コラムblog
近年、知られるようになってきた「セルフネグレクト」。
セルフネグレクトとは、生活環境や栄養状態が悪化しているのに、それを改善する気力を失い、周囲にも助けを求めなくなってしまった状態のことです。
「面倒くさい」
「もう、どうなってもいい」
そんな気持ちが生活を破綻させ、ゴミ屋敷や孤立死の原因にもなっています。
じわじわと忍び寄ってくる、セルフネグレクト。
ゴミ屋敷の研究から見えてきたセルフネグレクトの影響とは、どのようなものなのでしょうか。
目次
テレビなどマスメディアで「ゴミ屋敷」がセンセーショナルに取り上げられています。
ゴミ屋敷は、衛生上の問題だけでなく火事や犯罪を誘発するため、大きな社会問題となっています。
しかし、なぜ、ゴミ屋敷は増えているのでしょうか。
その背景には、住人の心の問題「セルフネグレクト」があると言われています。
セルフネグレクトとは、生活環境や栄養状態が悪化しているのにもかかわらず、改善しようという気力を失い、周囲にも助けを求めず孤立していく状態のことです。
私たちは普段、入浴や歯磨き、掃除、洗濯などを行って身の回りを整え、体調が悪くなれば休んだり病院に行ったりして自分で自分をケアします。
しかし、セルフネグレクトに陥ると日常生活全般に対して無関心になります。
とにかく自分に関する関心がなくなってしまうため、掃除も片付けもしません。
これが、ゴミ屋敷の背景になっているというわけです。
また、体調を崩しても、病気になっても、治療することに関心が向かないため、病院に行くこともありません。
そのため、セルフネグレクトは、健康に致命的な悪影響を与え、死に至ることも少なくなく「緩慢な自殺」とも言われています。
「生きる」ことに興味がなくなってしまうので、最悪の場合、孤独死や自殺につながるケースもあります。
しかも、これほど危険な状態になっているにもかかわらず、自分の意志では周囲に助けを求めないことから、本人の苦しみは誰にも伝わらないことがほとんどです。
では、セルフネグレクトに陥ってしまう原因とは何なのでしょうか。
老化すると、体力が衰え、筋力が減退したり関節が硬化したりします。
また、ちょっとしたことで膝や腰が痛んだり、疲れやすくなったりして、以前はできていた掃除・洗濯・料理など日常の家事が難しくなったり、億劫になったりします。
さらに、周囲から孤立していたり、サポートを受けられない場合、生活を維持するための行為をやりたくてもやれないという状態になります。
そのうち、もう無理という気持ちが勝り、無力感を感じるようになると、セルフネグレクトを引き起こすリスクは高まります。
「本来行わなければならないことが出来なくなってしまう」状態は、認知症や精神疾患などによる判断力の低下」によっても起こり得ます。
認知症の場合は、徐々に自分が何をすべきかの判断がつかなくなります。
誰かに声をかけられるまで食事をとれないなど、やるべき時にやるべきことが何か、自分で分からなくなってしまいます。
精神疾患にかかった場合も、普段以上に判断力が低下し、結果としてセルフネグレクトに陥る場合があります。
高齢者の場合、家庭や会社、地域社会との関わりを自ら断ち、自ら孤立した状態を選ぶことが多いようです。
若者の場合は、仕事の忙しさによってコミュニティから疎遠になり、結果として孤独になってしまうケースも見られます。
朝早くから出勤し、夜遅くまで仕事が終わらない。
そのため、友人から誘いを受けても、仕事が忙しく参加できず、断り続けているうちに疎遠になってしまう。
そして、世界でひとりぼっちになったような絶望感に包まれてしまうのです。
本当はつらくても、心配をかけたくないという思いから、誰にも本音を言えないという人や、もともと人と交流するのが苦手だったという人は多いようです。
セルフネグレクトに陥っている人は、さらに社会との交流をしなくなります。
以前は親しく話していた友人とも連絡を取らなくなり、近隣の人とも交流をしません。
そのため、誰も変化に気づかず、仮にSOSのサインを出していても気づいてもらいにくくなっています。
私たちが一般的な生活を維持するためには、必要最低限のお金が必要です。
収入が途切れると、健康的な生活を送れなくなります。
体調を崩したり病気にかかったりすることを発端として、自分を大切に感じられなくなってしまうのです。
本人が家族や地域社会に助けを求められれば、援助や生活保護などのサポートを受けることができます。
