栃木県宇都宮市といえば、名物の「宇都宮焼きそば」が思い浮かぶ人が多いかもしれません。
宇都宮市は、関東平野の北端と日光連山から連なる山地との境に位置しています。
南北に流れる多くの川に挟まれた台地で、人々を水害や大地震から守り、安心して暮らせる地として、また、二荒山神社の門前町・宇都宮城の城下町として栄えてきました。
栃木県のほぼ中央に位置する宇都宮市は、人口約51万人を擁する街で、県庁などの行政機関が集まる県の中心地です。
JR東北本線(宇都宮線)、上野東京ライン日光線、東武鉄道宇都宮線が走り、東北新幹線も利用できるので、利便性にも富んでいます。
また、南北に東北自動車道、北関東自動車道、日光宇都宮道路や国道4号線、119号線などが整備されていて、車でのアクセスにも優れています。
このような街・栃木県宇都宮市には、ゴミ屋敷に関する条例が定められています。
どのような内容なのでしょうか。
目次
栃木県「福祉的課題を抱える世帯の状況調査」
栃木県は、2019年9月から2020年1月にかけて「複雑・複合的な課題を抱える世帯」や、「制度の狭間にいる世帯」について調査を行いました。
この調査は、地域に潜在する様々な課題の状況を見える化し、地域共生社会の実現に向けた今後の福祉施策の参考とするために実施されました。
調査対象は、日頃から地域に根差した活動を行い、その地域の現況把握に精通している民生委員や児童委員で、調査票の配布によって行われています。
この調査では、「制度の狭間にいる世帯」としてゴミ屋敷が挙げられており、340名がゴミ屋敷問題があると答えています。
この調査は栃木県全域にわたって行われており、個々の市や地域は明らかにされていません。
しかし、ゴミ屋敷問題は、日常生活に困っている高齢者、引きこもり状態など社会的に孤立している人に次いで多く挙げられています。
ゴミ屋敷の問題は、日常生活に困っている高齢者や社会的に孤立しているといった人たちに非常に近い問題であり、栃木県においても大きな社会問題になっていることがわかります。
栃木県宇都宮市のゴミ屋敷に関する条例とは?
宇都宮市のゴミ屋敷に関する条例は、正式名を「みんなでごみのないきれいなまちをつくる条例」といいます。
宇都宮市はこれまでにも、きれいで快適な生活環境を維持するため、以下の活動を行ってきました。
- 啓発活動を行う
- 環境美化活動を促進する
宇都宮市全体で守るべきルールとマナーの制定
活動の一環として「一人ひとりが『ルール』と『マナー』を守りましょう」と題し以下の項目を挙げています。
- ごみはごみ箱に捨てるか、自宅に持ち帰りましょう。
- ペットの散歩の際には、フンを持ち帰りましょう。
- 近隣の迷惑にならないよう、自分の敷地内にごみを放置せず、適切に処理しましょう。
- 不法投棄をされないよう、日頃から定期的な清掃、見回りや雑草の刈り取り・樹木の枝切りをするなど、適正管理に努めましょう。
放置されたごみにより、害虫や悪臭の発生や、火災の原因のおそれがあるなど、相当数の市民等の生命や身体等に差し迫った危険があるときは、ごみの除去を命ずる場合があります。
美化推進重点地区の指定
JR宇都宮駅周辺の中心地を「美化重点地区」として指定しています。
地区内において、ゴミのポイ捨てやペットのフンを放置するなど、禁止項目に違反した人に警告します。
渓谷に従わない場合は、過料2000円の罰則が科されます。
「ポイ捨て禁止」看板の配布
縦・横2種類の「ポイ捨て禁止看板」を作成し、希望者に配布しました。
宇都宮市はこのような対策を行ってきましたが、残念ながら十分な成果がみられませんでした。
そこで、市民や、宇都宮市への来訪者が快適に過ごせる、きれいな街をつくるため、この条例が制定されました。
条例には、シンボルマークも誕生しました。
マークに書かれている「幸せの方程式―happy equation」は、「マナーの向上には人と人とのコミュニケーションが必要不可欠である」という考えに基づいています。
人と人とのコミュニケーションを育み、信頼関係を築くとことによって、条例が広く理解され、マナーが向上すれば、みんなの幸せにつながります。
この幸せの方程式によって、市全体が幸せになることを目指しています。
宇都宮市は、このシンボルマークに込められた思いとともに、条例の趣旨や内容が定着するよう、周知啓発物品や街頭活動などに活用しています。
栃木県宇都宮市のゴミ屋敷に関する条例の内容とは?
