「10年以上住み続けると退去費用がかからないと聞いたけど本当?」「キッチンの汚れは経年劣化に認められる?」と退去が迫ってくるほどに具体的な費用が気になるのではないでしょうか。
ある程度の不具合や汚れは経年劣化と考えられるため、居住期間に応じて退去費用が安くなる仕組みがあります。ただし、カビやタバコによる汚れなど、借り主が負担しなくてはいけないケースもあります。
この記事では10年住んだアパートの退去費用について、相場や費用を抑えるコツなどを紹介します。特にカビやタバコの汚れでお悩みの方はぜひ参考にしてください。
目次
そもそも退去費用とは何か
退去費用とは、賃貸物件を退去する際に借り主が大家または管理会社に払う費用のことです。入居時に預けた敷金から退去費用を差し引く契約になっている場合は、基本的に退去費用を求められることはありません。
ただし、敷金不要の物件や、敷金だけでは不足する場合には契約に従って退去費用を請求されることもあります。
退去費用は原状回復費用とハウスクリーニング費用
一般的に退去費用といわれるものの内訳は、原状回復費用とハウスクリーニング費用です。原状回復費用とは、賃貸物件の居住中に発生した建物価値の減少のうち、借り主に責任があると考えられるものを復旧するための費用です。
一方で、経年劣化に相当する部分は大家の負担とすることが国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で決められています。
ハウスクリーニング費用とは、大家が次の借り手に貸せる状態に戻すために専門業者に依頼して部屋の中をきれいにする費用のことです。費用は部屋の広さや間取りによって変動します。物件によっては賃貸契約の中で一定のハウスクリーニング費用が決まっていることもあります。
賃貸物件の退去費用に関する基本的な考え方
一般的にどういったケースが借り主負担の退去費用になるのか、貸主負担となるケースは何か解説します。
経年劣化や通常損耗の回復費用は貸主負担
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、経年劣化や通常摩耗による建物価値の減少は貸主が負担すべきとされているため、基本的には借り主が負担する必要はありません。
経年劣化や通常損耗の原状回復にかかる費用はすでに家賃に含まれていると考えられるためです。
ただし、特約記事項などの形で、個別に契約書内で原状回復費用について定めている場合は例外として、契約書の内容に従います。
故意・過失による傷や汚れの回復費は借り主に請求される
借り主の不注意で建物に発生したダメージについては、元に戻すための費用を借り主に請求するのが一般的です。例えば以下のケースでは借り主が負担すべきとされる可能性が高いといえます。
- 引っ越し作業中にタンスをぶつけたことによる壁のへこみ
- ソファを引きずったことによるフローリングの傷
- 結露を放置したことによるカビ
- タバコによるクロスの黄ばみ
退去費用を抑えるためには、家具や設備の取り扱いに注意し、室内や設備の掃除・手入れを怠らないことが大切です。
賃貸物件にカビが生えたときの退去費用は誰が負担する?
賃貸物件にカビが生えてしまった場合、借り主が退去費用を求められるのが一般的ですが、状況によっては原状回復費用を貸主が負担することもあります。ここでは賃貸物件にカビが生えたときの退去費用の考え方を紹介します。
カビが生えた理由によっては貸主負担になることも
賃貸物件でカビが生えた場合、借り主の努力では避けられないと考えられるケースであれば貸主の負担になります。
具体的には、物件に構造上の問題があってカビの発生を避けられないようなケースです。次のような環境で発生しているカビは物件の構造上の問題とみなされます。
- 雨漏りや漏水によるカビ
- 備え付けの換気扇の故障により浴室で発生したカビ
- 窓がない、もしくは開かないなど換気ができない部屋で発生したカビ
- コンクリート打ちっぱなしタイプの物件に発生したカビ
物件の築年数が古く修繕がなされていないような場合、 窓がない・換気扇などが故障しているといった構造・設備が原因であれば、構造や物件の状態に問題があると証明しやすいです。
また、新しい物件であっても、コンクリート打ちっぱなしタイプの建物だと湿気が溜まりやすくカビが発生しやすい構造です。
ただし、雨漏りや漏水、換気扇の故障などのトラブルを速やかに貸主へ報告せずに放置したときには、借り主にも責任があると考えられるため、退去費用を請求される可能性があります。
アパートの退去費用は長く住むと安くなる
同じアパートに10年以上住み続けていれば、どんなに気をつけていても室内が汚れたり設備が故障したりするのは避けられません。そのため、アパートの居住期間に応じて退去費用が安くなる仕組みがあります。
