兵庫県加東市ではゴミ屋敷に関する条例は、以下の2つの条例が関連条例だと考えることができます。
加東市廃棄物の処理及び清掃に関する条例
加東市良好な環境の保全に関する条例
これらがどのような条例なのか、ゴミ屋敷の防止に役立っているのか見てみましょう。
兵庫県加東市のゴミ屋敷対策について
兵庫県加東市では、以下の二つの条例でゴミ屋敷問題をカバーしようとしています。
- 加東市廃棄物の処理及び清掃に関する条例
- 加東市良好な環境の保全に関する条例
ただし、条例の名称からも分かるように、これらの条例は決してゴミ屋敷対策だけの条例ではありません。
ゴミ屋敷を含めた、廃棄物の処理や環境の保全に対しての条例となります。
そこで、加東市の上記条例にてゴミ屋敷に該当する部分をご紹介します。
加東市廃棄物の処理及び清掃に関する条例・第3条
「市民の責務」の条項で、廃棄物は自ら適正に処分すること、そして加東市の施策に協力することが明記されています。
こちらは、自分の家屋をゴミ屋敷にさせないことを最終目的として、ゴミの分別ルールを守らせるための条項です。
決してゴミ屋敷に対しての直接的なアプローチではありません。
しかし、この項目を遵守することでゴミ屋敷を未然に防ぐことができます。
加東市廃棄物の処理及び清掃に関する条例・第5条
こちらの条項は市民ではなく、市長の責務が明示されている条項です。
廃棄物の適正な処理を図ることが明文化されています。
ですから、もしも加東市にてゴミ屋敷が発見された場合には、市長として適正な処理が求められます。
加東市廃棄物の処理及び清掃に関する条例・第6条
清潔維持の義務を謳った条例です。
加東市では土地や建物の占有者は、常にその土地又は建物を清潔に保つよう努めなければならないと記載されています。
つまり、ゴミ屋敷化はこの条文違反になると考えることができます。
加東市廃棄物の処理及び清掃に関する条例・第8条
ゴミについて自ら処分することや適正に分別することが盛り込まれている条項です。
2項では、廃棄物の飛散・流出を防ぎ、かつ悪臭が発散しないよう努めることが定められています。
ゴミ屋敷はこちらの条項にも抵触します。
加東市良好な環境の保全に関する条例・第4条
市長は市民にとって良好な環境を確保するために、市民の生活を阻害する要素の排除施策を講じ、生活環境の保全に努めなければならないことが記載されています。
ゴミ屋敷もこちらに該当すると考えてよいでしょう。
加東市良好な環境の保全に関する条例・第6条
この条項では、定めた条例を違反している者の監視を行い、環境を著しく阻害していることが認められた場合には公表するとあります。
ゴミ屋敷の苦情が寄せられ、監視して問題だと判断した場合にはゴミ屋敷の所有者を公表すると考えられます。
加東市良好な環境の保全に関する条例・第7条
市長は良好な環境の侵害に関する苦情が寄せられた場合、他の行政機関と協力し、迅速・適正な処理を図るよう定められています。
ゴミ屋敷に関して市民から苦情が寄せられた場合、市長として適切な対応を取ることが求められています。
加東市良好な環境の保全に関する条例・第45条
こちらは空き地の適正な管理を求めたものです。
ゴミ屋敷ではありませんが、空き地のゴミが近隣住民に迷惑をかけているケースもあります。
その場合には、市長として違反是正の勧告・命令を出すことができます。
加東市良好な環境の保全に関する条例・第55条
住民は自らの土地や建物について、清潔を保ち、地域の景観を害さないよう環境美化に努めなければなりません。
つまり、加東市のゴミ屋敷は、この条項違反だと考えることもできます。
加東市の条例違反者に対しての罰則は?
