四日市市は、三重県の北部に位置する市で、県庁所在地である津市を除けば、三重県で最も人口の多い市です。
中部工業地帯の主要な代表的な工業都市で、四日市コンビナートの夜景は全国でも屈指の美しさと言われ、撮影スポットとして人気があります。
また、四日市港の開港100周年を記念して建てられた高さ100mを誇る四日市港ポートビル、明治時代に独特の仕組みで造られ、国の重要文化財に指定されている潮吹き防波堤など、海を感じられる観光スポットが多くあります。
市の南部には大型公園が点在する落ち着いた住宅街があり、東部には商業施設が揃って、自然と生活環境が調和した街と言えるでしょう。
そんな三重県四日市市には、ゴミ屋敷に関する条例があります。
どんな内容なのでしょうか。
目次
三重県四日市市のゴミ屋敷に関する条例とは?
四日市市で定められているゴミ屋敷に関する条例は、正式名を「四日市市を美しくする条例」といいます。
四日市市条例第28号として、平成9(1997)年7月に施行されました。
また、令和3(2021)年に一部が改正されています。
この条例は、空き缶や空のペットボトル、たばこの吸い殻、菓子袋、弁当がら、家電製品、家具類、タイヤなどの廃棄物の散乱の防止について必要な事項を定めています。
この条例は、環境の美化を図り、四日市市民が快適な環境で生活できることを目的として定められました(第1条)。
この条例が定められた当時は、特に、近鉄四日市駅の周辺を中心として、空き缶や空のペットボトル、たばこの吸い殻などの投棄や散乱が目立っていたようです。
条例制定から20年以上が経過し、四日市市内の不法投棄は減少傾向に転じました。
しかし、ペットボトルやたばこの吸い殻、菓子の空き袋などといった一般的な家庭ごみの投棄が依然として見られることから、当初は「この条例は、空き缶等の散乱の防止について必要な事項を定めることにより」という文言が使われていました。
三重県四日市市のゴミ屋敷条例の内容とは?〜①条例における定義とは
では、この条例の中で使われる用語から見ていきましょう。
ごみ
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)の第2条第2項に規定する一般廃棄物をいいます。
市民等
四日市市の区域に居住する人、滞在する人、また、市の区域を通過する人を指します。
事業者
容器入りの飲食料、たばこなどを製造・販売する者を指します。
回収容器
ごみを回収するための容器をいいます。
条例制定当初は「空き缶等を回収するための容器」とされていました。
こちらも、より幅広い範囲をカバーする文言に変更されています。
三泗地区4市町
四日市市、菰野町、朝日町、川越町を指します。
菰野町、朝日町、川越町は三重郡に属する町で、四日市市に隣接しています。
いずれも非常に小さな自治体であるため、四日市市との往来も多い区域となっています。
三重県四日市市のゴミ屋敷条例の内容とは?〜②それぞれの責務とは?
次に、市や市民など、この条例を守るべき人や立場における責務について見ていきます。
四日市市の責務
市は、この条例が定められた目的を達成するため、
- ごみの散乱の防止に関する啓発や教育を行うこと
- そのほか必要な施策を講じること
- これらを実際に行うこと
という3つの責務を規定されています(第3条第1項)。
また、市民や事業者、土地の管理者・占有者がごみの散乱を防止するために、必要な指導及び助言を行います(第3条第2項)。
第1項、第2項の「ごみ」は、以前は「空き缶等」と表現されていましたが、一般的な「ごみ」という文言に変更されました。
そして、これらを効果的に行うために、三泗地区4市町は施策を調整し、協力して事業を行うものと規定しています(第4条)。
事業者の責務
事業者は、製造・販売したものが、ごみとして散乱することがないよう、消費者に対する啓発に努める責任があります。
また、ごみに関して市が実施する施策に協力しなければなりません。
さらに、空き容器を資源化しやすいものにし、実際に資源化する努力をする必要があります(第5条)。
市民等の責務
市民等は、ごみを散乱させてはいけません。
ごみの資源化や適正処理を困難にしたり、街の美化や快適な生活環境を阻害してはいけません。
そのため、自宅外で生じたごみは持ち帰ったり、きちんと回収容器に捨てる責任があります。
