミ屋敷の住人は、たった1日で、火事の発生リスクをグッと低くできるのです。
ゴミ屋敷片付け業者の選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:ゴミ屋敷片付け業者の選び方|ポイントや注意点を徹底解説します
まとめ
ゴミ屋敷に住むことには様々なリスクがありますが、なかでも重大なのが、火事を起こすリスクです。
通常の住宅に比べて、ゴミ屋敷は物が多いぶん、火が燃え広がりやすいうえ、逃げ遅れてしまう危険も高くなります。最悪の場合、命を落としてしまう事態も十分考えられます。
そうならないためにも、今ゴミ屋敷に住んでいるという方は、早急にゴミや不用品を片付け、ゴミ屋敷を解消するように動き出しましょう。