福岡県八女市は、1市3町2村が合併して誕生した、福岡県で2番目に広い市です。
八女といえば、お茶を思い浮かべる人も多いでしょう。
日本一の玉露をはじめ、上質なお茶の生産地として全国的に有名です。
そんな八女市は、福岡県の南部に位置し、広大な自然に恵まれています。
山林面積は福岡県で一番広く、約3万1000ヘクタールもあります。
また、阿蘇や九重といった自然もあり、登山や温泉などで人気の観光地も近く、自然豊かな生活が可能な立ち位置です。
八女エリアの中心地は、県内でも有数の伝統的建造物群保存地区です。
白壁の町並みが有名な福島地区では、古き良き日本の風景を感じることができます。
豊かな自然とはまた違った八女市らしさを感じることができるでしょう。
この地区には、若い世代や移住者が経営するお店もたくさんあり、移転してお店を始めたいという人に注目されている街です。
そんな福岡県八女市には、ゴミ屋敷に関する条例があります。
どのような条例なのでしょうか。
目次
福岡県八女市に住んでみよう!
近年、都市部から自然の豊かな地方への移住を希望する人が増えているようです。
特に、コロナ禍でリモートワークが中心になり、都市部に住む必要性が薄くなり、その傾向が強くなっています。
しかし、地方では不動産市場があまり盛んでないため、なかなか家を見つけられないことも多いようです。
本来は需要が少ないため、特にアパートやマンションなどの賃貸物件が少ないようです。
空き家に関しては、以下の理由から実際に住むのが難しいという事情があるようです。
- 人は住んでいないけれど荷物を置いたまま
- 相続で権利関係が複雑になって貸し出せない
- よく知らない人に貸したくない
そこで、福岡県八女市では、八女市に移住する人を募り「里山の集合住宅PROJECT」を始めました。
場所は八女市上陽町・久木原地区です。
「里山ながや星野川」という賃貸集合住宅が建設され、2018年7月から入居が始まりました。
敷地は廃校となった小学校の跡地を利用しています。
そして、地元産の木材を使って地元の大工さんが建てました。
新しい人を受け入れるだけでなく、地域の産業や企業などと連携しています。
地域産業の活性化も同時に目指そうという目的からです。
里山ながやは、メゾネット形式で戸建感覚で使うことができ、自然の中で暮らすことができます。
占有面積は45平米ほどとそれほど広くはありませんが、以下の世帯に向いています。
- 単身者
- カップル
- 小さな子どものいる夫婦世帯
部屋があまり広くない理由は、ここで八女市に馴染んでもらい、地域住民と信頼関係をつくってもらいたいからです。
そして、八女市内の空き家や土地などを紹介してもらって、定住してほしいという願いが込められているそうです。
移住してきた人と地域住民を結びつける役割を担うのは、地域住民と顔馴染みである管理人です。
管理人も長屋に居住し、地域ならではの風習や集まり、地域行事などを把握しています。
移住者がスムーズに地域に馴染んでいけるよう、ほどよい距離感を保ちながら、入居後のサポートをしてくれます。
また、地域住民と入居者の交流会も定期的に行われます。
地域とともに八女の暮らしを楽しめる場所となっています。
コロナ禍によって、人と人の距離が遠くなってしまいました。
空き家や空き地に移住者が入居するまでには、まだ時間がかかるかもしれません。
ですが、自然豊かな八女市で生活を楽しむ人が増えるといいですね。
福岡県八女市の「八女市環境保護条例」とは?
八女市における環境保護に関する条例は、正式名称を「八女市環境保護条例」といいます。
この条例は、平成8(1996)年12月24日に施行されました。
「八女市環境保護条例」の目的とは?
この条例が定められた目的は、第1条に規定されています。
市の良好な生活環境の確保を総合的に推進するため必要な事項を定め、もって健康で快適な市民の福祉増進に寄与すること
八女市での生活環境を良くしていくため、必要と考えられる規則を定めています。
それによって、市民の健康で快適な生活を促進しようとしています。
八女市の責務とは?
