賃貸物件で身内が孤独死した際、賃貸契約を解除して部屋を明け渡すには原状回復が必要です。突然の連絡に慌てないために、孤独死が起きたときの対処法や原状回復にかかる費用の相場を知っておきたいと思う方もいるでしょう。
この記事では以下のような疑問にお答えします。
- 孤独死の原状回復費用の相場は?
- 孤独死が起きたらどうしたらいい?
- 身内が孤独死したことで、損害賠償を請求されることはあるの?
孤独死の原状回復費用について、国土交通省が公表しているガイドラインや過去の判例などをもとに詳しく解説しますので参考にしてください。
目次
孤独死の現場で原状回復が必要になる理由
ほとんどの賃貸契約では、借り主に原状回復義務を課しています。原状回復義務とは部屋を返すときに故意や過失などによるダメージがあれば復旧する義務のことです。通常通りに部屋を使用し、退去するだけであれば原状回復は不要なためそれほど問題になりません。
しかし、孤独死の場合、たとえ老衰や病気による自然死であっても発見が遅れるとひどい汚れや臭い、ウイルス、細菌、害虫の発生などが起きてしまいます。これらは通常の使用による建物へのダメージとはいえないため、原状回復が必要になります。
原状回復のガイドライン
原状回復をめぐって借り主と貸し主がトラブルになることが多かったため、国土交通省では「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公表し、原状回復が必要になるケースの考え方を示しました。ここではガイドラインを参考に、原状回復の法的義務や対応範囲について紹介します。
原状回復の法的義務
国土交通省のガイドラインでは、借り主の原状回復が必要になるケースを故意・過失、善管注意義務違反、通常の使用を超えるような使用によって建物の価値が減少した場合と定めています。
また、経年劣化や建物を使用することによるダメージなどは賃料に含まれているとして、原状回復義務はないとされています。さらに原状回復が必要なダメージも一部は経年劣化と考えられるとして、居住年数に応じて原状回復費用を負担すればよいとしました。
原状回復を負う人
一般的に孤独死の片付けにかかる費用は、特殊清掃や遺品整理などで数万円から数十万円です。持ち家の場合は所有者、所有者が亡くなっているときは原則として法定相続人が費用を負担します。
賃貸物件において、原状回復の義務があるのは借り主または連帯保証人です。借り主が亡くなってしまった場合は、法定相続人が賃貸契約とともに原状回復義務も引き継ぎます。ただし、借り主の遺産や保険金から払えることもあるため、資産状況を確認するとよいでしょう。
法定相続人が相続放棄し、連帯保証人もいないケースでは保険会社や保証会社が原状回復費用を負担します。保険会社や保証会社を利用していなければ、大家や不動産会社が支払うこともあります。
一般的な原状回復の範囲
一般的に原状回復が必要な範囲とは借り主に落ち度がある傷や汚れです。たとえば以下のようなものが当てはまります。
- ものを落としたことによってついた傷やへこみ
- たばこのヤニ汚れ
- ペットがつけた傷
- 手入れ不足によるカビ
畳やクロスの日焼け、画鋲の穴などは経年劣化や通常損保とされるため、借り主の負担にはなりません。また、原状回復義務があるケースでも居住年数に応じて貸し主との負担割合が計算されるため、借り主は原状回復費用の一部を負担するだけでよいこともあります。
特殊なケースにおける原状回復の範囲
孤独死などの特殊なケースでも原状回復の範囲の考え方は同様です。部屋の汚れを取り除き、また使えるようにする費用は借り主またはその法定相続人や連帯保証人が負担する必要があります。
特に自殺やゴミ屋敷は借り主に一定の落ち度があったと考えられるため、大家や不動産会社が借り主の相続人などに原状回復費用を請求することも可能です。ただし、居住年数に応じた負担割合の考え方により大家も一部負担する必要があるため、原状回復にかかった費用の全額を請求されることは基本的にありません。
一方で自然死の場合は、入居者に故意・過失があったとはいえないため、原状回復費用を遺族や相続人に請求することは難しくなります。