しかし、助けを求めることができない場合、経済的困窮はさらに加速し、セルフネグレクト状態に陥るリスクが高くなるのです。
- 配偶者や子供など近親者を亡くしてしまった
- 精神障害や糖尿病などの慢性疾患により、自分自身の世話ができなくなった
- 人間関係のトラブルにより孤立してしまった
など、さまざまな原因から、生きる意欲を失い、セルフネグレクトに陥ってしまうこともあります。
最近では、東日本大震災の深刻な被害を受けたことが原因で、どうしようもない喪失感を抱え、生きる意欲を失ってしまったケースもあるようです。
セルフネグレクトには、生活の中で当然行うべき行為を「行わない」ケースと、当然行うべき行為を病気などのために「行えない」ケースがあります。
どちらも心身の健康がおびやかされ、その延長線上には「ゴミ屋敷」や「孤立死」があります。
自分からは助けを求められないからこそ、周囲の人が早期にその兆候を見つけて支援する必要があるのではないでしょうか。
厚生労働省によるセルフネグレクトのサインを見てみましょう。
- 単身生活の人が、やせ細ってまともに食事も取らず、身体や衣服の清潔が保てていない
- 昼間でも雨戸が閉まっている
- 窓ガラスが割れたまま放置されている
- 電気、ガス、水道、電話が止められていたり、家賃の支払いが滞っている
- ゴミが部屋の中や家屋の周囲に散乱している、部屋から異臭がする
- 郵便物がたまったまま放置されている
- 野良猫のたまり場になっている
- 近所の人や行政が相談に乗ろうとしても「別にいいよ」「放っていてほしい」などど、頑なに遠慮したり拒否したり諦めの態度がみられる
あなたの周りや、離れて暮らす家族に、このような人はいませんか?
もし当てはまる人がいたら、なるべく早めに行政に相談したり、家族で話し合いましょう。
もし、セルフネグレクトになってしまったら、解決する方法はあるのでしょうか。
まず、自身が危険な状態にあることを自覚することが重要です。
セルフネグレクトの人は、人に頼れなかったり、頼り方がわからなかったりするだけでなく、そもそも自分が危険な状態にあることに気づいていないケースも少なくありません。
まずは自分自身の状態を自覚することが、周囲からのサポートを得る第一歩です。
セルフネグレクトに陥ってしまった人の心は、深い海の底に沈んでいるようなもので、自分で引き上げるのはなかなか難しいものです。
生きる気力を取り戻すには、精神科や心療内科などで適切な治療を受け、健康な心を取り戻すことが大切です。
精神障害ではなくても、強いストレスを抱えているような場合は、カウンセラーなど専門家に相談してみましょう。
他人だからこそ話せることもあるものです。
繰り返しになりますが、ゴミ屋敷の背景にはセルフネグレクトがある場合が少なくありません。
100%ではありませんが、セルフネグレクトとゴミ屋敷はほぼセットで発生する問題と考えてよいでしょう。
心のケアをして気持ちが持ち直して来たら、少しずつ部屋の片付けを行いましょう。
これまでと違った清潔な家になることで、大きな気分転換になります。
家族や友人、近隣の人が困っているように感じたら、適切なサポートを行うことが大切です。
地域の役所に相談したり、支援センターにサポートを依頼するなど、周りにも相談してみましょう。
セルフネグレクトは、一人ではどうしようもできない状態です。
だからこそ、周囲の人の思いやりと行動が何よりの解決の糸口になるのです。
セルフネグレクトは、誰でも発症する可能性があります。
発症してしまうと自力での対処は難しくなるため、日ごろから周囲の人々に頼ったり、環境を見直してみたりすることを意識しましょう。
もともと日本人は、他人に迷惑をかけることを嫌います。
また、弱みを見せたくない、自分の問題は自分で、とプライドに邪魔されて本音を言えないことも多いでしょう。
しかし、つらさを抱えたままでは、悩みは解決できません。
家族、友人、恋人といった身近な存在や、カウンセラーなどの専門家に本音を吐き出すことも必要です。
自分自身だけでなく、大切な人のためにも、いざという時にすぐに対応できるよう、良好な関係を築きたいものです。
この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家
氏名:新家 喜夫
年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。
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