また、市が街の美化のために行う施策に協力したり、自主的に清掃活動を行うなど地域環境の美化に努める責務があります(第6条)。
三重県四日市市のゴミ屋敷条例の内容とは?〜③ゴミ屋敷を生まない対策とは
四日市市の条例の中には、ゴミ屋敷という文言は使われていません。
しかし、なぜこの条例が「ゴミ屋敷に関する条例」なのか、見ていきましょう。
土地の管理者・占有者の責務(第7条)
第7条では、土地の管理者・占有者に対して、以下の責務を規定しています。
土地の管理者・占有者は、その土地の美化に努めるとともに、市が実施する施策に協力する責務があります。
また、管理・占有する土地にごみが捨てられたときは、そのごみを適切に処理しなくてはなりません。
つまり、土地を管理していたり、その土地に居住・土地を使用している人は、その土地の美化に努力し、もしごみを捨てられたらきちんと捨てなくてはならないのです。
第7条は「土地の美化」と題されており、これを遵守する限り、ゴミ屋敷は生まれないはずです。
不法投棄の禁止(第8条)
第8条では「どんな人も、市内の道路・公園・広場・その他の公共の場所、他人が所有・占有・管理する場所に、ごみを不法に投棄してはならない」と定めています。
公共の場はもちろんですが、他人が所有・占有・管理している私的な場所にもごみを捨てることは許されません。
ゴミ屋敷には住人の溜めたごみが多く積まれているため、どうしても他人がごみを捨てやすくなってしまいます。
第7条で土地を美化するとともに、第8条で不法投棄を禁じ、ごみが堆積されるような状態を避けるための策を講じています。
美化推進重点地域の指定(第9条)
特にごみの散乱防止・美化推進を行う必要がある地域があった場合、市長はこれを「美化推進重点地域」として指定することができます。
特定の地域を「美化推進重点地域」として指定した場合、市長はその旨を告示します。
その上で、市長は、重点地域内において、街の美化を推進するため有効な施策を実施します。
「美化推進重点地域」は、第4項で事業者に対して回収容器の設置を求めているため、たとえば飲料の自販機の周りなどに空き容器が散乱しているような場所を指すと考えられます。
ただ、条文の「ごみの散乱防止・美化推進を行う必要がある地域」はさまざまなケースをカバーできるため、ゴミ屋敷もここに入るものと考えられます。
三重県四日市市のゴミ屋敷条例の内容とは?〜④違反した場合の罰則は?
このような規定に反した場合、どのような罰則が課されるのでしょうか。
勧告(第11条)
市長は、第6条第1項(ごみを散乱させない・街の美化を阻害しない)、第8条(公共の場所や他人の所有・管理する土地に不法投棄しない)、または第9条第4項(美化推進重点地域において、事業者が必要な措置を行う)の規定に違反している者に対し、必要な措置を講ずるよう勧告することができます。
命令(第12条)
市長は、この勧告を受けた者が正当な理由なく従わない場合は、期限を定めて、その勧告に従うよう命ずることができます。
公表(第13条)
勧告に従うよう命令を受けたにもかかわらず、正当な理由なく従わない場合、市長は命令を受けた者の住所・氏名・命令の内容を公表することができます。
ただし、公表する場合は、該当者にあらかじめその理由を通知するとともに、釈明の機会を与えなくてはなりません。
法規の適用(第14条)
市長は、第6条第1項・第8条の規定に違反し、街の美化・快適な生活環境の確保に重大な支障があると認めるときは、警察その他の関係行政機関に対し、関係法規を適用するよう積極的に要請します。
罰則の部分にもゴミ屋敷の文言はありませんが、その状況を考えれば、近隣の美化を阻害し、生活環境にも大きな影響を与えるゴミ屋敷は、十分これらにあたると考えられます。
三重県四日市市の場合、条例の上では、調査や指導などの規定はありませんが、最悪の場合、警察や行政機関が動くことにもなります。
まとめ
三重県四日市市のゴミ屋敷に関する条例は正式名を「四日市市を美しくする条例」といいます。
条文にゴミ屋敷の文言はありませんが、土地の美化、不法投棄の禁止、美化推進重点地域の指定などの規定にゴミ屋敷は当てはまります。
違反した場合は罰則が設けられているのは、他の自治体と同様です。
しかし、第10条で、美化の推進やごみの散乱防止に著しい功績のあった人には、市長が顕彰を行うことができると規定しているのが特徴的と言えるでしょう。