ここでは退去費用を決めるうえで基準となる居住期間に応じた借り主の負担割合や設備の耐用年数などについて紹介します。
居住期間に応じた経年劣化が認められる
10年住んだ場合は、それより短い期間住んだ場合よりも、汚れ・傷が多くて当然と判断されます。
国土交通省のガイドラインでは、設備の耐用年数と居住期間による借り主の負担割合を以下のように定めています。
【耐用年数6年の場合】
居住期間 | 借り主の負担割合 |
1年未満 | 85%〜100% |
1年〜2年 | 65%〜85% |
2年〜3年 | 50%〜65% |
3年〜4年 | 35%〜50% |
4年〜5年 | 15%〜35% |
5年〜6年 | 0%〜15% |
6年以上 | 0% |
長く住むほど負担割合は少なくなるため、同じアパートに10年住むと短期間で引っ越した場合に比べて退去費用を抑えられることが多いです。
設備が耐用年数を超えると修理の必要がなくなる
居住期間が長くなるほど負担割合が減る理由は、アパート内に設置されている各設備に耐用年数が定められているためです。耐用年数を超えた古い設備に関しては、そもそも設備としての価値がなくなったと判断されるため、退去費用が安くなります。
主な設備の内容年数は以下の通りです。アパートに設置される設備の多くは、耐用年数が10年以下となっています。
- 壁紙・エアコン・カーペット:6年
- 金属製以外の戸棚:8年
- 洗面台・便器:15年
上記を踏まえると、10年住んだ場合は壁紙やカーペットの一般的な汚れやカビなどは経年劣化として退去費用を請求されない可能性があります。
契約書に特約事項の記載が優先される
10年住むとアパートの退去費用は安くなるのが一般的ですが、契約書に特記事項の記載があるときは注意が必要です。たとえば「カビが発生した場合の原状回復費用は借り主負担とする」といった記載がある場合はそちらが優先されるため、10年住んでいても退去費用を請求されることになります。
10年住んだアパートの退去費用相場
ここでは10年住んだアパートの退去費用相場をご紹介します。なお、ここで紹介するのは敷金なしのアパートに10年住んだ場合に請求される可能性がある費用です。入居時に敷金を払っていれば退去費用は敷金から差し引かれるため、新たに費用を払う必要はないことが多いです。
間取り・広さ別の費用相場
アパート退去費用の相場は間取り・広さによって異なります。一般的に間取りが複雑または面積が広いほど費用が高くなる傾向にあります。
【間取り別の退去費用目安】
- ワンルーム〜1LDK:5万円
- 2K〜2LDK:8万円
- 3DK以上:9万円
【間取り別の退去費用目安】
- 20㎡:6万円
- 30㎡:7.5万円
- 40㎡:9.5万円
- 100㎡:10万円
実は部屋の広さに関わらず、室内を補修するために必要な人件費はそれほど変わりません。そのため、一定以上の面積では広さによる退去費用の違いは小さくなっていきます。
タバコを吸っていた場合
室内でタバコを吸っていた場合、壁紙にヤニがついて黄ばんだり、嫌な臭いが取れなかったりすることがあります。こうしたケースでは壁紙の交換費用を退去費用として請求されることが多いです。
なお、壁紙の交換費用の目安は以下の通りです。
【広さ別の壁紙交換費用目安】
- 6畳:4万円
- 8畳:5万円
- 10畳:6万円
カビが発生している場合
専門業者に依頼する場合、カビ除去にかかる費用は1㎡あたり、2,000円〜3,000円が相場です。6㎡〜7㎡の広さがある一般的な浴室の場合、15,000円〜20,000円ほどかかるイメージです。
1K6帖リビングの物件の場所別の費用相場は以下の通りです。
- キッチン:約20,000円
- トイレ:約10,000円
- 浴室:約20,000円
- リビング:約30,000円
ただし、カビの状態によって壁紙やフローリング貼り替えなどの大掛かりな修繕が必要なケースでは、退去費用も高額になる可能性があります。
リビングに重度のカビが発生している場合、壁紙の張り替えで4〜5万円程度、フローリングの張り替えに5万〜10万円程度かかることがあります。
退去費用が高額になるパターン
不注意により発生したカビなどの除去費用を請求されたとしても、退去費用は数万円〜数十万円が相場です。しかし、状況によって200万円といった高額請求になるケースもあります。ここでは退去費用が高額になるパターンを2つ紹介します。
故意・過失による傷や汚れが複数ある
物件の中に借り主の故意・過失による傷や汚れが複数あると、それぞれの修繕費がかさんで合計で高額になります。カビ除去や壁紙交換、大きな傷の修復などはそれぞれ数万円から数十万円の費用がかかるため、重なれば100万円以上の請求になることもあります。