では、宇都宮市の「みんなでごみのないきれいなまちをつくる条例」の内容について見ていきましょう。
宇都宮市の条例における「ゴミ屋敷」とは?
宇都宮市でも、他の都市同様、条例中で「ゴミ屋敷」という言葉は使っていません。
しかし「第6章 近所迷惑の防止」第18条で以下のように定めています。
「所有者等は,自己が所有し、占有し、又は管理する土地又は建物を適正に管理することにより、近隣に居住し、又はそこで活動する市民等の良好な生活環境が害されないようにしなければならない」
これは、「ゴミ屋敷」とは書かれていませんが、いわゆる「ゴミ屋敷」のことであると解釈してよいでしょう。
また、第18条2項において、次のように細かく定義しています。
(1)自己が排出し、又は他人が投棄した廃棄物により、ねずみ、はえ、蚊、のみその他の衛生動物又は悪臭が発生している状態
(2)自己が排出し、若しくは他人が投棄した廃棄物、樹木の枝葉又は雑草が著しく道路上にはみ出し、安全な通行を確保する上での妨げとなっている状態
(3)自己が排出し、又は他人が投棄した廃棄物が相当の高さにまでたい積しており、それが飛散し、流出し、又は倒壊するおそれがあると認められる状態
(4)自己が排出し、若しくは他人が投棄した廃棄物又は枯れ草等の燃焼のおそれのある物件がみだりに存置され、火災の原因となるおそれがあると認められる状態
これらは、まさしく「ゴミ屋敷」と言って思い浮かぶイメージそのものではないでしょうか。
宇都宮市民に求められている責務は?
条文によれば、土地や建物を持っていたり、管理したりしている宇都宮市民は、その土地・建物を適正に管理しなくてはなりません。
2項に挙げられているような問題は、近隣住民の生活環境をおびやかすことになります。
しかし、以前から宇都宮市は、市全体で守るマナーとして「近隣の迷惑にならないよう、自分の敷地内にごみを放置せず、適切に処理しましょう」という項目を定めていました。
この項目も、ゴミ屋敷のことと推察されるものの、第18条2項のように細かい内容までは決められていませんでした。
ここに、ゴミ屋敷が社会問題化していることや、宇都宮市のきれいな街づくりに対する力の入れ方が伝わります。
宇都宮市民みんながきれいな環境で快適に生活するためには、生活環境をきれいにすることが不可欠なのです。
条例に違反するとどうなる? 罰則は?
第13条
第13条によって、市長、または市長が指定した「指定職員」は、第8条〜第11条までの規定に違反した者に対して、原状回復や違反の是正、その他必要な措置を講ずるように指導することかできます。
第14条
第13条によって指導を受けた人が、そののちも状態を改善せず、第8条から第10条までの規定に違反し続けており、そのことが大きく公益に反する場合、市長や指定職員は、必要な措置を講じるように勧告することができます。
この段階では、事実を公表することも含まれます。
第15条
第14条によって勧告を受けた人が、正当な理由がないのに勧告に従わない場合は、市長は宇都宮市行政手続条例第35条の規定により、その事実を公表することができます。
第19条
第18条に定められた規定に反して近隣に迷惑をかけている人に対して市長は、「この条例の施行に必要な限度において」という限定はつきますが、市民、事業者もしくは建物の所有者らに対して必要な報告を求めることができます。
また、状態があまりに改善されない場合は、市の職員が良好な生活環境を害するおそれのある土地や建物に立ち入り、その状態を調査することになります。
まとめ
栃木県宇都宮市のゴミ屋敷に対する条例は「みんなでごみのないきれいなまちをつくる条例」として定められています。
宇都宮市では、市民の良好な生活環境の保全に力を入れており、特にゴミに関してはさまざまな規定を定めています。
中でもゴミ屋敷が改善されない場合は、市の職員の立ち入り調査を受けることもあります。
もし、ゴミ屋敷で困っていたら、市に相談しましょう。
放置せず、早めに対策するのがおすすめです。