当たり前の日常を送っていたはずの人の住まいが、なぜゴミ屋敷と化すのでしょうか。
ゴミ屋敷問題は、年代も性別も問いません。
なぜなら住宅のゴミ屋敷化には、心身の問題が大きく関係しているためです。
今回は、なぜゴミ屋敷になってしまうのか、そしてゴミを集める行動の裏にある理由を徹底解説します。
親族や友人知人宅、近隣住宅のゴミ屋敷問題ですでに悩んでいる人はもちろんのこと、現代社会を生きる誰もが知っておいて欲しい情報です。
目次
ゴミ屋敷を作り出す原因7選
ゴミ屋敷を作り出す大きな原因は大きく2つに分類できます。
一つは老化に伴う脳の病気や、体力の衰えによるものです。
加齢により引き起こされる身体の衰えによる、住宅のゴミ屋敷化です。
そしてもう一つは、心の不調に伴うゴミ屋敷化です。
こちらは年代を問わず、誰にとっても、いつ起きてもおかしくありません。
この記事では特に、心の問題に起因するゴミ屋敷問題の原因を7つみていきます。
ゴミ屋敷を作り出す心理的原因1:もったいない病
もったいないという言葉は、ノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイ氏によって「MOTTAINAI」と表現され、世界中で支持されている思想です。
物を大切にする気持ちを意味します。
しかしもったいない気持ちが度を越して、廃棄処分すべきものや手放すべきものまで溜め込むようになれば、住宅中に物が溢れゴミ屋敷になるのは時間の問題です。
もったいないから物を捨てられないと聞くと、戦後、物が十分に手に入らない時代を生きた人たちに多いイメージがあるのではないでしょうか。
ところが、実際には若年層でももったいないという思いに囚われて物が捨てられず、ゴミ屋敷予備軍になっている人や、すでにゴミ屋敷になっている人は少なくありません。
また、共感力が強い人ほど「まだ使える物を捨てるのはかわいそうだ。」という思いに駆られる傾向がみられます。
捨てるのが忍びない場合は、誰かに譲ったり、リサイクルや不用品回収業者に依頼するなどの方法で、手元に物を置きすぎない方法を採用する必要があるでしょう。
ゴミ屋敷を作り出す心理的原因2:ためこみ症
ためこみ症は、もったいない病と似ているようで全く異なります。
もったいない病は、まだ用途のあるものを捨てずにとって置く状態に対し、ためこみ症は明らかに不要で価値のないものも手放せません。
物を捨てることに対して非常に強い苦痛を感じるのです。
ためこみ症は、脳が損傷を受けたり、認知症や統合失調症、ADHD(注意欠陥多動性障害)等精神疾患の症状の一部として現れることがあると考えられてきました。
ただ最近の研究では、強い心理的ショックを受けたことが引き金になって、突如発生することがあることもわかってきています。
ためこみ症は物をためこむことで満たされてしまうため、自分が心の病を発症していることに気づけないまま、完全なゴミ屋敷になって初めて発覚するケースが少なくありません。
- 無秩序に、目についたもの全てを溜め込む
- 廃棄することに猛烈な嫌悪感を抱いたり、苦痛を感じる
上記の症状がみられる場合は、ためこみ症を疑い、専門の医師に相談することが大切です。
ゴミ屋敷を作り出す心理的原因3:買い物依存症
買い物は、ストレス解消の有効なツールの一つです。
衝動買いをすることで、一時的にストレスによって欠けた心の隙間が埋まり、満たされた気持ちになることもあるでしょう。
しかし時間が経つと、買い物という行為自体を欲するようになり、必要か否か問わず手当たり次第買い物をする状態なら、買い物依存症に陥っている可能性が考えられます。
買い物依存症の場合、必要でない物まで購入するため、開封もせず室内に放置される物が増えていきます。
