「ゴミ屋敷」と高齢者の「孤独死」は、どちらも社会問題になっています。
さらに近年では、高齢者のゴミ屋敷における孤独死が多発しています。
なぜ、ゴミ屋敷で孤独死してしまう高齢者の方が増えているのでしょうか?
また、親や近隣に住む高齢者がゴミ屋敷で孤独死することを防ぐためには、どうすればいいのでしょうか?
今回はそんな疑問を持っている方のために、高齢者がゴミ屋敷で孤独死する原因と対策について説明していきます。
コロナ禍で以前よりも孤独死は増え、大きな問題となっているので、他人事と捉えずに是非この孤独死の問題と自身も向き合ってみてください。
目次
近年、孤独死が増加中!
「孤独死」という言葉を聞いたことはありますよね。
孤独死という言葉に法律上の定義はまだありません。
従って、現状は「事件性がなく、誰にも看取られることなく屋内で死亡し、死後2日以上経過してから発見」などの状態を孤独死としています。
2日以上と言いますが、亡くなってから1ヶ月以上も経ってから見つかるケースも少なくなく、またこのコロナ禍でその深刻さは一層増していると言います。
孤独死が起きやすい要因は、
- 一人暮らし
- 持病がある
- 家族と音信不通
の3つが挙げられます。
これまでは一人暮らしでも定期的に家族など訪問してくれていたのが、コロナ禍でなかなか訪問や帰省が思うようにいかず、孤独死に繋がっているということも考えられます。
孤独死が起きやすいのは、寒暖差の激しい夏と冬とも言われています。
夏場は熱中症が起きやすいですし、冬場はお風呂上がりのヒートショックの心配があります。
そのため、寝室や風呂場で亡くなっていたという結果になっているのでしょう。
緊急事態宣言も明け、ワクチンの普及で以前よりは移動もしやすくなりましたが、まだまだ平常通りとはいかない今、小まめに連絡だけは取るようにしていきたいところです。
ゴミ屋敷と孤独死は関係している
一見ゴミ屋敷と孤独死は関連がないように思えますが、ゴミ屋敷を作り出す原因そのものが、孤独死になりやすい環境とも言えるのです。
孤独死とゴミ屋敷に、どのような相関性があるのかを説明していきたいと思います。
セルフネグレクト
セルフネグレクトというものをご存知でしょうか。
日本語で「自己放任」という意味で、自分自身の世話をしなくなる状態を指します。
例えば、生活環境や栄養状態が悪くても、それを改善しようという気力も失くし、周囲に助けも求めない状態などが当て嵌まります。
もっと具体的な例を挙げると、
- お腹が空いてもご飯を食べない
- トイレに行きたくなっても行かない
- お風呂に入らない
- 体調が悪くても病院に行かない
- ゴミの片付けもしない
などがあります。
身の回りのことを怠ってしまうので、家が乱れていき、ゴミ屋敷となってしまいます。
ゴミ屋敷で終わるならまだしも、食事や通院までしないので、そのままゴミ屋敷で孤独死してしまうケースが近年増えているのです。
セルフネグレクトとなる背景は家族などの近親者の死が関係している事例が殆どです。
体力や認知力の衰え
ゴミ屋敷を作り出してしまうのは、高齢者が6割以上と多くを占めているのですが、高齢者がゴミ屋敷を作りやすい理由は、体力や認知力の衰えが考えられます。
高齢になって体力や認知力が落ちると、自分で部屋の片付けをすることが困難になり、結果的に家がゴミ屋敷になってしまうケースが目立ちます。
また、体力や認知力が極端に低下してしまうと、食品の買い出しや、自力で食事をとることも難しくなってきてしまいます。
このような環境に置かれているのに、周りに家族などの助けてくれる人がいなければ、やがて食べ物がなくなってしまい、孤独死へと至ってしまうのです。
認知力の衰えで、困っているのに助けを求めることができないといった場合もあるでしょう。
