茨城県坂東市は、茨城県の南西部、都心から50km圏に位置する都市で、平成17年3月22日に岩井市と猿島町が合併して誕生しました。
利根川や、コハクチョウの越冬で有名な菅生沼など豊かな自然環境が残されています。
平安時代に関八州を制した英雄平将門公のゆかりの地でもあり、毎年11月には「将門まつり」が開催されています。
のどかな雰囲気の坂東市ですが、ゴミ屋敷に関する条例があることで知られています。
坂東市のゴミ屋敷に対する条例の内容とは、どんなものなのでしょうか。
目次
ゴミ屋敷に対する条例とは?
まず「ゴミ屋敷に対する条例」と現状について見ておきましょう。
ゴミ屋敷問題とは?
近年、ゴミなどが屋内や屋外に積まれる「ゴミ屋敷」が社会問題となっています。
ゴミ屋敷の最大の問題点は、近隣に大きな迷惑をかけることでしょう。
悪臭や害虫が発生したり、ゴミが腐敗して自然発火し、火事になってしまうこともあります。
さらには、放火など犯罪の温床となるリスクも高くなり、さらにゴミを不法投棄されることにも繋がります。
このような家が近所にあれば、近隣に住む住民に多大な苦痛と不安を与えることになります。
それならば、サッサとゴミを片付けてしまえばいいじゃないか、と思う人も多いことでしょう。
しかし、ゴミ屋敷のゴミを片付けるのは簡単ではありません。
誰が見ても不要なゴミであっても、法律上では住人の所有物となるため、他人が勝手に捨てたり片付けたりすることはできないからです。
「ゴミ屋敷に対する条例」とは?
かといって、このままでは、住民が安心して生活できません。
ゴミ屋敷問題に対処するため、条例を制定するなど生活環境の保全や公衆衛生を害する状況に対応している自治体があります。
環境省では、平成29年、全国1741市区町村にアンケートを行い、「平成29年度「ごみ屋敷」に関する調査報告書」としてまとめています。
この調査によると、「ゴミ屋敷」について認知しているのは594市区町村(34.2%)と意外に低い結果でした。
1145市区町村は「認知していない」と回答しています。
認知数が多い県は、以下の通りです。
- 埼玉県(35市区町村)
- 東京都(33市区町村)
- 北海道(33市区町村)
茨城県は13市区町村がゴミ屋敷について認知しているという結果になっています。
その中で、ゴミ屋敷に対応することを目的とした条例等の制定の有無を見てみると、以下のようになっています。
- 「ある」と答えたのが 82 市区町村
- 「ない」と答えたのが 1657 市区町村
この結果から、ゴミ屋敷に対する自治体の対策は、まだまだ遅れていると言わざるを得ないでしょう。
茨城県においては、回答した44市区町村のうち3市区町村が条例を制定しており、その一つが坂東市です。
茨城県坂東市のゴミ屋敷に対する条例とは?
では、坂東市のゴミ屋敷に対する条例の内容を見ていきましょう。
坂東市の「ゴミ屋敷に対する条例」は、正式名を「坂東市廃棄物の処理及び清掃に関する条例」といいます。
この条例は、ゴミ屋敷についてだけではなく、「生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図る」ことを目的として制定されました。
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」、またその他法令で定められているものはもちろん守らなくてはなりません。
これに加えて、坂東市における廃棄物の処理や清掃に関して必要な事項を定めています。
清潔で健康的な環境づくりや、市民が安心して生活できる環境づくりを目指しています。
では、条例の内容について見ていきましょう。
第3条第1項
「土地又は建物の占有者(占有者がない場合には、管理者とする。以下同じ。)は、その占有し、又は管理する土地(以下「土地」という。)又は建物を自ら清潔に保つよう努めなければならない」
坂東市内において、土地や建物は、清潔に保つようにと決められています。
清潔にすべき人は、この土地や建物の「占有者」とされています。
住んでいる人が、自分から進んで清潔に保つようにしなくてはなりません。
つまり、建物の中、外に限らず、ゴミなどを溜め込んだり、敷地内であってもゴミを積み上げるようなことがあってはならないというわけです。
ここには「ゴミ屋敷」という言葉は出て来ません。
しかし、この第3条の例は、ゴミ屋敷を生み出してはならないと市民に対して求める内容となります。
第3条第2項
「2 何人も土地、道路、河川、水路、ため池、公園、広場その他公共の施設の保全に努めるとともに、その場所を汚さないようにし、みだりに廃棄物を捨ててはならない」
