近年、さまざまな自治体でゴミ屋敷をなくすために役立つ条例が定められています。
北海道士別市もその一つで、正式名を「士別市空き缶等のポイ捨て及び飼い犬等のふん害の防止に関する条例」といいます。
ここで気になるのが、“飼い犬等のふん害”という部分です。
もちろん、ほかの自治体でも、犬などの飼い方について条例に織り込んでいるところはありますが、ここ士別市では条例のタイトルにも入れられています。
目次
北海道士別市のゴミ屋敷に関する条例とは?
一般社団法人ペットフード協会の調査によると、令和3(2021)年の全国でのペット飼育頭数は710万6千頭にのぼるそうです。
同協会の調査では、平成25(2013)年あたりから、犬の飼育頭数はやや下降しています。
しかし、新しく犬を飼うことにした世帯は、新型コロナウィルスの影響から令和3(2020)年、令和4(2021)年と増えています。
これは、コロナ禍で在宅時間が増えたこと、ペットに癒しを求めて飼い始める人が増えたことが理由と考えられます。
ですが、飼ってはみたものの世話するのが負担だと感じるなどして、わずか数日で飼育を放棄する例や、散歩時のマナーを守れない、守らない飼い主が増えていることが問題になっています。
士別市で「士別市空き缶等のポイ捨て及び飼い犬等のふん害の防止に関する条例」が定められたのは平成17(2005)年ですが、ペットの数が増えている状況にあって、自然な流れだったのではないでしょうか。
北海道士別市のゴミ屋敷に関する条例とは?
では、北海道士別市のゴミ屋敷に関する条例の中身を見ていきましょう。
条例を定める目的は?
第1条に、この条例を定めた目的が掲げられています。
空き缶等のポイ捨てや飼い犬等のふん害の防止について必要な事項を定めることによって、以下の3つを条例の目的としています。
- 市民、事業者及び土地所有者等並びに市の責務を明らかにすること
- 市民の清潔で快適な生活環境の確保と地域における環境美化の促進を図ること
- 市民がきれいなまちづくりに資すること
条例を守るべき人とは?
条例では、以下を規定しています。
- 市民等:士別市民と、市内に滞在する人、また市内を通過する人
- 事業者:死別市内で事業活動を行う人
- 土地所有者等:士別市内に土地や建物を所有・占有する人、また管理する人
基本的な責務とは?
基本的な責務として、第3条に「何人も、みだりに空き缶等を捨て、又は飼い犬等のふんを放置してはならない」としています。
また、条例を守るべきと規定されている人の責務も定められています。
市民等(第3条)
条例では、市民等に対して以下を定めています。
- 屋外で出たゴミは持ち帰ること
- ペットを飼う場合は、ペットに関するゴミを適正に処分して環境の美化に努めること
- 市民同士、協力して快適な生活環境づくりに努めること
- 環境美化に関して、市が行う施策に協力すること
事業者(第5条)
条例では、事業者に対して以下を定めています。
- 事業活動によって出るゴミの回収、処分、再資源化に必要な措置を講じること
- 空き缶等のポイ捨ての防止に関して、従業員等を啓発すること
- 飲料容器、タバコ、またその他ゴミの散乱の原因となるおそれのある物の製造・加工・販売を行う事業者は、ゴミを適正に処分するために必要な対策を行い、消費者に対する啓発を行うこと
- 事業所やその周辺、また事業活動を行う地域で清掃活動の充実に努めること
- 環境美化に関して、市が行う施策に協力すること
土地所有者等(第6条)
条例では、土地所有者等に対して以下を定めています。
- 所有・占有・管理する土地の環境美化に努めること
- 市が実施する施策に協力すること
市の役割とは?
士別市では、条例を定めた側としてどのような責務や役割を規定しているのでしょうか。
第7条
第7条では、以下の点を規定しています。
- 環境美化施策を策定すること
- 施策の実施に当たっては、市民等、事業者及び土地所有者等に対して啓発その他の施策の推進を図ること
- 必要な指導をすること
- 必要な情報提供等の協力を求めること
第8条
第8条では、以下の点を規定しています。
- 空き缶などのポイ捨てや、飼い犬などのふん放置の防止策に関して啓発し、指導やその他の活動を行うこと
- 環境美化の促進を図るため、推進組織を設置することができる
第9条
市長は、市民や事業者などの自発的な環境美化活動を促進する務めがあります。
士別市に住む人や士別市で事業を行う人などが、空き缶などのポイ捨てや飼い犬などのふんの放置を防止するために、自発的な活動を行うために必要な措置を講じます。
士別市のゴミ屋敷に関する条例とは?
