「アパートを退去するとき、高額な退去費用を支払わなければならないって本当?」
「退去費用で50万円も請求されたという話を聞いたことがあるけれど……」
など、アパートの退去費用について不安に思っていませんか?
アパートから転出する際には退去費用を支払うのが一般的ですが、金額は部屋の間取りや入居中の暮らし方、賃貸借契約書の内容などによりさまざまです。そのため、場合によっては50万円などの高額な退去費用を請求される可能性もあります。
今回は退去費用が高額になりやすいケースや、支払えない場合の対処法などを解説します。
この記事で分かること
- ・アパートの退去費用が50万円など高額になるケース
- ・退去費用と一般的な貸主・借主の負担分
- ・退去費用が高額で払えないときの対処法
目次
アパートの退去費用で50万円になるケース
通常の住み方であればアパートの退去費用は5万~10万円程度となるケースが多く、50万円も請求されることはまれです。しかし、次のような場合には退去費用が高額になり、場合によっては50万円を超える可能性もあるので注意しましょう。それぞれのケースを詳しく解説します。
なお、この項目でも説明する「ハウスクリーニング代」は貸主負担となるケースが大半ですが、賃貸借契約書に「退去時のクリーニング代を借主が負担する」という特例が記されている際には借主が支払うこととなります。貸主・借主の負担分に関しては後述します。
3LDK以上の間取りの賃貸物件
部屋の数が多くて家が広い場合には、ハウスクリーニングや原状回復のための費用が多くかかります。1部屋増えるごとにハウスクリーニング代は1万円~2万円程度増額していくため、3LDK以上の広い家では退去費用が高額になりやすいです。
しかし、ただ部屋の数が多いだけで50万円もの高額な退去費用を請求されるのは一般的ではありません。ひどいヤニ汚れやゴミ屋敷状態、水漏れ事故による床板の腐食などのトラブルが重なった場合には、50万円になる可能性があります。間取りだけを理由に高額な退去費用を請求された場合は、悪徳業者による水増しの可能性も視野に入れましょう。
無断でペットを飼育していたとき
ペット禁止の賃貸アパートであるのにもかかわらず、無断でペットを飼っていた場合には高額な退去費用を支払わなければなりません。原状回復費用に加えて、違約金も支払わなければならないためです。違約金の金額は契約内容にも寄りますが、家賃3か月相当などを請求されることもあります。
なお、無断ではなくてもペット飼育OKの物件に住んでいる人は、ペットを飼っていない人よりも退去費用が高額になりやすいです。詳しくは後述しますが、賃貸借契約書の特約などでペットに関する費用負担について記載されている可能性があるのでチェックしてみましょう。
室内の汚れや破損が著しいとき
室内の汚れや破損が激しい場合、通常のハウスクリーニングの範囲で収まらないため退去費用が高額になります。たとえば、喫煙者がいて壁にヤニ汚れや焦げあと、たばこのニオイなどが染み付いている場合には借主が原状回復の費用を負担しなければなりません。
壁紙の変色がひどいと、部屋全体の壁紙の張替えが必要になります。壁紙は1平方メートルあたり700円~2000円前後の費用がかかるため、家全体の張替えとなると数十万円の費用負担となります。床材の交換も、範囲や手法によって数万円~数十万円の費用が必要です。
退去費用とは?
退去費用とは賃貸物件を退去する際に支払う費用のことです。退去者から徴収した退去費用は、新しい入居者の転入に備えて原状回復やハウスクリーニングの費用として用いられます。
賃貸物件の借主には「原状回復義務」が科せられますが、部屋に付いた傷や汚れは内容次第では経年劣化や通常損耗と見なされるため、借主の費用負担にはなりません。どのようなケースで費用が発生するのか、貸主・借主の負担に関して解説します。
原状回復にかかる費用
国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)』には、原状回復における費用負担の基準などが詳しく記載されています。このガイドラインには法的な強制力はありませんが、退去費用のトラブルを回避する上で参考になります。
このガイドラインでは、原状回復とは「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」と定義されています。
故意や不注意、あるいは常識的な管理を怠った際にできた傷や破損に対しては、借主が原状回復費用を払わなければなりません。たとえば、エアコンの故障を放置して水漏れを起こしてフローリングを腐らせた場合には、借主が原状回復義務を負います。
貸主の負担になりやすい部分
「経年劣化」と「通常損耗(つうじょうそんもう)」による部分の修繕費用は、貸主つまりオーナー側の負担となります。経年劣化とは時間の経過に伴う品質低下のことで、日焼けによる壁紙や床の色あせ、耐用年数を超えたトイレや洗面台などの故障などが挙げられます。
通常損耗とは通常の生活で発生する傷のことで、壁に刺した画びょうの穴や冷蔵庫の背面の壁の電気焼け、タンスを長期間置いた際に生じる床のヘコミなどが具体例です。
