近年では、親が住んでいたゴミ屋敷の相続を放棄する人たちが増えているようです。
親が亡くなれば、その家は財産として子どもや親族に相続されますが、財産の相続は放棄することも可能です。
ゴミ屋敷の相続放棄とはいったいどういうものなのか。
またゴミ屋敷の相続放棄には、デメリットはないのでしょうか?
今回はそんな疑問を持っている方のために、ゴミ屋敷の相続を放棄することのメリットやデメリット、また注意点についても説明していきます。
目次
ゴミ屋敷を相続放棄すること
ゴミ屋敷の相続を放棄することは、片付けをしなくて済むということです。
故人がアパートなどに住んでいた場合、相続人(相続する権利を持つ人)には、大家さんから片付けの要請が来るでしょう。
持ち家の場合でも、近隣住民からの苦情により、行政から片付けをするよう警告される可能性は充分にあります。
ゴミ屋敷を相続した場合、当然これらの要請を受けて、故人の家を片付けに行かなければなりません。
しかしゴミ屋敷を自力で片付けるのは、程度にもよりますが簡単ではありません。
そのため相続した人は、業者に片付けを依頼することになるでしょう。
ゴミ屋敷の片付けには、かなりのお金がかかります。
当然この片付け費用も、相続した人が支払わなければなりません。
相続を放棄すれば、片付けをする必要がなくなるため、片付け費用を支払う必要もなくなります。
ゴミ屋敷を相続放棄することのデメリット
ここまでゴミ屋敷の相続を放棄することについて説明してきましたが、これにはデメリットもあります。
ここではゴミ屋敷の相続を放棄すると、どんなデメリットがあるのかについて説明していきましょう。
プラスの財産も相続できない
遺産には預貯金や資産価値のある不動産などのプラスの財産と、借金などのマイナスの財産があります。
ゴミ屋敷は不動産ですが、資産価値がなければ、片付けの費用が発生するぶんマイナスの財産になる可能性があります。
遺産を相続する場合、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も引き継がなければなりません。
逆に相続を放棄する場合、マイナスの財産だけでなく、プラスの財産も受け取れなくなります。
つまりゴミ屋敷の相続を放棄してしまうと、プラスの財産まで相続できなくなってしまうのです。
例えば親に多額の貯金があっても、ゴミ屋敷の相続を放棄すれば、お金も相続できなくなります。
資産価値のある物なら、形見分けもできなくなってしまうのです。
他の人に迷惑がかかる
ゴミ屋敷の相続を放棄することは、他の人に多大な迷惑がかかるということも忘れてはいけません。
故人が賃貸住宅に住んでいた場合は、大家さんに迷惑がかかります。
先ほども説明したとおり、ゴミ屋敷の相続を放棄した場合、片付けの必要はありません。
誰も相続する人がいない場合、故人の住んでいた賃貸住宅の大家さんが、ゴミ屋敷の後始末をしなければなりません。
相続放棄しても、財産の管理責任は残る
故人の家が持ち家の場合、相続を放棄すれば、相続人はその家を売りに出したり、取り壊すことはできません。
しかし相続を放棄した人には、その家の管理責任が残ります。
故人の家を管理せずに放置した結果、第三者に迷惑がかかった場合、相続人は損害賠償の責任を負う可能性があります。
例えば老朽化した家を放置して、屋根の瓦が崩れ、通行人に当たった場合は、治療費などを負担しなければならない場合もあるのです。
故人が賃貸住宅に住んでいた場合は、当然住宅の管理責任はありません。
しかし住宅に残っていた家財道具などの管理責任は、相続を放棄した人にあります。
後ほど詳しく説明しますが、相続を放棄した場合、故人の家財道具を勝手に処分することはできません。
そのため故人が住んでいた賃貸住宅に残った家財道具は、トランクルームなどを借りるか、自宅に保管しなければならないのです。
ゴミ屋敷を相続放棄した時の注意点
ここまで、ゴミ屋敷の相続を放棄することとデメリットについて説明してきました。
相続放棄することがデメリットより大きいのなら、放棄したほうが賢明です。
ただしゴミ屋敷の相続放棄には、注意点もあります。
ここでは、ゴミ屋敷の相続を放棄する場合の注意点について説明していきましょう。
相続放棄には期限がある
相続放棄の手続きには、期限があります。
期限内に手続きしなかった場合、相続の放棄はできません。
相続放棄の期限は、故人の死を知ってから3ヶ月以内となっています。
ゴミ屋敷の片付けをすると相続放棄ができなくなる可能性がある
相続放棄をしたいという人は、安易にゴミ屋敷の片付けをしてはいけません。
なぜなら、ゴミ屋敷の片付けをしてしまうと、相続放棄ができなくなる危険があるからです。
民法第921条には、「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき、単純承認をしたものとみなす」とあります。
これは簡単に言えば、相続を受ける権利のある人が故人の財産を一部でも処分すると、相続に承認したと見なされるということです。
生ゴミや紙くずなど、誰の目から見てもゴミだと判断できるものなら処分しても問題ありません。
しかし少しでも資産価値のあるものをうっかり処分してしまうと、その時点で相続の放棄ができなくなってしまいます。
故人がアパートなどに住んでいた場合、基本的には大家さんから片付けをしてほしいと要請が来るはずです。
もしこの時、安易に物を処分してしまうと、ゴミ屋敷の相続放棄ができなくなる危険があります。
そのため先ほども説明したとおり、故人が残した家財道具などは、処分せずに自宅などに移して、保管する必要があります。
まとめ
近年では、高齢社宅のゴミ屋敷化が社会問題になっています。
ゴミ屋敷に住む高齢者が亡くなれば、その相続権は子どもや親族にありますが、相続を放棄する人も多いようです。
ゴミ屋敷の相続を放棄すれば、片付け費用などの出費を抑えることができるというメリットがあります。
しかし一方で、現金などのプラスの財産も相続できないといったデメリットもあります。
さらにゴミ屋敷の相続を放棄しても、その家や家財道具の管理責任を負わなければなりません。
ゴミ屋敷の相続を放棄するかどうかは、こうしたデメリットもよく考えたうえで決めるようにするといいでしょう。