ニュースなどで見かけるゴミ屋敷の衝撃的な映像は、決して他人ごとではありません。
いつあなたの身近な家族の身に起きるともしれない深刻な問題です。
そこで今回は高齢者宅がゴミ屋敷化してしまう原因、そして具体的な解決策について詳しく解説します。
高齢の親や家族を持つ方は、ぜひ最後までチェックしてください。
目次
高齢者住宅のゴミ屋敷化は根が深い
ゴミ屋敷の問題は、単なる不衛生に留まりせん。
近隣トラブルの他、高齢者自身また周囲の人々の命に関わる深刻な問題を引き起こす危険性すらはらんでいます。
ゴミ屋敷と化した住宅の問題は、高齢者本人にとっても非常にプライベートでセンシティブな部分に触れる内容にあります。
そのため、短絡的にゴミを片付ければいいという問題では済まない場合があります。
また、ゴミ屋敷に居住する高齢者本人の状態によっては、単身独居生活を続けることが難しい為、介護施設などへの入所も検討した方が良い場合もあるでしょう。
なぜゴミ屋敷になってしまったのか、根本的な原因をしっかり理解すると同時に、高齢者自身の状態や性格を把握する必要があります。
やり方を間違えると、人間関係を破綻させる恐れすらありますから、慎重にかつ迅速に解決策を講じなければなりません。
高齢者の自宅がゴミ屋敷になる6つの原因
高齢者の住む住宅がゴミ屋敷化する原因には、大きく以下の6つがあります。
- もったいないという価値観
- セルフネグレクト
- ため込み症(ホーダー)
- 体力の低下
- 判断力の低下
- 精神疾患
- 周囲に迷惑をかけたくない
それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
高齢者の自宅がゴミ屋敷になる原因1:「もったいない」価値観
戦争を経験し、食べ物や着るものがない苦しさを知っている今の高齢者世代の中には、「もったいない」「物を捨ててはいけない」という価値観が強く根付いている傾向があります。
物を大切にする価値観は非常に尊いものです。
しかし行き過ぎた「もったいない」という価値観は執着になります。
もう使う用途のないものや、第三者からみると明らかなゴミに対しても、もったいないから捨ててはいけないという強迫観念にも似た思いで執着します。
最初のうちは収納スペースがあっても、徐々に収納する場所を失い、また高齢化による体力の減退によって片付けができなくなり、部屋の中に雑然とゴミが鎮座するのが常態化します。
これが悪化し、居住者である高齢者本人では対処しきれないようなゴミ屋敷が生まれるのです。
もったいないという価値観に根付いたゴミ屋敷の問題点
もったいないという価値観が原因でゴミ屋敷になっている場合、ゴミ屋敷の片付けに着手する前の段階が非常に重要です。
まずは住人である高齢者本人としっかりコミュニケーションを取って、意思の疎通を図ります。
第三者から見れば、ただのゴミにすぎません。
しかし住人である高齢者本人にとっては、まだゴミではない品々です。
自分が価値を見出しているものを他人からゴミだと切り捨てられれば、自尊心が深く傷つき、その人の話を聞く意思すら失うでしょう。
こうなると、人間関係に深い溝を作りかねません。
ゴミ屋敷になっていたとしても、高齢者本人を尊重しながらゴミ屋敷解決に向けた片付けを進めることが重要です。
高齢者の自宅がゴミ屋敷になる原因2:セルフネグレクト
高齢者の自宅がゴミ屋敷になる原因の2つ目として、「セルフネグレクト」によるものが考えられます。
セルフネグレクトとは、直訳すると「自己放任」です。
高齢化して体力や気力が衰えたことで発生します。
心身が健康な状態であれば住環境を衛生的に保ちたいと自発的に考え、行動をとることができるでしょう。
しかし心身が消耗しきった状態では、何もかもがどうでもよく思え、片付けをしなければいけないのはわかっていても放置してしまいます。
それが積み重なると、膨大に膨れ上がったゴミを片付ける気力すら起こらず、自暴自棄に陥ってしまいます。
この悪循環がセルフネグレクトです。
セルフネグレクトによるゴミ屋敷の問題点
セルフネグレクトの状態に陥ったことが原因で住宅がゴミ屋敷化している高齢者の場合、住宅のゴミ屋敷化以外にも、基本的な生活さえ放棄してしまっているケースがよくあります。