同第3条2項では、公共の施設について定めています。
内容を見ると、単に「公共の施設を汚さず、きれいに使いましょう」というものですが、これもゴミ屋敷について当てはまります。
ゴミ屋敷では、家の中だけでなく、道路など敷地の外までゴミが積み上げられていることが少なくありません。
そのため、この2項はゴミ屋敷にも適用することができます。
この条例を定めることにより、ゴミ屋敷の悪影響が公共の場所にまで及ばないようにしています。
第9条第1項
市の側においては、ゴミと生活環境に対して、どのように取り組んでいるのでしょうか。
第9条を見てみましょう。
「市長は、前条の規定により定められた計画に従って、一般廃棄物を生活環境の保全上支障が生じないうちに収集し、これを運搬し、及び処分しなければならない」
「前条」とは、第8条で定められている、市長が毎年度末までに次年度に関する一般廃棄物処理計画を策定しなくてはならないという内容を指しています。
ここでは、一般廃棄物、つまり一般家庭から出るゴミを、生活環境を壊さないうちに収集し、処分しなくてはならないと定めています。
つまり、生活環境が悪化するまでゴミを放置せず、処分しなくてならない責任が、市長にあると規定しています。
第9条第2項
ゴミの処分について、土地や建物を持っている人、住んでいる人に対して、第2項で適切な処分を求めています。
「2 土地又は建物の占有者は、一般廃棄物のうち、生活環境保全上支障のない方法で、容易に処分することができるものについては、自ら処分するように努めるとともに、自ら処分することができない一般廃棄物については、可燃物、不燃物、資源物とに分別し、市が指定する方法で収納し、粗大ごみを所定の場所に搬入する等、市が行う一般廃棄物の収集運搬に協力しなければならない」
家庭から出るゴミは、その家や土地に住んでいる人が自分で処分しなくてはなりません。
もちろん、ゴミは坂東市が指定する方法で分別し、ルールを守って市の回収に出すよう定めています。
つまり、ゴミ屋敷でゴミを溜め込んでいると、この第9条第2項に反することになります。
第9条第3項・第10条
もし、ゴミ屋敷の住人が、家を片付けて大量のゴミを出すことになった場合、どのようにすればよいのでしょうか。
「3 市長は、臨時に多量の一般廃棄物を生ずる土地又は建物の占有者に対し、当該一般廃棄物を運搬すべき場所及び方法を指示することができる。(一般廃棄物の収集等の委託)」
こちらも、ゴミ屋敷に限定した条例ではありません。
しかし、ゴミ屋敷を片付ければ自分では処分できないほど、また、市の回収にも出しきれないほど大量のゴミが出ます。
その場合に、市長が、ゴミを出す人に対して、ゴミの出し方や場所、方法などを指示することができるとしています。
さらに、第10条では以下のように定め、不用品回収業者などに収集・運搬を依頼することができるとしています。
「法第6条の2第2項の規定により、一般廃棄物の収集及び運搬については、市以外の者に委託することができる。(一般廃棄物処理手数料)」
第11条
市の回収に出すゴミは無料で回収・運搬してもらえますが、市長からゴミを捨てるよう指示された場合は料金がかかります。
これを第11条で定めています。
「ただし、第9条第3項の規定により一般廃棄物を運搬すべき場所及び方法を指示された場合、又は市が行う粗大ごみの個別収集に関しては、この限りでない」
つまり、あまりに大量にゴミを出す場合は、ゴミ屋敷の住人が料金を支払わなくてはならないことになります。
その場合の料金は、以下のように規定されています。
「2 第9条第3項の規定により、臨時に多量の一般廃棄物を運搬すべき場所及び方法を指示された者が、市が管理する仮置場に一般廃棄物を搬入しようとするときには、次に掲げる区分に応じ、手数料を市に納入しなければならない。
(1) 軽貨物自動車1台 350円
(2) 普通貨物自動車(1トン車)1台 1,100円
(3) 普通貨物自動車(2トン車)1台 2,200円
(4) 普通貨物自動車(4トン車)1台 4,400円」
まとめ
茨城県坂東市では、「坂東市廃棄物の処理及び清掃に関する条例」によって、ゴミ屋敷に対応しています。
自宅といえども、公共の地域に中にあります。
その中で生きていく以上、周りの迷惑や環境保全を考えずに生活することはNGです。
坂東市では、あまりにひどい場合は、市長からゴミの片付けを指示されることがあります。
居住地域のゴミに関する規定は、しっかり知っておいたきましょう。