ゴミ屋敷となってしまうのは自己責任です。
しかし、自己責任だからと突き放していては、なかなかゴミ屋敷が解決しないのも事実です。
だからこそ、自治体によってはゴミ屋敷解決策として、様々な支援策を打ち出しています。
その一環として福祉的支援を提供している自治体も増えています。
具体的にどのような支援なのか、なぜ支援が必要なのかなどを解説していきます。
ゴミ屋敷に用意されている福祉的支援
ゴミ屋敷対策の条例は自治体によって異なります。
福祉的支援に関しても条例にて制定している自治体もあれば、条例化はしていないものの支援を実践している自治体、あるいは民間業者と連携して福祉的支援を提供しているケースもあります。
そこで、具体的にどのような福祉的支援が用意されているのか、いくつかご紹介します。
介護支援
ゴミ屋敷と住居者は高齢者で、かつ介護が必要なケースがあります。
もはや自力でゴミを掃除することができず、生活の中でゴミが蓄積されていく一方の状況です。
そのため、介護を行うことでゴミを蓄積させるのではなく、ゴミを捨てるなど、ゴミ屋敷化の防止を実践しています。
精神的支援
精神的な症状によってゴミ屋敷化してしまうケースがあります。
例えば依存症の場合、買い物に依存して物だけが増えてしまいます。
痴ほう症の場合は他人の家やゴミ収集所からゴミを持ってきてしまい、自宅のゴミが増えてゴミ屋敷化してしまったりします。
こういった場合、自力でのゴミ屋敷解消は難しいので、福祉的支援の一環として、痴ほう症であれば介護や地域の見回り、依存症の場合は相談員等とのコミュニケーション等を通してゴミ屋敷問題解決を図ります。
経済的支援
ゴミ屋敷住居者は、経済的に貧窮しているケースもあります。
そのため、業者に撤去を依頼したくともできない状況から、ゴミ屋敷の解消が難しいのです。
そこで行政としても、経済的な支援を通してゴミ屋敷解消を目指します。
金銭の支援は経済支援ではありますが、貧窮者への支援ということで福祉的試験に分類しても良いとの声もあります。
経済的支援まで制定している自治体は少ない
経済的支援はゴミ屋敷で悩まされている住居人にとってはありがたいことでしょう。
しかし、行政が援助する費用は税金によって捻出されるものです。
そのため、安易に費用を計上できない事情もあり、経済的支援策まで策定している自治体は少ない傾向にあります。
ゴミ屋敷に福祉的支援は必要なのか
ゴミ屋敷問題解決のために、福祉的支援を用意している自治体があることが分かっていただけたのではないでしょうか。
しかし、一方では自己責任であるゴミ屋敷に、なぜ福祉的支援が必要なのかとの声もあります。
行政が支援するとなれば、その費用は税金です。
住民にとっては、腑に落ちない部分もあるかもしれませんが、なぜ福祉的支援が必要なのか、必要だとする理由をいくつか解説します。
二次被害が懸念される
ゴミ屋敷は確かに自己責任ではありますが、放置されているゴミ屋敷に何かが起きると、もはや自己責任だと言っている場合ではありません。
むしろゴミ屋敷はその点が懸念されています。
例えば周辺で火災が起きてゴミ屋敷にまで引火してしまった場合、燃える物がたくさんあるので、火災の被害がより深刻化する可能性があります。
地震が起きればゴミ屋敷に堆積しているゴミが散乱したり、あるいは周辺の住居に散乱し、被害を拡大させてしまう可能性もあります。
災害はいつ起きるか分からない
災害はいつ起きるかわかりませんので、自治体としても自己責任だからと、自主的に改善するのを悠長に待っている訳にはいかないのです。
割れ窓理論による更なる悪化
割れ窓理論とは、1枚の割れた窓を放置していると、それを見た人は「割れた窓を放置しても良い」との考えから、さらに割れた窓が増えていくとの理論です。
つまり、ゴミ屋敷を見れば、「ここに物を捨ててもバレない」との心理が働き、通行人がゴミを捨てる可能性があります。
結果、ゴミ屋敷がさらに悪化する可能性があり、行政としても放置できないのです。
懸念される火災リスク
割れ窓理論で懸念されるのが火災リスクです。
ゴミ屋敷を見た通行人は、ゴミを捨ててもバレないと考える可能性があります。
そこに、タバコの吸い殻を投げ捨てた場合、火災リスクが生じます。
燃え移るものはたくさんあるのです。
瞬く間に火の勢いが増え、大きな火災になる懸念がある以上、行政としても何もしない訳にはいきません。
住民流出リスク
ゴミ屋敷をそのまま放置して迷惑をこうむるのは住居者でもなければ行政でもありません。
ゴミ屋敷周辺の住人です。
視界に入るゴミ屋敷が不愉快なだけではなく、異臭もあれば、ゴミ屋敷の堆積物がいつ自宅に被害を及ぼすか分からない恐怖感もあるでしょう。
そのため、違う場所に引っ越しを考える人がいても不思議ではありません。
このような住民流出もまた、行政にとっては放置できる問題ではありません。
福祉的支援以外にゴミ屋敷を解決する方法はあるのか
行政による福祉的支援はゴミ屋敷解決策として有効な手段です。
しかし、同じ地区の住民にとっては自己責任であるゴミ屋敷に税金が使用されることに対して腑に落ちない部分もあることでしょう。
では福祉的支援以外に、第三者としてゴミ屋敷を解決する方法がないのかについて、見てみましょう。
ゴミ屋敷住居人とのコミュニケーション
ゴミ屋敷化させてしまう理由はいくつかありますが、地域からの孤立が理由の一つです。
誰も知り合いがいなければ、自身を気に留める人間もいませんので、ゴミ屋敷化が加速しても誰も何も言いません。
しかし、地域で見回り隊を作るなどして、ゴミ屋敷化しそうな家、あるいは孤立して悩んでいるかもしれない高齢者等への声掛けを行うことで、ゴミ屋敷化リスクを軽減できる可能性があります。
話しかけるだけではなく、地域住民が参加するイベント等の開催も、コミュニケーションの一つとなるでしょう。
行政との連携
行政と連携することで、ゴミ屋敷問題は大きくなる前の段階で手を打てます。
例えばゴミ屋敷になりそうな家を発見したら行政に連絡し、行政にすぐにチェックしてもらうことができます。
必要であればその時点で支援策を講じることで、問題を未然に防ぐことも可能です。
むしろ問題が深刻化する前の方が、対策も講じやすいです。
連携機関の有無も重要
行政と民間が連携することは重要ですが、連携に対しての姿勢も様々です。
ゴミ屋敷を想定し、民間との連携を視野に条例化している自治体もあれば、民間との連携など全く想定していない自治体もあります。
ゴミ屋敷を見つけた際には、行政とどこまで連携できるのか一度行政に問い合わせてみるとよいでしょう。
仮に連携する仕組み・体制がない場合、行政に連絡したところで効果的な抑止策は期待できません。
ゴミ屋敷は福祉的支援も重要
ゴミ屋敷の問題を踏まえると、福祉的支援が重要なものであることがわかっていただけたのではないでしょうか。
確かにゴミ屋敷は自己責任ではありますが、自力での解決が難しいのも事実です。
そのため、行政による福祉的支援策は、問題解決のために効果的な方法です。
地域住民としても、福祉的支援の重要性を理解しておきましょう。