子どもと離れて暮らしていること
親元から離れた場所に住んでいる子どもは、頻繁に親の住む家を訪ねられません。
特に、このコロナ禍では尚のことだと思います。
この場合、高齢の親がセルフネグレクトなどに陥って、一人で日常生活を送ることが困難になってしまっていても、すぐに気付かない可能性もあります。
酷い環境にいても、自分ではそれが異常だと気付けないケースもあるので、子どもと連絡が取れなかったり、実際の住居の様子が確認できない状態が長く続けば、知らないうちに親が孤独死してしまうといったことも起きうるのです。
ゴミ屋敷から孤独死が起きる一般的な流れ
ゴミ屋敷を作り出す人と孤独死は共通する背景がありますが、ゴミ屋敷になったからといっていきなり孤独死を迎えるわけでは当然ありませんよね。
どのような流れで、ゴミや市から孤独死へと流れ着いてしまうのかを見ていきたいと思います。
- ゴミ出しをしなくなる
- ゴミに囲まれていることに慣れる
- ゴミの中で急病または事故に遭う
- 部屋の中で起きている異変に気付かれず、死に至る
ざっくりとではありますが、このような流れでゴミ屋敷から孤独死へと移行してしまうケースが多いです。
1つずつ詳しく見ていきましょう。
ゴミ出しをしなくなる
ゴミ出しの日に定期的にゴミを出していれば、部屋にゴミが溜まっていくことはありません。
しかし、身体が思うように動かなかったり、精神的な問題が理由でゴミ出しが滞ってしまったら、次第に部屋は汚れていってしまいます。
「まとめて出そう」という気の緩みが、いつの間にかゴミ屋敷へとなっていってしまう場合もあるのです。
ゴミに囲まれていることに慣れる
人間とは不思議なもので、毎日見ている景色に段々と慣れていってしまいます。
他者が初めて家を訪れたらギョッとするような光景でも、その部屋で日頃生活をしていたら散らかったり、ゴミで溢れていても見慣れているため、問題視できない場合もあります。
そのため、危険な状況なのに、自分では気付いていないといったパターンも考えられます。
ゴミの中で急病または事故に遭う
実はゴミ屋敷に住んでいるということは、常に危険と隣合わせな状態です。
なぜかと言うと、高く積み上げられたゴミが住人に向かって倒壊する可能性も考えられます。
ゴミの倒壊で大怪我を負って動けなくなった場合、誰かに助けを呼べなければ、そのまま亡くなってしまうかもしれません。
また、ゴミ屋敷は火事になるリスクも高くなります。
部屋の中がゴミで埋もれていると、そのうちの一つに火がつけば、あっという間に家中に燃え広がってしまうことが予想されます。
更にゴミで足の踏み場がなければ、逃げ遅れてしまうことも有り得るでしょう。
部屋の中で起きている異変に気付かれず、死に至る
ゴミ屋敷の中で不慮の事故が起きても、誰もが異常だと分かる火事などでない限り、なかなか中で起きている異常に気付かれません。
人が亡くなったら郵便受けの荷物が溜まったり、異臭がしたりといった異常を知らせるサインがありますが、ゴミ屋敷の場合、いつでもその状態のため、近隣の住人も異変に気付きにくいのです。
そのため、倒れた際はまだ意識があっても、周りに助けを呼べないまま、やがて死に至ってしまうと言った悲しい事例も実際に起こっています。
ゴミ屋敷での親の孤独死を防ぐ方法
一人暮らしをしている高齢の親がいる方は、親が孤独死を迎えるなんてことがないよう対策を取っていきましょう。
ここでは、高齢の親の孤独死を防ぐ方法について説明していきます。
一人暮らしの親には頻繁に連絡する
親と離れた場所に住んでいる場合、親に何かあっても気付くのに時間が掛かってしまうかもしれません。
親と離れて暮らしているのであれば、日頃から頻繁に親と連絡を取る習慣をつけておくのがおすすめです。