- 料理や食事
- トイレでの排泄
- 入浴
- 外出
- 投薬や通院
高齢者にとって基本的な生活の放棄は、命に関わる重大な問題を引き起こしかねません。
離れて暮らす高齢家族の住宅がゴミ屋敷化した原因としてセルフネグレクトが疑われる場合、継続的に注意深く見守る必要があります。
高齢者の自宅がゴミ屋敷になる原因3:ためこみ症(ホーダー)
高齢者の住宅がゴミ屋敷化する原因の一つに、「ためこみ症」(ホーダー)と呼ばれるものがあります。
ためこみ症は、2013年アメリカ精神医学会の診断基準が19年ぶりに改訂された中で、ひとつの病気として位置づけられました。
それ以降メンタルの疾患の一種として近年注目されています。
ためこみ症の場合、物を捨てたり手放したりすることがどうしても出来なくなります。
その結果、家中に物が溜まり、それでも捨てられない為ゴミ屋敷化します。
ためこみ症の高齢者は、先ほど紹介したセルフネグレクトに陥った高齢者の場合と大きく異なります。
ためこみ症の高齢者にとって、食事や入浴、外出や通院といった基本的な生活は、なんら問題ありません。
自宅に引きこもって出てこないようなこともほとんどないため、周囲が住宅のゴミ屋敷化に気づきにくい傾向があります。
ネグレクトの高齢者と比較すると、命に関わるような危険性は低いものの、ためこみ症の高齢者にも特有の問題点が見られます。
ためこみ症によるゴミ屋敷の問題点
ためこみ症の場合、物を集めなければならない、拾わなければならないという強迫観念に襲われている一方で、集めたものを片付ける、整頓するといった物を所有することに伴う規則を守ることが難しいケースがあります。
室内に無雑作に積み上げられたゴミが倒壊すれば、怪我をしたり、住宅の床が抜けたりする可能性があります。
また室内での火の不始末によってあっという間に火の手が上がれば、近隣住民も巻き込んだ火災の原因になる恐れもあります。
ゴミ屋敷は居住する高齢者自身はさることながら、住宅や近隣住民を巻き込む危険性があることを忘れてはなりません。
高齢者の自宅がゴミ屋敷になる原因4:体力の低下
高齢になると筋力が低下し、足腰に不自由が発生することがよくあります。
日常生活を送ることにも支障をきたすほど体力や筋力が低下すると、掃除やゴミ出しといった動作も一苦労です。
捨てるべき生活ゴミが室内に溜まったり、片付けや掃除が進まないことで室内はどんどんゴミ屋敷化していきます。
体力の低下によるゴミ屋敷の問題点
体力の低下によってゴミ屋敷になっていく場合、家事などの基本的な生活は送れるため、生ゴミをはじめとする生活ゴミがどんどん排出されます。
にもかかわらずそういった腐敗するタイプのゴミをコンスタントにゴミに出すことができないため、腐敗や悪臭による不衛生な状態に陥りがちです。
高齢者の自宅がゴミ屋敷になる原因5:判断力の低下
高齢化の進行に伴い、認知症の発症率も上がっていると言われています。
65歳以上の高齢者の7人に1人が発症するとされる認知症では、かなり初期の段階からも認知機能の著しい低下が見られます。
認知機能が低下することによって、第三者からはゴミであっても、高齢者にとってはゴミだと判断できずに物を溜め込み、ゴミ屋敷になります。
判断力の低下に伴う高齢者住宅のゴミ屋敷化は今後も増加すると考えられており、周囲の見守りが欠かせません。
高齢者の自宅がゴミ屋敷になる原因6:精神疾患
認知症を発症したことによって高齢者の住宅がゴミ屋敷化する以外に、精神疾患を発症したことによる住宅のゴミ屋敷化もあります。
よくある疾患としては以下のようなものが考えられます。
- うつ病
- 統合失調症
- ADHD
- アルコール依存症
精神疾患を発症したことによって住宅がゴミ屋敷化している場合、健康かつ衛生的な生活を維持するのは困難を極めます。
家族のみならず、自治体等も巻き込んだサポートが必要になるでしょう。
高齢者の自宅がゴミ屋敷になる原因7:周囲に迷惑をかけたくない
自立心が強く、人に迷惑をかけたくないという思いが強い高齢者も、自宅をゴミ屋敷にしてしまう傾向があります。