また、修繕費は汚れの範囲が広いほど高くなるため、間取りによっても費用が異なります。たとえばタバコの汚れやにおいが染み付いている場合、壁紙の交換が必要です。6畳のワンルームであれば、壁紙を替えても費用は4万円程度で済みますが、戸建てで家全体の壁紙を替える場合は10万円以上の費用がかかります。
過分に請求されている
退去費用が高額すぎる場合、支払い義務のない費用が請求されている可能性もあります。大家や管理会社に悪意のあるパターン、勘違いやミスが原因のパターンなど、高額請求になる理由はさまざまですが、まずは請求明細を確認することが大切です。
賃貸借契約書、国土交通省のガイドラインを参考に、それぞれの項目について相場に対して妥当な金額であるか、貸主の負担とすべきものが含まれていないかをチェックしてください。
たとえば、「10年以上住んだ賃貸アパートを退去する際、経年劣化と認められるはずの壁紙やフローリングの張り替え費用を請求された」「契約書には記載がなかった高額なクリーニング費用を請求された」という事例があります。
不明瞭で納得いかない点は、大家や管理会社に連絡しましょう。
もし大家や管理会社との間でトラブルになり、解決が難しい場合は弁護士や国民生活センターに相談する方法もあります。
アパートの退去費用が高すぎると感じるときは、以下の記事も参考にしてください。
カビによる退去費用を抑えるコツ
退去前または退去費用を払う前にポイントを押さえることで、カビによる退去費用を減らせることがあります。退去費用を抑えたい方は、ここで紹介する3つのコツを試してみましょう。
退去前に自分でカビを除去する
カビの種類や状況によっては自分で除去できる可能性があります。白いフワフワとした見た目の白カビには消毒用アルコールでの拭き取りが有効です。また、黒カビや青カビによる色素沈着も、軽度であれば市販のカビ取り剤で漂白して取り除けます。このように掃除で取り除ける程度のカビは経年劣化と認められるため、あらかじめきれいにしておくことで退去費用の節約につながります。
色が濃く発生箇所にこびりついてざらりとしているカビは、長期間放置されており個人では除去が難しいです。壁や床などの深くまで発生している可能性があり、表面を掃除してもきれいになりません。
カビが生えた原因を特定する
カビが生えた原因によっては貸主に原状回復費用を支払い義務があるため、原因を調べておくのも方法の1つです。もし退去時カビの除去費用を請求されても、構造上の問題とカビの発生の因果関係を指摘できれば費用を抑えられる可能性があります。
先にも挙げましたが、次のようなケースは借り主の努力で改善できないカビであり、建物の構造や大家・管理会社の修繕などの対応に問題があるとして、貸主にカビの原状回復費用が請求されます。
- 雨漏りや漏水によるカビ
- 備え付けの換気扇の故障により浴室で発生したカビ
- 窓がない、もしくは開かないなど換気ができない部屋で発生したカビ
- コンクリート打ちっぱなしタイプの物件に発生したカビ
雨漏りや設備の不備は発見した都度、大家や管理会社に連絡するようにしましょう。一方、建物がコンクリート打ちっぱなしのため湿気が溜まりやすい、そのほか日当たりや間取りの関係で湿気が溜まりやすくカビが発生してしまうケースの場合、物件全体にまんべんなくカビが発生しやすいという特徴があります。特定の場所に発生するカビでない場合は建物である可能性が高く、借り主の問題ではないと指摘できます。
請求の内訳を提示してもらう
退去費用の内訳を提示してもらうことで相場からかけ離れた請求への支払いを防ぐことができます。業者によるカビ除去費用の相場は、1㎡あたり2,000円〜3,000円といわれています。
どの場所でカビの清掃が必要になったのか、清掃範囲に対して費用適切かどうか見極めましょう。
1K6帖リビングの物件でカビが発生している場合の費用は以下の通りです。
- キッチン:約20,000円
- トイレ:約10,000円
- 浴室:約20,000円
- リビング:約30,000円
仮に部屋全体にカビの清掃を行ったとしても10万円程度が相場です。
請求書と照らし合わせて、請求額が高すぎる場合は大家や管理会社に連絡して請求の根拠を確認してください。
まとめ
アパートを解約すると退去費用として原状回復費用やハウスクリーニング費用を請求されることがあります。特に借り主の不注意によってカビが生えてしまった場合は、カビ除去の費用を求められるのが一般的です。
ただし、10年以上住んでいるアパートを退去するケースでは、一定程度の汚れや傷は経年劣化と考えられるため、退去費用を抑えられることもあります。相場と比べて退去費用の請求額が高すぎる場合には、内訳を確認しましょう。
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