食事は摂れているか、困っていることはないかなど丁寧に聞き取りもしておきましょう。
可能であれば定期的に訪問して、実際の住居の様子も把握しておくとより安心です。
万一、急に連絡が取れなくなった場合は、すぐに親の家に向かうことで、孤独死を回避できる可能性も上がります。
いずれにせよ、日頃から状況を把握しておくことが大切です。
必要に応じて介護施設などに入所させる
体力や認知力の低下などが窺え、親が自力で生活ができなそうだと判断した場合は、
- 一緒に住む
- 介護施設を利用する
- ヘルパーを依頼する
などを提案してみましょう。
親自身、自分の老後のビジョンがあるかもしれないので、極力尊重しつつ、安全を確保できるよう努めていきましょう。
適切な支援が得られれば、孤独死を避けることができるでしょう。
ゴミ屋敷の清掃業者に依頼する
ゴミ屋敷は衛生的ではありませんし、地震や家事が起きた際に、ゴミが邪魔で逃げ遅れるリスクもあります。
できたらすぐに、キレイに片付けるのが1番でしょう。
とはいえ、ゴミ屋敷を自力で片付けるのは大変なので、ゴミ屋敷の清掃業者に依頼してみるのもおすすめです。
ゴミ屋敷清掃業者に依頼すれば、手間なく業者のスタッフがゴミや不用品を回収してくれるので便利です。
ゴミ屋敷での近隣住民の孤独死を防ぐための方法
身内でなくても、誰かが孤独死したと聞くのは、あまり聞きたくないニュースです。
あなたの近所にも、もしかしたら孤独死する可能性がある高齢者がいるかもしれません。
ここでは近隣に住んでいる高齢者が、ゴミ屋敷で孤独死することを防ぐための方法について説明していきます。
ゴミ屋敷の存在を行政に通報
近年では多くの自治体で、ゴミ屋敷解消のための条例が出ています。
これは近隣住民の通報を受けて、行政の人間がゴミ屋敷に立入調査し、住人に片付けをするよう注意するというものです。
近所のゴミ屋敷の解消のためだけでなく、孤独死しかけている高齢者がいるかもしれないので、ゴミ屋敷を見つけたら行政に通報するようにしましょう。
郵便受けがいっぱいになっていたら大家さんに報告
身の回りの片付けができなくなると、郵便受けも乱れていきます。
郵便物の管理を行う余裕がなくなってしまうからです。
マンションやアパートなどの集合住宅で、ポストからはみ出るほどのチラシや新聞が、何日も放置されている部屋があったら要注意と思っていいでしょう。
もしかしたらその部屋の住人は、新聞やチラシを取りに行けないほど衰弱して、部屋のなかで倒れているかもしれません。
こういった部屋に気付いたら、大家さんや管理会社に連絡して異変を報告するようにしてください。
まとめ
近年、高齢者がゴミ屋敷で孤独死を迎えてしまうケースが増えてきているのが問題視されています。
一見関係がなさそうに思えるゴミ屋敷と孤独死ですが、その背景には「独居の孤立化」「セルフネグレクト」「体力や認知機能の衰え」など、共通している事項があることも分かっています。
当記事ではゴミ屋敷が孤独死に結びついてしまう背景などをお伝えして参りました。
一人暮らしをされている高齢者の方なら、誰がこのような事態に陥っても、決して不思議なことではないと思います。
だからこそ、どうすればいいのか対策を取っていく必要が出てきます。
高齢の親を持つ方は、頻繁に連絡して現在の状況を把握したり、必要に応じて介護施設に入所させるなどの対策を取るようにしていきましょう。
また、近隣に高齢者が住むゴミ屋敷がある場合は、行政や大家さんに報告することで、その方の孤独死を防ぐことができるかもしれません。
この記事で紹介した対策方法を参考に、高齢者のゴミ屋敷での孤独死を少しでも減らせる行動を意識して頂けたら幸いです。