原状回復など孤独死発生に伴う費用相場
孤独死が発生すると原状回復に多くの費用がかかります。金額は現場の状況によってばらつきが大きいため、実際どれくらいかかるのか気になる方は多いでしょう。ここでは原状回復に必要な特殊清掃と遺品整理に分けて、作業内容や部屋の間取りごとの費用相場を紹介します。
特殊清掃の費用相場
特殊清掃にかかる費用は1日あたりの人件費に加えて、作業内容によって変動します。人件費の相場は1人につき20,000円、作業内容に応じた費用の相場は以下の通りです。
- 床上清掃:30,000円
- 床下切断:35,000円
- 浴槽清掃:80,000円〜100,000
- 浴槽の消臭:30,000円
- オゾン脱臭:30,000円
- 汚物撤去:20,000円
- 害虫駆除:10,000円
孤独死の発見が遅れた場合など、作業内容が多い・作業範囲が広いケースでは特殊清掃の費用が高くなります。
遺品整理の費用相場
遺品整理の費用は部屋の広さや荷物の量によって異なります。以下は間取り別の遺品整理費用相場です。
- 1R・1K:30,000円〜100,000円
- 1DK~3LDK:50,000円~400,000円
- 4DK以上:200,000円〜600,000円
同じ間取りでも広さや荷物の量などによって作業に必要な人数や時間が異なるため、かかる費用には幅があります。遺品整理費用が相場より高くなりやすいのはタンスや収納家具にぎっちりとものが詰まっている、またはゴミ屋敷になっているケースです。一方、生ゴミや大型の家具などの処分が終わっていたり、一人暮らしでそもそも荷物が少なかったりするケースでは相場より費用を抑えられることが多くなります。
孤独死で損害賠償が発生した判例
結論からいうと、基本的に孤独死で遺族に損害賠償が請求されることはありません。特に老衰や病気、事故などによる自然死や不慮の死は入居者に非があるとはいえないため、特別な事情がない限り相続人や連帯保証人が損害賠償請求されることはありません。
ただし、自殺が原因の孤独死の場合は、過去に損害賠償が発生した判例があります。たとえば東京都世田谷区の単身者向けアパートの1部屋で入居者が自殺した事例では、借り主の相続人ならびに連帯保証人に対して約132万円の支払いを命じました。該当の部屋ならびに隣接する3部屋について、賃料を減額したことによる逸失利益が認められたためです。
また、神奈川県の学生向けマンションで自殺が起きた事例では、借り主である入居者の親に対して逸失利益、原状回復費ならびに供養費用として155万円の支払いが命じられました。
特殊なケースとはいえ、孤独死の原因によっては損害賠償が発生することもあります。
孤独死への対応の注意点と業者の選び方
孤独死が起きてしまったときは、できるだけ早く清掃や片付けを始めましょう。時間が経つと汚れや臭いが落ちにくくなったり、汚染が広がって対処が難しくなったりすることに注意が必要です。
ただし、急いでいても信頼できる業者を選ぶことが大切です。安くても作業品質の低い業者に依頼すると、やり直しが必要になり時間やお金を無駄にしてしまうことも考えられます。
また、業者によって対応可能な範囲や得意とする分野が異なります。依頼する前に実績やレビューをチェックするとよいでしょう。 過去の実績が紹介されていれば、特殊清掃だけでなく、遺品整理も依頼できるかなどが確認できます。また、利用者からよい口コミが多い業者は信頼できる可能性が高いといえます。
まとめ
賃貸物件で孤独死が起きたときは部屋がひどく汚染されるため、原状回復が必要になります。原状回復の義務があるのは部屋の借り主やその法定相続人、連帯保証人などです。ただし、相続放棄が行われたときや親族が見つからないときなどには大家や不動産会社が原状回復することもあります。
なお、通常孤独死で遺族が損害賠償を請求されることはありません。しかし、原状回復のための特殊清掃や片付けをせずに放置すると対処が難しくなるため、できるだけ早く信頼できる業者に依頼することが大切です。
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