八女市は、この条例の目的を達成するために必要な対策を考え、行い、良い環境の保護に努めなくてはなりません。(第2条)
自然の豊かな八女市だけに、自然が破壊されたり、むやみに汚されるようなことがあってはなりません。
また、都市部での快適な生活も守っていく責任があります。
必要な対策を考え、実施していくことを市の責務として規定しています。
市民の責務とは?
八女市市民は、環境が適正に保護されるよう自ら努めるとともに、市が実施する環境の保護に関する施策に積極的に協力しなければなりません。(第3条)
良好な環境を保つためには当然、ここに住む市民自らが努力していく必要があります。
普段からゴミの減量に努めたり、しっかりゴミの分別したいところです。
また、市が環境美化のために実施する対策には、積極的に協力していくことが必要であると定めています。
事業者の責務とは?
事業者は、市民の良好な生活環境の保全のため、積極的な環境汚染の防止、また市が実施する環境保護に協力しなければなりません。(第4条)
この条例の「事業者」は、条例内には特に規定がありませんが、八女市内で事業を行っている者と解釈して良いでしょう。
たとえば、工場などを運営している事業者であれば、その工場から出る排水や排気が環境を汚さないような対策を取ります。
お店をやっている人であれば、できるだけお店から出るゴミを減らす努力をします。
事業者が行なっている事業において環境を汚染しないよう積極的に努力しなくてはなりません。
また、八女市が行う環境保護策に協力する義務があります。
福岡県八女市の「ゴミ屋敷に関する条例」とは?
「八女市環境保護条例」の条文の中には、「ゴミ屋敷」というワードは使われていません。
にもかかわらず、この条例が「ゴミ屋敷に関する条例」であると言われるのはなぜなのでしょうか。
それは、以下の項目が定められているためと考えられます。
土地または建物所有者の管理義務について
第5条を見てみましょう。
第1 項
土地又は建物の所有者又は占有者は、その土地又は建物内に散乱する空き缶及び空きビン等を適正に処理し、市の環境美化に協力しなければならない
八女市内で土地や建物を所有したり、そこを使ったり居住する人は、以下の点が求められます。
- 土地・建物内の空き缶や空きビンなどをきちんと処分する
- 美観を損ねない
ここで気をつけたいのは、空き缶・空きビン“等”という言い方をしていることです。
つまり、空き缶や空きビンだけでなく、ほかのゴミについても適正に処理する必要があると考えるべきでしょう。
第2項
土地又は建物の所有者又は占有者は、その土地等に繁茂した雑草等を除去するとともに、その土地等への廃棄物の不法投棄を未然に防止する措置を講じる等適正に管理するよう努めなければならない
土地・建物の所有者やそこを使っている人は、そこに雑草などが生えたらきれいに取り除かなくてはなりません。
草や木の伸ばしっぱなしは、美観を損ねるほか、害虫などを発生させる恐れがあります。
また、その土地・建物にゴミが不法投棄されることのないよう努めなくてはなりません。
ゴミが捨てられて溜まっていくと、放火などの犯罪を誘発する恐れがあります。
河川等の保護
第6条では、以下が規定されています。
何人も河川、水路、道路、ため池、公園、広場その他公有地及び私有地に空き缶、空きビン、吸い殻その他廃棄物等を投棄してはならない
これは、一見、川や道路などの公共の場にゴミを捨ててはいけないと言っているようです。
しかし、よく読むと「その他公有地及び市有地」という文言が入れられています。
つまり、公共の場や施設、土地だけでなく、市有地にもゴミを投棄することはできません。
つまり、空き家や誰かの家などにもゴミを捨てることはできません。
これを守るなら、ゴミ屋敷が生まれることはないというわけです。
まとめ
福岡県八女市では、「八女市環境保護条例」で環境の保護や美化を目指しています。
ゴミ屋敷という言葉は使っていませんが、第5条、第6条は、ゴミ屋敷が生まれにくいような内容になっています。
里山プロジェクトで移住者を募り、ゆくゆくは空き家などに定住・永住を目指しています。
この条例によって町をきれいに保ち、環境を良くしていくことで、空き家対策やゴミ屋敷対策につながっていくと考えられます。