ゴミ屋敷とは、名前の通りゴミで溢れかえってしまった状態の住宅や部屋のことを指すことが一般的です。
最初は居住空間に溜められていたゴミが、長い年月をかけて住宅内を侵食し、やがてゴミが溢れてしまうことで生まれてしまいます。
悪臭や害虫が発生したり景観を壊してしまったり、または近隣住民に迷惑をかけてしまっていることが大きな問題点として挙げられています。
近年では、ゴミ屋敷による問題がよくメディアで取り上げられており、2018年には名古屋でゴミ屋敷についての裁判が行われました。
皆さんの中で、「ゴミ屋敷のゴミを勝手に撤去しても良いのかどうか」と疑問に思っている方はいませんか?
今回は、ゴミ屋敷の強制執行や強制撤去について、ゴミ屋敷の問題点などを紐解きながら解説していきます。
本記事を読むことで得られる具体的なメリットとして、主に下記の3点が挙げられます。
- ゴミ屋敷の強制執行や強制撤去について理解できる
- ゴミ屋敷に住んでいる人の気持ちや事情を理解できる
- ゴミ屋敷の問題点を把握でき、私たちができる対策法が分かる
ゴミ屋敷の強制執行や強制撤去とは一体何なのか、本記事を参考にゴミ屋敷への理解を深めていきましょう。
目次
ゴミ屋敷の強制執行・強制撤去とは?
ゴミ屋敷の強制執行や強制撤去とは、一体どのようなものなのでしょうか。
そもそもゴミ屋敷について、現在の日本では直接ゴミ屋敷の取り締まりを行う法律はありません。
しかし、自治体ごとにゴミ屋敷条例と呼ばれるものを制定しており、近隣住民に迷惑をかけているゴミ屋敷への対処を行っています。
このゴミ屋敷条例は、2013年に東京都足立区で制定された「足立区生活環境の保全に関する条例」から始まり、各自治体でも徐々に制定されるようになっていきました。
こういったゴミ屋敷条例に基づいて、自治体がゴミ屋敷の住民に変わってゴミを処分することを強制執行・強制撤去と言い、別名「行政代執行」と呼ばれています。
行政代執行は、実際に撤去作業を行うまでに、ゴミ屋敷の住民に向けて何度も注意喚起や現状の確認調査を行います。
その後、何度繰り返してもゴミを撤去してくれないようであれば、近隣住民の苦情を元に強制執行・強制撤去を始めるのです。
不動産会社はゴミの処分を勝手にしても良い?
もしゴミ屋敷の存在に不動産会社が気づいたら、有無を言わさずゴミを処分することが可能なのでしょうか。
答えとしては、勝手にゴミを処分することはできません。
理由としては、勝手にゴミを処分してしまうと、ゴミ屋敷住民の所有権を侵害してしまう可能性があるからです。
私たちからすればどう見てもゴミにしか思えない物でも、ゴミ屋敷の住民からすれば立派な所有物に当たります。
そのため、マンションの共有部分にはみ出してしまっているゴミを処分するように告知をすることは可能ですが、勝手に処分するのはNG行為となります。
場合によってはゴミ屋敷住民に損害賠償を請求されてしまう危険性もあるため、まずは自治体に相談するようにしましょう。
そもそもゴミ屋敷はどうしてダメなの?3つの問題点
ここからは、ゴミ屋敷がなぜダメなものとして認識されているのか、問題点を列挙しながら深堀していきます。
ゴミ屋敷が生み出す具体的な問題点としては、主に下記の3点が挙げられます。
- 悪臭や害虫の発生
- 火災リスクが高まる
- ゴミが通行人の障害となってしまう
それでは1つずつ解説していきます。
悪臭や害虫の発生
ゴミ屋敷における最大の問題点として、悪臭や害虫が発生する可能性が高いことが挙げられます。
ゴミ屋敷で発生した悪臭・害虫が近隣住宅にも被害を広げることがあり、そうなってしまうと近隣住民からすればたまったものではありません。
ゴキブリやハエといった害虫などは、餌を求めて近隣住宅に侵入してしまうケースが多々あります。
火災リスクが高まる
可燃物のゴミが大量にあるゴミ屋敷では、火災リスクが一気に高まります。
万が一たばこの不始末などがあれば、ゴミ屋敷は一気に炎で包まれてしまうことでしょう。
ゴミが通行人の障害となってしまう
ゴミ屋敷が溢れ出てしまったゴミが、道路や近隣住宅前などにも侵入してしまうケースがよくあります。
通行人の邪魔になってしまうのはもちろん、ゴミの山が崩れてしまったら通行人にケガをさせてしまう可能性も考えられます。
ゴミ屋敷に対して近隣住民ができる2つの対策
ここからは、ゴミ屋敷に対して近隣住民ができる対策をいくつかご紹介していきます。
今回ご紹介するのは、下記に挙げられた2つの対策法になります。
- 行政に相談する
- 内容証明郵便で注意を促す
それでは1つずつ解説していきます。
行政に相談する
まずは、警察署や保健所などにゴミ屋敷について相談し、行政に協力してもらいましょう。
