宇部市は瀬戸内海に面した沿岸部と内陸の森林地帯からなる、山口県において下関市、山口市に次ぐ人口を誇る町です。
宇部市でもゴミ屋敷条例が制定されています。
そこで宇部市にはどのようなゴミ屋敷に関する条例があるのかご紹介します。
目次
宇部市環境保全条例
山口県宇部市におけるゴミ屋敷条例は、宇部市環境保全条例だと考えられます。
名称からも分かるように、環境に関する条例で、その中でゴミ屋敷に関する条例も定められています。
そこで、宇部市環境保全条例の中でゴミ屋敷対策としても有効性のある条文をご紹介します。
宇部市環境保全条例・第1章
宇部市環境保全条例の第1章は総則となっており、良好な環境の確保を目的とすると明記されています。
また、そこで市民は環境の保全に自ら務めること、さらには市長が実施する施策に協力する旨が記載されています。
宇部市環境保全条例・第4章第7節第61条
空き地を占有、または管理者は空き地を適正に管理し、近隣の社会環境を損なわないようにと明文化されています。
空地ではありますが、ゴミ屋敷はしばし居住者のいない空き地、あるいは空き地に住み着き、かつゴミ屋敷化するケースもありますので、ゴミ屋敷も範囲内だと考えることができます。
宇部市環境保全条例・第4章第7節62条
市長は先に紹介した第61条に違反されているケースには、当該空き地占有者に対して廃棄、あるいは必要な措置の勧告が可能としています。
宇部市環境保全条例・第4章第7節第63条
土地や建物の清潔保持を定めた条項です。
管理する土地や建物やその周辺の清潔を保ち、相互に協力することで地域社会環境保全を務めるようにと明文化されています。
こちらはゴミ屋敷にも該当すると考えてよいでしょう。
宇部市環境保全条例第5章
基本的に第5章がゴミ屋敷をターゲットにしている条例となっています。
第64条から第69条まで設定されている条例で、環境保全に関する苦情があれば市は調査を行い、関係者から報告・聴収を行えます。
他にも立入検査、措置命令や違反の公表等も定められています。
宇部市環境保全条例はゴミ屋敷条例として機能するのか
宇部市環境保全条例が山口県宇部市のゴミ屋敷に対する条例だと考えてよいのですが、果たしてこの条例でゴミ屋敷に対応できるのでしょうか。
他の自治体のゴミ屋敷条例と比較して検証してみましょう。
細かい点を見ると大雑把な条例
宇部市環境保全条例を根拠に、ゴミ屋敷に対しての勧告や措置命令が可能です。
実際にゴミ屋敷問題が発生した際には、この条例を根拠に対応を取ることになりますが、いわゆるゴミ屋敷のための条例と比較すると、大雑把な部分もあります。
例えば措置命令や違反公表は、他の自治体では市長権限ではなく、市長が議会や有識者会議等を経て行えると定めています。
つまり、市長の独断ではなく、あくまでも合意形成を経てのものなのですが、宇部市環境保全条例では市長の独断で可能となっています。
空き家以外のゴミ屋敷が想定されていない
宇部市環境保全条例では行政代執行に関しては触れられていませんが、新たに「宇部市空き家等対策の推進に関する条例」を策定しています。
そこでは行政代執行、さらには行政代執行にかかる費用は所有者に請求できる旨が記載されています。
しかし、これはあくまでも空き家がゴミ屋敷になってしまった場合にのみ適用されるもので、住居者がいる場合のゴミ屋敷に関しては、実は想定されていません。
支援策が策定されていない
これは先に関連しているのですが、宇部市環境保全条例はあくまでも空き家がゴミ屋敷化した場合の対策の条例となっています。
つまり、人がいることが想定されていませんので、再発防止支援策までは策定されていません。
実際、他の地域では行政代執行後、再びゴミ屋敷化してしまったケースもあります。
そのため、ゴミ屋敷条例の中に再発防止・支援策を盛り込んでいる自治体もあるのですが、宇部市環境保全条例では見当たりません。
宇部市での行政代執行
宇部市では山口県初となる行政代執行が行われました。
2016年6月、宇部市内にて特定空き家に指定されていた空き家に対し、行政代執行が行われました。
ただしこちらは宇部市環境保全条例に基づくものではなく、空家等対策の推進に関する特別措置法に基づくものでした。
隣接する住宅が火災被害を受けたものの、空家であることから対処ができず、危険な状態にあったことから行政代執行が行われました。
しかし、所有者の特定ができなかったことから略式代執行となり、265万円の費用がかかったとのことです。
その後も宇部市では代執行が実施されている
実はその後も宇部市では代執行が実施されており、平成29年度までに4件の行政・略式代執行が行われました。
しかし4件いずれも空家対策特別措置法に基づくものです。
ちなみに代執行には至らないものの、助言や指導に関しては1万件を越えています。
勧告が550件以上、命令に関しても70件あったとのことです。
宇部市だけでみれば機能している
宇部市環境保全条例だけを見れば、居住者がいる場合のゴミ屋敷対策はどうするのかといった問題点があります。
しかし、先に紹介したデータからも、宇部市に関しては居住者がいながらにしてのゴミ屋敷よりも、空家問題の方が顕在化していると考えられます。
宇部市だけで考えた時、条例は効果をもたらしていると考えてよいでしょう。
宇部市でゴミ屋敷になってしまったら?
宇部市環境保全条例では住居者がいる家屋がゴミ屋敷となってしまった場合、勧告までしか行えません。
つまり、もしも住んでいる家屋がゴミ屋敷化してしまった場合、行政代執行ではなく、あくまでも他の方法で問題を解決しなければなりません。
そこで、ゴミ屋敷化させないために心掛けるべきポイントをいくつかご紹介します。
ゴミ出しのルールを把握する
宇部市には様々な条例が定められており、ゴミ出しに関しても細かいルールが策定されています。
ゴミ屋敷化の原因の一つは、ゴミを捨てない点にあります。
ゴミ出しのルールが細かいことで、ゴミを出せずにゴミを蓄積させ、ゴミ屋敷化させてしまうケースが多いのです。
そのため、ゴミ出しの正しいルールを把握することが大切です。
正しいルールを把握し、適切にゴミを捨てることでゴミ屋敷化の防止になります。
使わない物は捨てる
ゴミ屋敷は第三者から見れば、不衛生かつ不用品が集まったものでしかありません。
しかし住居人は、ゴミだとは思っていないケースが珍しくありません。
ゴミだと思われていても、当人は「いつか使う」「大切なもの」だと思っているので捨てないのです。
結果、ゴミ屋敷化させてしまうケースが珍しくありません。
そのため、使わない物は大切なものではあっても捨てるよう心がけましょう。
特に長年使用していないものは、今後も使用する可能性は低いです。
ゴミとしての処分だけではなく、フリマアプリやオークションサイトを活用するなどして、家の中の物を減らすこともできるでしょう。
山口県宇部市のゴミ屋敷に対する条例の意義
山口県宇部市では宇部市環境保全条例が用意されていますが、空家対策特別措置法にてゴミ屋敷対策が実践されているケースが多いです。
宇部市環境保全条例は、他の自治体のゴミ屋敷条例と比較すると物足りない部分があるのも事実です。
ですが、そもそも条例とは他の自治体の条例と比較するためのものではなく、地域で役立てるものです。
居住者のいるゴミ屋敷ではなく、空家問題で悩まされている宇部市にとっては、現状の条例にて対応できると考えてよいでしょう。