そしてストレスによって心理的活力を失っているため、片付ける意欲も起きません。
部屋を片付けたり、不要な物の行き先を決めたりといった行動ができないまま、次々に物を買い込み室内に溜め込む、この悪循環が続けば、ゴミ屋敷化に向けてまっしぐらです。
こういった症状がある場合は一人で抱え込まず、まずは親しい人や専門家に心に溜まった思いを打ち明けることが大切です。
そして悩みを打ち明けることから徐々に、物を片付ける方法を探ってみましょう。
ゴミ屋敷を作り出す心理的原因4:強烈な孤独感
住宅をゴミ屋敷にしてしまう人は、強烈な孤独感に囚われている傾向がよくみられます。
- 一人暮らし
- 人との交流がない
- 経済的な不安が強い
- 大切な物や人を失った
喪失感や孤独を強烈に恐れる気持ちから、物を手放せなくなり、気づけばゴミ屋敷になっているケースです。
空間を物理的に埋めることで、心を充足させようとする依存症の一種といえます。
- 本意ではないままに一人暮らしをしており、社会との接点も少ない
- 親しい人との離別や死別を経験した
心身がすでに弱っている時に起きた別れや、あまりに大切な存在を失った場合には、心が状況の変化に追いつけないこともあります。
その場合、本来であれば依存すべきではないもの、例えば廃棄すべきゴミや不用品に依存する心理状態に陥る可能性もゼロではありません。
ゴミ屋敷を作り出す心理的原因5:セルフ・ネグレクト
心の状態が健全であれば、ゴミの中で生活するなどとても耐えられないと感じるでしょう。
衛生的な生活を送ることは、人間の根本的欲求の一つだからです。
しかし強いストレスによって心の状態が不安定になっている場合、食欲を失ったり眠れなくなるのと同様、生活環境を衛生的に整えたいという欲求を失うことがあるのです。
これを、自分自身の安全で健康的な状態を維持する意欲の欠落という意味で「セルフ・ネグレクト」と呼びます。
うつ状態の一種と言えるでしょう。
過労や心理的なショックで、生活の質を求める意欲を失うことは誰にでも起こり得ます。
ただその状態があまりにも長く続き、室内にゴミ屋敷の兆候が現れる場合は、第三者の助けが必要です。
ゴミ屋敷を作り出す心理的原因6:潔癖症
潔癖症と聞くと、几帳面に清掃しすぎる人のイメージがあるのではないでしょうか。
もちろん、清掃しすぎるほど衛生環境にこだわるタイプの潔癖症の方もいます。
その反面で、不衛生と感じる物に触れることが耐え難い苦痛と感じ、室内の清掃や、ゴミの片付けができないケースもあります。
その結果、室内からゴミが排出されないため、ゴミ屋敷の道をたどるより他ありません。
ゴミや不用品を捨てるために、それらに触れることも苦痛な場合、まずは室内からゴミや不用品を排出する方法を見つけることから始めます。
本人も交えて、本人が対応可能な方法でゴミを捨てるための仕組みを、構築するよう話し合う必要があるでしょう。
ゴミ屋敷を作り出す心理的原因7:完璧主義
真面目で完璧主義な性格の人ほど、住宅をゴミ屋敷化させる恐れがあります。
- 病気や怪我がきっかけで、収集日の朝にゴミを出すことが難しい状況に陥った
- 仕事や生活のリズムの都合で起床時間が遅く、ゴミ出しが難しい
- 心理的に参っており、物が片付けられないサイクルに陥っている
自分一人で物事を行うことが難しい場合は、誰かの協力を仰ぐのが正解です。
しかし、自分のことは自分でなんとかしなければならない、という真面目な気持ちが強い人の場合、一人で全てを抱え込んだ結果、住宅がゴミ屋敷になる恐れがあります。
この場合、室内にゴミが溢れていく状態を、良く思っていないケースを多々見受けます。
ところがそれと同時に、室内がゴミで溢れていくことは、完璧にできない自分への罰であるかのようにも感じているのです。