士別市ではゴミ屋敷に関してどのような条例を定めているのか見ていきましょう。
条例の表題からもわかる通り、「ゴミ屋敷」というワードは使っていませんし、条例の中にも出てきません。
では、なぜ、士別市のこの条例が「ゴミ屋敷に関する条例」といわれるのでしょうか。
きれいな町づくり
この条例は、市民が清潔で快適な環境で生活すること、また、きれいな町づくりを核としています。
ということは、「環境美化」や「清潔」「快適」とは対極にある「ゴミ屋敷」は当然なくさなくてはならないことになります。
みだりにゴミを捨てない
条文では「空き缶等」と表現されていますが、これは空き缶だけではなく、空き缶以外のものであっても、ゴミや不要なものを、みだりに捨てない、散らかさないという意味です。
これに関しては、第2条第4項において、「空き缶等」とは、「空き缶、空き瓶、ペットボトル、その他の容器、タバコの吸い殻、チューインガムのかみかすやその包装用紙、またそのほかの紙くず」のことであると規定されています。
ゴミ屋敷で大量に溜まりやすいゴミは、ほぼこの範疇に入ると言ってよいでしょう。
土地・建物の所有者、管理者に関する規定
条例では、もちろん「何人も、みだりに空き缶等を捨て、又は飼い犬等のふんを放置してはならない」と規定されていますが(第2条)、それに加えて、士別市内に土地や建物を所有する人、また管理する人に関して規定されています。
第6条で、土地・建物の所有者、管理者は、「所有・占有・管理する土地の環境美化に努める」ことが責務と定められています。
つまり、住んでいる家や所有している土地、また、管理している物件がある場合、そこをきれいに保たなくてはならないということです。
これを定めることによって、ゴミ屋敷は生まれないはずです。
また、「市が実施する施策に協力すること」という責務が決められています。
もし所有・管理する土地や建物がゴミ屋敷化してしまった場合や、「きれいな町づくり」にそぐわない状況になってきたとき、市からの指導などが入ったら、それに従い協力する必要があるのです。
このようにして、「ゴミ屋敷」というワードは使われていなくても、市内にゴミ屋敷をつくらない内容となっています。
士別市が講ずる対策とは?
もし、市内に清潔で快適とは言えない環境が発生した場合、士別市はどのような対策を講じるのでしょうか。
指導
もし、市内に条例に抵触すると思われる状況が発生すると、市(市長)はまず「指導」を行います。
市長は、市民等、事業者及び土地所有者等が、環境美化においてそれぞれの責務を果たしていない場合、規定に関して指導することができます(第10条)。
勧告及び命令
市長は、基本的な責務を果たしていない人(みだりに空き缶等を捨てたり、飼い犬のふん等を放置した人)に対して、期限を定め、必要な措置を講じるよう勧告することができます。
命令
これらの勧告を受けたにもかかわらず、正当な理由がないのに勧告に従わない場合は、期限を定め、その勧告に従うよう命令することができます。
公表
市長から改善の命令を受けても従わない場合は、期限を定めて、従わない人の氏名や事業者名、また、その内容を公表することができます。
立入調査
さらに市長は、必要がある場合、ごみが散乱している土地や建物への立ち入り調査や指導をすることができます。
この場合、調査や指導は、職員が行います。
罰則
北海道士別市においては、条例に違反したり、指導・勧告・命令などに従わなかった場合の罰則(科料など)は、特に書かれていません。
ただし、第13条において「この条例の施行について必要な事項は、市長が別に規則で定める」とあるため、注意が必要でしょう。
まとめ
北海道士別市では、環境美化を図るため「士別市空き缶等のポイ捨て及び飼い犬等のふん害の防止に関する条例」を定めています。
この条例に「ゴミ屋敷」という言葉は出てきませんが、規定されている内容により、地域の土地・建物のゴミ屋敷化を防止しています。
士別市に住む人や事業を行う人、また土地・建物を所有・管理する人がそれぞれの責務を果たし、協力することによって、きれいで清潔な環境づくりを促進しています。