退去時の経年劣化や通常損耗に対するハウスクリーニングは、通常は貸主の費用負担によって行われます。しかし、後述の通り「特約」がある場合には借主の負担となる可能性があります。
借主の負担になりやすい部分
借主の負担になりやすいのは、故意や不注意による傷や汚れです。壁に画びょうを刺す程度なら費用負担はありませんが、壁に深くネジを刺して下地の石膏ボードの交換が必要になるようなケースでは修復費用を請求されるおそれがあります。
また、水回りのしつこいカビや水垢、キッチンの油汚れ、子供が壁や床に書いた落書き、たばこのヤニ汚れなども借主の負担分です。家具を移動させる際の引っかき傷も、不注意による傷と見なされるために修復費用の負担対象となります。
賃貸契約時の特約に注意
国土交通省のガイドラインに記載されるように、一般的には経年劣化や通常損耗は貸主側の負担となります。しかし、賃貸借時の契約で「原状回復特約」があった場合は要注意です。
契約書で取り交わした特約はガイドラインよりも優先され、特約として「ハウスクリーニング費用を借主が負担する」「ペット飼育可能であるため、クロス張替え費用を借主が負担する」などの内容が記載されている場合があります。
ガイドラインでも「強行法規に反しないものであれば、特約を設けることは契約自由の原則から認められるものであり、一般的な原状回復義務を超えた一定の修繕等の義務を賃借人に負わせることも可能である。」とされています。
アパートの退去費用相場
アパートの退去費用の相場は、居住年数により異なります。1年未満、5年前後、10年以上の3つのケースについて解説します。
1年未満しか住んでいないときの退去費用
居住期間が1年未満であれば部屋の状態はほぼ汚れずに保たれていることが多く、退去費用はハウスクリーニング代のみとなる可能性が高いです。この場合の相場は3万円程度です。入居時に敷金を支払っている場合には、敷金からハウスクリーニング代を差し引いて残額が返金される場合もあります。
ただし、入居時の契約内容によってはアパート入居後1年未満などの短期間で退去すると「短期解約違約金条項」に該当して違約金を支払う可能性があります。違約金は契約書の内容次第ですが、家賃1か月分相当の金額を支払うケースもあるので注意しましょう。
5年住んだ家の退去費用相場
5年程度住んでいた賃貸物件から退去する場合は、通常のハウスクリーニングに加えてキッチンの油汚れや風呂場の水回りのカビ汚れなどのしつこい汚れに対する処理が必要となるケースが多いです。
ハウスクリーニングの目安費用は1LDK~3DKで3万円~6万円前後ですが、汚れが激しい場合には追加費用が発生する可能性があります。
なお、壁紙の日焼けや家具・家電を置いた際にできた床のヘコミなどは経年劣化・通常損耗としてみなされ、修理費用は貸主側の負担となるのが一般的です。
10年以上住んだ家の退去費用相場
意外に思われるかもしれませんが、10年以上住んでいた家は経年劣化が進んでいるため、原状回復義務がほぼなくなります。そのため、退去費用は5年程度住んでいた家と同じ程度となることが多く、3万円~6万円程度が目安です。
前述した画びょうの穴や、日焼けによる壁紙・フローリングの色褪せなどのほかエアコン付き住宅の場合はエアコン内の汚れなども経年劣化と見なされます。国土交通省のガイドラインではさまざまな設備に耐用年数が定められており、耐用年数を超えた設備の修復にかかる費用は請求されません。
退去費用相場が高くなるとき
退去費用が高くなりやすいケースについて、具体的な例を理由とともに解説します。
室内でタバコを吸っていたとき
タバコを吸っていると、ヤニの黄ばみやニオイが室内に染み付くため高額な退去費用を請求されます。タバコによる汚れやニオイは経年劣化とは見なされず、借主の責任で原状回復しなければならないためです。
備え付けエアコンがあるアパートでは、タバコによるエアコンの汚損が生じる可能性もあるので注意しましょう。退去費用を抑えるためには、空気清浄機を用いて壁や床に汚れやニオイを付けないようにするのもひとつです。電子タバコに切り替えるとヤニ汚れを避けることはできますが、電子タバコ特有のニオイが残る場合もあるので注意しましょう。部屋から出てベランダで喫煙する人もいますが、アパートの規約で屋外での喫煙が禁止されている場合があるので契約書などの確認が必要です。
ペットを飼っているとき
イヌやネコ、鳥や小動物などのペットがいると、退去費用の相場は高くなります。ペットのニオイが染み付いてしまうと壁紙の張替えが必要ですし、ペットが壁や床に付けた傷は通常損耗とは認められず、借主が修繕費用を払うことになるためです。国土交通省のガイドラインでも、ペットによる傷やニオイは借主の負担と判断されるのが一般的であるとされています。
ペットによる部屋の傷やニオイなどが目立つ場合、原状回復のために20万円程度の退去費用を支払うケースもあるので注意しましょう。
敷金なしで入居していたとき
敷金なしで入居できるアパートでは、退去費用が高額になりやすいです。敷金とは借主が入居のとき貸主に預けておく保証金のことで、退去時には敷金から退去費用が差し引かれて不足分のみを請求されます。また、敷金を差し引いた際にお金が余ったら、余剰分は借主に返却されます。