年齢とともに体は思うようにならないにもかかわらず、自分のことは自分でやりたいという思いが強く、周囲からのサポートを受け入れることができません。
自分一人で全てを抱え込んだ結果、不衛生な環境で心身の状態を悪化させたり、孤独死といった最悪の事態を引き起こすケースも考えられます。
放置は危険!ゴミ屋敷が引き起こす6つの被害
- 火災の原因になる
- 転倒事故や病気発症の原因になる
- 孤独死のリスクが高まる
- 近隣トラブルの原因になる
- 住宅を失う恐れがある
- 特殊清掃が必要になる
ゴミ屋敷は、住人である高齢者の心身の健康を脅かす危険な状態です。
さらに住宅を損傷させる、引火物が多いため火災を引き起こす、悪臭や溢れかえったゴミで近隣トラブルになる恐れもあります。
ゴミ屋敷になったことでトラブルになり、周囲とのコミュニケーションを断った結果、住宅で孤独死すれば、特殊清掃が必要になります。
賃貸住宅の場合、それに伴う賠償責任が発生することも考えられるでしょう。
ゴミ屋敷になった発端が、周囲に迷惑をかけたくないという高齢者の思いであったとしても、ゴミ屋敷には悲劇的な結末しかありません。
高齢者のゴミ屋敷化問題を解決に導く3つのステップ
高齢者の住宅がゴミ屋敷と化していることに気づいた場合、一刻も早い対策をとることが重要です。
しかし、住人である高齢者自身の意思を度外視した方法をとれば、事態を悪化させるおそれがあります。
周囲にまで迷惑をかけるようなゴミ屋敷になっていたとしても、高齢者本人にとっては大切な品々である可能性が高いでしょう。
また、自分自身が積み上げてきた暮らしを他人から否定されて気分のいい人はいません。
高齢者本人の気持ちを尊重しつつ、理解を求めながら、安全な状態に整えるために3つのステップを踏んでゴミ屋敷解決に向けた歩みを進めます。
- 自宅がゴミ屋敷になっていることを丁寧に説明する
- このまま放置すると予測される危険性を分かってもらう
- 1箇所片付けて、片付いた状態の快適さを体験してもらう
高齢者になり身体能力や判断力が衰えても、あくまで親は親であり、年長者です。
自分自身の衰えを自覚している高齢者の場合は特に、自尊心を傷つけないように慎重に対応しましょう。
高齢者のタイプ別、ゴミ屋敷の片付け方
ゴミ屋敷の片付け方は、住人である高齢者のタイプによって変わります。
以下の3つのタイプ毎に、どのようにゴミ屋敷を片付けていくのか具体的に見ていきましょう。
- 人に迷惑をかけたくない
- 単純に物を片付けられない
- ゴミを宝物と思っている
人に迷惑をかけたくない
責任感が強い高齢者ほど、人に迷惑をかけたくないと一人で抱え込んで対処しきれず、ゴミ屋敷にしてしまうことがあります。
こういった場合は、自分で自分の責任をとりたいと思った気持ちは尊重しつつも、自分で負いきれない責任を負おうとすることに伴う2次被害3次被害について、じっくり話し合いましょう。
ゴミ屋敷になることで高齢者自身にも、また家族や近隣住民にも多大な迷惑をかけ、人命を危険にさらす事態にもなりかねないことを理解できれば、ゴミ屋敷を片付けることに対する協力も得られます。
可能であれば一緒にゴミを片付けながら、もうゴミ屋敷にしないための片付けの仕組みも一緒に構築すると良いでしょう。
単純に物を片付けられない
加齢による身体能力や判断力の低下で片付けが十分にできず、ゴミ屋敷になっている場合があります。
または溜め込み症でゴミ屋敷になってしまった場合は、取り急ぎ住宅を清潔な元の状態に戻すことを最優先しましょう。
ゴミ屋敷も初期の段階であれば、家族が協力して数日の清掃によってきれいになることもあるでしょう。
しかしあまりにもゴミ屋敷の度合いが進行している場合は、不用品回収業者などを依頼して一気に片付けてしまう方法もあります。
ゴミ屋敷の場合、ただ清掃するだけでは解決しません。
大量のゴミの処分が伴います。
すべてのごみを自分で処理しようとすると、何週間にもわたってゴミ出しをしなければなりません。
ゴミ屋敷の度合いによっては、不用品回収業者の力を借りることを検討するとよいでしょう。
ゴミを宝物と思っている