一度相談しただけでは行政も動いてくれない可能性がありますが、何度も繰り返し相談することによって、事の重大さを理解してもらえるはずです。
行政から直接ゴミ屋敷の住民に指導をしてもらえるように、まずはゴミ屋敷問題を知らせるところから始めてみてください。
内容証明郵便で注意を促す
口頭や電話などでゴミ屋敷住民に注意したとしても、ゴミ屋敷の住民に何度も注意を促した証拠にはなりません。
内容証明郵便で注意喚起を行うことで、ゴミ屋敷の住民に注意をしたという確固たる証拠となります。
「ここまでしてもゴミ屋敷の住民に無視されてしまったらどうするの?」と思うかもしれませんが、そこはまったく問題ありません。
再三注意を促していた実績があれば、行政に行政代執行を行ってもらえる可能性が高まるからです。
内容証明郵便を送るのに費用は掛かってしまいますが、ゴミ屋敷問題を解決できると考えれば絶対に損をすることはありません。
ゴミ屋敷になってしまう4つの理由
最後に、そもそもゴミ屋敷になってしまう理由について解説していきます。
ゴミ屋敷になってしまう具体的な理由としては、主に下記の4つが挙げられます。
- 片付けをする時間がない
- 精神的・肉体的な病気がある
- ゴミが溜まっている自覚がない
- ゴミがある生活に満足している
ゴミ屋敷は、ニュースや新聞などのメディアでも迷惑な存在としてレッテルを貼られています。
しかし、ゴミ屋敷が生まれてしまうまでには、ゴミ屋敷住民のさまざまな事情が関係しています。
ゴミ屋敷問題の解決には、こういった事情を私たちも理解してあげる必要があるでしょう。
それでは、1つずつ解説していきます。
片付けをする時間がない
ゴミ屋敷ができてしまう原因の中には、自分ではどうしようもできないケースもあります。
その内の1つが、片付けをする時間を作れないことです。
仕事から帰ったら家事や食事に追われ、睡眠を取って気づいたら翌日になってしまい、また仕事に出かけ、休日は疲れが溜まっていることもあり夕方まで寝てしまう。
こうしたサイクルで毎日が過ぎていき、結果的にゴミを出す頻度が減ってしまいがちです。
そうなってしまうと、どんどんゴミが蓄積されていき、次第にゴミ屋敷となってしまいます。
精神的・肉体的な病気がある
強迫性障害などの精神的な病気は、ゴミ捨ての際に大きな問題となって立ちはだかります。
強迫性障害の方は、紙や書類などのゴミを捨てる際に、「もしかしたら大切なことが書かれているかも…。」と急に不安が押し寄せてしまい捨てることができません。
その結果、徐々にゴミが蓄積されていき、次第にゴミ屋敷になってしまうのです。
また、強迫性障害だけでなく、肉体的な病気がある場合もゴミ屋敷化のリスクが高まります。
脚が痛い、手足が動かせない、重い物を持つのがつらいなど、肉体的に問題があるとどうしてもゴミを溜め込んでしまいがちです。
ゴミが溜まっている自覚がない
ゴミ屋敷になっても平然としている方は、そもそもゴミをゴミだとは思っていません。
私たちからすればただのゴミにしか見えない物でも、ゴミ屋敷の住民からすれば大切な物だったりします。
見た目がボロボロの汚いぬいぐるみなどでも、幼い頃から大切にしていて捨てられないなどが挙げられます。
皆さんの中でも、同じような物を持っている方がいるのではないでしょうか。
ゴミ屋敷の住民からすれば、ゴミではなく所有物であり、大切にしている物なのです。
ゴミがある生活に満足している
皆さんは、日常においてリラックスできる瞬間はありますか?
ソファーに座ってテレビを見ることや、こたつに入って温まりながらみかんを食べること、クーラーの効いた部屋で本を読むことなど、多くの方がリラックスできる時間を持っているはずです。
それと同じく、ゴミ屋敷の住民からすれば、「ゴミのある生活がリラックスできる」と考えているケースが多いです。
ベッドやソファなどにゴミが溢れかえっていて座ったり眠ったりできなくても、ゴミ屋敷の住民にとっては快適な空間なのでしょう。
まとめ
各自治体では、ゴミ屋敷問題を取り締まるためにゴミ屋敷条例を設けています。
再三の注意を無視または改善が見られない場合に、行政による強制執行・強制撤去が実施されます。
また、ゴミ屋敷をそのまま放置しておくと、下記のような問題が発生してしまいます。
- 悪臭や害虫の発生
- 火災リスクが高まる
- ゴミが通行人の障害となってしまう
皆さんの住んでいる地域にもゴミ屋敷がある場合は、下記に挙げた2つの対策法を試してみてください。
- 行政に相談する
- 内容証明郵便で注意を促す
実際に行政に相談したり、内容証明郵便で注意を促し続けたりすることで、ゴミ屋敷問題の重大性を行政に知ってもらえます。
その結果、スムーズに行政代執行に移ってもらえることでしょう。