加東市廃棄物の処理及び清掃に関する条例に関しては罰則が規定されていません。
あくまで努力義務となっています。
一方、加東市良好な環境の保全に関する条例に関しては罰則が定められています。
ただし、先に挙げたゴミ屋敷に関連するであろう条項に対しては罰則が定められていません。
そのため、こちらも努力義務となっています。
兵庫県加東市のゴミ屋敷の件数
兵庫県加東市は、2018年の報告では市域に2件のゴミ屋敷が確認されています。
市民からの通報によるものなので、あくまでも行政が把握している件数です。
同じ兵庫県内では、2016年の神戸市では105件のゴミ屋敷が確認されています。
人口が異なるので一概に比較はできませんが、ゴミ屋敷の件数だけを見ればまだあまり多くないと言えるでしょう。
兵庫県加東市の条例は果たしてゴミ屋敷問題を解決できるのか
加東市では、ゴミ屋敷に特化した条例ではなく、ゴミ屋敷を含めた包括的な条例で対策することを考えているようです。
このタイプの条例でゴミ屋敷対策を考えている地域は加東市以外にも多くあります。
包括的な条例にてゴミ屋敷に対応する場合の問題点が、以下のようにいくつか指摘されています。
ゴミ屋敷の住居者支援策が盛り込まれていない
加東市の条例では、環境の維持・美化に違反しないよう条例が定められています。
そのため、加東市市民はゴミ屋敷にならないよう努める責任があります。
罰則こそありませんが、条例の順守は市民の義務です。
しかし、条例はあくまでもゴミ屋敷となっている家屋に対してのルールとなっています。
つまり、居住者への支援策はありません。
他の自治体では、ゴミ屋敷関連条例に基づいて行政代執行を行ったものの、結局数カ月後、または数年後に元に戻ってしまったケースもあります。
再発防止のためには清掃業務だけではなく、所有者や地域が再度ゴミ屋敷に戻らないための支援も重要です。
残念ながらいまのところ加東市の条例には、ゴミ屋敷所有者に対する支援策は見当たりません。
罰則が盛り込まれていない条例
加東市ではゴミ問題を包括した条例こそ制定されているのですが、罰則がありません。
罰則がなくとも「条例だから」と遵守してくれる市民もいるでしょう。
しかし、罰則がないので破っても咎められないと解釈する市民もいるかもしれません。
いわゆるゴミ屋敷条例と比べると大雑把
他の自治体が制定している、もっと直接的にゴミ屋敷にターゲットを当てた条例はゴミの撤去までのプロセスや行政代執行を行った場合の費用の請求先、さらには支援策など、きめ細かく設定されています。
つまり、ゴミの撤去だけが目的ではないのです。
撤去を行うことで住居者の環境を変え、再発を防止するのが目的となっています。
しかし加東市の条例はこのようなプロセスは設定されていません。
その点では、他の自治体のゴミ屋敷条例と比較すると、抜本的な対策がなされているとは言えないでしょう。
条例はその時の状況に応じて変わるもの
加東市の条例では、ゴミ屋敷に関してきめ細かいサポートが難しいのではないかとの指摘もあります。
しかし、条例は改正できるものです。
加東市では2018年、2件のゴミ屋敷しか確認されていません。
ですから、加東市側としては現状の条例だけで十分との判断かもしれません。
今後、ゴミ屋敷が増加し、既存の条例でのカバーが難しいと判断された際には、他の自治体同様、もっと直接的なゴミ屋敷条例を制定する可能性もあります。
兵庫県加東市の条例にみるゴミ屋敷問題
兵庫県加東市のゴミ屋敷を包括している条例をチェックしてみました。
ゴミ屋敷問題は、地域によってそれぞれ異なるものです。
その土地の人口、風習、生活環境等によって適切な処置は変わります。
そのため、直接的なゴミ屋敷条例ではなく、包括的な条例での対応だからといって、決して悪い訳ではありません。
今後どのような形になるかは、加東市のゴミ屋敷の動向次第です。
今後も大きな問題となることなく、現状の条例のみで対応できるのであれば、いわゆるゴミ屋敷条例を制定する必要性は薄いでしょう。
より一歩踏み込んだ、専門的な条例が必要だと判断された場合には、加東市でも罰則やアフターケアまで踏み込んだゴミ屋敷条例を制定する可能性があるかもしれません。