セルフネグレクトや精神疾患、認知症の発症などによる判断力の低下で、ゴミを宝物だと思っているようなケースは一筋縄ではいきません。
住宅がゴミ屋敷となっていることを説明しても理解は得られず、業者を頼って一旦部屋を綺麗にしても、あっという間にごみ屋敷に戻ってしまうでしょう。
こういった場合、そのまま単身生活を継続することは様々な危険を伴います。
近隣に居住している場合は、家族が定期的に訪ねて様子を見るのもよいでしょう。
しかし自分自身の生活を営みながら、すでに成人である高齢者の世話をし続けるのは容易なことではありません。
介護施設への入所や、訪問介護といった手助けを求めることも検討してみてはいかがでしょうか。
また正常な判断力を無くした状態の高齢者が単身での生活を継続すれば、思わぬ事故を引き起こし、周囲を巻き込んだトラブルに発展する恐れもあるでしょう。
明らかなゴミをゴミであると正常に判断できないくらい判断力が衰えた高齢者の場合は、単身独居生活は難しいものと考えて、ゴミ屋敷の片付けと高齢者の新たな生活を同時進行で検討してみましょう。
ゴミ屋敷を確実に片付ける方法
ゴミ屋敷を確実に片付ける方法は2つあります。
- 家族総出でゴミ屋敷の片付けに当たる
- ゴミ屋敷片付けの実績がある不用品回収の専門家に依頼する
詳しく見ていきます。
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家族総出でゴミ屋敷の片付けに当たる
ゴミ屋敷の程度が軽ければ、家族総出で数日かけて片付けるのも良いでしょう。
高齢者本人も一緒に片付けができれば、日頃十分に取れないコミュニケーションをとる機会にもなります。
家族総出でゴミ屋敷の片付けするメリット
住人の高齢者本人と一緒にゴミ屋敷の片付けをすれば、ゴミ屋敷にしてしまうことに伴う大変さをより理解できるので、再発防止が期待できます。
また家族が一緒に片付けながら、もう二度とゴミ屋敷にしないための整理整頓の仕方や、ゴミを捨てるルールなどを決めると良いでしょう。
家族総出でゴミ屋敷の片付けに当たるデメリット
ゴミ屋敷を片付ける場合、大量に出現するゴミの処理は大きな問題です。
何回にも分けて自治体のゴミ収集に出さなければなりませんが、身体能力の衰えている高齢者自身で行うのは難しい可能性があります。
ゴミを出すためだけに何度も家族が通わなければならないのは、家族にとっても大変な負担ですし、高齢者自身にもストレスになりかねません。
また、ゴミ屋敷を構成するゴミに生ゴミなどの水気を多く含むゴミが多かった場合、床や壁などを激しく汚しているケースが多く見受けられます。
市販の清掃用品では十分に綺麗にしきれず、不衛生な部分が残ってしまう可能性は否めません。
ゴミ屋敷を片付けられる不用品回収業者に依頼する
ゴミ屋敷の片付けも一緒に対応できる不用品回収業者に依頼すれば、短時間のうちにあっという間にゴミ屋敷を片付けることができます。
不用品回収業者に依頼するメリット
不用品回収業者なら、大量に発生するゴミも一気に回収できます。
ゴミ屋敷の清掃に慣れているので、素人では何日もかかるような作業でも、数時間で作業可能です。
また、ゴミ屋敷特有の激しい汚れも、特殊な清掃用具や技術を駆使してきれいにすることができます。
特にゴミ屋敷になったのが賃貸住宅の場合は、原状回復の義務があります。
ゴミ屋敷になったことで激しく汚染された室内の清掃であれば、専門業者に相談するのがよいでしょう。
まとめ
高齢者となっても自分自身で独立した生活を営みたい親の思いを尊重しようと思うのは、家族であれば当然です。
しかしゴミ屋敷は不衛生なだけでなく、命を危険にさらす恐れすらあります。
加齢や疾病によって正常な判断ができない状態に陥っているのであれば、家族が介入して、高齢者の単身居住の状況を解消することも検討すべきでしょう。
またゴミ屋敷の片付けは、想像以上に大きな負担です。
高齢者自身が全てを一人で抱え込んでゴミ屋敷にしてしまったように、家族だけで抱え込もうとするとゴミ屋敷を解決できず、かえって家族内の不安を引き起こしかねません。
ゴミ屋敷状態になってしまったら、ゴミ屋敷を処理する専門家の力を借りるのもひとつの方法なのではないでしょうか。