最近は敷金なしで入居できる賃貸アパートも多く見られます。敷金なしのアパートは初期費用をおさえて入居できる反面、退去時に高額な退去費用を請求されやすいため注意が必要です。
なお、「敷金礼金」とセットで提示されることも多いですが、礼金は敷金とはまったくの別物です。礼金は貸主への単なるお礼に過ぎず、退去費用とは相殺されません。
ゴミ屋敷になっていたとき
家がゴミ屋敷や汚部屋の状態になっていると、高額な退去費用が発生します。一般的な原状回復・ハウスクリーニングの費用に加えて、家じゅうにあふれる物品の仕分けや撤去のために目安として5万円~50万円程度の費用が必要となるためです。
部屋の数が多かったり、部屋にうずたかくゴミが積まれていたりすると、退去費用はかなり高額になります。生ゴミがあふれていれば消臭や害虫駆除などの処理も必要となり、万が一、借主が孤独死していた場合は特殊清掃にかかる費用も必要です。この場合、退去費用が50万円を大きく超える可能性があります。
退去費用が高額で払えないときの対処法
退去費用が高額で支払えないときの対処法を解説します。
余計に請求されていないか確認する
50万円など高額な退去費用を請求された場合、不当な水増し請求をされていないか確認しましょう。退去費用の請求書は安易にサインせず、賃貸借契約書やガイドラインの内容と照らし合わせることが大切です。
退去費用の請求書を渡されたら、明細を確認してそれぞれの項目と費用が妥当かどうかを判断してください。本来なら借主が負担しなくていい経年劣化などに対して、修理費用を請求されているケースも見られます。前述した国土交通省のガイドラインには、原状回復の範囲が記載されているので参考にしましょう。
専門の相談窓口に相談する
高額な退去費用を請求された場合には、消費生活センターや全国賃貸住宅経営者協会連合会、日本賃貸住宅管理協会に相談するのもひとつです。
専門窓口
相談先 | 概要 | 電話番号・連絡先 | 注意点 |
消費生活センター | 消費者からの相談を専門の相談員が受け付けてアドバイスを行う | 消費者ホットライン 188 (局番なし) | ・相談時に氏名や住所、電話番号などの個人情報を伝える。 ・土日祝日などは自動的に国民生活センターにつながる |
公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合会 | 賃貸に関する相談を専門員が聞き取り、一般的な情報提供を行う | 安心ちんたいコールセンター 0120-37-5584 月曜・水曜・金曜 午前10時~午後17時 ※休暇及び年末年始は除く | ・法律の専門家は不在であるため、トラブルの解決を求める場合は自分で弁護士などに相談する |
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会 | 入居者・オーナーに対して賃貸住宅に関する相談を受け付ける | 平日月曜~金曜午前10時~午後17時 公式ホームページの問い合わせフォームより | 問い合わせフォーム https://www.jpm.jp/contact/ |
ただし、これらの相談窓口から弁護士を手配したり、退去費用関連の裁判を起こしたりすることはできません。専門のスタッフによる一般的なアドバイスを得られるのが、これらの窓口のメリットです。
大家さんや管理会社に交渉
退去費用の請求書に記載された内訳が適正か確認したり、消費生活センターなどで意見を求めたりしたら、大家さんや管理会社に金額の交渉をしましょう。ガイドラインと照らし合わせて高額請求になっている箇所を指摘し、適正な金額への訂正を求めます。
賃貸住宅を巡るトラブルが発生した場合は、借主・貸主で交渉して解決を図ることになりますが、それでも解決できない場合は裁判が必要です。国土交通省のガイドラインでも、トラブルの解決手段として簡易裁判所の少額訴訟や外紛争処理制度の活用を提案しています。実際の手順について不明なことがあれば、弁護士に確認しましょう。
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まとめ
賃貸アパートの退去費用は10万円以下で済むことが多く、50万円も請求されるケースは多くありません。しかし、無断でペットを飼育していたり、タバコや生活上の不注意により室内が著しく損傷していたりすると高額な退去費用を請求される可能性があります。
経年劣化や通常損耗によるハウスクリーニング代や修理費用は、借主ではなく貸主の負担となるのが一般的です。しかし、入居時に取り交わした賃貸借契約書に「特約」として借主の費用負担が明記されている場合には、借主が支払わなければなりません。
敷金なしの物件やゴミ屋敷化した部屋では、退去費用が高額になりやすいので注意が必要です。退去費用に納得がいかない場合は、請求書の内訳を見て不当な料金を請求されていないか確認し、消費生活センターなどにアドバイスを求めるといいでしょう。貸主との交渉で解決が見込めない場合には、簡易裁判所での少額訴訟などを視野に入れ弁護士への相談が必要です。