そのため誰かに助けを求めることなく、より一層自分自身で解決しなければならないと思い込むことで自分を追い詰め、事態を悪化させることも少なくありません。
自分一人で処理しきれないほどゴミが増えてしまったのなら、業者に助けを求めましょう。
ゴミ屋敷清掃業者なら特殊清掃の技術もあり、室内の清掃も依頼できます。
ゴミを全て排出し、元の室内に戻してから、再度生活を作り直せば良いのです。
プロのゴミ屋敷清掃業者や遺品整理業者の力を借りれば、あっという間にリセット可能です。
ゴミ屋敷解決のコツは心の状態を変える3ステップ
ゴミ屋敷になる大きな要因は、心の健康状態にある事が分かったと思います。
しかしゴミ屋敷の住人本人が自分の心の不調に気づき、それを治療しようと向き合うことは容易ではありません。
特に一人暮らしの場合、自分の心が不調をきたしていることに気づくこと自体が困難ですし、それを第三者が指摘すれば、却って心を閉ざしてしまう恐れもあります。
焦らずじっくりと、ゴミ屋敷の改善に向けて歩みを進める3つのステップを紹介します。
ゴミ屋敷解消のステップ1:ゴミ屋敷の住人の思いの丈を聞く
まずは、ゴミ屋敷の住人の思いの丈を聞きましょう。
ゴミ屋敷の住人がどんな思いでいるのか、心の状態を理解することが大切です。
この時「なぜゴミ屋敷にしたのか。」等と責めてはいけません。
傾聴の姿勢だけで対処します。
ただ、ゴミ屋敷の住人が親族や友人知人でない場合、話を聞くこと自体が困難です。
そんな時は、自治体に相談するようにしましょう。
今はゴミ屋敷条例を制定している各自治体が増えています。
またゴミ屋敷問題は、地域を巻き込んだ火災などの事故に繋がる恐れがあるため、ゴミ屋敷条例を持たない自治体でも、相談に乗ってくれるでしょう。
ゴミ屋敷解消のステップ2:清潔な住宅を体験してもらう
ゴミ屋敷の住人が親族や親しい関係の人の場合は、清潔で整ったホテルなどで一時的に生活してもらうことを検討してみましょう。
ゴミだらけの状況を離れ、人としての尊厳が守られた衛生的で安全な空間で生活することを体験することで、ゴミ屋敷は不快であることに気づいてもらうための対策です。
視点をゴミ屋敷から動かすことで、自分の置かれた状況を客観視することが、清潔な生活を取り戻す原動力に繋がる可能性があります。
ゴミ屋敷解消のステップ3:ゴミ屋敷を捨てる仕組みを作る
室内を埋め尽くすゴミを排出し、清潔で衛生的な暮らしを取り戻しましょう。
個人で片付けるのが困難な場合は、ゴミ屋敷清掃業者などの力を借りて、一気に片付けてしまいましょう。
室内のゴミを撤去してリセットしたら、ゴミを溜め込まない仕組みを作ります。
- ゴミを捨てる場所を決める
- 物を整理して置き場を決める
- ゴミ箱のサイズを大きくする
- ゴミ箱の数を増やす
- 捨てるものと取っておく物の基準を定める
- 自治体の収集日にゴミを出せる無理のない仕組みを作る
もう2度とゴミ屋敷にしないために、ゴミとゴミでない物を分別し、ゴミは決められた日に住宅から排出する仕組みを作りましょう。
まとめ
ストレス社会と叫ばれる昨今、誰もが日々、強烈なストレスにさらされています。
「自分に限っては大丈夫。」という過信は禁物です。
すでに弱っている心に、孤独感や喪失感が襲い掛かれば、あっという間に心の健康を失いかねません。
だからこそ、ゴミ屋敷になってしまったとしても、自分一人で抱え込む必要はないこと、自分を責める必要はないということを知っておいてください。
ゴミ屋敷状態に陥った時は、まず早急に状況をリセットしましょう。
状態によってはゴミ屋敷清掃業者などの力を借り、暮らしを元の状態に戻し、生活を立て直す方法を確立してください。
そして一刻も早く心身の健康を取り戻される事を願っています。