家がゴミで溢れるゴミ屋敷は、常に悪臭やハエ、害虫などの問題がつきまといます。
ご近所トラブルに発展するケースも少なくありません。
しかし、今の日本にはゴミ屋敷問題を規制する法律はありません。
一方、在宅勤務者の増加やネットでの出前サービスの普及に伴い、ゴミ屋敷の件数は増加傾向にあると言われています。
この状況を改善するために、地方自治体の中には独自に「条例」という形でルールを定める地域も増えてきました。
愛知県名古屋市でも、ゴミ屋敷に対処するための条例を独自に定めています。
この記事では、名古屋市のゴミ屋敷に関する条例(名古屋市住居の堆積物による不良な状態の解消に関する条例)の内容を説明します。
また、ゴミ屋敷の抱えるリスクなどについて詳しく解説していきます。
目次
ゴミ屋敷の抱えるリスク
ゴミ屋敷内にはゴミが大量に蓄積されるため不衛生な状態が続きます。
ゴミ屋敷住人に悪影響を与えます。
また、近隣住民の生活面や衛生面においても悪影響を与えるリスクがあります。
ゴミ屋敷の抱えるリスク①異臭の発生
ゴミ屋敷問題の中で最もご近所トラブルになりやすいのが、異臭の問題です。
特に夏場は湿度が高くなるため、食べ物が腐りやすく、臭いもきつくなる傾向にあります。
臭いは目には見えません。
ですが、不快感を継続的に与える可能性があります。
そのため、生活の質を著しく下げてしまうリスクがあります。
ゴミ屋敷の抱えるリスク②火災の発生
ゴミ屋敷に大量にゴミが蓄積しているほど、火災が発生した時に燃えるものが多いため火の回りが早くなります。
その分、火災発生リスクも上がります。
特にゴミ屋敷の外にまでゴミが堆積している場合は放火を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。
ゴミ屋敷の抱えるリスク③ゴミの不法投棄を招く
ゴミ屋敷の外にまでゴミが溢れ出している場合、その付近はゴミが溜まりやすくなると言われています。
最初は小さなゴミが置かれるようになり、次第に家電など大型の不用品が置かれます。
やがては、不法投棄につながっていきます。
不法投棄が増えると治安の悪化が懸念されます。
もし、ご自宅近くにゴミ屋敷がある場合は、事前に警察に以下のことを伝えておくと安心です。
- 定期的な見回り
- 治安悪化の疑いがある
ゴミ屋敷の抱えるリスク④害虫、ネズミなどの発生
一度、害虫やネズミがゴミ屋敷内に発生すると、その被害はゴミ屋敷の付近の家々にまで及びます。
蚊やハエなどが発生することにより、周囲が不衛生な環境になるリスクがあります。
ゴミ屋敷の抱えるリスク⑤道路の通行障害
以下のように、周囲の歩行や視界を妨げ道路の通行障害とるケースがあります。
- ゴミ屋敷の中には屋外にゴミが堆積する
- 雑草や木の手入れを怠たる
歩行を困難にしたり、交通事故のリスクも上がる可能性があります。
名古屋市のゴミ屋敷条例とは?
名古屋市では、ゴミ屋敷を規制するための独自のルールとしてゴミ屋敷条例と呼ばれる「名古屋市住居の堆積物による不良な状態の解消に関する条例」を制定しています。
この条例は、平成30年4月から施行されています。
名古屋市のゴミ屋敷条例の特徴とは?
名古屋市のゴミ屋敷条例の特徴は、「行政代執行」を市が保有していることにあります。
「行政代執行」とは、ゴミを強制撤去する権利のことです。
全国でゴミ屋敷条例を制定している自治体は多いものの、ゴミの強制撤去については以下の議論もあります。
- 財産権の問題
- 個人の自由の問題
- ゴミを片付けるのに税金を使うのか
そのため、最終措置である「行政代執行」を含めて条例を制定している自治体は少ないのです。
名古屋市ゴミ屋敷条例による対応の流れ①市民からの相談・連絡
名古屋市在住の市民から、ゴミ屋敷に関する相談や通報を名古屋市役所が受けることにより、ゴミ屋敷条例による対応は始まります。
逆を言えば、市内に誰もが知るゴミ屋敷があったとしても、市民からのクレームや相談がない限り、名古屋市としてゴミ屋敷の対応に動くことはできません。
もしお住まいの近くにゴミ屋敷がある場合は、近くの役所へまずは相談してみましょう。
名古屋市ゴミ屋敷条例による対応の流れ②立入調査
ゴミ屋敷の近隣住民からクレームや相談があると、その実態を把握するため、名古屋市役所職員がゴミ屋敷の立入調査を行います。
立入調査に応じようとしない場合、名古屋市は過料を科すことができます。
立入調査では、以下の事などを確認します。
- ゴミの堆積物の内容や量
- 周囲に及ぼしている影響
多くの自治体では、この立入調査の際にゴミ屋敷住民と面会します。
その時、生活状況のヒアリングを行います。
老化や身体障害などが原因で自力でゴミが出せない場合、福祉施設やボランティア団体などを紹介することで根本的解決を目指します。
名古屋市ゴミ屋敷条例による対応の流れ③助言・指導
立入調査を踏まえて正式にゴミ屋敷と名古屋市で認定されると、清掃や改善のための助言や指導が行われます。
この助言や指導は一度だけではありません。
改善されるまで行われるため、場合によっては数年かかることもあります。
名古屋市ゴミ屋敷条例による対応の流れ④勧告
複数回に及ぶ助言や指導にも従わない場合、名古屋市より期限を定め、改善を促す勧告が行われます。
名古屋市ゴミ屋敷条例による対応の流れ⑤命令
勧告に従わない場合、名古屋市は有識者の意見を聴いた上で、ゴミ屋敷住人に対して改善のための命令を出す事ができます。
命令に背いた場合には、名古屋市は過料を科すことができます。
名古屋市ゴミ屋敷条例による対応の流れ⑥行政代執行
命令にも従わない場合、名古屋市は有識者による審議会を開きます。
意見を聴いた上で、ゴミ屋敷条例の最終措置である「行政代執行」を施行することができます。
行政代執行が施行されると、名古屋市はゴミ屋敷に堆積しているゴミを強制的に撤去することができます。
まとめ
この記事では、名古屋市のゴミ屋敷に関する条例(名古屋市住居の堆積物による不良な状態の解消に関する条例)の内容や、ゴミ屋敷の抱えるリスクなどについて解説しました。
ゴミ屋敷問題は、ただゴミを片付ければ済むという話ではありません。
ゴミ屋敷を生み出してしまっている住人の環境や状況を配慮する必要があります。
様々なサポートを通して改善を図っていく必要があるのです。